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Heart of 6 〜赤と譲渡〜  作者: 十ノ口八幸
一章~転戦の日々~
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一章~存在達の現在地~

かれこれ数ヶ月が過ぎようとしていた。

ある地域では年度の切り替わり。ある地域では定期試験期間。

千差万別の世の中で目に入ったのは、大量の水を絶えず限界出前まで溜め込む水溜まり。

これまでの行動を思いお越し、予想外の何者かの手により、この場に強制転移させられた。

時間が何故か進んで記憶が欠落していたが、なにか納得してこの大きな水溜まりの側、休息という惰眠を貪り過ごしている。


さて到着して早々に現在地を地図で確認して、何処かの湖畔であるとはわかった。

なのでこうやって暇をもて余し胡座をかきながら湖面に糸を垂らしてほのぼのとしていた。

『が・・チューン。・・の発表によりますと極東での集団襲撃により周辺は物々しい空気がおおい、一時騒然となりましたが犯人は一掃され警部隊へと引き渡されました。

犯人達の犯行理由は依然不明であり、事件の究明が急がれます。さてブブツッ・・』

電源を切り、垂らしていた糸を回収してその場を離れる。

周辺に感じる視線に嘆息して、鉄の家に入る。



眠い。それが起き抜けの感想だった。

四肢は固定され腰回りも同じように施されている。

口は簡単に開けないよう覆いをされ、正直にいうと息苦しい。

揺れる体と吐き出したい、淀んだ空気が覆いを通り越して鼻腔を突き刺す。

声にせずくぐもるように吐き出す。

見える範囲の中に小さな窓が見える。それはずっと変わらない空を写し、見ては飽きて眠りにつく。



記憶では死んでいるはずだが。

と思い出す。

だが、目の前の人物達は自分に対しての誠意を示している。

この事から自分が何者なのかをこの者達は理解しているのだろう。

若干困惑の表情が読み取れる。

誠意を示して崩すように促すと、一人が何かを提示してきた。

それは情報が電子化された品物。記録専用で一回のみの使い捨てである。

躊躇もなく受け取り、自分の端末に読み込ませると内容が表示される。

曰く、この端末に表示された内容は指定されて者しか読めず。他者からは見えない仕様となっている。

曰く、下の時間に結びの存在を伴い出頭せよ。

不可能ならば別の手を孝ずる。

時間厳守なり。

これも不可能ならば連絡されたい。

なおこの装置は消滅する。

溶ける音が端末の挿入口から鳴り、消滅した。

懐にしまい、先を視線で促す。

それは一人がカバンを提出し、一人が旅券を差し出し、最後に替えの衣服を差し出し、その場で自害した。


鉄の家を溶かして沈め仕度を整え、最初の目的地である近場の町へと足を向ける。

先は少々長い。



振動が停まり閉ざされた扉が開かれる。

片目を開けて存在を確認する。

何かを喚いているが、言葉として認識できていない現在はその意味を理解しない。

微睡む意識を委ねるように溶けていく。

何かの装置が作動して全身に走る激痛は現実へと。

そして仕事の時間だと改めて認識する。

軽く吐き出し、重い体を立ち上がらせ外へと、静かに出る。

振動が空気を震わせる。

自身の一歩は現在、世界を崩壊させるほどの驚異となっている。

だが世界をどうのとは露にも考えない。

思考するは静かな時間を永遠に貪ること。

そう今はそれだけを渇望する。

四肢と腰に付けられたものから伸びる戒めは重く。自由を奪う。

頭をもたげ指示された地点へと歩く。

着いた場所は眼下に広がる森林地帯。その中で轟く音は聴覚を刺激し微睡みから抜け出すに十分。

何時ものように指示され、ただ声を張り上げ空間を震わせる。

終われば戻され長い震動の時間。

気がついた時からこれの繰り返し。

目的も目標もなく惰性で無情に(こな)していく。

何かが欠けている。

考えつく限りを思考してやはり。欠けている。

一定振動が思考を鈍らせ視界を閉ざしていく。

次は。何処なのか。



数日掛けてたどり着いた町は辺境にしては活気あり、所狭しと軒が連なっている。

端末を確認して関連施設へと足を運ぶ。

賑わいが町の栄華を物語る。

施設に到着して取り次いでもらい暫し待つと、現れた担当と名乗る人物に着いていき施設の奥へと案内される。

