二章~交渉再開~
戻ると会場たる扉の前に三人の護衛。
品越しに見るが。
『ふふ。』
これに反応する。
「なにか。」
『いえ、尚も危機に対しての処置が速い。そう思ったまで。しかしてもう入っても良いのかな。』
一人が頷く。
「解錠。仮面の外套が到着。入場します。」
鍵が解かれ、扉が開かれる。
『う』
『どうしたよ。』
『嫌な風を感じますね』
事実。開放された扉の向こう側から放つように向かってくる風には嫌に漂う感覚がする。
「心配しないでいただきたい。先の事から警備の段階を上げただけだ。さあ入ってきてくれたまえ。」
急に重石を背負うように項垂れる仕草に次いで入室していく。
『む。全員か。速いな。時間はもっと後だと記録していたが。』
「いえ。最終調整の意味合いを兼ねて同席したものですよ。まあ皆さんはお客人ですので手間をわずらわせるのは些かだと。」
『ふ。そうか。では席に着いても宜しいか。』
どうぞ。と示される。
が。
「まて。」
『む。何か問題があったか。』
「いやすまない。可能であれば。で構わないのだが、宜しいか。」
『ふむ。構いませんよ。』
「そうか。では聞くが。どうして一人足りないのだね。何か理由があるのかな。言えないなら此方も対応を考え」
『いや、ただ方向性の相違から来る離反だ。止めたのだがね。あの者の意思は固く止められなかった。それだけだ。調べて貰えるなら止めはしない。自由にしてくれ。』
視線は三人の後ろで控えていた警備の誰かだろう。直後に一人が離れる音がする。
「しばし待ってくれないか。事実確認をする。」
『ええ良いですよ。とその前に座って良いですかね。終わるまで時を要さないでしょうけど疲れるのでね。』
「そうですね。では座って下さい。」
三人が着席する。
付帯する者達は控えるように片膝を着く。
「確認がとれました。確かに一人離反してます。確かに争い離反し何処かはへと。消失しています。」
『それなら問題ありませんね。続けいえ回答。全てに。しましょうか。不服ならさらなる回答を示しましょう。』
場。この時は空間全て。時間全てが凍結した。
『ぎきけっ。場を支配するためといえ言い方に問題あり。支障なく事を運ぶなら少しは穏やかな言い方があるだろうに。』
『すみません。ですが此方が誠意を見せて彼方が敵意を向けてきたならそれは無意味と思いますがね。さて、再開の前に結論を申し上げますと。決裂となりますね。ええ。なんの余地もなく。素晴らしく無駄な時を過ごしたかもしれませんね。それでは閉幕という事で。』
「ほ、決、裂か。」
『あの。』
『お、早合点しないように。現状での回答だ。』
『いやですから。』
「現状ですか。失礼ですが、急すぎますので一度着席願いますか。混乱をきたしそうなので。」
『えとぉ。』
『くく。そうだねぇ。立ち続けるなぞ理解できない。座ろうか。』
『そのね。』
着席して警戒するが何も起きない。
「警戒されなくとも仕掛けはありませんよ。」
『ははは。』
全員が着席する。
瞬間の緊張が空間を走り抜ける。
『では再開しようか。』
『あ、もういいです。』
再開である。
例えるなら。
見た目が柔いのに触れると切れる何か。
そんな空気が満たしていた。
『さて最初に申し上げました通り現時点では交渉決裂です。何故ならの理由を幾つか用意しました。これで尚も反論あるならお聞きましょう。時間など我々にとって無限に在りますが貴殿方には有限でしょうから。まあ短縮出来れば。良いですね。』
歯軋りが聞こえそうな上からの物言いである。
「ふむ。では早速提示してもらおうか。その理由とやらを。」
『ふふ。たのしいですね。ええ。では此方に示しましょう。』
中央の画面に映し出されるは返答という表題を冠した資料一覧表。
番号を付され二桁は行かずとも両手での本数に満たず。
『でだ。これからは一つずつを開示するにも時間がいるよなあ。時間を短縮するために箇条で示させてもらおうか。その方がお前さん等にとって有用だろう。』
反論はない。
『では複数もの返答の内、最も的確な答えがこれかな。』
表示されたのは片手で事足りる番号。
さて、幾つかの明示の中でこれを表示したのは何番目か知りようもないが。一つの既決として提示させてもらう。
