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Heart of 6 〜赤と譲渡〜  作者: 十ノ口八幸
二章~交渉決裂と戦争準備~
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二章~強襲~1

逃げられない。誰かが救いを求め走り続けている。

その一方でそれらを高見の見物よろしく、茶を啜り口笛に乗せて楽しんでいるとか。

その視線の先には辺り一面に転がる多様な形の塊。

もの云えぬそれらを足蹴にして突き進む。

逃亡と云われればそれまでだが、この二つには明らかな隔たりが存在していた。

握られる拳に力は一層込められ、気がつけば滴る赤が足元を濡らす。

苛立ちと不甲斐なさと自身の無力。

救い出すことはできないと痛感した。


振動と破砕音と浮遊感で没入していた意識が現実に帰還する。

「ふえ。いだっ。」

没入していたため回避もできず、後頭部をしこたま打ってしまう。

「いだい。」

さすさすしながら響く感覚に傾げる。

「何か、あったのかな。」

外に出るため立ち上がり扉を開ける。直後に目の前を鋭い何かが過ぎていく。

誰かの声。

「うあっ。イテッ。」

これまでの非ではない縦揺れに扉の縁に体を打つけてしまう。

「泣きたい。」

大変な事態だと即座に至る。現状把握のため甲板へと昇ろうと部屋を一歩出る。

「ほほう。残り微か。ちょうどぅべるはあ。」

「へべぶふぁ」

「あひゅうん」

「これはまた。こう成りますか。そうですか。それでも事態把握はできませんね。やはり表へ出ないと。」

もう諦めのため息をもらしてしまう。

現れた者を問答無用に殴り飛ばし、その後ろで揚々と各武器を持ちながらも見せ場なくそれに巻き込まれる諸々。

反対側に倒れている人達は辛うじて息をしている。

軽い処置をして伸びをする。

止むことを拒否した音が壁を天井を伝い震える。

問答無用で気絶させた者達を動けないようにして、適当に縛り上げて昇る。

全身に感じるそれは着弾と悲鳴。

外へ出ると見えるは業火に沈む船。それと敵味方入り乱れての戦闘に入っている者達。その足元には赤に肉塊。

そして現状の船は縁を所々破損していて甲板も砲弾の痕跡が見てとれる。

通信と指示。

「ふう。何故でしょうか。」

と背後に気配を感じ振り向くが、その途中で脇に痛覚、そしてその勢いのままに甲板の端まで飛ばされた。

「つつっ。なに。一体。」

「ほうはっ。俺の一撃が真面(まとも)に入って両断できなかったのは親父以来だ。これは楽しめるな。おい。」

「はい。」

「これは俺の練習台にする。速いとこ他を制圧するよう言い含めとけ。」

「了解した。では後程。」

走る音と反抗。

「おう。ふんっ。あぁ。」

部下を向かわせ、更に向かってくる命しらずな下等をその一刀に下し、赤を浴びて正面を向くと。

「んあぁ、んぐんく。終わりまひらね。んぐんくんく。ふはあ生き返る。」

砕けた縁を背に、何処から出したのか食料を食いつくし、飲み物を飲み干して投げ捨てる。

「なんだ、その態度は。」

「ふう。食べましたねえ。けふっ」

「聞こえているのだろう。」

「ああ態度です、か。」

「はっ。俺の練習台ならもっと震えながら命の懇願なり、糞尿垂れ流し惨めに這いつくばりながら逃げようとするなり、無駄と判っていて向かってくるなりするものだろ。それを相手に俺は。」

