二章~三つの道筋(経過)二~3
遡る時間は数日前。
少年であり元であるが主たる存在との連絡。あとオマケ。
その連絡終了後。
「はは、どの島も大変ですねぇ。かくいう私も大変なのですが、さて皆さんこれで一蓮托生。なんて大行な事は言いません。ですがこれより先は行動を共にしてもらいましょう。なに、事が終われば何かしらの恩赦めいた何かが得られると思いますよ、多分です。これ重要ですよ多分です。」
風が吹き荒れる海原を高速船にて移動中。
「はっ、俺達を脅すたぁな。」
「そもそもこの船は何処へ向かっているのだ。」
「そ、そうですよ。僕達を何処へ行かせる気ですか。」
「応えようによっては。」
「ふふ安心なさい。これから向かうは旧マダガスカル領域内。現在は完全管理下となっていますが、回収しなければならない品物がありましてね。」
「そ、そこで俺達を」
「ああ、解放なんてしませんよ。何せ貴殿方は引き渡しのために同行してもらっているので。今から行くのはそのついでですから。先程も言ったように、少し回収したいのが目的ですから。ねぇ。」
背筋に恐怖が走った。
「これ以上の反論は無いようなので、では向かいましょうか。」
妨害が予想されていたのだが皆無に等しく、遭遇したところで妨害と呼べるようなものでなかった。
此方の所在を明かすと悲鳴が響いた。
そして抵抗らしい一応の抵抗は終息した。
くくっ。元主よ。この者らに何をしたのやら。
事前に全員へと配した品物を着けさせる。
近づくにつれ噎せる刺激臭に気分を害する。
「おええええぇぇぇぇ。」
と下船して盛大に吐き出してしまった者が一人。
「おや、これはふぐっ。く。予想に反して。影響が大きい。さて処置は後にして案内願えますか。」
怯えと疲労と恐怖を抑えず敬礼する一人に案内を頼むが。
「ひ、ひいぃ」
「あ、止めときます。これではまともな案内は期待できそうもない。」
口許を含めて覆っているが突き刺す痛みの臭いは肉体への支障が増す。
防護衣服に身を包む者達に委細を話し人数分の品を用意させた。
「着終わった方からお送りする地点へ集まってください。詳細はその時に。では一時解散。」
数刻後。
指定した地点にて残す一人を除いて集まっていた。
「時間ですし、これより回収する対象を皆さんに捜索してもらいます。手分けして捜索お願いします。あ、定刻にはこの地点へ一度集合してください。それと例の事も含めていますので念頭に行動してください。それでは解散。」
反論は当然の如くである。
「その者については追々説明しようと思いますので今は捜索に集中してください。では。」
一礼しその姿勢で姿が消える。
これ以上の問答は拒絶。という事だと理化し納得できないままに各々が与えられた回収物の作業の準備に着いた。
解散と言えども敵地と同等であり肩身が狭いのは必定。
なので散策や調査など出来ないのが普通の感覚だな。
その者らは感覚が歪んでいたので時間まで各々担当を決め調べていった。
なんと勤勉か。
正直笑える。
おっと失礼。
三人は目的地への道を調べていった。
回収物は三つ。
大まかに分けてだが。
一つ。組織が秘匿した情報。
一つ。禁忌実験。
一つ。建造に関わる資料。
以上である。
北に位置するその場所には直下立つような見上げる崖。案内で道ながらに辿り着いた洞窟の奥には無言の監視者。
短く挨拶を交わし中へと入る。
「たしか資料だったか。はっ、俺にこんな事をとか思ってたが、思ってたより糞な雰囲気だよな。」
振り返れば案内人は居ない。一人で資料を探せという事だろうと分けることを判り表情を曇らせる。
「三つの内一つでも見つけられたら。はっ。儲けものたが。簡単にはいかねえよな。」
不満を口にしながれ手を動かしていく。
その場には膨大な資料が収蔵されており目的の物が見つかるかは、さてさてどうなるかな。
南に位置するその場所には大きな湖。
名はガガラオ。
古き時代からあるその中に位置する遺跡に目的の物があるという情報であった。
があの災害の影響かそれ以外の理由からか目的地は現在は山の頂きに位置している。