各機関からの内容に対しての回答を記させてもらおう。
先ず始めに。
世界府庁米都支部への答えである。
拒絶。なぜなら我々は先に述べているように島の現状より優先させる事があり不問させることで合意してもらえないかね。
んで次に海洋支援部への回答。
島々の廃島に関して我々から直接の回答は述べられません。全責任は根元たる者に一任されており、賠償追及はそちらに願いたい。
仮にこの場の現存たる者達に追及するならば不当として反論させてもらおう。
さて次は世界人工島管理局かな。前の海洋支援部同様いやこちらの方が深刻だろう。
これまで関わり制定した島々は悉くが全てにおいて戦乱混乱叛乱。と交渉の余地なしときて、からの無用な仕掛けと策謀。誰の意思かは知らないが全くもって度を越えていた。収めるだけでも骨が折れる。
どのような理由であれ中間を受け持っている此方としては総ての陣営を机に着かせる過程への踏み入れも本来はしない方針だったのだが、何時まで待とうとも無駄だろうと判断した上で総ての戦場に介入させてもらった。
こうして戦場を破壊して着かせたしだいである。
激化したとして旨味は誰に渡るのか。さてさてこの場での議論は無用とさせていただく。
世界貿易機関
これが最後。
返答は申し上げた通り。損害賠償などを払うつもりもなく、コチラの内容から逸脱しすぎており資金も元からなく、いくら出るところに出たとしても払えず、払う意思もなく。なので一言で申するなら。
むり。
『は、ははは。隠す気がないな。で、これ誰が欠いたのかね。』
三人が首を振る。
控えてる者達も同様である。
『で一つ目ですが。反論はありますか。』
擦る音。
視線は普通その根元に向くだろう。
『くけけ。しないよね。何せこれに反応するは理解している。さて誰かね。』
品から覗く視線は一人を見ている。
一人を。
『では過敏なその覆せない表情が物語ることに反論はあるかな。部長。』
「ぐ、どう、して。どおおしいぃてぇぇぇ。」
『狂ったか。もう思考の読み取りは不可能だろうと。』
『ではさくっと片付けるか。』
「んな。」
一人が外套内より取り出したるは、理解するより理解し難い論理の否定と許諾の反する力を保有する個人兵器。
『なんといったかな。まあ適当で良いか。てきとうで。』
「止めていただきたい。」
『ん。それは無理。』
「なに。」
「ぐい、いぃいぃいぃいぃいぃ。」
『処理は終わってるから。』
狂気。
いや。
怒り。
そう怒りがその器たる肉体を支配していた。
『む。』
『どうした。』
『出す品を間違えた。』
『は。』
『すまん。もう逃げる余裕がない。どうにかして回避してくれ。』
『ちょ、まてぃ。』
全員の視界は淀んだ色に支配された。
暫しの時に自我を覚醒させたものが一つ。
(ぐ、かく。かはっ。まさかわだじのセイタイをハアクしてウツワをシコウごとツブされるとは。だがウツワをコワしたとてムダでオロかだ。)
見える範囲で起きている者は皆無。
(でもこれはこれでコウツゴウだな。あのフカイなるモノのショウタイをアバクにサイテキだ。)
倒れている中であの風貌たる一人に近づき顔に付されている品に手をかけ剥がし、
(ん。)
剥がして、
(んん。)
は、剥がして、
(んん。この)
はが、して、
(は、剥がれな)
>んふふ。止めてほしきですねぇ。<
(ダレ。)
>誰とは悲しきことに哀しまぬ。さて何者なのかを聞いたところで無益でしょうな。なのでこのまま退くか消滅かを選んでうお。話を聞きなさいよまったく。<
掴んでいた剥がそうとした品ごと滅殺するように器を押し込もうとしたが直前で簡単に逃げられる。
(ぬぬぬく。なんなんだあのバクフンジンをアビてどうしてウゴける。ううん。チガうなんでイシキショウメツゲンショウがハツゲンしないのだ。)
>くふ。ふくひ。くふひゃひゃひゃひゃひゃ。そうですそうか。そうなのか。なに。あの状態での意識の混濁は何かの切っ掛けでの発動装置の一つなのだと瞬時に確定させた。なら簡単だ。そう対処すれば影響を受けずにすむ。だからこうして簡単に意識を所有しているのだ。さて。<
(ひっ。)
>知りたいと思うより底の底から沸き立つ感情が抑えようにない。処理しようか。<
(い、イヤだ。かは)
>ふふ。終わったよもうな。<
