一章~目覚めて、港、既視感、再会、復讐、交渉という名の~
衝撃は彼女の目覚めを促した。
目覚めて視界に入ったものは首元を掴まれ、腕を絞められ床に組しかれたあの上位に近い者。ヴァン。
記憶を探ると最後は。あの適当に荷物から取り出した道具を使用したまで。
それから先の記憶が飛んでいた。
なので、どちらともなく聞いてみた。
「あの、私は、一体。」
それに対して答えたのは組しかれたヴァン。
「は、はははっ。起きられましたか。この様な態勢で失礼。あれからそんなには経過していません。ぐふぇ。」
現在彼女がいる場所は室操舵室。現在自動操縦であり、近くの画面から接岸準備中だと理解はできるが、如何せん不可解だと思考してしまう。
故にだろう。
「あ、あの。それは理解してます。でも、どうして港から離れてこのような裏側に。」
という疑問。
「ん、ああ。そうか。アレを放って直後に意識を飛ばしたんだったか。」
「え、それは。どう言った」
「まあそうだな。判断材料は多いに越したことはない。映像を見て貰った方が早いだろう。此方はバカを押さえるのに動けないから、ある操作してもらいたい。できるか。」
途中の言葉に反応してか軽く暴れ罵詈雑言を浴びせるヴァン。
無視して頷きを返し、寝させられていた簡易な寝床から離れて装置に近づき軽い説明を受けて操作する。
「これで船内と船外に設置された記録機器の映像が映せると思うけど。あ、これかな。」
最後に押した装置により船室天井から映し出すための器機が降りて、黒い画面が点る。
映し出されたのは船に乗り込む光魔。自身。。ヴァン。それから船内や甲板の映像が一定感覚で切り替わる。
静かに見続けある画面に切り替わると彼女は驚愕した。
そう、《融解の光糸》を放った後の事。
倒れる自身とその後のやり取りを克明に映し出す映像。
無言で見続ける彼女の表情は変化していく。
それは面白可笑しく。
映像を最後まで見終わり、その背後からは伺いしれない雰囲気が感じられたのだが、振り向いたその表情は一点に向けられた重苦しい感情に支配されていた。
迷わず組み敷いていた腕を解き、彼女の頭を一打ち。
「これは仕方ない。アレを使用することは想定の外だったが、それでも気にしない事だ。まあ、後遺症として少し変異の影響が現れるかもだが軽い方だろう。それと。」
「ぐがっ」
「彼女の為に見させたのだ。貴方は少し自重した方が良いだろう。」
再び壁と箱に挟まれるヴァン。
苦痛と憎しみを光魔に向ける。
「んあ、殺すような気持ちはお勧めしない。持続するにも体力だけじゃなく気力も、いや気力は相当削られるか。それで構わないならこの先何も言う事はない。お好きに。」
その向けられる視線は感情が乗っていたのだが、それらはない交ぜにされたごった煮のようなもの。
意志と関係なく体が震えてしまう。
今度こそ理解した。
『こ、こいつ。いやこの方は僕より上。それも上位とかの話ではなく別次元の存在。は、ははは。これ以上殺意を剥き出しにしていたら、命より先に何かを無くす。確実に。』
その考えは正しく。
ヴァンは光魔に歯向かうことを諦めた。
「で、どうしますか。これから一応の方針としては。接岸上陸可能な場所までを自動で算出。その場所まで向かっていく。後はそれまで幾つかの作戦を練っておかないと、絶対に後々面倒な事にはなるだろうと。」
この言葉で二人の醸す空気は一変する。
「はは。この後に及んでそれを紡ぐのですか。ならそれに乗っかろうじゃないか。」
船体は揺れながら島へと近づいていく。
その揺れは波の影響か、三人の発露させる空気からか。
船体は見るからに傷つき、一部は抉れが酷い。
もし修復するなら数ヵ月は要するだろうか。そんなボロボロの船。
見るからに怪しく。そして表の港を融解させた原因の船なのだ。
当然、その動向は注視され続けており、接岸可能な人工的な部分には多数の人影が警戒するように銃口を向け、警戒態勢を取っていた。
「距離は遠いですけど、あの目。自我が、無いですね。」
「そうですか、で、上位者さん。あれはこの島の警備ですか。」
渡された双眼鏡を覗き見る。
「い、いえあれは警備ではない。いや、ありません。それに装備一式で武装していますが、まあ、例の方々でしょう。」
「そうですか。それじゃああの人達はお兄さんにお任せして、僕は掌握した人とその配下さん達の相手をしますか。あ、そう言えば掌握した人もお兄さんが引き受けるんですよね。僕はどんな状況でも手を貸したり出したりしませんよ。」
「ふん、言ったはずだ。です。簡単な事に手を混まねいている時間も惜しい。で、速く終わらせて見せよう。」
背負っていた荷物から道具を二人に貸し出す。
「簡単にいうと、力の増幅装置ですね。多用は控えてほしいですけど。無理なら何も言えません。」
「そ、それは私達に戦いを強いると云うのですか。」
「それは否定させてください。元代理にそれを期待するのは酷な話。危険な状況での牽制にはなるでしょう。上位者さんは、まあ牽制より殲滅できますよね。それに僕には目的がありますから。期待はしない方向でお願いします。」
「それは交渉、ですか。」
「そうですね。でも、今回は交渉というより制圧と引き渡しですかね。本来の統治者は幽閉か殺害済みでしょうし。前者なら救出の後に場を設けての交渉。後者なら代理を立てての同じように交渉ですか。まあ、後者は適当に立てても繋がりますが、前者なら少々面倒になりますね。」
「で、これよりどうしますか。」
「そうですね。たしか拡声器が有ったと思うのですが。」
「それなら此方に。」
「お、用意周到ですね。なら使わせてもらいます。」
なにか久しさを感じながら本体を縁に取り付け、マイクを宛がう。
『ええと、此方は、あ、辞めましょう。そうだな本題から入らせてもらう。』
二人の視線が重苦しい。
『条件は。完全降伏と全ての武装兵器解除、それとついでの人質の無傷での解放。これを飲まなければ先の様に表と同じかそれ以上の行為を執行する。もし飲むのなら旗を掲げてもらおう。時間は5分だけだ。』
マイクを置き、船を島から一時離れるよう指示する。
一発の弾丸が船体を穿ち、二人が臨戦態勢を取るが制する。
一分経過して島に変化は無い。
船内では簡素な食事をしていた。
外から何かが海に落ちる音もしていた。
二分経過して島に変化は見られない。
光魔は外を眺めているだけ。
二人は渡された道具の確認している。
三分経過しても島は静寂だった。
海も穏やかに波を立てている。
三人は何かを話し合っていた。
四分すると島に少しの動きが見えた。
だが、それは警備配置が変わったに過ぎない。
潮風を頬に受け流す三人は、甲板で各々の姿勢で見ていた。拡声器も縁に取り付け直して。
約束の5分に事態は動かされた。
予想よりも律儀な事に考えながら。島には降伏の印とした旗が掲げられなかった。