その上に湖の水質が変質し生物は皆無の毒と化していた。
渡るにも普通の船では毒により融解してしまう。
「くくっ、これを渡るには特殊な素材で建造された乗り物か。はっ。関係ねえ。」
この者を含めクロイツの薬を飲み下した者達は現在、実験として意図せず全てが底上げされている。それを踏まえて。
「お、らあああああああああああ。」
助走なしの跳躍で目的の島へと到達した。
驚くのはこの湖の管理者。確かに跳躍などで到達は可能なのだが、毒の湖と化したガガラオから発する蒸気は島自体を覆っており、島へ辿り着いただけでは死へと誘う鎌が全方位から襲ってくるのだ。それを理由に特殊な素材で建造された渡し船が必要なのだが。
島へと普通に着地した者を見て普通に動いていることに驚きを隠せないのであった。
軽い伸びをして目的の場所がある辺りを見上げる。
「はっ。更につまんねえなぁ。」
屈伸して垂直に飛び、空中で真横に移動する。
「ぐぉ。」
移動したまでは良かったが、壁に大穴を開けてしまう結果となった。
痛む箇所を確認して浅いことに一先ず安堵し、周囲を見渡せば。
「おいおいおい。聞いてたより小綺麗だな。」
瓦礫と苔と負臭を放つ地面を想像していたのだが、地面は草一本生えず建物も汚れなく周囲を取り巻く空気も異常なほどに正常であった。
見える範囲では壊された幾つかの施設。
この中で異質なほどに佇むもの。
「これが寺院か。はっ。隠す気はなしか。」
そう寺院なのだが、極端に言ってしまえば、綺麗すぎる。その一言で言い表せるだろう。
遺跡と謂われれば周囲は確かに。が、その寺院は皹も欠けも、ましてや草木すら繁らず、まるで新築のような外観なのである。
「へっ。少し前なら、金目の物を掻っ払ってトンズラたが、くく。どうして血が、滾る。」
腕を振り上げる。
片手で顔を覆う。
「くくっ。さあ。アイツに付き合おうか。なあ。」
轟音地響き背後に落下と崩壊。
振りかぶり風を切る。
薙ぎ払いは物理的に範囲内にあった全てを吹き飛ばす。
それは寺院も例外なく壁を瓦解させ、内にあった品々を粉と化した。
「おおぉいぃ。いきなりたぁ見境ねぇ。通常ならあれで肉の塊だぞ。」
振り返りと強烈な打撃。
が虚しく空を切り、真空の刃を生み出すも、元から背後には居ない。
あ、背後には居た。だが中座によって的はずれていたのだ。
「おうおう。説明も無しかよ。最もまともな思考は出来ねえのか。」
反らし。
「お、おいおい。」
更に反らし鈍く響いた。
それは絶叫か悲鳴か。はたまた歓喜の遠吠えか。
背面が足に接着し、境から鋭利な物が突き出し、一気に切り裂いた。
「う、うおおおお。」
赤が飛び散り地を汚染する。
些末としか言えないそれ以上が目の前に現れた。
「は、はは。これはどう考えても。」
死。
予感は的中できず。
ん。なんだ。遅い。お、おおっ。
切り裂き出現したその存在は有無を言わせず。通常なら認識できない速さで襲い、認識するという過程もできないままに死の淵に叩き誘われていたろうが。
認知するその速度は極端に遅く、低速にも劣る。
軽々と避けてその場に止まっている腕を掴み巻き込むように投げ上げ追い討ちの蹴りを打ち込み地面へ深々と陥没させる。
地面の着地に合わせるように生えた腕に足を捕まれ地面に・・。
「はっ。判りやすいな。」
少しの力を込め足をしならせるように上げると掴んでいた腕が耐えきれず引き千切れ、空へとはなたれた。
地面から轟音。
「はは。危ないねえ。普通に考えても最初で死んでたろう。くくっ。アイツに感謝かね。」
吠え、地面から出てくる存在は千切られた腕から夥しい体液を地面に垂れ流していた。
「地面が溶けて、いんや、腐ってる。ああ。湖毒化の原因はお前か。」
言葉は自身の確認のためか現実を受けいるれるためか。
現実には腐る地面から放たれるであろう悪魔の臭い。
もし渡された品を着けていなければ臭いに堪えきれず発狂していたろう。
「こうまでして守りたいもの。くくっ。これは当たりだ。」
軽く地面を駆けると一気に近づき、中心から縦に連打を放つ。