(そん、な。どう、してえぇ。)
床を打つ音が近づき、肉を潰すような音が鳴る。
<くかくくくく。あはははははははっ。おもしれえなあ。はは。はああ。んんん、あ、ああ。さて、よもや裏に潜む存在とは誰の差し金ですかね。まだまだ油断は厳禁。お、切れますね戻らないと怪しまれる。しかし、この話内容は如何なのか。まあ時間を割くまでも無いでしょうに相当暇なのですかね。>
足に付いた赤を拭うように残った部分で拭き取り元いた位置で倒れると意識か同一化し現実に戻る。
気づく。
あの現象が嘘のように何も無かったことに安堵するが、非情な現実が突きつけられる。
あの部長の肉体が強烈な臭いを発していたのだ。
驚きの言葉とした合図か次々と目覚めていく。
「んな、何が一体。」
「くさっ。なんだよこれ。」
「うわっ、何ですかそれは。」
「ぐあああ。は、鼻が曲がるぅ。」
阿鼻叫喚。
『くく。いや。時間を飛ばしてまで隠したいものなのでしょうか。』
「き、貴様、は」
『いえ、知りませんよ。その死骸の正体がなんなのか。そして何を目的に動いていたのかね。さて、これで一つの懸案事項が増えました。解りますね。』
「なにを。言って。は」
『理解しましたか。では速くこの交渉を終わらせて、取りかかってください。そうでないと面白くもないのでね。』
『ちょい待て。ん。』
言葉を紡ぐも手で制止され、視線に誘導され自然にその物体を見据える。
『くく。良いだろう。なら後にしよう。』
品の奥からの視線が了承として受領した。
向き直り、
『では続きとしましょう。我々が示した一つ目ですが如何でしょうか。勿論としまして反論暴論理論等々はお受けしましょう。』
穏やかな言葉を投げ掛けるが。
何かの装置が動き出す。
『ふむ。対処は万全ですか。なら良しとしますか。』
「聞いていいかな。」
『ええ。幾つですか。』
「は、なにを」
『いえ、お答えしますが、数が多いと後々に影響があるでしょ。宜しいのですか。他の皆さんは今正に急いでますよね。なら無駄な数を打たない方が賢明だと思いますがね。』
「ええ。そうですか。心配しないでもら『いえ心配などしてませんよ。』えな、はあ。問答は不可能でか。だがこれだけは答えてほしい。」
『ふふ。どうぞ。』
「では、なぜこの不明者が偽りの皮を着ていたと知っていたのかについて。だな。」
『ふむ。その言い方だと死骸が正体不明でなく消息不明のように聞こえますか、まあよろしい。なに、簡単ですよ。ただの嘘と虚勢ですよ。おとアナタの反応はもて余しますので止めてください。何をもってその様な虚勢を突いたのか。簡単にいうなら貴殿方の中で絶対とは云えませんが何かの意図をもって差し向けられた存在が送り込まれるだろうと。交渉の成否に関わらずですね。そして何事かを発動させる。そんな装置を送り込むだろうと勘ぐったまでです。まあ本当に紛れていたとは思いませんですけどね。これで宜しいかな。』
「納得の部分は無かったが、まあ良いだろう。では続けようか。落とし処を見つける交渉を。」
そんなこんなでなんとか本当の再開。
『しかしどうしますかそちらの欠けた席を埋めるには。」
「心配無用。不足の事態に備えての同行者を連れているのだ。」
席に着いたのは帯同した者。
「今は急ぎを優先するため臨時で私が交渉の席に着かせてもらう。宜しいか三領各。」
「ああ。そうだな反論はない。二人もそうだな。」
「ああ。そうだな。理由がない。良いぞ。」
「此方もだ。反対理由はない。」
「だ、そうだ。席についてくれ。時間が惜しい。続けようか交渉を。さて、我々に対する回答の一つ目だが、どう考えても全てに対して否定を示させてもらう理由が必要かな。」
『へへ。そうだね。まあ簡潔な説明を求めたいけどさ。無意味だよね。これ。なら次の回答を提示しようか。なあ。』
『くく。確かにな。さてどうするよ。この場の支配者。』
『おや、その言い方には語弊がありますよ。正しくは進行役ですね。滞りなく進めないと双方にとっての弊害が表面化するでしょうから買ってでたまでですよ。では続いてはこの返答を提示しましょう。』
回答一つ目を除いた二つ目であるがその回答は最後に近く遠いもの。
表示される。