甲板で準備を終わらせ、拡声器の電源を入れる。
『あ、ああ、約束の』
海面から爆発の柱が立ち上がり、水飛沫で視界が遮られる。
同時にその中か背後から人影が船内に突入してくる。
その姿は。
「潜水士か。」
現れた集団はまさに潜水士。
「こうなるよね。まあ、予想ではあるけれど。そうだね。」
「はあ、なら作戦は複数の内の1つで行こうか。」
「ええ。ならこれから先は個人戦で。」
「時間も無いので、普通に通りましょうか。」
二人はその言葉で深く溜め息で心情を表現する。
「という事で皆さんには彼方への言伝てをお願いしたい。」
潜水士の一人が動いた。
二人がその僅かな動きに対処するよう動き、甲板に押さえ付ける。
瞬間なその行動に他の潜水士は構えを取る。
「へえ、良い反応で。狼狽えや硬直もなし。ならねえ。二人ともその潜水士を放してあげて。なに、もし本気なら今頃三人とも火だるまでこの世界に居所を失っているだろう。」
そうですよね。という視線を潜水士のゴム眼鏡越しに向ける。
「笑える。ふふ。」
「要件を聞いても。」
「我が主の命によりこれをお持ちしました。受け取りを。」
元代理が懐を探ると小さな筒が出てきた。
「それは貴方へ渡すようにそれも直接でと厳命されてます。」
「ふうん。なら受け取っておきます。」
筒は握れば隠せる大きさ、何かを隠せるような大きさではない所を見ると。納得して懐に仕舞う。
潜水士達が海へと戻り甲板に三人が残る。
「で、どうしましょうか。」
「で、と言われても正直困る。なんでかね。こう事が運ばないのは歯痒いというより。」
「もやもや、ですかね。」
「んー。そうかなあ。まあ近くて何とやら。かな。」
「では、これから。」
「そうだね。予定で行くなら正面を突き進むのが速いだろうし。それで目標まで行ければ簡単なんだけど。」
「なら三道で行けますか。」
「それしかありませんね。」
「ええ、それなら島の現状を把握できますし。ですが却下です。」
驚く。
「時間は無いと言ったはずで。それにこの島では依頼内容から逸脱している。なので早々に終わらせたいと。」
「はあ、そう言うのですね。ですがこれを終わらせれば上に。」
「上に貸し借りは求めていないし、求める気持ちは毛頭ない。言っていたはずなんだが、忘れているのか元代理は。」
「しかしですね。上位への貸しは大きいですよ。間違いなくね。」
「そ、そうです。後になって後悔するよりは貸しを作っておいた方が賢明な判断かと。」
「あああ。いや、待て。此処で1つ聞きたい。いいか。」
「はい。構いませんよ」
「俺もだ。いや、です。」
「二人は僕をどう見える。」
場の空気が停止する。
質問の意図が解らないと言うのだろう。
傾げる二人を見て納得した。
「そうですか。では、今更ながら言っておきます。」
この直後に二人は恐怖した。逃げ出したいのに逃げられない。
その一言で二人は絶望に飲まれてしまう。
「と、まあ、そう言うことなんで、あ他言無用で願いますね。じゃないと二人だけでなく、関係者や過去に関わった人を全て根絶やしにしないといけないので。ほらそれは僕が面倒でしょ。なのでお願いしますね。」
背筋どころか全身よりも、心の底から凍りつくその表情は二人の戦意を砕く。
一人は元からその戦意は無かったのだが。
屈伸しながら人の疎らになった港のような場所へと視線を向けている。
なんでか涼やかな、他人事のような表情である。
そしてその手には例のマイクが握られている。
『あ、ああ、此方には争う意思はない。先の表の事は不可抗力であり、別段他意はありません。その証明としてそちらに情報を送ります。賢明な判断を。』
マイクを切り、拡声器を外す。
「では、行きましょうか。この距離ならまあ然程時間は掛からないでしょう。』
命令して船を人工的な場所に接岸させる。
降り立つと殺意溢れる戦意。
一定の距離から放つそれは三人の心を容易に減し砕く。
現に二人は額から汗を流し、固く握られた拳は振るえていた。
更に一人は周囲を見回していた。
「はあ、やっと接岸できたか。さて、事前に送った情報を飲んでくれていたなら、何事もなく進むんだろうがね。まあ、そう簡単には」
行かないのだ。
三人其々の急所に鋭い物が宛がわれている。
「へ。」
「ひ。」
「そうか。これが答えか。」
『これより島主が謁見を許可した。それまで不要な抵抗は慎んでもらえれば、助かるのだが。』
三人が視線を合わせ、頷く。
一人は項垂れる。
二人は目標と思われる方向を仰ぎ見る。
「判った。無駄な抵抗は控える。他の二人も同様だ。その島主という方に謁見願いたい。」
深々頭を下げる。
慌てるように二人も。
『では、此を。』
差し出されたのは、鉄の腕輪。
見た目は普通そうだが。
「抑制、または封印道具か。」
『左様で。島主の命も関わりますから。』
三人は躊躇わず受け取り手首に嵌める。
「はあ、これ程とは。」
『ふほ。不安、ですかな。』
「ああ。い、そうだな。では連れていってもらいたい。」
『ならば着いてこられよ。』
三人に張り付くように獲物を変わらず、急所に当てながら連行されていく。
現在までの状況を整理しようと巡らせているが、はは。どうにも頭が濁っている。
調べたというより此方の質問に素直に答えてくれたご老人以下、数名の何者か。
俺達が降り立ったあの場所は旧港というより資材搬入、島の建設時なのだろう。の名残で残されていた場所らしい。随分と昔に立ち入り禁止にされたとか。
普段は人が近寄るような場所ではないとか。
その場所にどうしてあれだけの武装で待ち構えていたのかは、まあ、単純な理由だと。
港を消滅させられた。
それだけだと。
実際にあの港含めた一帯が融解消滅させられた。その直後に現島主が指示しあの旧港を含めた島の要所で警戒していたらしい。
それは終わっているので置いておくとして、然したる問題は、この先の出方だろうか。
相手が話で通じるのなら良しとする。
それより、話以前の問題なら対処方法を考えなければ。まあ、最終的な方法で解決させるが。
それは遣りたくはないな。正直。
と光魔が考え事をしていると断崖に掘られた洞窟に到着した。
「此処は」
『これよりこの中を通り島主の下へと案内します。何分暗うございますので足下や頭上にご注意を。それではどうぞ着いてきて下さい。』
覗き見ると一切の光源なき洞窟。怪しさ満載なのだが考えあぐねていて事が停滞することは光魔にしては不服にしかない。意を決するも何もこの中を進むしか道が無いのであれば入るしかない。
心の中で深い息を吐きつける。
闇に小さく反響する息づかいと足音。更に衣擦れの音や装備の音が反響する。
一人が裾を引っ張り耳打ちする。
「そうだ。聞いて良いか。」
『なんでしょうか。』
「どうして先に進めるのだ。光がないのに。俺達はこの拘束具で貴殿方に引いて貰って進めているが。」