くぐもる声と共に地面へ倒れ止めの踏み込みで頭部を踏み抜いて飛沫を浴びないように離れる。
強烈な臭気がこれ迄の比ではない。
「速いとこ離れねえと危険だな。」
飛び退いて大きく開けてしまった穴から寺院内部へと姿を消した。
東。
そよ風が頬を撫でるという言葉などないに等しく。
砂混じりの暴風が体を容赦なく潰そうと襲ってくる。
着込んでいた物も領域へと踏み入れた瞬間に使い物とならなくなり棄て生身で目的地へと向かっている。
「は、ははは。うぼっけはっげほっ。くそっんむむぐ。」
視線を足に向ける。
「ヴぉあ。ふぁへうぉうえいいうぁえひゅほひ。ふはっはほひふはっへひはあああああ。」
先に見えるは渦まく砂の壁。
臆することなどなく猛進する。
その場所は命が皆無であり、さらに今後も芽生えることは無いだろうと推察される。
その場所には広大な鋼の板が隙間もなく敷き詰められている。
草木すら生えないその場所は。
何もない有るのは先に述べた鋼の板が有るのみ。それ以外は皆無。
いや。この一体を囲む砂の壁か。
「ぐはっ。は、はは。ぐあっ。後で。請求してやるっ。」
この者の腕は片方しかない。
砂の壁は推定数キロもの距離。その間に無傷などあり得ない。故に腕を犠牲に突破した。
「はっ、俺様に回復なぞない。」
言葉を裏切るかのように失った片方が存在していた。
「ふふかっ。これがあの野郎の言っていたか。いや言っていないなあ。かかかっ。潰して屠って終わらせてやる。」
表情は極致。
笑顔。
「でだ、一人でこの場所は理不尽しかない。」
案内人として多数が同行していたが、砂壁。以前。荒ぶる濁流。以前。生きた森林。以前。殺しの壁怨。以前。選択の順当。を越えて結局は一人しか残らなかった。
東は試練の道程とか云われているが酷い。
最後には目標だけしか残らず、全ては世界から別れを強いられたのだ。
「俺様がこの辺りを任されたのは、かっかか。くかっ。興味がそそられるなぁ。」
見えるは鋼の床。何もない鋼の板が広がり、視界の内にはこれといった特徴がない。
が。
「ああぁ。そうか。では何処かに有るはずだ。わりと近くに。」
床の周りを調べるも見つけられず。
「ふむ。ではこれでどうかな。と。」
砂を一握りし床にぶちまける。
多方から起動音と共に巨大な風力機が上空から落ちてきた。
落ちてきた。と言うには違いがあろう。
何故ならその風力機は落ちながらも床に散らばった砂粒を吹き飛ばしていたのだから。
床に着地し粒を残さず床の外へと吹き飛ばし終える。
「へえ。塵すら許容せず。なら俺が踏み込めば。くくっ。どうなるかな。」
言葉の終わりと同時に一歩よりも跳躍し風力機の近くへ。
払っていた風力機は着地より速く標的を定めそれまでの比ではない風力を浴びせて吹き飛ばそうとする。
「はっ掃除ときたかよ。」
標的は。
「だがな。簡単には殺らせない。殺らせられないなあ。」
意識を整え内を治める。
「じゃあ、目的の品を貰うか。」
大一歩で事は済み。
大二歩でその場の均衡は崩壊し。
大三歩で目的の品を回収した。
無事な建物は一つもなく。徹底的に破壊されていた。
その建物の前には四肢に重い枷が附けられ一定の移動で全身を貫く死の痛みか無限に続く快楽か。
多数が後者を選んだようでその表情は悦に入っている。
「はあ。こうも惨たらしい行いが簡単に。さて。我の要求は一つだけ。」
足を重ねる。視線は鋭く。
「四つ目の品物を差し出してくれないだろうか。事前に通達していたが。拒絶なら権限によって無意味な虐殺を執行するが。」
「ま、待ってくれ。確かにその通知は親父から引き継いであるがそれに関しては連絡済みのはずだ。」
「そうだな、では返答の件も知っているだろう。別段引き渡さなくても我は構わないのだが、渡さねば後悔が襲ってくるぞ。」
「わ、判った。だが」
「時間もない。稼ぐのなら我は動くだけだが。」
「ぐ。判った。渡そう。おい。親父の部屋から持ってきてくれ有るだろ。」
控えていた者に頼んで持ってこさせる。
「いや時間もない。と言ったろ。我も行こう。そしてそのまま出よう。」
反論はなかった。無駄と悟ったのだろう。