鼻で嗤う。

「その変態自己陶酔な確定しているような無駄話はいつ終わりますかね。」

肩が動く。

「自己陶酔と言うか。」

再度の。

「ええ、僕にはアナタが仰った行為というよりなんでしょうか。まあそれら含めた全てが水泡に帰すると思いますね。」

武器を構える。

「そうか、俺の練習台ならと思ったが気が変わった。一撃で消し炭にしてやる。」

この時、もし気付いていたなら違った先が有ったのだろう。だがそれは仕方ないの言葉で片を付けるしかないだろう。

何故なら。

「申し上げます。鎮圧完了。お手数を掛けたこと誠に。」

「何を言っている。ん。」

背後から聞こえ放たれた言葉に反論して、その者を認知する。

「なんだ。お前は。」

「何だとは失礼ですね。その人はこの船の副艦長ですよ。」

「何を。」

「いえ、甲板に出て直ぐに必要な指示をして、外堀から鎮圧していくようにしてもらったのです。それも気づかれないようにね。現にほら周囲を見てください気づきませんか。まあ、あなたがこの強襲の頭とは思いませんでしたけど、これは僥幸としか言えませんね本当に。ふふ。」

問われて初めて気が付くとは愚かの極み。

周囲であれだけ暴れていた部下達が、知らず知らず組伏され拘束されていた。

「な、どうして。」

「だから言ったでしょ。」

「何を。」

「おや、頭は大丈夫ですか。言ったでしょ。指示を出してと。」

「このだが笑える。そう久しい。これ程に全てをもがれてしまうとは。」

「それで時間稼ぎをして本隊にですか。また無駄な。」

「はっ。俺はそんな事はしねえよ。それこそ俺の立場が揺らぐ。そんな愚行を犯すならこの場で命を断つ。」

「で、どうしますか。」

「どうするとは。何を指しているのでしょう。」

気概を無視して話を進める。

「いえね副艦長。このままこの愚かな人達を拘束して次の島で引き渡すか。それとも手っ取り早く赤の泉に沈めてしまうか。それよりこのまま適当な海域で解放か。さて、どれが良いですか。僕はいずれでも構わないですよ。」

優しくも涼やかな場違いな笑顔。


この示された前者二つはこの先を考えて当然と言える提案だ。だが最後の提案はなんだ。

そんな思考が二人に降りかかる。

「時間も無いので早く決めてください。そうですね。もし決めあぐねるなら、その人に決めて貰っても一向に構わないですけど。どうしますか。」

二人にとって更なる驚愕。

権限は副艦長に有るにも関わらず、決定権をもう一人に委ねるような発言。

「1つ、聞いても良いか。」

「ええ。どうぞ。」

「お前は。一体何を考えている。」

「言っておきますと無駄な事と、くだらない事に時間を割いて到着が遅れた場合の損失やらが大変なんですよ。あと言い訳も考えるのが面倒なんで。素直に言ってしまうと。」

立ち上がり、頭をくしゃくしゃと掻きながら冷めた視線を向ける。

「とっとと転がして放置している人達を回収して帰ってくれますか。手を出さないことを約束しますよ。反抗すれば。まあ判りますね。」

二人は、何故か笑ってしまった。

笑いたくないのにだ。

笑わずにはいられない。

その笑いが二人の答えだった。


片付けや修理に奔走する船員の慌ただしさを耳に、心地よくもない潮風を感じている。

片手には容器。

内容物はご想像にお任せだ。

「で、んく。よくあの人達を解放しましたね。普通なら軍法会議ものですよ。」

「いや、まあ。そうなのですが、艦長曰く、あの者達は解放の方向で、上の方で交渉して終わったと。」

「譲歩したか、それとも何かを引き出したのかな。」

「わかりかねますが、まあ艦長の事となれば大丈夫でしょう。」

「そうですか。で、肝心の艦長ですが今は何処に。」

「あ、それならほらアチラに。」

指し示された方向には、慌ただしく駆ける船員の中で負傷した戦闘員の手当てをしている白衣を着た人物。

「いや、あれ船医でしょ。僕が言ったのは。」

「ですからあの方がこの船の艦長モンスウェルム・レプト・ゲーテイスですよ。それも医師免許を持っている。異色の人物ですから。基本白衣着用してますし。初見の方々は気づきません。」