『はは。なに簡単ですよ。我らは特別な存在でありましてな、こういった状況は表より得意なのですよ。なので我らが島主は重宝して下さる。』
短く返事をして、黙る。
続いていく長い道。暗く、何より終わりが見えないことは心を蝕む。
何も見えない状況は個を消し去ってしまう。
それはその状況に行き着く。
「あ、あああああああああああ。ああああああぁぁぁあああ。」
「ふひっ。ふひひひびひひびひにひひはひひひひひひ。」
耐えきれず発狂してしまった。
対しての処置は速く、二人の意識を飛ばしたのだ。
『ほは。躊躇なく沈ませるか。面白いのう。だが、自らの主をその手にかけるとは。』
「ん。主。ああ。そうね。まあそう見えるかね。でもな。」
意識を飛ばした一人を掴み上げる。
「其ほどの事かね。このまま発狂させ続けても時間の無駄だろ。なれば、意識を飛ばす方法が最適だ。そうだな、ご老体のようなアナタには無理強いしても面白い光景が見えるが、敢えて、そう此処は敢えてそちらの二人を選抜させて貰おうか。なに。動けないし、動かない。無理なら簡単な担架でも拵えて運ぼうか。」
『ふん。それには及ばず。我らは特別な者なり。』
倒された二人の回りに何やら力が覆い、宙を浮いている。
「面白いね。力の行使が可能とは。」
『我らの特権だ。』
「そうかい。なら行こうか。」
空気の流れで頷きを確認して先を促す。
この状況は何かに似ている。俺でなく。もう一人の。
ああそうか。あの長い、代理との謁見までの通路と似ているのか。まあ、あの時は何事もなく着いたが、今回はどうだろうかね。
暗闇過ぎて目が慣れることはない。
それでも何時ものように何時もの如く進まない。
発声は。
『うぬぬ。な、どうして。』
という暗闇に木霊する言葉。
これで光魔の方向は決まった。
光魔の感知を用いて先の発言の前に事は始まり。迫り来る何かを感情を乗せないように四方にめり込ませて事を終わらせた。
彼らの言葉であるなら、「どうして表と同じように動き、抑えが通じていないのか。」だろう。
確かに他の二人同様、封印の枷を嵌めているが。
それを望むのは愚かだと思ってしまう。
『あ、望んではいないのか。』
次に動いたのは部下。
それすらも光魔の処置は速く、呻きすら赦さず地面に叩き伏せる。
四肢の鈍い音が反響する。
「貴殿方の主からか。それか独自で行動か。この状況と先の言っていることから考えて、現島主の命令かな。」
倒れ呻きも漏らさず動かない者達を見ている者。
「そんなに会いたくないのかね。僕に。」
「あ、あのう。もう宜しいか。」
『がああぁ。もう起きられて』
「はあ、そうかい。会いたいのはこの二人で。違うか。二人を更なる交渉の1つとして捕らえる算段だったのかね。それとも他の使い道か。そうか。」
何かを確信して終わったかのように老体を沈める。
「で、聴こえてるだろ、それとも見ている。と言った方が正しいか。これ以上はあまり揉めたくない。それがそちらの考えなら素直に通した方が賢明だと思うが。」
唐突にではなくやはりと納得してしまう。
明かりは点かないが、代わりに足元から音が鳴ると少々の浮遊を感じて落下していく。
驚く声は一瞬で、次に柔らかい空気が包むような感覚に荷物から取り出した道具で近くを穿ち着地点をずらし着地。
本来の地点に視線を。
「豊沃の理明か。面白いのを持っているな。」
首筋に軽い痛みが走るも気にせず。落とされた二人を含めて透明な物質に包まれいる数人。
苦悶の表情から何処までも溶ける笑み。
殺意剥き出しに武器を構える複数人形。
「これは更に面白くて懐かしい。人形兵士。それも感情不要型なんてのは、遥か昔に廃却されたはずなんだが。そうか、この本来の島主は。」
人形兵士の武器は首筋から下げられ離れていくと、代わりに一人の老人とそれを支える若い女性。
老人だけでなくその女性も向ける視線は、並々ならない殺意が込められていた。
「くくつ。よもや、と、そう思つていたのだが、まさかの。」
「お祖父様。どうしてこのような秘密の場所に不穏分子にしかならぬ余所者を。」
「くくはつ。なに、此処で見えたあの映像でな。懐かしさを感じて真偽を確かめとうなつて。まあ、老人の暇潰しじやて。」
はあ。と疲れの息を吐き出す。
警戒は解かれて正面に立つ。
「はじめまして。私はこの島本来の次期島主候補の一人。アレイン・エシャレス・バッタート。と申します。そして此方が。」
「うむ。わしは。」
「名乗るのも烏滸がましいぞ。それと名乗る必要がないだろう。なあ、老害。」
憤怒の意識が向けられ、居た場所に容赦ない制裁の武器が貫くが、その場に居らず代わりに豪奢な椅子の肘掛けに腰掛けている。
「へえ、その人形はお嬢さんが操っているんだ。まあ知り尽くしているそれは無意味だけど。さて遊びは辞めて本題に入ろうか老害。バクスリハメンヴィス。元最高上位決定機関長。」
「ふむ。ならば此方の要望は理解しているだろう。やれ。反論は認めぬ。ぬ。」
「言ったろ老害。遊びは辞めて。そう言う意味でなのだが、理解出来てないのか。くく。耄碌したな老害。」
「きさ。」
「動くなよお嬢さん。本来なら問答無用で島を廃島にする事も可能だ。俺にはどうなろうと関係無いからな。」
「~~~~~~っ」
「悔しさは充分に理解している。俺に向けるのも判りますけどね。その感情は後に取っておいた方が念のためだと思いますよ。さて老害。どうする。この島の現状は不意な事じゃないだろ。どうせ上の無能が隠れ蓑のためにけしかけた。そうなんだろう。ならそれを含めて後は任せろ。後々纏めて進言してやろう。で、当の人物は誰だ。」
「ぬふはは。分かつているのだろうなれば。」
「だーかーらー。そんな回りくどいのは要らないんだっての。速く教えろよ。」
「ふは。変わらぬな。良かろう。」
言葉は紡がれそれを聞いて悲鳴と驚きを上げる。
「お嬢さん黙って下さい。ありがとう。そうかあの馬鹿馬鹿しい騒動で身を隠したと思っていたらこんな場所に幽閉か。なら方針は決まったな。」
「方針とな。」
「おう、この島を廃島にする。」
反論したのはアレインだけ。それが意外なのだろう。振り向くその視線には驚きと嘆きが見て取れる。
バクスリハメンヴィスは目を細め何かを考えているのか解らないがそれでも明後日を見ていた。
「そうか。」
とだけ言葉を紡ぐとその場に座り、項垂れ息を吐き出し天井を仰いだ。
そうか。とそれを最後に何もせず、動かず、座り続けている。
反論し続けるアレインに出口と最短を教えてもらいその部屋を出る。
意識を飛ばされ包まれて拘束された二人を残して。
「あ、そうだ、二人を引き渡しても無意味だから。軽いしな。それじゃ。」
手を振って通路へと体を出していく。
その瞬間、耳に届いた擦る音は無意識か自覚してかは解らないが、自分で納得して通路の目的方向へと進む。