事はやはり素直に行かないものである。
そう欲した四つ目は消失していたのだ。
「どういうことか。正確な説明を。」
「先ず始めに怒らないと約束してください。それなら説、明、をひっ」
その目は落ち着きを失いかけている。
「そ、うか。まあ事と次第では島を混沌へと暗い尽くし食らい尽くす。」
「お、おおい。は、早く説明を。」
「は、はひ。ひいいいぃ。」
「ほおっ。説明しないのか。時間稼ぎ、のつもりかな。」
「ひっ。ち、違っう。」
「そう、なら説明を。おや。」
室内にいた全てが気絶していた。
事に至り理解した。
自身の両甲を見て漏れ出た根元を抑える。
「はあ。まだまだ修練が足りませんね。精進しませんと。」
無意識に漏れ出していた力の影響が室内全てに影響を及ぼしていたことに考えが導き出される。
「ふふ。それにしても彼方の影響ですかね。いえそれだけでは無いでしょう。さて原因がお、これは。」
部下が持っていた端末が答えを導き出した。
操作し情報を開示させる。
「ほう。ふふ。目的の品が数日前に消失。認識したのは随分と後のようですね。まあ犯罪組織でも規則に緩い方でしかたいですね。」
知りたい情報を入手し集合地点へと向かうことにした。
倉庫地帯の一角。黒い瓦礫の前で集合した。
「では報告と回収した品の提出を。」
素直に出す三人。
「む。駆け引きとして伸ばすかと思いましたが。素直ですね。」
「はっ。俺達は短慮に行動したくない。それにあんたは言ったよな。ついでだと。なら無謀は死を意味する。なら俺達は簡単に差し出すぜ。この先も在るだろうしな。」
「ふふ。懸命です。ではこれら私が預かります。そして時が直結した段階で渡しましょう。なにせ選ばれてしまったのですから。おっと反論は先の時にでも。今は目的地。いえ、目的の島へと向かいましょうか。」
次なる目的の島。属島;ザンテデスチ・アエチオピカ。
森林大河岩石最後に関所。
旧アルジェリア領域にあり意味を関して大小様々な島が点在する場所として、多種多様な研究も盛んに行われている。
その一つの属島がザンテデスチである。
がこの島も多分に漏れず小競り合いが続く主要地点と成り果てている。
「これが今回の目的地。で、どう処理しなさるんで。」
「ええ。都合良く介入できそうな戦地を見つけました。それらに此方を使用した状態で両軍を、もしくは複数を止めていただきましょう。なに死は避けられますよ確実に。」
取り出した小物には例のように内容物が見えないようにされている。
「さあ、一気に飲み下しなさい。効果が表面に表れるまでは時間がありますので。」
躊躇はない。
これまで同様拒否拒絶は死へと落とされる。
「く、くくく。アンタ相当狂ってるな。目的は。あくまで 薬効実験か。はっ。面白いな。」
全員が頷く。
「それではこの貼ってある説明を読んで反芻してから飲んでください。」
全員が読み一気に内容物を体内に取り込む。
「では端末を開いて各自の担当戦場へ向かってください。合図は。」
さあてさて。これにて漸く始まる私の計画が。
複数同時に述べるならば後に纏められた報告書。
複数の戦場は均衡していた。まるでそうあるかのように。作為的に。
その最後は突然にして終結した。
報告書には結果だけが記されていた。
そう、生きるものなく何時までも響き奏でる音。と。
では何があったのか。
全ての戦場には疲弊の色は見られず。逆に何かを待っているかのよう。
嬉々とし遊びめいた動きが見てとれた。
笑いしかない。
その場には笑い以外が徹底排除されて遊戯のように得物を振りかざし舞踏のように鮮やかに戦いを繰り広げていた。
笑い。
そう笑いだ。
音として認識したならば間違いなくそれは笑いだろ。
が笑いの顔であって笑顔ではない。
声と認識したならそれは苦しみだろう。
注意し聞き耳を点てたなら言葉の端々から滲む悲観な言葉。
徘徊する感情は一点へと集約する。その最高点が今まさに成ろうとしていた。
が異変は唐突に。
疲労も疲弊も不満も悲観も表さないような戦場に突風が吹いた。いやそれは突風にあらず。
一つの息吹き。