各機関及び関係者には謝罪の言葉を述べなくてはならないものだろうか。提出された個々の事案について此方に非があることを認めた場合、突き詰めていくとたった一つに帰結することをこの時点で留意されたい。
さて、各質問に対しての答えなのですが、そうですね。
箇条書きで記そう。
一、世界に散乱する戦場と収まりを見せず拡大の一途を辿るその先に広がるは何かを示そう。
そう究極の器を製造させることだろう。
証拠を証明しようにもそれはこの場では不要とさせていただく。
では世界に広がる怨鎖は何処へ向かわせているのか。気になりませんか。誰が指示していたのか意図は経緯は先を見通したところで全てを凡て意思通りに整えられるだろうかな。でだこうして話してみていたが今の世の中でお前達は自身の意思で行動していると云えるかね。答はどちらでもあるがどちらに転ぼうと選択権は元々皆無だろ。なにせ今世は有る地では一切の情報が統制されているのだ。選択権も選択肢もましてや自由などこの。いや何時の世であってもない。
その最たる事象が不変不問不動たる戦場展開である。否定しても反論はしない。それもまた、是。
二、ではそんな状態でありながら尚も続ける意味はなんなのか。くく答は簡単だ。この世の生物の究極は永久の時を生きること。そして深淵と世界の果てを経験することに他ならない。
その他の理由を求めるなら。そうだな。まあ興味本意と一種の探求心かな。判らないけど。まあ何が真で、何が偽か。今さらな感がありますが。では次に行きますか。
三、世の歴史を紐解いても戦争と云う転換期を経て有り様が換わることが証明されている。
んで最近まで争っていた当時の技術が世界を伝播する。
その最たる例があるよな此処では省くが。
なので否定したところで結局は机上での暴論。どんなに論理を立てたとこで感情情勢勢力が向かわせる。
礎として贄として、試しとして争いへとね。
これからも続いていくだろう。終局を通過点にして次なる場を設けて。
四、さてさて、並べ述べたな。
これからの話をしようと思う。前にだ。四つの質問に対しての返答とするが。なに、かんたんだ。
「答は全てにおいて全会一致で思想夢想妄想幻想排して。」
拒絶させていただく。
理由は単純だぞ。
元々は交渉の場での仲介者である自分の、本来は関係ない仕事を押し付けられたような気分だし、ある戦場ではそれはもう言葉では筆舌し難く酷い結果をみた。
その報告書は提出済みなので一応の参照を願いたいね。
さてこれにて返答終わり。
静寂。
ははは。皆無だろう。
切れる前より沸々と込み上げる感情。
一応の礼儀に乗っ取って静観していたろうが塞き止められた水が濁流のように広大な部屋を蹂躙する。
長時間もの切りなき氾濫は一ヶ所を除いて疲弊した状態で終わろうとしていた。
『馬鹿か感情に任せた罵詈雑言などこの場で無駄と悟るものだろうが。上が示さねばならぬものをその諌める立場の者が先んじて口撃を始めるなぞ愚か。』
『それにしても。』
『ああ。くく。』
『なんでぇ。問題があるか。』
『いえ、貴方でなく、この二つ目の質問に対しての回答といっていて。答えてない。無駄を省くとかいっていて。無駄を長々と述べるのみ。はは。これで怒号なければ恐ろしすぎる。』
『はっだから今この時に事態悪化してるだろうよ。箇条書きで。といいながら一つ目で長すぎる俺でさえ知っていてもあの渦に呑まれてたよ。』
『さて、止めた方が宜しいのか。それとも放置して次へと移行させるのか。』
『止めたら止めたで後が面倒ですね。それに彼方さんは元から元々として元もなく決裂の道しか用意してない上に此方の正体を証明して彼の地により事態収拾で総ての手札を分配か総取り。これは単路であればですが。』
『くけ。逆さならどうなるかな。』
『それは簡単ですよ。』
『まあ長い道のりに、ならあな。』
終わりかけと思うも止まない怒号はさらに熱を重ねていく。
止める気持ちもないし停める気持ちもなく留める気持ちすら湧かない呆れ果てたように仮面の異界は傍観していた。
『さて諸君。気は済んだかね。呈のいい歯に衣着せた返答は待っていない。諸君らの忌憚ない素直な言葉を聞かせてくれないか。我々はどうでもよいのだがね。根元たる存在が聞いておけと言うのでね。さて聞かせてもらおうか。』