背後からは響きが届く。
それすら無視して通路を進むと錆びてはいないが、古くささを醸し出す扉が有った。
躊躇なく押し開けようとして、開かず。なれば横に引いてみても同じように。
捻って扉の左右を調べて。
肩を落とした。
「騙しか。確かにこれは得意な方だが、これ程上達しているものか。」
左右の壁を軽く叩くと一方が変な音を鳴らす。
「ええと、もしかしなくても。」
声を壁に向けて発すると奥へと動き上昇する。その向こうには更に伸びる道でなく、階段。
何か既視感を覚えるのだが。
なんでかね。俺は普通に歩むなんてのが赦されないのかね。
とか思って見える螺旋階段は消えない。
はあ、疲れるな本当に。
疲れ果てた体にむち打ち、膝に手を置いて息を整える。すると。
「久しいね元クソガキ。」
声の発生源と思われる場所には一人の女が構えて立っていた。
少々の間をおいて息を整える光魔。
その光魔に鋭い視線を向けて肩に担いでいる得物。
正直知らない相手に多少の困惑を表に出してしまう。
「へえぇ。私の事を忘れるなんて、酷いねえ。あれだけの事をしておいてさ。」
言葉だけを聞くと光魔が酷いことをしたように聞こえるが。
どうにも記憶が。
「ふうん。僕はお姉さんとは初対面なんですけどね。誰ですかね。」
思い当たる事が在りすぎて思い出せない。
ギリリッと軋む音がなる。
「誰、だと。貴様、は。貴様に取っては其だけの事なのかあぁぁぁぁぁぁぁぁ」
全然思い当たらない、目の前に存在するお姉さんは声や仕草、得物に姿勢。
これらを考慮してもオモイアタラナイ。
来た道を振り返り、前に向き直すと女の姿が消えていた。
体の中心に激痛が走り天井近くまで飛ばされ意識を飛ばしかける。
「くかはっ」
自然と声に出ている苦痛。
霞む視界にはあの女が笑っていた。狂気を孕んで。
「ああ。そうか。思い出した。思いましたばさりゃ。」
天井高くというのはこの空間で一番高い部分からで、必然的に最高点へ到達すれば、後は落ちていくのみ。
なので結果的に床へ全身を打ち付ける事となる。
全身の骨が砕け、虫の息。
肺に血が溜まっているのか、反吐をはく。
近づく女は躊躇なく更なる追い討ちを仕掛ける。
軽く飛び反対側の柵に打ちつける。
呼吸の難しい状況での追い討ちは意識を普通に飛ばすほどの威力。
だが悲しいかな、それは出来ず。何度もその執拗な攻撃に晒されてしまう。
虫の息を越えて死の手前まできた状態の肉体に、尚も続けられる暴力。
歪に曲がった両手足。異様に膨らんだ腹部。頭部にも内出血のためか、此方も歪な事に成っている。
不可解なのは此だけの状態にあってどうしてか意識が消失していないこと。
女もそれを理解しているのか暴力の威力を上げていた。
だが。
どのような者にも体力に限界が訪れる。
女も同様で全身から流れる汗がそれを物語っている。
その息遣いは荒く、疲労困憊の表情を隠せない。
片膝を伸ばして軽く俯いて整える。
床に寝転がる標的は過去幾度も重ねた詳細な情報以上の、異常な怪我を負っている。
静寂な空間に息づく二つの息。
双方荒い息は多分に意味が違うもの。
一方は達成感。
一方は死への道。
不思議と二人から涙が溢れてくる。
女は達成感から。
もう一人からは。
「なんだ。やはりお前でも死への道は恐怖するか。はは。だが遅いな。もう終わる。そう、終わるのだ。」
感慨に拭ける女。達成感が満たしている。
なので、
「本当に思うよ。何時も。」
有り得ない言葉が自信の耳に届いたのだ。
「ああ、見なくて結構。そのままで。」
女は、振るえていた。
「疲れたろうから僕からアナタを潰すなんてのはしない。まだまだ面白いことになりそうですから。で本題なんですけどね。アナタの標的は僕だろうけど。無駄な事なんですよ。まあ理由を述べたとしても理解したと思うけど。さて、アナタはこれを終わらせたとして先はどうしますか。なに、よく有る話なのですが。目的達成した先はどういったのを描いているのかなと。もし行く宛が無いとか、先々に困ってるのなら提案があるますけど。乗りますか。乗らないのであれば、このまま放置して進ませていただけませんか。」
困惑を隠せない女。
猛執に取りつかれ、この約一年で思いの外達成されるような状況でのー正確には失敗しているが。ー標的からの突如の提案。
困惑しないものが可笑しいというものだろう。
「な、ななな。それは一体。」
「なに、簡単です。アナタの目的は完遂されない。永遠に。成ればどうするべきか。そう選択は幾つか在ります。
1つ。続けている殺害を試みるか。
1つ。諦めて別の道を進むか。
1つ。僕の誘いに乗ってみるか。
1つ。この場で果てるか。
他にも在りますがまあ速い話が提示は此ですかね。これ以外の道を歩むのなら止めはしませんけど、どうしますか。僕としては誘いに乗ってくれた方が良いんですけど。」
「な、なぜだ。」
「だってその方がこの先の人生面白いでしょ。」
言葉に偽りなく、満面の笑顔で女に向けると躊躇したのか、得物を投げ、距離を取る。
「はあ、信用できませんか。まあ、僕もいきなりこんな言葉を投げ掛けられたら信用はしませんね。ですけど、これはアナタにしてみれば一隅の好機ですよ。考えても見てください。あ、内容を説明してませんね。1つは。そう簡単には無理ですね。ですが何時かは願いが叶うかもしれません。
二つは四つ目に提示した果てるというのは実現可能ですよ。今すぐに肉の塊に差し上げても宜しいのですが、面倒なので辞めておきます。それと二つ目の提示ですけど、普通に考えても。簡単には納得できませんよね。だってそれまで保ってきた意識や感情を全て否定しないと行けませんから。そんなの無理でしょ。なら三つ目の誘いに乗った方が得策かと。なにも無理強いするつもりはありませんよ、此方も提示した仕事を全うしてくれるなら何も云いませんから。上にもその事に関して口添えしておきますよ。あ、内容ですけど仕事に関しては了承を得てからで。悪いようにはしません。てか僕にはそんな権限は無いように思われるので。どうしますか。乗りますか。それとも降りますか。好きにしてください。もし1つめを選ぶなら気の済むまで僕を。」
突如笑う女。それは諦めか、策略の内か把握できないが向けられた視線は涼やかなものだった。
「良いよクソガキ。お前の話に乗ってやる。でもね覚悟しな。全ての年月日時秒休まる事は無いよ。覚悟しな。」
口端を上げる。
「それは楽しそうですね。それでは戻ったら気を引き締めないとですね。」
笑わないが不適な微笑みを二人は向ける。
「まあ、笑いは良いのですけど。この先の最短をご存知ですかね。」
肯定の頷きは安堵として吐き出し。
「時間が無いので口頭でお願いします。」
「簡単さ。クソガキを蹴り飛ばしたこの最上階の扉その横に秘密の最短が隠されているのさ。開け方は。」