意味は違い、それは包容などと言うには程遠く。
異な。か。
息吹きという突風に触れた瞬間では以前までの表情が柔らかく、直後に硬直し持っていた武器、兵器意識に関係なく落とすまたは壊れ。崩れるように地面へと倒れる。
と同時に硬く乾いた音が響いた。
至る場所で間断なく、だ。
報告書にはこう記されている。
《戦場の調査より。》
監視者による聴取から。
「あれは何時もと同じ景色だった。何時ものように有耶無耶に事が運び色々なコマが消費されていく。
そうして次へと移行する。そういう何時からか決められた流れみたいなものができていた。
あの時間は、異様な空気が漂っていた。ああ。長いからな戦場の空気は見えるというか感じる。
そうして。ひっ。あ、あ。んんっ。すまない今思い出しても気分が落ち込む。ははは。中々に酷い物だったよ。
そう、あれはその日の戦場再開から間もない時だった。
戦場の一画でそれまでの均衡が崩れるいや瓦解、違うな。そう地面ごと崩落した。言葉ではこれが限界か。とにかくあれは世界から何かしらが作用してその部分が崩落した。そこからは速かったよ。敵味方関係なく全てが肉の塊と果てた。勿論、最新鋭武器もまるで油の固形物を切るように切り裂かれた。最初は新兵器かと考えられたが事前情報はなく。異質にして異端な何かだと気づかされた。が遅すぎた。ああ。気づいたのは監視者一人の消滅。それを別の者が直で目撃してしまった。
そいつかい。今は精神感能施設に収容されているよ。なに錯乱と心が壊れたんだよ。」
その姿を実際に見たという者達が数名いたが、全てが悉くに同じ症状か近しい状態で発見された。中には物言わぬ屍も居たという。
つづきだ。
「あ、そうだな。事態収拾には施しようがない。そして見たよ。見させられた。そう表現した方が的確かもな。
気がつくと何かに追いたてられるよう担当地区から逃げていた。
で見せられた。コマが刻まれる様を。思い出したが、誘われるようにあの場所へ着いたな。くく。神ざるてのかね。誘導されていたよ。他もそうなんだろ。聴いてるよ色々とな。」
後々の調査により同じ証言が挙がっている。
そう各地区においても同様の事象から全ての結論が出ていた。
結果的には旧アルジェリア領域と隣接していた旧領の一部での戦場は生きとし生けるモノは調査隊が到着した時には転がる肉塊しかなく。その上で吠える存在が確認されていた。
その姿は正に異形。
具体的には通常の肉体に不釣り合いな巨大すぎる翼だろう。
先の事象から推察するとこの翼の羽ばたきにより戦場の全てが等しく刻まれるに至ったのだろう。
全ての切り口。肉。鉄。樹。草。地。が綺麗すぎるほどに綺麗なのだ。
結論としてそう至ったのだ。
では真実はどうか。
戦場から離れた場所に一人が歩いていた。足どりは危なく瞳も虚ろ腕も力なく速度と同化するように揺れている。
戦場から隠れた場所でその姿は一歩ずつ歩むごとに変貌を遂げていた。
手前で現れたのは、目の有るはずの場所には異物がはまっている。
それには眼球でなく四つには。
機械。
樹木。
宝石。
生物。
顎は次第に下降し変異していく。
腕は細く枝と見間違うように変色し、反して指先も無骨に肥大している。
体は小さく細く。
下肢も面白いように変遷していた。
片方は石と機械が混ざったようになり、片方は霧のように霞がかったように実体がない。
耳鼻が動き一点を向くと宝石が振動し、その方向にいた全てを切り刻んだ。
これに歓喜したのか。
残り埋め込んだ素材を使用し眼前の戦場一つを潰していった。
軽い限定的な実験として放った力は予想以上に発揮し全てを片付けた。
思考する。
次の対象への実験を如何にして終わらせるかを。
威厳めいたもので単純に見た目を重視し背から巨大な羽を生やしてみた。
俯き加減に戦地を歩きながら全てを凪ぎ払っていく。途中に視線を感じていたが無視に徹して進める。
一息ついた頃振り返ると無限に広がる硬い物質とかした生物達。
首を鳴らし疲れを晴らすように吠える。
足に力を集め、次の戦地へと跳躍する。
さてこれが真実。
