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Heart of 6 〜赤と譲渡〜  作者: 十ノ口八幸
一章~転戦の日々~
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一章~牢屋と捜索~

三隻の沈没寸前と云われれば誰も反論できない。

その三隻は旧マダガスカル島・属島エゥプホールビアに漸く着岸できた。

まあ降りた直後に、全員が何れかを傷つけられ、拘束の上に処置され牢獄へと連行されるのだが。

次いでとばかりに乗っていた残りの船全てを沈められた。

その光景を強制的に見せつけられ、絶望するのは光魔を除いた全員。それは残った元従業員達も当然ながら含まれる。

絶望のままに意識を消失させられた。


小さな振動が彼ら彼女らの意識を呼び覚ました。

一人が起きると、そこは間違いなく牢屋。格子の向こうは同じ造りの牢屋が並んでいた。

一人が何かを話すと、連鎖するように言葉の濁流が空間を埋め尽くしていった。

乾いた音が耳に届く。

呼応するように言葉の濁流は鳴りを潜め、代わりに冷たい視線が一点に注がれる。

「この場にいらっしゃる皆には心からの謝罪を。」

現れて脈絡なく謝罪する。

後ろの部下達も同様に。

「唐突だが本題に入らせてもらう。君達は解放する。その後の行動に我々は一切関与しない。これは決定事項なので反論は受け付けないものと心得てほしい。では今から、そうだな。この時を刻む道具が鳴り響いたと」

カチッと音がして、凄まじく鳴り響くとその音量の為か、天井から粉が降ってくる。

「おっと、失敬。どうやら設定時間を誤ったようだ。だがこれも約束だ。これより一斉に諸君を解放する。」

その言葉に偽りなく、全ての鍵は解除された。

そして、先ず始めにしたことは。

「あの無礼で野蛮で横暴で、何物も顧みる行動もみせず我々の故郷を無慈悲に消滅させた腐れ外道は何処に居る。」

皆が全員。罵声を含めながら目的を要約するとこのような言葉になる。

それは間を置かずに叶えられる。

「え、皆さん解放されたんですか。なんだまだ時間が在るものと思っていたのに。」

その言葉の発信源に向けられた総ての視線の先には。

片手首に嵌められた鈍く光る鉄の腕輪。

片手に端末。片手に食料を持ってそれ以外は普通にその場に存在しているのだ。

その姿を認めてしまうともう止まらない。挙って押し寄せ質問攻めを仕掛ける。

それに対して。

「ああ。この場所では少々手狭なのと、この人達に迷惑なので場所を移した方が得策と云うか。」

それに構わず浴びせる質問の雨。

「続けるなら構いませんけど良いんですか。こんな埃まみれ、黴まみれ。な場所で。」

止まる一同。

一時質問は止まり、牢屋から出ていく。


場所を変えて。

静寂とは程遠い騒音と似か拠るその光景を、誰が止められるのだろう。

そう一人を標的に質問の豪雨を浴びせている。

その浴びせている者達には殺意より不理解の解消を優先させたい。

そういう意志が見えている。

対して浴びせられている者は、視線を皆に向けながら手元では別の操作をしていた。

「はい。では全てに答えるには時間が掛かってしまいますし、そうですね。では、最も多かった質問から。

質問一。『我々と同様に拘束され、いやそれ以上に過剰ともとれる多重拘束で別の場所へ搬送されて今まで何をしていたのか。』

ですね。」

続けられる手元の操作を止めず。

「この問いの返答は。お、来ましたねでは。」

そして立ち上がり何処かへと質問に答えず出てしまった。

その数秒して我に返り討ち、後を追いかける。

出て左右に視線を移すと片方に後ろ姿が見え、部屋に入っていく。

それを認識、追いかけるように扉を開ける。

『此方は一部の反乱はあったが、件を引き合いに出し双方の一応は歩みよりと成ったぞ。引き続き終戦協定締結まで交渉していこうと思うが難航はするだろう。ではこれにて』

『こっちは大体は片付いたが少々の処理を残して次への準備を始めている。そうだな早くても今日明日辺りには終わるだろう。では彼方に着いたら何れ。』

『おう。思ったより面白くはないな。まあそれでも資料作成だけを残して大方は終わらせた。俺の目標も近いな。じゃあその内に。』

『ふふ。私にこのような仕事を押し付けるなど面白い。ですが、その幾つかでまた興味深い物を見つけたので資料と合わせてお送りしましょう。では。』

全ての画面が一度切れる。

1つの部屋の壁だけでなく、天井や床にも設置されている複合射影装置。

切れた幾つかは除くとして、残りに映し出されていたその人物達は驚愕の一言に尽きるだろう。

「あ、来ましたか。あの答えはご覧のように。なに本来の仕事は仲介なんですけどね。まあ今は分散してこんなことをしてます。ここ数日何も出来なかったので、では次の質問。の前にこの方達との交渉中なので続きは終わってからで。」