「ふうん。それじゃあ遅らせながら挨拶しておきますか。」

「え、あと、ちょっ。」

走り回る船員の中を、目標である人物に向かって進む。

視界に入る人物は、負傷者の重症度に分けて適切な処置を施していく。

その手際と側に置いている荷物に既視感を覚える。

白衣を着た艦長の背後で止まると。

「あ、たうわあっ。」

声を懸けるも向けられたのは視線でなく施術用の鋭い道具。

あと少し深く近づいていたなら無意味な負傷を貰っていただろう。

「ちっ。少し待っていてくれないか、患者が優先だ。」

振り返ることなく続けていく。

舌打ちに不穏な空気を感じないことも無いが、邪魔をして拗れるのも癪なので素直に従う。


収拾も収まり副艦長に後を任せ、艦長室で湯気立つ容器を各前に置いている机。

数は4つ。

見渡しても調度品は可もなく不可もなくと言ったところか。

一際目につく壁に取り付けられている海図。古く虫食いやシミが目立つ。

それに並ぶように似たような品が四方に貼られている。

「さて、負傷者の処置と無礼な者に対しての処置はあれくらいにして、先に謝礼を。」

「いえ気にしないでください。どうせ目的は僕でしょうから。まあ簡単に処理はしますけど。」

「ほほう。その自信は何処から来るのか気にしたいが、止めておこう。命懸けの生活は御免被りたいしな。」

「ふふ。そう言いますけど。」

「何か。」

「いえ、随分と()()()()()()()いるようですね。」

「ほほう。そうかい。まあそう言うことにしておこうか。で、どうしてあの荒くれに位置が知られたのか。それが一番の問題。」

「まあ単純に考えるなら。内通者ですか。」

「ああ。それが1つ。だろう。それを除外して考えられるなら、何があるかな。」

「そうですね。天文学的な偶然。ですか。」

「有り得ない話ではないが、それはないと確信している。」

「その根拠は。」

「現在、世界の海域は多数の人工島の乱立で流れが変わる。それも逐一に。もしそれらを理解できるなら生物としての領域を越えてる。さらにこの船にはあの船から移設した装置を施している。簡単には見つけられまい。調整も短時間刻みで行っているから不具合が発生すればその都度調整を加えられる。だからそんな偶然は有り得ない。」