ははは。なんだかな。確かこんな言葉があったな。
現実は某かより奇なり。とは言ったものだな。
さて報告書には全ての戦場から命が。と記されている。
なので別の戦場を見てみようか。
その戦場は似たようでいて一方的であった。片側からの圧倒的な物量をもって圧倒していくよう進軍していた。
こと両軍の表情もまた笑みを張りつけた顔だ。
ふふはっ。
この戦域へは完全な意図が介在していた。
先に述べたように一方が一方的な虐殺を施していたのだ。
悲鳴や懇願の音は響くがその表情は笑みである。
滑稽の一言としかいいようがない。
そのような戦場で変異が起きた。
樹の群れが突如押し寄せてきたのだ。
樹は様々な形を模しており、中には複合的なものまで表していた。
それが四方から押し寄せてきたのだ。
相手しか認識しないようしていなかった両軍は対処どころか動かない。
組まれた以外に対しての認識が出来ていないかのように。
戦場が端から崩壊していく。
戦場を侵食していく群れは全てを平らげていく。
なにせ逃げないのだ。
簡単に捕食できる。故に増大し群れは規模が比例し肥大していく。
ものの短時間で戦場は群れに呑まれた。
勿論、監視者も例外はなく、全てが食いつくされた。
残るは瓦礫と噴煙と乾いた大地。
暫くすれば全てが収まり、静かなる空間が造られていた。
風の発てる僅かな砂塵が音を奏でる。
大きな一歩が大地を揺らす。
樹の群れは当然に一斉に向くと。新たな餌を求めて襲い来る。
多株の群れの一番近い一株がその強靭な足を掛ける。
触れれば鋭利にそして硬化させた根の爪を立てかけると屑粒と成り吸収された。
現れるは巨駆にして人として外れし外見をした。
表すならば。そう。
〈樹の王〉
僅かな動きに軋みの音が響き、距離を取っていた群れの最も近くにいた複数を枝で絡めとり樹体の中心を歪ませ大きく開くと中から蠢く無限とも言うべき小さな貪欲に支配された存在が見える。
開けられた光の先に反応し一斉に見ると触手のように長く伸ばす。
奇声を挙げる数十の株がその触手に触れられれば一気に纒わり隙間なく絡めとられ内部へと引きずり込まれ閉じる。
言葉にすれば長いが実質は感知できない時間。
そこからは速く。全身から似たように開き無数の触手めいた物に全てが絡め内部へと収まっていった。
全てを内部へと収め重そうに樹体を傾ける。
勢い良く上部へ反らすと奉公し風を纏って姿を消した。
これより数日後に編成された調査団が到着したのはいう必要はないか。
最後にもう一つの戦場を。いや。終結したと言っても過言ではないだろう。なにせこの戦場は一つの帰結により存在を忘れられたのだから。
この戦場は記憶記録から消えていた。認知も認識もできない在るのに無い。無いのに在る。存在は確定していても目に見えていてもその場には無いという無意識の認識が植え込まれている。
してその不能なる無意識の戦場にまた違った異質が紛れ込んだ。
一帯に反響する音が空に不可解な波を立たせ中心から亀裂を走らせ穴を開けた。
侵入するは人。
紛れもない人。
なのに醸す気配は人から非ず外れていた。
俯いて表情は読めない。
お、何かを言っている。
近づいてみようか。
「、ひ、ひひ、ひ、かかっ。」
おおう。笑ってる。
と膝を折り手を着いて握り混み深く息を吐き出す。
それは挫折か後悔かそれか疲れでも溜まっているのだろうか。なんにせよ項垂れて止まる。
「変化なしかいっ。問答無用で飲ませたくせによっ。」
そう人の姿を保っていてさらに思考の混ざりも肉体の変異も見られない。
「クソッ。あの野郎が。」
吼えるが答えるものはない。
「空しい。嘆いても無駄か。で気が落ち着いて改めて見るとなんも無いな。本当に。」
見渡す限りの荒野。そして怖いほどに澄みわたる空。
「へっ。飲んで変化ないなら構わねえ。さて本当に何もないのか調べてから戻った方がいいよな。」
握り込んだ手には乾いた砂。のような土。のような物を調べる。
見ているだけでなく舐めて含み味わい吐き出す。
「んんん。味が、ない。」
水を含んで吐き出す。
