二章~準備~序
普通に逃げている人影が振り返ることなく息を乱さず表面上は必死な形相で走っていた。
そう。
表面上は、だ。
その思考を簡単に簡略に単純に表するとこうなる。
これ迄の人生多くの敵を作ってきた。排除もー当初は躊躇し苛まれたが時が過ぎ何時しか至極当然の常態となるーしてきた。
だが終わりなどと考えない。この先もあるのだ。
故に逃げ切れると思考し走っている。これまでも同じような場面は幾つも経験しその都度対処してきたのだ。今回も同じように数々の仕掛けが狩り取りの力を阻むと確信している。
とその刻まれた皺の一つ一つがこの者の過去を物語っているのだろう。
だがどうにも理解できないのだ。
どうしてか。
なのに背を焦がすような寒慄はなんだ。
と思考する直後に大元たる。
「『はっ。めでてぇなぁ。ああ、めでたい思考と判断だ。それと実行に移せる行動力も称賛に値するな。基準はなんだろうねぇ。これから先を生き残るという絶対確信。そんで経験からくる裏打ちされた実証。十分すぎる人生を謳歌してきたろうが。なら。これが潮時と諦めようや。なあ。正直面倒なんだわ。ただの確保に時間を割くというのはなぁ。』」
声が響いた。
それも遠いはずの言葉が直ぐ背後から聞こえる。だがもし振り返れば命はない。直感が警鐘を鳴らしていた。無視して走り続けるに限る。確実性は幾つもの経験を元に行動しているのだ間違えようもない。
「『おおそうだ。これからそちらの全てを言葉通りに剥奪する事になるのでまあなんだね。簡単には終わらないてのをその腐り濁った心に刻みつけろよ。』」
背後で何かを言っていたが所詮は有象無象の塵芥。入る言葉などない。
走って。
気がつけば逃げ道が無くなっていた。
なぜだ。という疑問符。
頭に叩き込んだ地図に間違いはない。新盤も更新している。簡単には曲げられるような思考も持ち合わせてはいない。という考えがこの先の運命を決定させる。
遮る物は確かに硬く閉ざすように聳える壁。逃げようにも簡単には逃げられようもなく。上にも遮るような反りがある。
諦めをして振り返れば。
「は、ははは。やはり私は世界に必要とされている。ふふ。ははは。ふはははははははははははははははははかびゅふ。」
背後に迫っていた存在が消え安堵の笑いを挙げるが、何が可笑しいと考える隙なく息ができなくなる。なぜ体が。視線は自然とその部分へと。
「ひ、ひひゃああああぁ。かはぶっ。」
あり得ない。と思考する
視界にあるのは自身の体。
それを貫く一振りの刃。
なのに背にした壁には綻びが感じられない。
『「言ってたよな全てを剥奪する。て。」』
有り得ないだろう。壁を背にしていたのだ。そう。だから有り得ないだろう光景である。
壁を無視するように貫いているその一撃は完全に命を奪いにきている。
『「じゃあ。終わりだ。」』
逃げるという思考より速く嫌な音が体から響き視界は暗く意識は闇と塗りつぶされていく。
完全なる闇へと溶け込む直前に謝罪の言葉を投げ掛けられた。
ある真実味を含ませた噂が伝播している。
暖かく過ごしやすい季節から始まる。場所は特定されないが。
それでも確実な証拠としてかの映像が流された。
そう機密にして極秘。
隠され島と呼ばれし島。彼の地での艦隊包囲とたった一人による完膚なきまでの殲滅。そして至宝とさえ云われた研究資料の完全な焼却という島もろともの廃棄。
この事件は世に伝播し直後に関連したと考えられる事変が纏められ公開された。
どうしてか鮮明な映像画像はなく、しかし情報と統合。真実へと誰かが結論付けた。
起点として一気に広まり虚実含め終わりがなく。止めようにも遅すぎた。
最上位も蓋をしそこねた。
一部は火消し。いや完全な消滅を計ったが徒労に終わる。
関連したと思われる人物等は矢面に立たされ身を隠し、企業群は強制解体の憂き目にあった。
何かがそう在るように世界は回る。回されていき。流転する。
『気長に待つ気は皆無だ。期限延長もなし。されど落としどころは用意されている。とか書かれてますが。だれか申請しましたか。』
「はあ。幾つかを填めなければ盤面は整いませんよ。」