「それは今この状態で絶対に見えるとか、本当に無いんだという事か。」

「そうですね。」

「ではどうして簡単に。ん。待ってください。そもそも、いつ襲撃されたんですか」


空気が淀んだ。

目に見えて艦長の肩に小さな雨雲が。

「て本当に見えてる。」

「う、お。おおおぉ。」

「ほ、本物。」

「んあ、ああ。すまない。これは固有技能でね。全く役に立たない不可解なものさ。」

上体を反らし軽く解すと雨雲が晴れ渡る。

「はあ。結論からいうと、分からないの一言しか出ない。」

議論の通り、襲撃された事は仕方なしにしても、見えない状態の船がどうして襲撃されたのか。

このことを解決しなければ休まることはないだろう。

「それは別に構わないですけど、何時ですか。」

「それが気づいたら。という事ですか。」

頷く。

「それは何かの力が働いた。そういう意味での話ですか。」

振る。

「では、気が付いたら襲撃されていた。そういうことですか。」

頷く。

「はああ。これは面倒な問題になりますね。」

見上げず容器を1つ持ち、席を立ってさらに部屋のほぼ中央へ立ち止まり、調度品や装飾品へ視線を巡らせ、ある一つに近づき内容物を掛ける。

当然と驚いて肩を掴んで引き離し嘆く。

「な、何てことをしてくれる。これは」

「はは。まさに灯台なんとやら。か。」

「本当に見えているようで見えていない。」

「誰でもとはいかないまでも、何時でも目にしていて、気づかない。それがこれですよ。」

打ちひしがれる艦長が見上げると。

表現に難しいが驚きと不理解と現実に思考が追い付かない。

「これ、はなんだ。」

「質問を質問で返答というのは失礼に値すると承知してますが、あえて言わせてもらいます。これは艦長の所有物ですか。素直な返答を。」

「頷く。しかない。」

「そうですか。ではこれは()から、簡単に言ってしまえば軍人になる前から所有していたのですか。」

振る。

「そうですか、では歴代に継承されていた、そういうことですか。」

「そうだ。これは代々受け継がれていた海図だ。」

「この出所を存じてますか。」

「詳細は知らされていないが命を賭しても守り抜けというのは絶対だった。だがこれは一体。なんだ」

艦長にとって何時も見慣れている海図が現在は消失しており、図面が表示されている。

「これは、もしかしなくても。」

「船の、設計図でしょう。正に灯台なんとやらですかね。」

そう艦長室で数ある調度品の中で異彩を放っていた壁に貼られていた海図やそれに如何にもな物達。

この中で虫食い染み黄ばみが一様に目立つ海図。

三人は何も感じなかったのだろう。

だが見た目骨董品のようなこの海図は光魔にしてみれば違和感過ぎる。

そう統一された調度品に埋もれているより、一層目立っていた。

だから1つ試しをしてみたのだ。

まさか噛み合うとは思っていなかったが。

「さて、この図面を見てもう用済みですね。」

三人の言葉が重なる。

そして。

何も思わず何を考えたのか火を着けたのだ。

止める間などない。

一瞬で燃え、灰塵と化す。

絶叫が室内を崩壊させる。


調度品すべてが粉の山となり、船の僅かな揺れで崩れていく。

「ぐ、ぐうぅ。くっ。」

「はあ、少しは説明をしてから事を起こしてください。じゃないと周囲が大変です。」

「聞いているのですか。」

「ん、あはい、そうですね。なら善処します。では壊しにいきますか。あ、何をと言うのは本当に止めていただきたい。話の流れで察してください。では行きますよ。ほら艦長さんも。いつまで泣き崩れているので。現物を壊しますよ。」


連れだって訪れた場所は船の底の底。その一画にある食料等を保管するための冷蔵室。

「この部屋はたしか貯蔵のために改造したはずだ。」

「ええ、そうですね。実は。と。説明より実際に見てもらうのが早いですね。では、反対のその奥の部屋へ入ってください。」

奥の部屋に入ると粉を吹き掛けられ、扉を少し開いておく。

暫くすると当該の部屋から物音が聞こえてくる。

確認のために施錠がされていると調べてある。

それも全員でだ。

その施錠されている扉がなんの抵抗もなく開いたのだ。

開かれた冷蔵室からは驚愕としかいえない、そうあの混乱を引き起こしたモノタチト同格者達が出てきたのだ。

一定集まると揃って階上を目指す。

そしてそれを繰り返し、上階が慌ただしくなるころには冷蔵室からの流出は止まっていた。

「さて行きますか。」

「上をどうにかした方が。」

「大丈夫です。もう手は打っているでしょうから。さ、早くしないと閉まりますよ。」

話している間に扉は半分ほど閉まりかけていた。

三人は慌てて入り、光魔は最後に入る。

冷蔵内の事を考えて気を引き締めていた。

その光景が。


三人が動けないでいた。

入る時には冷たい感じがしていたというのにだ。

普通に考えるなら冷蔵室の中であり、備蓄された食料や冷却しなければならない備品に紛れた装置のような物を想像していた。だが周囲の光景は室内とは別の様相を呈していたのだ。

波打つような壁や床。捻れる棚。飛び交うように漂う備蓄品。三人は理解ができずに自身の置かれた状況にも暫くは理解できなかった。なのにだ。

「さて二つの選択を示します。1つは、全てを潰して終わらせるか。1つはこの装置を壊して終わらせるか。」

返答はまたず。

「なので両方をします。なに、この人員なら簡単です。簡単に動けていればですが。」

動けないのに簡単に動いて喋る一人。

正確には動けないのではなく、空間の前後左右上下の感覚が狂っており、何を機転に足場とするのかそれすらも見えない状態なのでだ。それに対して普通に歩き目的の装置。つまりは転送装置に近づく。

だが、簡単には事が運ばないのが世の常だろうか。

「おいおい。何を言っているこのガキが。ぶらばひゅうううぅぅぅぅ・・・。」

悲しきかな。三人がどうにか打開策を模索する間もなく、それ以前に装置の番人とおぼしきモノは制止のための攻撃も、そして口撃もさせてもらえず、一撃で空間の飾りとなった。