「どうせバレてると思うので正規方法は使いません。それで道を阻まれたら本末転倒ですから。では、お願いします此方が次の職場ですから。」
手渡すのは端末から書き写したカード。
「へえ。クソガキ。やはりお前とは面白い縁だね。」
それに対しての質問をしようとしたのだが、姿を消していた。
「あま、良いかな。さて。んん。よう。聴こえて、いや見ていたろう。なあ。現島の主。首を洗えとか、回りくどいのは嫌いだからな。まあ、待っとけ。それだけだ。」
端と思い出した。そして、崩れた。溜め息も吐いた。
「また、ボロボロか。」
虚しさが響いた。
階段を素直に昇る気には一切なれず。
十全に屈伸をして螺旋を無視する。
つまりそれは。
脚力による跳躍。
天井の手前で手摺に捕まり内側へ。
言われた通りに扉が有るのだが、1つでなく、三つ。
「そうですか。簡単には行かせないと云うことですね。」
女の言っていたことは正しい。だが、実際には虚偽も含まれている。
その1つが扉の情報。
それは正規か否かで見え方が違ってくる。
それを知らなければ通常は混乱していたろう。
だがその場に居るのは光魔である。
驚きなどせず逆に納得していたのだ。
「障害なくなんてのは幻想ですよね。それじゃあ。」
ボロボロになって不要な服の成れ果てを両手に巻き、適当な扉に当て腰を少し落とす。
「ひううぅ。」
瞬間に両手の脱力を行い、直後に足から筋肉を連動させ両手から練り上げたモノを放つ。
壁に皹が走り、同時に振動していく。
これを切っ掛けに皹が大きく裂けていき足場も落ちていく。
正規の通路を使って目標へたどり着くことはないと知っていた。
通常、この様な無様をすればこの者はなにもせずとも肉の塊と成り果てる結果に成るだろう。
が光魔はその状態。
落下と全身に触れる空気の流れに近づく床。
これら全てを意識や感情を越えた位置で全否定したのだ。
その結びとして足から伝わる衝撃の代わりに握り、擂り潰し粉と馳せるような悲しさと絶望。
目の前に見えたその場所はあの螺旋階段含めた空間を否定する重苦しい部屋。
自然と荷物から1つの道具を取り出し、頭に嵌める。
『マスター認識のため音声と遺伝子情報の照合を行いました。これより先の権限はスワ・コウマにイチニンサレマス。ご命令ヲ。
』
「じゃあ思考を読み取って情報を収集。終了後端末へ送信。後に自壊装置の起動と教師への送信を。願いたい。これはマスターとしての命令でなく願いだ。不可能なら後述は破棄してほしい。」
視界に幾何学的な文字と幾つかの画像が崩壊していく。
『後述に関連した装置は前述と共に前述へ送りました。これよりマスターへ情報結果を表示します。次の命令までタイキシマス』
装置に表示されたものは知りたい情報の詳細なもの。
「眠い。なればこそ僕は仕事を終わらせる。」
その一歩は終極への始まり。
「なんてのを考えられたら面白いんですけど。終わらせられるなんて思ってないんですよね。」
着地の感触とか無視できたなら本当に良かったのだろう。
如何せん、肉体は普通に近いので。
「ふぎひゃべああああああああ」
と足から砕けて肉が断裂よりひしゃげて腰まで潰れていくのだがなあ。
普通に考えてもこれで拒絶の悲鳴を上げるのだが。
「うお、マジですか。溜め息ものですよねこれ。」
と呆れたような言葉を発している。
「で、これ以上は在るんですかね。それとも、有ると言った方が声楽かね。あ、かんだ。」
『痛覚千倍。視覚拒絶。思考詮索。崩壊因子投与。偽記消偽記。思想転写。』
目の前が六色に点滅し、意識は彼方へと飛ばされかける。
それも僅かな踏ん張り。直後に沈んでしまう。
身を焦がす痛みを起因として目を覚ますと、何時かの光景が、ん。光景てなんだろうか。
ふはははははは。から始まり、幾つかの説明を受けて。ああ。これは面白いより速く終息へ帰結させなければ成らないと考える。
それでも目の前の存在に五感を麻痺させて数日だけ使えてみる。
目に見えて面白くなく数日だけでも面白い事になると思っていて。胸糞だろう。
正直。時間返せ。
忘却の思考を保ちながらあの目的の者を前にする。
はあ、忠告を無視しこの自身を手中に納めたと思い、驕りに浸るのは別段理解しているのですけど、はは。あの翁はやはり面白いと思うしかない。
六徳の思考で、あの一人と一柱の助言で目標と対峙している。
「これもあの時の約束が絡んでいるのだろう。」
「島主。ヤグル様、このような者をどうして生かしていたのか疑問でしたが、納得しました。」
「そうだねぇ。自分も最初はぁ。疑問だったけどぅ。それでなんだねえ。」
「ひょろひょろひんひふをはなひへくれんはね」
「真実も何も、目の前に存在するのが全てであり、それ以外はない。」
「ひょっ。ひょは、なへは」
緩い怠惰な動きに危機を感じて、足下を踏みしめ破片を中空に撒き放つ。
怯むような言葉で伸ばした腕を引く。
「へえ、じぃの手酷きを初手で回避するなんて。正直驚いた。これも」
「回避の心理。本物を見れたことは僥幸。さてさて次は何を見せてくれるのかな。楽しみだ。」
「ではぁ、次はぁ自分からかなぁ。」
老人が引くと同時に別の控えていた者が歩みだし、視界から消える。と世界が回転していく。
体にのし掛かる感覚は尚も重みを増していく。
全身が絶叫している。
「ふおおおぅ。これは回避出来ないのか。やはり物理的な接触でないと発動しないのかねぇ。」
力みは更に荷重となる。
「さあてぇ。この状況から逃げ出せるかねぇ。」
走る四肢の激痛は力みを解かせ、地べたに這いつくばる滑稽な姿勢を維持させてしまう。
諦めたのか四肢だけでなく全身から力という力が抜けていた。
即ち、動かぬ肉の塊と成ったのだ。
「ほえへぇ。まさか、こんな早くにぃ自らの生を手放すとはぁ。予想外でしたぁ。さてぇどうしますぅ。」
処置を聞こうと振り返り、ヤグルの冷徹な視線に曝され魂から怖気が蝕み、尻を着いてしまう。
「は、はへへへぇ。な、何故にそのようなぁ。」
「戯けが。良く見てみろ。」
「ふぇ。」
振り返ると動く筈ない者は消え、その場より離れた所に鎮座して飲み食いをしていた。
「あ、終わりましたか。いや、何か気付くの何時だろうと思っていたのですけど、最後まで気付かないのは意外でした。うん。アナタは単純なんですね。あ、だからそんな喋りなんですね。納得です。」
二度頷いて荷物をしまう。
「さて、気が済みましたか。なら引っ込んでください。」
「ぎりっ。な、なんで」
「下がれ。これ以上醜態を晒すな。見苦しい。」
ヤグルでなく三人目が諌めるというより脅して下がらせる。
「さて、次は。」
「あ、アンタは駄目です。だって、僕の全てを略奪するんでしょ。それは困りようが有るのだろうかと思うのですけど、まあ相手をするのは面倒なので早いとこ静観に徹しようとしているそこの人物は交渉のために前に出なさい。時間が無駄ですので。」