半刻して戻ってきた。

「お、欠けずに残ってますね。では。

質問二。『実験島ムイリルを含めた属島。これを廃島にした理由の理由(わけ)。』ですね。」

用意させた射影機に表示する。

「これはあの島での起動時から滅ぼしまでの全記録です。さすがに古い記録を発掘もとい復元と収集するのには時間が掛かりましたけど。」

「な、これは都度消去対象に。」

「あ、なんだ生き残りがいたのですか。まあ、それは上層部分の方だけで拡散分までの消去はされてなかったんですよ。なのでほらこの通り。」

画面を操作盤で幾つもの画面に分けて表示させていく。

「こ、これは。なんだ。」

1つの画面には何処かの地下施設での何かの取り引き現場。

それも一対一でなく多対多の大規模な取り引き。

「はあ、適当に映してみればこれはまた、随分と古い、そして根底から覆る漏洩現場。まあ、これが現世界共通の研究開示であるならば問題ないのですが。場所と表示されている時を見ても。」

「間違いなく、かの漏洩事件。か。」

「ご名答。と言うべきですか。元島主は知っていましたよね。この事を。」

「む、知ってはいたが、な。」

「確たる証明できるものが無かった。それと上が消したのでしょうね、こういった類いの映像を。ですが一度流れた情報なんてそう簡単には消せないのですよ。ご存じですよね。」

操作盤を操作して、分割画面の中で先程とは別の画面を幾つかに同時に映し出す。

「で、これが最大最悪事件。リレンフェンシスでの工作の様子です。これは唯一現存する生の記録でしょうね。では、どうぞご覧下さい。」

映し出されたその画面にはあの地下施設よりも明るい場所での二人の会話から始まっている。


不快というしかないその表情は、たった一人の前で暴かれた。

証明された漏洩と工作の全てを記録したあの映像で、その場から逃げだした一人。

それが。

「誰だ。」

「知らない。」

と元従業員達が口々に騒ぎ始めた。

そう、逃げた者はリレンフェンシスから持ち出された登録にはない。

存在しない存在。

何度調べ直しても存在していないのだ。

その存在は。

「ま、待ってくれ。本気で。そんなほらなあ、そんな冗談は止めてくれよ。」

最初は焦るように話すその存在。

対する皆の冷ややかな視線や戸惑いに耐え兼ねたのか、それでも跳ね退けるように近くの者に質問をしていく。

が、さもありなん。全て悉く一刀両断の如き言葉、態度で一蹴されたのだ。

泣き崩れるその者は絶望を表層に開かせ、皆の前で逃げるように消えた。


波が護岸を打ち、返しがクズを拐う。

誰もいない場所の丁度、そう満潮になっても永遠に乾く場所に姿を表したモノ。

それは少し浮いた場所から出現し、静かに降りると口を抑えくぐもる。両頬へと滴を流す。

「くきょはひゃひゃ予定外な事が生じたがくきききッ。いい土産が手に入ったものだ。はあぁさて、逃走は続いている。ふふん。なればこそ、だ。何れいや違うな。直ぐに追っ手を差し向けて来るだろう。なら早く連絡をして、戻ろうか。」

その場で小さく跳ねる。着地の音は波に拐われて聴こえないが、元からその響かせる音がなかった。


しかしどうして精神汚染が解けたのだろうか。組織でも破格の汚染薬のはずだ。

くひぅひひ。まあ終わった事を何時まで悩んでいても無意味。なら進もう。


時間にして随分と進み、島では捜索が続いていた。

云わすもがなあの衆人環視前で消えたあの者を探しているのだ。

一向に見つかっていないが。

「どうなっている。この島はそれほど広いわけではないだろう。本人でなくとも取っ掛かりだけでも見つけられるだろう。どうして見つからない。」

かれこれ数時間は経過しているだろうか。

述べられているようにエゥプホールビアは広いと云えば広い。が、この世界では本島含めた島の至る場所に記録装置が張り巡らされ死角さえ無きに等しいとさえ言える。

これは特に研究を主目的にしている属島は尚更である。

なぜなら最終的には公開を前提としているが、何かの拍子に途中のそれも、危険領域を取り除いていない研究は重要に隠さなければならない。もしこれが漏れたなら大規模な災害が世界を駆け巡るだろう。