「通常なにかしらの味があるもの。そして見たところそれの成分が含まれている物体も見られる。なのに、だ。どうして味がしない。原因は不明だがこの場には存在している。いや、そもそもこの場にこんな広大な土地が存在していること事態誰も知らないし情報もない。」
事ここに至り結論を出すが。
「いんや、時期尚早だな。もう少し調べるか。」
歩いては地面を叩く。繰り返すこと数百数千数万、考えていた。
軽い音と思い音と奥へと響く音。
これらを踏まえて抽出した箇所を詳細に調べれば。
くくっ。あった。有りやがっよ扉だ。
簡素な扉が掘って深い位置に存在していた。
これが何を意味するのかは計り知れないが、他の場所も同じように掘っていくと深さは違うが六つの扉があった。
最初に見つけた扉を開ける。内部は暗く湿った空気が漏れていく。
「ふぐっ。なんだあ。」
口許を押さえて中に入る。
瞬間、灯りが灯り内部を照らす。
「おおぉ。すげえ。」
短慮にして言葉に教養が窺い知れる。
たしかにその言葉はある意味では感嘆というには簡潔に表すにはあっておるだろう。
一言でいうなら部屋である。それも奪うことを目的とした品を納めた部屋。見るものによっては宝の山に写るだろう。
欲をだして持てるだけ持っていこうするのだろう。
たが冷静だった。
「一本でいいか。でどれを持っていくか、だがああ、あ、お。これにするか。」
納得した一本を持って肩に提げて出ていく。
「と、その前に」
適当な物を取り部屋の外へと投げると。
振動射出落下。
地面陥没品が反動で宙へ浮き弾く音最後に部屋の定位置に収まる。
「予想通り簡単には出せないか。でこれを解くにはどうすれば。」
複雑な機構を備えていたのならば篭に囚われ続けるだろう。
だがこの区域は全てを歪めている。
故に本来の機構より簡素に簡単に作動する。
「お、これ、か。」
単純にして目に見えて分かりやすい機構の装置。
左右に倒すことで作動するもの。そうレバー。
適当に起動させたら中央に鎮座していた台が移動し床が開いた。
「はは。簡単すぎるぞ。ふう。そのおかけで脱出できるか。」
普通、あからさまな仕掛けほど警戒するものだが、自棄に成っていたのだろう、戸惑うことなく開いた空間へ飛び込んだ。
落ちていく頭上で光が遮られていく。
台座が動いて閉じたのだろう。
着地まで短くされど頭上は暗い。
悩んでも時間を浪費するだけで暗闇の中をどうにか進んでいく。
適当に歩いていれば出口へと到着した。
力を入れずに軽く押すと勢い良く開き壊れる。
外へと出ればそこは無理やり填められた射出装置の側。
別行動という名目で先にこの属島へと来させられ、理解できずに渡された入れ物を説明なしに飲まされた挙げ句に意識が遠退き気がつけばあの不可解な場所。
空は明るく思ったより時間は経っていないように思えたが。
なんと出発直後だと驚いた技術者が教えてくれた。
怪しむも証明として品を見せる。
疑問は残るが納得はしたようで素直に引き下がり建物へと入っていった。
「さてこれからどうするかね。時間が余りすぎてすることがない。」
「お、そうだアンタの大将が何処かへ行ったぞ。」
大将。そう言われて思い当たるが。
「そうかい。」
場所など聞いたとて着いていく義理はない。
「別段仰いだことはないし彼方も実験台としか見ていない。なら事が済んだなら時間まで待たせてもらうだけ。」
適当な場所を見つけ時間まで休む。
出発の時間には全員が揃っていた。
全て異形そしてクロイツの足下には大きな跳ねる袋。
「それでは乗船しなさい。少しで戻るでしょうから」
反抗する異形はなく素直に乗船していく。
船上甲板では全裸の者達が息も絶え絶えに全身から滴る汗を流して疲弊していた。
其々の側には渡された品が落ちていた。
見つめる先には。
「ご苦労様ですね。結果も上場に効果も計れました。次まで少し猶予がありますので休んでいてください。なに。この次も精々励んでくださいね。ではこれにて。」
同じように消える。
残された者達は甲板で寝転がり疲労し動けない暫し肉体を休ませる。
進む高速船は次なる本来の目的地へと海上を進んでいく。