「き、ききかさまたさらあああああああぁぁぁぁあ」
「ふ、ざ、けるなああぁぁぁぁあああ」
「こんな、こんなことをして易々と。」
『ん、なんだけけけ。心配してくれるのかい。気持ち悪いねえ。』
「この。」
『ふむ。やはり交渉は、元より決裂が決定事項か。つまらんな。少しは別の道を未知たる世界を見てみたいと思ったが。規定しか辿らぬ世界などとおに見捨てれば良いものを。あの方は全くお人が。さて、これにて我々との交渉は決裂。手元にある資料も元よりその手筈で話を進める積もりのようだったし。貴殿方の上にとっては好都合でしょう。さてこれにてお開きとしまして。早々に引き払いますか。では会場であいま、ぐあ。』
『あ、おいおい、ん、くかっ。』
『ぐけ。な、なな。なん、だばりゃばっ。』
各々の肉体に判りやすい異変が表出していた。
全身を内から貫く突起物。柔いようで堅そうで小さな穴が空いているが赤に染まっておらず、しかし苦しむ声が。
声が。
こえは。しなかった。
「なんだ簡単に作動したな。」
「恐ろしいほどに上手く行きましたか。ふう。この愚か者に露見しなくて良かった。」
「はは。だがどうする。この状況は好ましくないだろう。」
「確かにそうですが。まあなんとかなるのでは。」
「はあ、仕方ないですね。」
彼らを拘束していた仕掛けは意図も簡単に外された。
驚嘆に次ぐ驚愕であろうか。
「ふむ。なにをしているのですか。内の力を表出させれば簡単に外れますよ。」
言われて試すと。簡単に外れた。
「さて、此からが大変ですよ。各方面への結果と手配の報告書を配布して幾つもの準備費用も捻出しないとですし。ではこれにて。」
「まて。何を一人で完結させている。その必要はないだろう。件のしゅぼ」
「いえ、これ等は贄に等しく無駄ですよ。」
「なにを。」
「だって。ほら」
突起物にて拘束状態の1つの顔に着いているモノを取る。
「な、馬鹿な。」
「では他も。」
「ではご朗じろう。」
次々に取っていく。
「いつの間に。というより貴様は気づいていたのか。」
「ええ、まあ。」
「まさか。」
「云っておきますが、私はあの得体の知れない不可解な存在とはなんの繋がりもありませんよ。調べても無駄ですよ。何を根拠にと思いますよねこの正体がこのようなものだと。簡単ですよ、これ程に貫かれて大量の血を流さない事は不自然。確かに貫かれているこの仕掛けが止血の役目を担っていますが、それを抜きにしても異常ですよ。この装置には小さくとも内部へと繋がる穴。この意味することはご理解してますよね。」
「が、それで、も」
止める。
「では本物は。」
「もう脱出しているでしょう。何者かがこの本体達を襲撃したのです。危険を理解していてあえて業火に飛び込む愚かな行為は避けるでしょう。」
「な、そんな事を誰が。」
「その話はもう終わったことです。今は先の話をしませんと。」
六人は恐怖した。
代理たるその者の先を見るような言動。何かを知っているだろう態度。さてこの者は何者なのか。もしくそのように振る舞っているだけなのか。
「あの怪しまれてますけど。言っておきますね。僕は何も知りませんよ。部長がどうしてあの様になったのか。そして」
振るえる。
「な、ななななな。なんんんんんででで。ぼぼぼ僕なんどすか。」
緊張が顔を出した。
全身を伝い落ちる汗は滝のように床に溜まりを造る。
糸が切れたのだろう。
振るえは収まる気配を見せず、細かくなっていく。
「が、ががががががががが。がはっっ」
限界を越え赤を吐き出して意識を失う。
後は流れるように片付け許可無しの入室を禁止した。
別室にて。
「で。幾つかの不快なことがあるが、この場で提示しておこう。」
「異議はない。全員一致している。でなければ先の準備すら烏滸がましくなる。」
「では幾つあるかを洗ってみようか。」
「いや、その必要はない。今は少なくとも二つ。多くとも三つだろ。あの状況をみてもだ。」
「そうだな。では一通りを議論して上へと挙げようか。」
「そうですね。では短時間ですが情報を収集しましたのでどうぞご覧下さい。」
手元の端末を操作し大画面へと映し出す。
箇条書きされた一覧。
・開始時点での相手が本当に本物なのか。何時からあの人形と入れ替わっていたのか。