昔ある危険因子を内包した研究段階の情報が漏洩し、その後に略奪され島とその周囲が消滅したのだ。住民諸とも。

その数日後に犯人とされたモノ達が捕縛の形として当時の情勢やらを考慮して簡易な裁判をへて極刑。

世界配信され執行された。

この映像、現在は抹消されている。

これは昔の属島での話だが。

こういう経緯により、これ以降厳重な漏洩対策が施された事は云うまでもないだろう。

多少過剰な弁も否めないが。

話が逸れてしまったが、そのような経緯もあり正体不明者を躍起になって探している。

重要な情報が漏洩しかねないからだ。

それらを防ぐための記録装置という監視なのだ。


崖から突き出した部分に一脚の椅子が海を背にして置かれていた。

その前に複数の人物が思い思いに寛いでいた。

一人は寛ぎ過ぎているようにもみえるのだが。

「さて、この島での問題は元から解決しており、その先の問題は当事者同士だということで。では、さらに先の話をしようか。」

と誰かの言葉。

視線は一人に向けられる。光魔を含めずに。

光魔は尚も端末を弄り、山と積まれた本来の仕事を処理している。

その表情に感情は乗らず、機械作業のように進められている。

その光魔を筆頭に、元管理長代理アルマエイル。上位者(自称)ヴァン。リレンフェンシス元島主及び元世界府庁最高位決定機関長バクスリハメンヴィス。その血縁者旧解放実験島・ムイリル管理者アレイン。大罪人旧部隊副隊長ヘーリスト。最後にエゥプホールビア島主ウォタル。

「それは良いです。」

処理が終わったのか端末を仕舞う。

「で何故この様な極地に、連れ出されたのでしょう。それと痛いので外してくれないですか、この拘束具。着けるのはこの九牢(きゅろ)だけのはずでは。」

実はあれから捜索とは別に連れられ、羽交い締めの上に拘束され、追加の拘束具を着けられて、この崖まで連行されたてきたのだ。

「ご免なさい。この場に連れてくる事に同意はしましたけど、まさかこの様な事態に。」

「ああ、いや、気にしなさんな何時もの事だし。」

何時もの事と片付けて良いものかどうか。

「でだ、拘束を解くことは後にしても何かを聞きたいが為に、この場所まで連れ出しただろう。」

「ほほう。その言い方からして、やはり貴方なのですか。ならば話は早い。」

「早いか遅いかは知らないが、先に言っておく。」

波が聴こえる。

「この場に居る全ての者からの質問に対して、完全黙秘する。」

構える。

「理由を聞いても。」

「簡単だ。そんな、時間は、正直、ない。」

最後の言葉と同時に拘束具を壊した。片手の九牢は残して。

乾いた音と波が共鳴されないが、鳴る。

「なあ島主。もう捜索は引き上げてくれないか。あと通信機を貸してほしい。」

「な、それはこま」

「何、この島での全てを情報を無利子無条件で譲渡するので引かせてください。じゃないと邪魔で仕方がない。時間も限りがあるし。無駄にはしたくない。現に其処の元のお陰で無駄な仕事と時間を労した。まあそれでも掃討の内1つは叶えられたが。」

「そ、それでも我々には」

「言っておきますが、あの手合いは普通には見つからない。そう言った知識を有しているからな。で時間を浪費すればその分をあのモノにとって時間を与えてしまう。それなら任せてもらおうか。気に食わなくても折れてもらいたい。この時間も惜しいので。」