「そうだぞ此方も手札を用意するが見誤れば一気に瓦解という結果しか残らん。」
「そういや噂として捻れた話が広まってるな。どうするよ。」
「これ迄を。そしてこれからを考えて行動してほしいものだな。特に君には。」
『あ、そうでした。皆さんには今から送る場所で回収して貰いたいのですが可能ですか。幸い一ヶ所に終結してるようなので現在地から各所へとお願いしたいのですが。足は僕の方で用意しときますので。』
各端末へと受信の音がなる。
同時に見ると全員が眉根を動かす。
『ではお願いします。此方は面倒な事態と収拾がつかないので交渉を進めていてください。あ、出来るなら。で構わないのですが、穏便にです。では終局点での再会を。』
画面全てが消える。
「切れましたね。」
「くくっ。ボウズも何かを掴んだか。それとも。」
「ふはっ。それでも時は停められず。」
「なればこそ。この始まった。そして広げた計画を畳んで終わらそうか。」
頷き四人が四人。そしてその後方に控える者達。
黒く赤く。そして先を読みきるための。呼び込むための交渉。
「「「「「さあ。始めようか。」」」」」
黒に落とした画面を見ながら感慨に耽りかけている。
「とと。危ない。さて。お訊きの通りアルマエイルさん装置の起動を。」
「はあ。それはさ。命令かな。」
「いや、お願いですよ。あ、拒否しても結構。僕が勝手にしますから。」
「はははっ。面白いこうもふげっっつ。」
「どうして貴方が居るのですか。あの時に。」
「くっ。くく。あなた様は」
「ああ。媚の売り言葉と態度は改めてください。正直、吐き気がする。」
「ん。んん。そ、そうか。ならどうすれば。」
「さあ。どの様にも接してください。強制しませんから。もちろん去勢も調教もしませんよ。ね。」
全身が刻まれる。
「さてアルマエイルさん話が逸れてしまいましたが、どうしますか。」
「ふふん。了承するわ。それにしてもあれを知ってるなんて。」
「ああ。その先は不問というかなんというか。長くなりそうなので別の機会にでも。ではそのように。」
「了解。」
出ていくが。
「あ、そうだ。あの数だけで宜しいの。」
「ええ。その様に。」
「了解。」
遠ざかる。
「で、これから先も同じように終わってなければ介入から交渉。終わっていれば交渉。」
「はっ。そう上手く事が」
「ん。思うわけないでしょうが。何を戯けた事を言ってるのかな。やはり頭が腐ってるな。近く名医を紹介するので手術しますか。てか消えてください。」
「ぐっ。そこまで言うことは。なら。」
「話は最後まで聞いてください。無駄な時間の浪費は事を大きく仕損じてしまいますから。」
視線が集まる。
「では計画を進めるための内容を説明しましょう。一度しか言いませんので忘れないでくださいね。あとお前は最後に残れ。」
現時点での報告は以上となります。ええ。裏も取れました確実です。配布された資料も添付しますので一読を。
ええ。では巡間にして帰結点へと至らんことを。
ええ。
我が主よ。
《祭》の召集は控えてもらえないだろうか。今回は傍観に徹してもらいたいという願いだ。無論強制力はないので現在は命令で通っている。その限りでの行動は自由だ。全班員に徹底した連絡を。その上での結果なら致し方ないだろう。そう言伝てを頼まれている。では自由意思の下健全なる世界の構築を。
けかっ。先の失敗はこの為にあったと謂わざるをえない。こかっ。しかして今回は手出し無用なれど観測は怠るな。これは絶対にして完全なる至高の方々よりの命題だ。
如何なる時にも御身に印の加護を。けけけっ。
くふっ。くふふふふ。
ええ。そうだすね。そうだすな。おお。それはまた面白き事なり。ん。おと地が出てましたか。しかし。くふ。無理からぬ事ゆえに。彼のような流れは今後の観測にも観られるものでなし。くふふ。ええ。ではその様に流れをばらし再構築を。
では楽しみにしてもらうだす。元同盟連合殿。
幾つもの思惑が交錯するのかしないのか。はてさてどうなるやら。可能性を見いだし元を構築し進めるのか。
若しくは奇しくも変容し変異し総意地点へなるか。
さあ始まるは思惑という絡め捻れ刻まれ及第点へと至るだろうなにかの話か。語りか。