「では時間もないので早く壊しましょうか。」

いつの間にか持っていた1つの装置。それを適当に宙へ放り出すと小さく震え。向かって下の部分から二本の突起物。次に左右から管が射出され目的の装置に取り着く。

射出された管がさらに伸び、反対側で双方の先端が連結され一本の長い管となる。

次に管の脇から更に細い管が多数放出され、装置を覆い尽くす。

最後に突起の部分が少し伸びて直角になり、二度の小突きのあとに深々と装置の深部。それは根幹たる核を貫くこととなる。

外から覆われ、装置の命たる核を貫かれてはもう修復不可能だろう。

そして変異していた空間は歪みに亀裂が走り、崩壊と閃光を伴って完全とはいかなくとも、一時の消滅となった。


世界の歪みが壊れると、全身を容赦なき極寒が突き刺さる。

震える四人は急いで出口を探すが。

見当たらない。

「ど、どういうことだ。た、たた確かにこの冷蔵室の。」

「ありゃ。ままさか、無理矢理の影響で空間が捻れましたか。」

「ちちちょ。ちょっとととも。そそそんなななの。きき、聞いてないわよ。ど、どどどうするのよ。」

「ううん。そうですね。さ、さぶ。一部が使い物にならなくなってしまいますけど。まあ。仕方ないですね。たしか何処かに」

体をまさぐるようにして。

「あった。さて、はああぁ。動くかな。」

操作して。

クズの山と化した転送装置の残骸からあの装置が出てくる。

だが何か初見より形が違った。

さて何処が違うのだろうか。

「見て何か違和感を覚えるでしょうが。さ先に申し上げますと、少々大きくなっているのですす。さてて其処を開けてくれますかか。崩壊させますので。ええ。」

手元の端末を操作するが震えているので上手くいかず、ようやく出来たときには四人が不味い状態になりかけていた。

装置はその場で数回飛びはね。そして。回転して。縦に回転して床に落ちるように打ち付ける。

「な、何がしたいんだアナタは。」

「ん。さ、さあ。知りませんよ。お、み耳を塞いで下さい。死にますよ。よ。」

「はっ。な何を」

反論するより早く彼ら彼女の全身を嫌悪感が走り抜ける。慌てて塞ぐと。その直後に。

「〔(〈『《ぐぎぐjgamtpwm25765431ぎたさばらやめはだえのさきば、あぎぎぎゃぎゃぎゃぎゃぎやぎわあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛・ピウピウピウピウピウピウピウピウピウぽびょ」〕)〉』》