反論の言葉がなく、肩を落とす。

妥協したのだ。

「ふほほほ。使うか消滅武器を。」

「さあね。では、島主ウォタル。捜索は引かせてください。」

「わ、解った。だが、このまま。」

「逃げれると思っているのは彼方でしょう。」

ウォタルが通信機で伝令をする。

「時間が掛かってしまうが。」

「そうですね。死にたくなかったら早く帰投するようにもお願いしますね。ではこれで。」

「何処へ。」

「見られると恥ずかしいので、」

とか言いながら離れる。

これを止められようとは誰も思い至れない。

「なんて、ただのこじつけかね。では破壊という名の捕獲といきますか。」


皆から離れ整備された森のその脇を進んでいく。と同時に一同戻って持ってきた荷物を肩に掛け直して中を探る。

先にはあの崖と同様の断崖が見えてくる。

「ああ、これが終わったら暫く休息しよ。うん。そうしよう。」

取り出した物は単眼望遠鏡。

荷物から取り出している事を鑑みても、普通の品とは当然ながら別物だ。

「ほう、これも含まれてたのか。まあ、使いようによっては世に大きな弊害を(もたら)すからな。さてさて、目的は、何処かねぇ。お。」


時は少し遡る。

そのモノがあの場より姿を消失して別の地点。其処はエゥプホールビア西区域の地下倉庫。その中での誰も知っていて知らない場所に身を隠し息を殺して時を待っている。

この場所は誰に知られない、正確には知っていて見えていて知られていない空間。それも当然の事に思う。

秘密裏に設計された隠し空間なのだから。

微睡む意識の中で、この仕事が終われば大切な人と久方ぶりに会えることに、自然と湧く高揚感は抑えられそうもない。だが敢えて抑える事にする。

突如外から足音と次に扉の開ける音、更に家捜しのような音。緊張が走る。普通に知られていない空間であっても、何かの拍子に暴かれる可能性も否定できず、体が強張る。

最後に溜め息で足音がして扉を開閉して音を響かせて封印して終わらせ遠ざかっていく。

一息着かずその空間から再び消失していく。


その後転々とエゥプホールビアを移動し、その先々で捜索隊員の愚痴やらを詳細に記録していき、最後に現れたのは船の中で本当に一息つく。

この船は秘密裏に組織から用意されたいざと云うときの船。来ないことを願っていたのだが、本当に使うとは欠片も思っていなかったのだ。

この船は絶対に見つからない自信と確信がある。なので時間まで眠ることにした。


手元にある端末が鳴る。

それにつられて意識を現実に浮上させ目を覚ます。

伸びをして時間を確認すると時間が過ぎていた。慌てるが船は自動で出港している。

端末を拾い画面を点灯させると知った名が表示されていた。

通話を押して連絡する。

時間も置かず相手が出る。

「こちら名無しの存在。何か。」

無意識に立ち上がり敬礼している。

『定時報告を忘れているのですか。』

「おや、お懐かしい。あなた様からとは。何時以来でしょう。」

『答えなさい。』

「いや、そうですね。これだけは最初に申し上げておきます。異常事態につき当作戦を放棄。これまでの情報は纏めて送信しておきます。」

『ほう。それはキミの手に余る程のことかい。』

「ええ。僭越ながらといいますか。」

『なら早く纏めて送りなさい。詳細は戻ってからで。』

「ええ。では。これにて再び会えるまで。」

通話は切れ端末を適当に放置する。

深く一息つき、気が付くと全身から汗が出ていた。

「きひひ。端末を介していてもこの威圧。恐いな。」

正直、足が震え膝を折りたい気分。だが足掻きという一種の傲慢でどうにか立っている。

見据える先は海面と空の狭間。その向こう側。

これで安心して戻れる。そう考えると船内に突如響く警告音。

操作盤には正体不明表示と現在の船の様子が表示されている。

その表示に軽く困惑する。

その理由は二つ。

1つは、正体不明の何かに対して。

もう1つは、船の状態に対してのこの異常事態。

「正体不明は除外しても、どうして現状の船の位置を特定できる。はっ、まさか、索敵。いやいや、あれは弄って正確に判断できないようにしたはずだ。なら獣や虫の感覚を。いやそれもあり得ない。簡単には関知出来ないように設定しているはずだ。ならどうして。正確にこの船を。」