「きさ。」
「反論は受け付けません。」
一人が天井へ飛ばされ上半身が突き刺さり、下半身が宙ぶらりの状態。
「さて、残りは二つ。その間に賢明な返答を願いたいですね。」
軽く腰を折り、小さく会釈する。
「は、はははは。封じの薬草を飲ませたのだろう。どうなんだ。」
「は、はい。それは確実です我々の前で投与しましたので。」
「な、なればどうして。」
「ひはらは。ふはへる。」
「種は教える。なんて思わないでね。時間の無駄。だから。さて此方の条件は先の海上とおなじく。完全な武器武装解除とついでの人質解放。さらに上乗せして権限の完全破棄。呑めないならこれも言ったけど表と同じように島を消滅させる。さあ返答を。」
歯軋りが四人から響く。
「ああ。だから疲れるのよね本当に。じゃあ、最後です。どうしますか。交渉の席に着きますか。それとも滅ぼされるまで抵抗しますか。もう1つ更に、不意を突いて交渉の僕を潰しますか。あ、それと扉の奥に控えさせてる拘束の二人は無意味ですよ。縦にも交渉にも向きませんから。疑うならこの場でその命を散らしますけど。どうします。」
その言葉に偽りなし。
判断して足下に固形の何かがばら蒔かれ、音と光と煙を撒き散らす。
本当に肩を落とすように項垂れる。
「あのよう。俺の質問にこれはないだろう。はあ、なら決定だ。」
動いていた。煙幕という隠れ蓑を駆使して、標的であるその存在を命を奪うまでは行かずとも行動不能には至らしめられると。そう踏んでの二重三重の作戦だったのだが。
この言葉の瞬間に振動と捕食の力が飛び回り、無差別に狩り取っていく。
謁見の広間に存在している、一人を除く全てが目前の状況に無理解を示している。
腕を交差させ軽く振り抜く。
「ふあ、あ゛あああああ゛と。疲れますねやはり。さて、これで気が済みましたか。」
額に吹き出る汗を拭いながら床に這いつくばる者を見下す。
「これで終わりかいのう。もう少し実験を見てみたいと思っておったのだが、なんじゃ弱いなあ。」
「事前に申したはずですよ。島主の情報を元に練り上げ完成させたこの作業に綻びはない。」
「ふぅぅん。ではさぁ表ももしかしてぇわざとかい。」
「ええ。それは事前に持たらされた情報に有ったのでね。有効活用は当然だろ。」
「ひょ。それで邪魔なあれらを表に配置させたか。面白い、のう。」
「でぇ。どうしますかぁ。島主ぅっ。この者は後々必ず僕達の障害に成りますでしょぅ。この場で滅ぼした方が良いかとぅ。」
「決まっているでしょう。島主の意志は固まっておられる。」
「では、最後の薬物を投与して終わらせましょう。おおそうだ、最後に伝えてほしい言葉はあるかね。伝えておこう。」
やっと話が振られた。
「残す。か。ははは。残すも何も今も古代もそうだな。胸糞悪く気分を害するわい。まったく、油断しおってからに。はあ、戻り具合には丁度良かろうて。では、終わらすかの。」
これまでの事が幻想と思うように起き上がった。
「ふいい。面白い空気を放っておるな。お主、偽りに用はない。元体を出せ、言っておる事は理解できるな。早くせよ。我は気が短いのだ。」
足を軽く、そう思って軽く地面を鳴らすと、強烈な振動と空間の崩壊。
予想外に驚いてしまう。
「モ、ロいのう。仕方ないのか。古いとか言っておったし。さて、話を伸ばしてやっていて現れるかと、お。出たのう。」
「がかはっ。」
豪奢な椅子の代わりに置かれた木箱。
そこより手が勢い良く飛び出し、肩首と胸板頭に後半分。
どうやって入っていたのか、それとも箱とは別に床と繋がっていたのだろうか。
「そうきたか。では、質問だ。素直に答えよ。偽りと判断したらば、問答無用の別次元から鉄槌が下るだろう。覚悟など生ぬるいと心せよ。」
「くかっくかっく、かかかかかかかかかか。其処のが偽りと気づいたとは面白い。知っていたか元よ。」
「・はっ。俺が気付かないと思っていたのか。なあ元副隊長。」
「ふかふかかかかかかか。か。思っていない。あの愚かなる者に聞いたというのを伝えられているからな。」
「そうか気づいてたか。ならあれの顛末を話してほしいのだが。何故にこんな場所に。」
「へか、へかっへかかかか。回りくどい事がお好きなようだ。やはり元。ではお話しよう。」
「ほう、素直な。この島で心境の変化に成りうる何かがあったのか。それは再び会えた時にでも。では、聞こうか。」
箱から離れると笑顔を伴わせ、寄ってきた。
肩に手を添えて殴りかかってくるが、軽く受け払い、本気で折るように掴んだ手を捻り回す。
予測してか自身も回り腕の破壊を免れる。
「健在だな。なら証明の儀式は不要かな。」
「はか。はかかかかかか。なればこそ、ワドの質問にも答えていただきたい。」
「それは無理だ。知ってるだろ。理解したと同時に心を持っていかれる。そういう措置を施されたんだろ。なら止めておけ。」
「えかっ。えかかかかかか。何時の事だ。そのようなものとうの昔に外している。」
驚かず声を出す。
「でワドの質問には答え」
「ると思っていないだろ。てか教える義理ないし。教えないならそれはそれで構わない。俺には関係ない事象だしな。では交渉だ。いや元から交渉は破綻しているのか、あの時点で、なあ。」
いつの間にか荷物を背負い、中より武器を取り出していた。
「んなな、それは。」
「ふふん。懐かしいだろ。なにせ。」
取り出した武器は。
「《融解の光糸》開発途中で枝分かれした別系統の武器。」
「ぐぎぎぎぎぎ。《原子の暗食》か。バカな。全て破棄。破壊。そして分解した筈だろう。どうして。」
「さた、俺がそれを知っていて、それを教えると。」
「んくく。ない。」
「じゃあ、四人にはご退場してもらおうか、裏切りの操り人。」
作動させると砲身側面から小さな珠が放たれ、宙を漂い反時計回りに回転する。
「《原子の暗食》起動と同時に目標捕食。希望を潰し絶望を与えろ。」
砲身から充填された力は、発射と同時に展開していた珠に触れると黒く細かいチリになり獣の如き音を鳴らしながら縦横無尽に触れる全てを食らっていく。
彼は震えていた。
あまりにも。そう、余りにも目の前の光景を現実として受け入れがたいものが、目の前で展開されていたのだから。
制止の言葉は喉元まで出掛かり先へと出ようとしない。そのもどかしさは自身の古い記憶を易々と呼び覚ます。
呼び覚まされた記憶に肉体は更に硬直して、言葉を忘却したかのように難しくなる。
もし出ても空気の漏れる音しか出ないのだ。
「記憶が蝕むか。なあ懐かしいか。それとも恐怖するか。だがこれは現実だ受け入れて諦めろ。知ってるだろこれを発動させたなら標的と設定された者は統べからく、言葉通りの捕食される側に成る。てな。お、そうだあの二人は無事なんだろ、まあ交渉材料としての価値は在るだろうが、俺には無いからな。だから翁もあの言葉で諦めたんだろう。」