「ふあ。は早く終わらせて。」

「〔(〈『《ぷくううぅ。」〕)〉』》

「笑ってないではよしなさい。」

「〔(〈『《に゛ゃだあああぁ。」〕)〉』》

何か話が通じているのか、いないのか。

装置は起き上がると出入り口の付近へ飛び付き、全身を瞬時に細分化して壁と同化させる。

「あ、離れてください。い危険ですから。」

言葉の通り。同化した部分から壁が融解していき、最後には小さな爆発を起こす。


ここで時間を戻そう。

そう四人があの装置を壊しに行く前までだ。


「では、後を頼んだよメクスくん。」

「承りました。では詳細情報はまとめて後程に。」

「ああ。それでかまわない。では。」

「ええ。」

艦長が離れ船内へと姿を消し、代わりに一人の幼さを残しながらも異質な存在が残っていた。

残って何かを探しているのか、周囲を見ているとある一点で止まる。

目的を見つけたのか。その場へと足を向ける。

慌ただしさなぞ気にする素振りもなく飄々と歩いていき、あの騒動で放置されていた荷物を回収する。

だが、荷物を肩に掛けるものと思っていたメクスは異常を目にしてしまう。

その存在は残した荷物に触れると。瞬時に消失させたのだ。

自然としたその動作に周囲は気づかずなに食わぬ表情で船内へと足を向ける。

そうして部下へと視線を向け指示を出そうとすれば。

「あ、ねえ。副艦長さん。一つ頼み事をしていいですか。なに簡単なことですよ。」

存在の声が背後から、それも直ぐ後ろから聞こえてきたのだ。

慌てて振り返ると近すぎる距離に存在。

少年が居た。

心で驚いたが表情に出さず。

「何ですか。」

「ああ。ふふ。はいそうですね。なに今から少しするとまた戦場になりますから拘束の準備を。まあ出口が幾つかありますので分けないといけませんが。さて、頼めますか。」

少年は真っ直ぐ淀みなくメクスの両眼を見据えている。

「わ、判りました。では手筈を整えておきます。時間は、」

「早ければそれに越したことはないないです。では。これで」

振り返り船内へと走っていく。

完全に姿が見えなくなる。

「ぐふぅ。やっぱりなんなの。あれは。」

崩れることはしなかったが、心身ともに疲弊してる。

深呼吸して気を落ち着かせる。

「はあ、あのような存在がいるなんてね。面白い。だから楽しいのだ。」

踵を返しながら帽子を正して、残りの指示と今後の指示を出す。

心なしかでなくその表情は嬉しそうで楽しそうである。


準備を整え指示通りに配置させたが、本当に戦場となるのだろうか。しかも、外からでなく船内からとは。

という思考は塗り潰される。

あの存在が言ったように船内から敵が現れた。

事前準備のおかげで今回は、負傷者を一切出さずに捕縛と拘束ができた。

無駄なく一人も逃さず捕縛拘束し、一息着こうとして。

爆音。煙。揺れ。

事態が急転したように感じた。


「ゲホッゲホッ。な、何よこれ。聞いてないわよ」

「ガッハ。ガハガハ。くぞ。な゛んなんだ。」

「うほほっ。ぼほっ。い、いきなりどうして。」

「はあぁ。まさか爆発するなんて思いもしませんでした。いえまったく。」

船内から出てきた四人の内、一人を除いて咳き込み、少々の火傷を負っている。

残りの一人は。他人事よろしく煤にまみれ服も所々襤褸だが傷を負ってはおらず、静かに後方から出てきている。

三人は出口から離れると崩れるように膝を折り項垂れる。

「さて、一つ目は潰しました。次の襲撃まで一時の休息としましょう。」

まだ咳き込む三人をよそに、光魔は一人で再び船内へと消えていった。

モンスウェルムやメクスも事態が上手く呑み込めていないが、だからというとなにもしないという選択などなく。的確に指示を出していった。

残りの二人は。

手当てを受けながら淀む先を見据えていた。

心なしか二人は死に近いような目をしていた。


用意された部屋から何かを叩く音がしている。

中では。

「さて、これからの計画ですが。最初から破綻。というか計画も何もありませんでしたけど。まあ皆さんのご協力のおかげで大体は交渉が上手く行き、あとは書類作成とまとめですね。」

『それもありますが、懸念が幾つか。お三方とも話しましたが。何か言い知れない感覚があるのですが。さて。』

『おお。俺のほうも何かと大変だが、順調といえばそうだが、心なしか順調すぎる感が否めない。最初の妨害から深刻な事態があまりに無さすぎる。一つくらいはあっても良さそうだがな。』

『そういえば。此方もそうです。妨害が局所的でありますが、大きな妨害がない。さて。』

『私の担当でも最初のような妨害は無いに等しい。何がある可能性も視野に入れておかないと。後々困るのは君の方だぞ。』

「だからです。さて。これから先には落とす方へと流されるでしょう。なので。ね。」

四人のため息が画面から同時に流れる。

もう説得しても無駄と理解している。

「では詳細は後で送ります。あ、そうですね。もし順調ならインディベルで合流しましょう。では。」

三人が了解して通信を切る。

『そういえば合流後で構わないのですが。願いたいことが一つあるのですが。宜しいか。』

「へ、あはい。いいです。それじゃ。インディベルで。」

最後の通信が切られる。

「ふう。送られてきた情報は、まあ、はあ。後で処理しますか。次の現場まで時間はありますから。て、なに。独り言いってんだろ。疲れてますか。」

ベッドから立ち、部屋を見渡す。

二度目の溜め息。

端末をしまい、部屋を出る。

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