理解しがたいこの状況は混乱を増大させ、判断を狂わせる。

その時間で正体不明は、船を外れ通り過ぎ遥かな先で水柱を上げる。

これを見て混乱した思考は冷静さを取り戻し、船に施された装置を解除して、その分を速度に回す。

馬鹿でも理解する。

あれはわざと外したのだと。次はない。確実に当ててくる。

だから速度を出した。

だが、これがいけなかった。

直後に船体後方から衝撃が全体に走り、その衝撃は船体の表面を走る亀裂となって表れる。

海面から浮く感覚を覚えると、視界にある窓から直接その海面が窓越しに見えていた。

そして船室で全身を幾度も強打し、剥がれた一部が太腿と肋骨を貫いて目の前が黒に染まった。


「なんだ大分離れてるな。ほう、さらに見えないように光学迷彩か。まあ、妥当だろうな。普通ならだが。これ終わったら本当に戻ろ。」

腕を伸ばし手を探るようにして当該の物を掴み引きずり出す。

「もう予備は数えるしかないし、まあ、良いか。では、先ず始めに。」

構えて縦に一閃。

通常見えない船のその横を走るように力は加速する。

遥かな先で柱を創造し、船は予想の内である光学迷彩を解除して加速する。

次の力は一撃より軽く、その分重ねるように放つ。

そして船の後方に見事命中し、その加速の勢いと当たった勢いに船は瓦解と同時に縦の回転が加わり海面を跳ねて大破する。

借りた通信機を起動させ伝える。監守長へと。

「ああ、監守長かもし違うならその場で待機してもらいたい。てか沈黙は肯定と捉えるが。」

『す、すまない通信機の調子が悪くてな。』

「そうすか。なら代わってくれますか監守長に。あ、何をとかいう反論は拒絶させてもらう。時間が在りませんから。言葉に詰まるなら早く代わってほしいな。」

雑音がして。

『はい。変わりました。』

「本人ですね。では手短に。島から北北東の地点に転覆させた船が有ります。急がないと逃げますよ。では。」

監守長の反論を聴かず切り、単眼望遠鏡を荷物に仕舞う。

「では、戻って出港手続きしますか。」

「それは正直なところ困るんだけど。それに支障を来してしまった。修正しないと。」

「んん。この声。いやあの子供は管理されてるはずだ。まして簡単には関知を、心を出せないように多重の施錠を施して入館させたからそれはないか。なら。」

振り返ると誰もいない。

だが再びの振り返りと同時に腕をしならせ振り抜く。その途中で硬いようで柔らかな何かに触れる

「ひゃゆはあ。」

間抜けな空気の抜けるような声が聞こえる。

完全に向き直ると、頬を抑え項垂れるように地面に手を着いて震えて表情は見えないが、水滴の濡れた地面。

泣いているようだ。

「な、なんで殴るの。」

「いや捻るのかなと思ったもので。普通に当たるとは思っていないだろう誰も。」

『ふふ。そのタニンゴトのようなモノイいはオモシロくないなショウジキ。』

「そうきたのか。なら話は、早いのか。それは別にしてもお前は本体じゃないだろ。どうしてあの時の」

『ふふ。オシエルと。』

「教える義理はないな。で俺を潰すのか。その計画とやらのために」

『ははは。もうシュウシュウのツかないトコロまでキてしまったからね。ナりユきにマカせるさ。タショウのホセイはカけるけどね。』

「大体は終わったからか。」

『ザンネンながらキミのせいでヒツヨウなショルイがソロわなかったからね。ツギに』

「好きにすれば」

『おや、ホウチするのかい。』

「するとして俺に何の因果がある。」

『コウカイ、するよ。カクジツに。』

「コウカイしたくないな。正直。」

『それがホンシンか。ではコンゴ、カカわらないで』

「それは無理だろ。これからの先々、その計画とやらには。止めよう馬鹿らしい。で現れたのはそれを告げるためか。ならさっさと失せろ。相手をする気もせん。」

『ふふん。そうだね。ならこのバはミをヒこう。ではイズれのトキにサイカイを。』

「願われても嫌な顔しか出来ないな。」

『んん。「ではこれに失礼する。」

結局顔を上げず項垂れた姿勢のままに消失した。

「今は構うのも面倒だし、まあ実験を邪魔できたのは良いのかな。」

荷物を背負い直し足許が縺れる。ふう。と息をしてそのまま森の脇を通り抜ける。


戻るとまだその場に全員が残っていた事に軽く困惑しながら、撤収と次への出港準備を頼んで戻る。

その後、事態の収集を見届けて用意された部屋で死ぬように倒れて覚めない眠りについた。


翌日。港にて一同が会して光魔達を見送っている。

「情報は貰いましたし、航海中の人員と食料も運び終えました。後は詳細に調べて報告しておきます。それとあの不明者に関しては、何か解れば同じように送ってください。」

「了解した。では、此方が次の島への航路だ。順調に行くなら5日だろう。」

順調に行ければだが。

受け取り端末に読み込ませる。

何故か端末から放電現象が発生したが直ぐに収まり、適当に仕舞う。

再度確認して船に乗る。

「ではお別れです。」

「そうですね。では。これで。」

軽く敬礼して船はエゥプホールビアを離れていく。

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