一室にて用意された物は1つ。

新しい鞄。

中は空であり、入れ換えて使用するもよし、他の用途としてもよし。

深く考えて恭しく頂戴してその施設を後にした。

喧騒が耳を掻きむしる。

風が強く濁っている。

波乱ありそうだと思い、次の町へと向かう。



揺られること数日して今度は別の乗り物に移送され、激しい音が少し続くと闇に閉ざされ、静寂が支配する。

耳に届く音は何かが叩くような。

これも少し続く。

そして再び光の下に出された場所は見るも無惨な焼け野原。

言葉は理解できずとも、状況から判断して瓦礫や何やらに埋もれたものを助けるために嗅覚と聴覚を利用するようだ。

まあだからといって満たされる心は、持ち合わせてはいないのだろうが。

抵抗することは無駄だと知っていたから素直に従い、指示された場所を知覚していく。

その全てが空振りだと示し憤慨すると考えていたが、思いのほか淡々と作業をこなしていく。


短時間で作業を終え、最後の地点で、内容物を吐き出したい衝動が思考と肉体を襲う。

それだけに酷い光景だった。

原型を留めていたものは僅か。

ほとんどが何処かを欠損しているだけならまだ良い方だろう。大部分が捻れ切れたり微塵となって混ざりあっている。例外なく生きているものはなかった。

存在がそれだけなのだ。

連れていった者達は吐き出すだけでなく卒倒し、中には現実を受け入れられず発狂したものもいた。

この場で何をさせようというのだろうか。

そう思考してある地点まで誘導された。


足がすくむ。

それだけでなく何か嫌な感じ。

違う。心の底から滲みでるこの感情は。

吐き気をもようす。

後方にいた者が冷めた視線で肉体を強打させる。

鞭が弧を描き、さらなる一撃を入れられる前に指示を聞き入れ、該当の場所を知覚していく。

その場所にはえらく強烈な不可視の何かが感じられ、その場所を目線で合図した。

急いでその場所を掘り返すも何もでず。

強打の連続で器が悲鳴を上げるところだった。

その後収監され別の地点へと移動させられた。

疲弊が意識を、塗り潰す。



長いようで短い次の地点へと到着した。

前回より少々大きな町だがその反面だろうか。治安に関しては不安な部分が見られる。

破壊痕の目立つ建物。

赤が瓦礫や地面に大きな染みと溜まりを作っている。

鼻につく不愉快な臭い。

自然と表情が歪む。

臭いを遮りながら進むと、大きくそれでも他の施設より豪奢な造りの建物を見つけた。


心地よいような、擽られるような気持ちのままに起き上がると、湿り気を伴う何かが膝に触れる。

膝の上には大きな布とさらにその上には肌触りが余りよろしくない布。

扉が開くと数人が入ってきた。

一人が話す。

詳細なことを説明され。納得する。

驚くことに此方の情報も調べられていた。

なら話は早いと幾つかの情報を対価に足の用意を頼んでみたが。

拒否され。敵対勢力との交渉材料の1つなのだと言われた。

溜め息を吐くまでもなく。

了承して身のあり方を示した。

脳裏に過るは期限のこと、でなくこの先の処理方法か。

視線は自然と一点を捉えていた。



連れられた次なる場所は海上のそれも艦隊の一隻だ。

その目的は知らないし、知ろうとも思わない。

さてその艦隊が追っているのが数十隻の船からなる船団。

抵抗は微々たるもので出向く必要もない。

それは数に勝ることが最大の理由だろう。

何かのために同乗させられているに過ぎない。

逃げに徹しているのだろう、ようとして船団に降参の色は見えず、しかし次第に囲まれていく。

最初は多方面に逃げていた船団。だが突然に此方の包囲のもっとも厚く密集している部分に向けて一点を突破してくる。

その行為に反応が遅れ瓦解しても攻撃の手を緩めず、数隻は半壊させたが逃げられてしまう。

ふと目視だけにあらず、自慢の感覚をも感じ取ったもの、それは言い知れない違和感と、いつかとは違う別の感情が溢れてくる。

世界が歪むように見え、そして目標を失ってしまう。

微かに届く音は見えずとも全身に響く音は心を蝕む。

一応祓うために吠えておく。


一息ついてさらに一時間にもならない。

突然に船団が現れた。

現れて此方に対して砲撃してくる。そして一隻沈める毎に距離を離し、近づく戦艦から沈めていく。

そうして艦隊は崩壊し、その被害は予想を越えるものとなり、最終的には沈む艦隊を見ていることしかできない。