「そ、そう貴様。いえ、アナタの交渉に使えると思い、あの老いぼれと小娘に引き渡しを要求したなら。さわ。さわわわわ。小娘は素直に従ったのに、きく。きくくくくく。あの老いぼれは頑なに拒絶しやがった。問いただしてもそうか。としか云わぬ脱け殻よ。」
「はは。そらそうだ。もうこの島は廃却決定してるからな。交渉の余地なんて残してない。」
震えるそれは別の意味からくる絶望の震え。
「お、終わったか。《原子の暗食》停止。さて着いてくるか。あの四人がどうなったか。」
向けられた目の奥に拒否も許可も見えている。委ねているのだ、そう行くか残るかを。
「ひは。ひはははは。せ、選択なんて欺瞞ではないですか。そんなもの着いて行くしか。ない。」
最後は苦悶を含んだ小さな声。
「そうか、それじゃかあ、ほい。これを着けておくな。」
「くはっ。な、にを」
「んん、逃走反乱防止用装置。知ってるだろお前が嬉々として多用していた捕虜運搬道具だよ。その威力は周知の通りだ。じゃあ行くかね。」
言葉も出ない。出す気すら起きなくなっていた。
本当に本気で逃走出来たなら、全てを投げ捨ててでも実行していただろう。
が、その光景は赦さず、実行するならば自身もこのように成り果ててしまうのだろうと簡単に想像がついた。
「おお。すげえな。此処まで侵食されるとはな。正直に驚愕を禁じ得ないぞ。なあ、元上司としての意見を聞きたいが。どうだ答えられるか。」
「あひ。あひ、ひ。この者達が何をしたのかは、知りませんが、酷いですね。うえっ。」
「ふう。それだけか。そうだな。んでどうして此処までかと云うとな、一種の試験みたいなもんだ。高威力で何処まで喰われるのか。それが正直知りたかった。それと。」
「そ、そそそそは。それは余りにも理不尽すぎる。この者達は僕の影としたそのその者の命令に。」
「あんれえ。もしかしなくても耄碌したのかな。何。言ってんのよこの人は。はあ、気付いているのかと思ってたけど。」
四つの一部を持ち上げて良く見えるように差し出す。
「ほらこれが解るかな」
言葉の意味を理解するのに一瞬。
「んな、んなななな。これは。」
「そうだよ。あの戦乱をさらに混乱させた紋章。その生き残りだ。まさか残っていたのは予想外、かな。」
「わか。わかかか。理解不能です。あの終局時に根絶やしに。」
「大方息の掛かった手合いが居たんだろ。外部協力者だろうな。なんせ数が膨大だから溢れた者がいても可笑しくはないだろ。」
「は、ははははははは。ではあの生き残りが」
「んや、それはない。上の方は潰し殺したからな。残っているのは末端位だろう。それでもこうして暗躍してるのを見てしまうと。」
「ふな。ふなななな。嗤えないですね。」
「仕方ないの、か。ではこれを回収して出ますかね。」
「で、出ますかね。とは、もう帰られるのか。」
「いや、帰るも何も現在、この属島は分解中だ。あと半日も持たないだろうな。まあこの事態にした俺が言うのもなんだけど。」
「それ、は。みか。みかかかか。まさか。」
「おう。喰い足りなくてこの島丸ごと喰いきるだろうな。」
「のな。のななな。それで収まるのですか。」
「どうだろう。収まると思うか。正直、無理だろうと思う。」
「では、世界は」
悪寒が走る。
「大丈夫大丈夫。手はあるから。先ずは島に残された者達を避難させないとな。てか残っているのか。この島は。」
縦に振る。
「そうか。なあ、島内全域に避難命令てか島脱出命令を出してくんねえか。俺にはやり残しがあるからな。ほれこれが脱出までの道筋だ。間違えるなよ。それと。裏切りの操り人はとっとと潰して締まっておくか。」
その言葉に理解するより背後で悲鳴と嘆きが聞こえたかと思うと直ぐに静寂が支配していた。
振り向くと、其処には正方形の黒い箱が僅かに回転しながら宙に存在していた。
恐怖が三度体を蝕む。
「はひ。はひひひへええぇ。」
何かを喋ることを拒絶する事しか自我を保てなくなる。その箱。何時から居たのか。どうして存在しているのか。甚だ疑問だが、これの所有者が誰なのかは解っている。
そう、この〈元〉だというのを。
それを現実と受けいるさせるように箱に近付く元は箱に触れると何かを喋り、箱が振動と共に空間からいや、世界から消失した。
「さて、これで回収は終わった。後はやり残しを片付けてくるかね。後は頼んだぞ元副隊長。」
恐怖に蝕まれた体に手を宛がい、何処かへと消えていった。
それから暫く状況に対して思考が追い付かず、整理に浪費する事でどうにか肉体を動かすまでには回復した。
もう見えない元の事を考えるがそれは振り払い、現状の仕事を完遂するため制御室まで向かったのだった。
時は過ぎ、あの旧港には生き残りの者達が訳も知らされず、混乱していた。
この中には先の部隊も含まれているのだが、実は島に入ってからの記憶が無く、更なる混乱を引き起こし兼ねないので前島主であるバクスリハメンヴィスが諌めた。
これにより無駄な面倒は回避され。順に船に乗り込むことと成ったのだ。
「さて、後僅かなのだが、なんだお嬢ちゃん用かい。」
乗船への指示をしていた元副隊長の背後には一人の女性が全身を戦慄かせ睨んでいる。
「事が終わったなら罰を受けますよ。それに、逃げようにも逃げられませんから。」
「ほほつ。それを嵌められたら如何に貴殿でも逃げられぬよな。」
「お祖父様。どうして。」
「まあ、アレイ。気を静めなさい。ちと懐かしく。と思おての。」
「ひへ。へええぇ。まさか生きて、いたのか。」
「んな、失礼にも。」
「よいよい。儂も暇だから刺激を求めていたのだが、よもやこの様な最後に成ろうとは予想外であつた。」
「そ、そうよ、それよ。ねえ、止められないのですか。お祖父様。そうしないと。島が。」
「無理じや。」
「無理だな。」
「そんな。どうしてこんな事に。」
「そうだのう。もしこの様な事態になつた原因を探るならどう考えてもアヤツであろうな。」
「ええ。そうですね。あの元でしょう。」
「ふほほほほほほほほほほほ。やはりアヤツに関わるとろくなことが無い。相変わらずアヤツの周囲は虚しさしか残らんな。」
「左様で。では、続きは乗船が完了してからと云うことで宜しいですか。」
「うむ。では後程にな。」
話し終えて一人船へと向かう。慌てるアレインは一度憎しみを込めた目を向けてバスクリハメンヴィスを追いかけて行った。
二人が見えなくなるまで眺めていた元副隊長は耳に届く恐怖と戦いながら作業を再開させる。
『無事とかは無縁な人ですからね。まあそれでも生き残ってしまうのですけど。そう言えばやり残した事。とは一体なんなんだろうか。まあ聞いたとしても話してはくれないでしょう。』
こうして時間は迫っていく。
何かを感じている。それは物理的なのか物質的なのか判断に困ることなのだが。
この島で全身に纏わり付くこの空気。何か覚えが在る。そうか。去年の施設破壊時の変な存在。あれに似ているのか。それにしてと何か違和感を。