・世界府庁の情報を何処から入手したのか。
・これが重要だろうか。彼の者達の正体。
「ふむ。まあ前二つにしては問題外としてもやはり最後の項目が重要だ。重点的に調べて損はないだろう。」
「だな。次いでとして他も調べて行けば何かを掴めるだろう。ではその様に上に」
「良いですか。」
「お、起きたか。」
「ええ。なんとか。で言葉を挟みますけど。私としては二つ目を調べた方が近道だと考えます。」
「ほう。その根拠は。」
「簡単です。あのような不理解な風貌をしていますが、言葉は通じるし世界の情勢を理解しています。確かにあの風貌には気圧される部分もありますがそれだけです。いいですか、通常、合法違法関係なく世界府庁への閲覧権限等は必ずある機関からの許可が必要です。どのような手順を踏んだとしてもです。一旦はその機関へと繋がなければ無理なのです。そしてどの様に隠しても必ず痕跡は消せません。そこから背後にいる輩か協力者なりを炙り出せば宜しいかと。」
起き抜けに発言するその内容には確かな説得材料がある。
「それと時間的猶予は残されていないと考えられます。最悪の手を行使することを念頭に作戦案を立ててください。使わないならそれで良いのですが。」
「おい。」
「はい。なんでしょうか。」
「お前は本当になんなんだ。」
「なんなんだ。と申されましても、私は亡き部長の臨時の代理です。それ以上でもありませんよ。まあ以下でもないですが。可笑しな事をお聞きしますね。」
「ああ。君の何かを知ったふうな言動は何か。ただの癖か何かなのか。」
「え、ああ。そうですね。確かにこの話し方だとそうなりますね。ふふ。はあぁ。良いのですか。」
「何をかな。」
「いえ切っても宜しいのならもう、む、り。」
「ん。どうした。」
突然俯き、小言を漏らすように何かを言っている。
と全身が震えだし、勢いよく立ち上がると。
「えヴぉろろろろろろろろろろろ」
と盛大に吐き出した。
本当に緊張して姿勢を固めていたのだろう。
でないと場を支配する空気に充てられ精神を削り刈り取られるだろう。
「げほっ。」
吐き出すものもなくなり透明の液体が溜まる床。
異臭は当然放たれている。
話し合いを続けるのにも鼻腔を刺激する臭いは如何とも。場の空気を入れ換えるためにと新たな部屋を用意させて集まった。
「あ、あああ。んん。ん。ふっ。」
調子を確かめ、
「はあ。」
気を揉むように吐き出し、
「よしっ。」
気合いをいれる。
「気が済んだか。」
「で、お前は本当に何も知らないのだな。」
「はい。知っていたなら誰にも気づかれずに上手く立ち回ってます。」
「だがそれすら含め。ということも考えられる。白をきっても堂々巡り。でだ。此処はあの装置の使用を許可して欲しい。早くに済むからな。どうする二人は。」
「む、まあそうだな。異論はないぞ。お前達はどうだ。」
頷き合う。
「ええ。良いでしょう。このような些末なことで時間を取っても無意味でしょうから。」
「では用意させる。少し猶予をもらえると。」
「な、ななにをするんですか。」
「簡単ですよ。君の深部を覗き真意を確かめる。その為の装置を用意します。もし後ろめたい事象が見えたなら装置が処罰するでしょう。どうしますか。受けますか。」
この流れで。
「断ります。」
「うお、即答で拒否とは。」
「では認めると云うことかな。」
「いえ、それには及びません。何故なら。」
警報が鳴り響く。
「来ましたね。」
「何をした。」
「おや、これは予想外な反応です。まさか動揺せず動かないのですね。では答えましょう。」
「その必要はない。希望の品を持ってきた。受領してほしい。」
「ええ。ではこの様に。受領しました。後は宜しくお願いします。」
「確認した。では置いていく。」
気配が消える。
「なんでしょうか。今のは。」
「ああ。心配なさらずに。ただの配達人です。」
「む。」
「ぇと。」
「なな。」
視線は代理の手元。
「こちらがお渡ししたいものです。どうぞ。」
その品は。
「これは。まさか。繋がっているのか。」
「ええ。誰とは云えませんが。そうですね。では私は席を外しますので今回の交渉結果を含めた情報報告をお願いします。私は謁見資格を有してませんから。では後程、大部屋で会いましょう。」