報告は詳細になされた。

それと同時に次なる現場へと移送されていく。



何日かして件の事に関連しているのか施設を数度変えられていった。

その間には手厚い施しで不自由なく施設では暮らしていた。

端からみれば。だ。

では、本人はどうなのかと問われれば。


くそっ少しは何か無いのかたわけが。


他は聞くに絶えない言葉の羅列。

省かせてもらおう。

そして、敵対勢力との交渉は素直に進み、情報とそれ以外を対価に交換された。

その組織は人拐いを主とした組織だった。


目を潰され。神経を引き抜かれ、炎に炙られ、煮えたぎる湯に放り投げられ、一定感覚で水に沈められ、鼓膜を切除され、臓器の一部を取り出され。

という酷い行いを平然と、こなしていく人拐い達。

毎日、悲鳴が止まない日はない。

耳を塞ぎたい思いと聞き続けていたい想いが混ぜ合わされ、言葉にできない感情が支配する。

体が意識とは関係なく震えてしまう。

その姿勢を見て笑うように側により耳打ちする。

その言葉に大きな言いようない感覚が支配していく。

悲鳴は続いている。



全身を撫でる感覚は久しく。心が穏やかに落ち着いている。

今は急遽もうけられた安息日。

目覚めると開口一番に安息しろ。ということだった。

だが、これという目的などなく。適当に敷地内を彷徨いていると、良さげな場所を見つけて居座っている。

程よい風に全身が震える。

軽い欠伸も出てしまう。

至福の時間だ。

これまでの疲労を淵へと引き落とす。



数度目の交換で妨害があり、救助された。

他の人達に紛れて一般人を装い、震え涙し、軽く吐きもした。

こうして膝を折りながら地面に倒れまた吐き出した。意識を鮮明にしながら呼び掛けにも言葉としての体裁を軽く壊して、震えを伴わせて顔を背けて全身の力を抜いて眠る。

腕の軽い痛み。足首と手首と胸の数ヵ所に冷やい感触はこそばゆく、笑いたい衝動を抑えるのに多少は苦労する。


耳に届く声を要約すると、倒れた自身を運び込むための道具の取り寄せと台車の用意を。との言葉。

運び込まれて扉を閉められる音。

動く揺れ。

揺れと寝息と話し声と鼻歌。

感じる視線に無視を決め込むが、耐えられなくなり、起き上がると視線の主を見る。

膝に手を添えて深々と頭を下げられ罵られた。

もっともその言葉を無視して話を進める。

時間を要した理由からこれまでの経緯とか。

そういった報告を述べながら手際よく処置をしていく。

騙せなかったことには無視をして、向かっている場所を聞いてみる。

それは懐かしくもある古巣という中継地点。

車両は進む。



あの海上包囲作戦失敗から数日。到着した次の場所は厚く高い壁に囲まれた土地。

いや、国と言った方が的確だろう。

その場所では暴動が起こっていた。

原因は知れず、鎮静を計っていたが上手く行かず、水のように涌き出て暴動は過激さを増していた。

そんな理由とは関係なく、同じように仕事をしていく。

片す傍ら幾つかの資料を集めそれらを本部に運んでいく。

何か視線を感じるが気にしないこととして回収と収集。

終了したのは全てが深く夢に落ちた時間である。

当然といえ、他は眠りについていた。

目覚めは諍いの音。

繋がれた場所から黙視と臭感知で一部が暴動を起こしたと推測する。

答えは合っていたのだがそんなもの、瞬間の暇潰しにもならず、程なくして鎮圧されたあとは残りの作業。

この日は半日にも充たず終わり、次の場所まで揺れに身を委ねていく。



到着は何日かしてだった。

瓦礫の山々が視界を埋め尽くすその景色はなんというのだろうか。

その山々の間を歩いて百を数えた時に地面が沈んでいく。

慌てず沈みに任せて全身が沈みに尽くすと景色は一変。岩肌が目立つがその場所は立派な基地である。

金網に囲まれた昇降機が最下層に到着。

扉が開くと両脇に長い人の壁ときれいな敬礼。

促されてその道を進む。

向けられる視線は多様にして重複する感情がのせられている。

気分は沈んでいく。


通された一部屋では高官が待っていた。

説明されたのは暫くこの基地で養生すること。

そして片割れが後に合流することを聞かされた。

不思議と何も感じない。



揺られ揺られて次の場所は山の頂き。

その廃墟。

最初に通った赤い簡単な門。

その奥には舗装された石の畳を敷き詰めた路。

さらにその終着地には完全に崩落した建物。