とそんな事を考えながら足を運んだのは島でも最重要とされている区画。
何をするでも無く、この感覚は昔と同等か近いものを感じる。あの存在とはまた別の意味で危険だと警告している。
さて、昔の人は言いました。
『蛇が出るか邪がでるか。』
で合ってたかな。まあ良いか。
思考しながら到着したその場所はご丁寧に制御中枢室と銘打たれていた。
目的の場所はここ。
そうあの裏切りの操り人どもを裏で操っていた者が存在している。それも外からだけでなく、内からも。そうしないと流された情報を安全に運べないからな。
では、行きますか。と。
その前に此を着けておかないと、ついでにこれも被ってと。
さて、そうなるよなあ。まあそれでも押し通る。
制御中枢室の扉が爆発で内側に吹き飛び、中央で盛大な音を響かせ倒れる。
「さあて、ここからは。お前がやれよ。」
その言葉で軽く足が踉る。
「ふえ。うわ。い、突然放り込まないでよ。て、あれ此処は。確かあれがああで、それでこうなって。それで。はあだから嫌なんですよ。はあ。」
続けられる独り言。そこに不意突く言葉が浴びせられる。
いやこの場合、話を差し込むと言うのが正解だろうか。
『全く。よくも台無しにしてくれたね。本当に疫病神とはこの事だよ。ねえ。聞いているのかな。答えなさい。さもないと。』
壁の一部が開き中から何かが射出される。
「くべ。へ。あぎゃきゃぎゃぎゃ。」
『質問して挙げてるのになにを問答してるのさ。さあ答えて。どうしてこんな事をしたのかな。』
「くへっ。くべ。ぐええ。ど、どうして、何時も。こんな目に。最悪の、何物もないですね。ねえ、そう思うでしょ。島の管理端末さん。えはっ。」
『ほほう。質問で質問を返すとは。身の程を知りなさい。』
壁という壁から同じような物が射出される。
「うええ。嫌だな。もう。しょうがない。よね。これも。と。さてさて。と。」
『へえ。強ち間違ってはいないのかな。ねえ。どうしてこの場所に来たのかな。もしかして回収の為かな。ふは。無駄だよ。これは枝分かれの先の先。失っても損害はない。無駄な事を。』
「と、おしっ。全部終わった。さて、ええと。なに。君を回収ですか。ふあああ。何れだけ大層な物言いなんでしょうか。呆れてしまいますねえ。違いますよ。なんで僕が端末を回収しないといけないのやら。」
『な、では何の目的で。』
「さあ、僕にもわからないですね。では。これで本当に終わりです。よと。」
徐に荷物を靴に乗せ中を探る。
それをさせまいと多方面から妨害が入るが物ともしない。軽く全身で避けて、さらに避けきれなければ足しで捌く。
「お、ありましたね。本当に有るとは、思いませんでしたけど。さて。ねえ。聴いて良いですか。」
『な、なんだ。』
不意の質問には戸惑う。
「いえ、君は天才でしょう。ならこれから僕のする行動を止められますよね。」
仮面で表情は読めない。それでも楽しそうだ。というのは解った。
「これ何か解るかな。」
見せびらかすように振るその道具は。
『装置。それも対戦中に開発された。切り出しから加工組み立て全てを行える。万能製作器。《森羅万能》ですね。て、待ちなさい。どうしてそれが現存しているのですか。対戦終局と共に。』
「その経緯は知りませんけど、やはり知ってますね。なら良し。警告です。早いとこ戻るかした方が為ですよ。これから目的のために解体しますから。あ、それと僕に対する妨害は正直、時間の無駄かと。では、始めますね。」
「んん。」
突如空気が変わる。
「通さぬ道理なあああしいいいいい。故にだからこそおぉ。全てを砕く道理となすううぅ。いくぜええい。テンラバンシュウウウゥア。クラッシュウウゥ。あほれ。」
森羅万能を適当な所に触れさせると、その空間全体が瓦解し始める。
仮面で表情が見えないにも関わらず、手で隠すようにして全体を振っている。
「は、恥ずかしい。もうヤダ。終わったんだから良いよな。では。」
瓦解する天井へ向ける。
「聴こえているかい。さて目的は果たした。これで島は完全に崩壊する。まああれを放ったとかで遅かれ早かれ崩壊は免れられないだろうけど。最後に何か聴きたいかな。可能なら答えるけど。どうかな。」
反応がない。
「なんだ、逃げたか。」
『ふ、ふざ』
「あ、まだ存在してたのね。」
『ふっざけるなあああああああぁ。』
「うあっ。響くうぅ。」
『な、んて、事を。して。』
「それは簡単さ。んん。えと、なだったかな。たしか。あ、そうだ。あのね。うおっ。」
再び糸が切れたように片膝を着きかける。
『な、なんだ。一体。』
「さて、言いたい事は多々あるのだが。これは続きだ。首や背に気を付ける事だの。では。んくっ。」
三度目。
「つつっ。でだ。あの時にも言ったがな。お前達は見えているのだろ。ならこの島はこれを二つ目の土産とする。後悔しながら待っていろ。」
そして、いつの間にか抜かれていた一振りの刃物。
「それじゃあ。二度と会いたくないな。可能ならお前という存在と。」
振り上げ一気に振り抜くと空間が裂け、空気が流れていく。
『ぐつっつ。もう止められないのか。』
「んあ、そらな。えとんん。あれは関知してたんだろ。」
『ああ。だが、取るに足らないモノと。』
「あれを関知して足りないてか。はあ、もう少し危機感を。こんなのに言っても無意味か。そうだな。この島は終わった。それでいいだろ。で、もう無いか。なら。」
『最後に1つ。」
「お、なんだ。」
『君は何者だ。』
「それが最後の質問か。」
『そうだ。悪いか。』
「そうか、そう、か。」
『な、なな。なんだ。』
「くはっ。あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは。」
突然の笑い。何か狂気を含んでいる。
「いや、悪いわるい。そか。なら成功だ。では、お前とは永遠にさよならだ。」
その最後の言葉の意味を知る前に制御中枢は手繰り寄せられ分解され解析される。
それは仮面を被った者には関係なき事。
崩落する制御中枢室には何も残されていない。存在するのは瓦礫だけである。
間では画面、でなく。
仮面を外し一息着いている光魔。
「ふうぅ。島での仕事は終わったかな。まあ、後は侵食と餓食を消滅させないと本当の終わりとは言えないけど。」
残りを処理するのに実は簡単である。
片方は元代理が知らずに放ち。片方は自分で放って挙げ句に暴走に至る。
一方は予想外だが、一方は想定内。
というよりも折り込み済みである。
何せ。
よそうか。この場で自問自答など無意味。
さて仮面や装具道具を片付け背負い直して間の出口が近付く。
「余り使わない方が身のためだよ。」
振り返り全周囲を見ても自身の存在しか感じれない。
傾げながら出口へと体を入れていく。
そして間から異物が消失していく。