「まて、やはり何か知っているだろう。これはどんな者でも手にすることができる品ではない。どうして簡単に。」
「もしかして、君は知っていたのか、部長の事を最初から。」
「え、いえ知りません。私は部長の下に着いたのはこの数年だけですから。人となりは知りようがありませんし。」
「ああ。たしかに、我々でも部長が入れ替わっている事に全く気付かなかった。それを浅い君が見破れるなど無理な難題だったか。等とはいえないな。かの品をこうも簡単に運び込むなど到底無理な話。ならあの部長が入れ替わっていた事にも気づいていて不思議ではない。」
「だが、そうならこの様な不穏分子、入れ替わっていた者なら尚のこと手ずから処理するだろう。そうしなかったのは。」
「確かに一理ある。」
「はあ、今はそれを論議しても無意味でしょう。後にしましょう。」
「だな。君はそれでかまわないかな。」
「ええ。そうですね。判りました。」
「では後日改めて出向要請を出す。決まり次第従ってくれ。」
「はい。ではもう良いでしょうか。私は謁見できませんので退室してから起動してください。ではこれにて。」
深々とお辞儀し出ていく。
閉まる扉。
背後で起動する音。
それだけだ。
閉まれば密閉され全てを遮断する。
彼は離れていく。向かうは島の最東端。
建造途中の区域。
現在、交渉ゆえに立入禁止を敷いている区画の1つである。
その手前にある設置途中の街灯の下で静かに佇む。
小波が耳に届くと穏やかな気持ちになっていく。
-やあやあ首尾はどうだい。巧くいっているかい。-
_は、一応の準備とお膳立てとして用意させましたが宜しいのですか、あのようなモノを開示して。
どう考えても曲解しますよあの方々の上は。まさか。_
-ふふ。察しが良いのも問題だね。さて予想通り交渉は決裂したね。まあどう考えたところで全てを認めた上で全ての賠償を。なんてのはどんなに有っても無理だしね。-
_どの路をえらんでも。ですか。_
-可能性は無くはないけどね。あの集団の統括しているであろう存在は性格上和解や示談など結局は認めた事になると理解しているしね。それなら争って決着をてのがまだ良いだろうね。解決の方法としては愚策も愚策だけども。-
_そういうものですか。ですが可能性はあるのですね。_
-止めなよ。君では混沌の渦に呑まれてしまうだろう。-
_ええ。ですから理解してます。そのような愚行はあの時に懲りていますよ。もうゴメンです。_
-そうかい。-
_そうです。_
-なら安心だ。そうだその時に関してだけど長くなるし戻ったら話すよ。-
_そうですか。ではそれで。あそうだ今回の仕事を請け負う前に進行させていた例の件は終わってますか。顛末を聞かせる条件でこの仕事を承けたのですが。_
_ん、お返事がない。もしもおし。おおい。聞こえてますかあぁ。_
_むむむ、やはり、か。ふうぅ。たくっ。少しいや総ての情報開示を要求しているのに舐めてるよな。横槍を入れて終われば長期休暇を貰う予定だったのに。はああぁ。申請しようかな。_
-あ、そうそう前回の申請は何時ものように処理されたから悪しからず。-
_うお、き、きき、切れてないのですか。_
-ん。そらね。ゴメンね。少し考え事をしていたのさ。それにまだ伝えきれてない事が数多なのに切るわけないよね。んで話の続きなんだけど。-
引きつる笑いを堪えて拭う。
一方的な話を切りたいが切れない。終わるまで我慢するしかなく立ち続けている。
拭いながらも伝えられる情報は気が付くと。終わっていた。
耳に届く音は波と自身の息づかい。
僅かな風が吹いていた。
漏れるような言葉を呟きながら施設に戻ることにした。時間が少し余っているようで自室に戻って着替えることとする。
歩いて肩を落とし。頭を振ってから歩いて再び肩を落とす。この動作を繰り返し、施設へと姿を消していった。
静かに確実に進行していくであろう事象ほど怖く面白いものは、ない。
この結末で最後に笑う。いや嘲笑うのは誰だろうか。誰が泣き叫ぶのだろうか。何者が悲惨な結末を望むのか。多幸感を抱くために結末までの工程に内在する数多くの尊い命を蔑ろにして1つの道具と割りきるのか。さてさて。どうなるのやら。続きは。
誰に対しての。
結末となるのか。