その側に小さな小屋みたいなもの。

その前に繋がれ放置された。

翌日には迎えに来るとか宣い、帰っていった。

静寂が周囲の木々が奏でる音を一層際立たせる。

欠伸が出る。

静かだとしみじみ。

何もせず何もさせられず。のんびりと時間が過ぎていく。

頬を撫でる風に鼻腔を擽る木々の香り。

大小の獣声。

長閑な時間を堪能して眠りに堕ちていく。


夢であると理解していた。しかし妙に実体感が伴っているように見える。

ああこれは古い記憶の1つ。

同時に連れられて、同時に放り込まれた何かの施設。

その施設での実験で肉体から剥がされこの状態になり、思考の一部を支配していた。ある事を目的に探し回り、達成させて肉体に戻された。

あのこれまで味わったことない疲労感は、二度と味わいたくないと心底思ったものだ。

ん。なんだ景色が揺れ。


夢から目覚める揺れは。眠っている間に運ばれた車両。

変わらない揺れと変わらない窓の向こう。

溜め息も出ない。

諦めて次の場所まで眠ることとする。




変わらない衝撃で目覚める。がこれまで感じたどの感覚よりも優先される。そう。

一気に目を開けるとその目には懐かしく狂おしいまでのこれは。

優しく抱き締められ。

瞬間に欠落した記憶が呼び覚ますと小さく鳴き。

これまでを埋めるように抱きしめる。

臭いを嗅ぎまくる。

周囲が引いている。

変わらぬ二つ。


それから遊食浴寝。片時も離れない。

それは降された勅命の時もである。

怒られようとも離れない。

局長は諦めて内容を説明する。


『これよりある戦地に赴き、我が軍の底上げを主任務とし傍らである目標を破壊してもらう。

追ってその内容は伝達する。以上。』


二つが目にしたのは激戦も激戦。死屍累々。空も大地も眼下に広がる戦場は敵も味方も入り乱れた乱戦。砲撃で地を抉ると、別地点では力の応酬。さらに別地点では獣同士の流血。

空を飛ぶものは優位に立っていたが、一人が暫くして某かの強大な何かに潰され失墜。それを契機に味方が敗走する。

だが重複の咆哮を浴びせると敗走の足は停まり、反転すると攻勢に出る。


上手くいき、相方が戻ってきた。もう1つの任務。情報の収集と敵の施設破壊。

最後にもう一声を出す気でいたが、双方の全身から悪寒が駆け巡る。

何処からの原因か探るまでもなく、切り裂く音が空から響き地表へと何かが堕ちていく。

発令するまでもなく、周囲の者達は逃げていた。

二つは逃げても良いが、仲間である者達が安全に逃げられるように停めるしかない。

底に眠らせている力を合わせ、増大させた聴こえない声に乗せる。

これをすると疲労がすごく、一月は動けなくなるが仕方ない。

このおかげで遠方も手伝ってか気づいていなさそうだった。


そして二つの前ではあの楕円の塊から現れた存在から発する力。

《狩りとりの超禍》は近くの命を奪い、離れていようとも時間経過により削られていく。

此方は防護の力を発言させているが。

それと、何もない状態で相対しているあの存在はもう長くないだろうと二つは考えている。

その考えの通り、通常なら知覚できない移動で間合いを摘め、相手に一撃をみまう。

《吸命》

命を直接吸い上げ食らう狩り技の1つ。

どうやらあの目的はあの存在だろうと、そしてそれは終わりを告げ、あの存在が戦場を離れれば二つはすぐに逃げるように準備をしていた。

そのはずだ。

しかし、二つの目の前で有り得ない事が生じた。

そう食われた存在が。

一度完全に失われた存在が事もあろうに、剥がすことが不可能なその一撃を外したのだ。

そして次の行動が二つをその場に張り付けた。

大きく大気を吸い込み一気に吐き出す。

《死の大気》が一人を狙うが、有り得ない動きと速さで背後に回り、なにか無駄に誉めているように聞こえたが、その次に放たれた攻撃は全て切断され、よくは見えなかったが、世界が切り刻まれた。

それは存在が地に落ちるように器を瓦解させる。

だが気づくと何も無かったかのように世界に存在していた。

そして何かを話すと1つは動くものない、一人を除いて、戦場から離脱した。

なにか言い知れない。本当に言葉に上手くできない何かに縛られ、残った存在が()れるように見えると、二人は迫る力に防護壁ごと器を刻まれ、意識が同時に消し飛ばされた。

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