表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Heart of 6 〜赤と譲渡〜  作者: 十ノ口八幸
一章~転戦の日々~
39/111

一章~消失過程~

暗く何もないと思われる空間で漂い自我を保てず、次第に崩壊し最後には発狂。通常ならばだ。

が、その漂う自我は何かに呼ばれるかのように吸い寄せられ、抗おうとせずその地点まで向かうのである。


保たれた自我は気がつくと座っていることを認識して、さらに周囲二つに存在を認めて、閉じていた瞼を開いた。

短い挨拶と頷き。片方は何かを持って弄っている。

どうしてこんな所に。と質問したが、答えは自ら掴むもの。と返答され仰ぎ見て眼を閉じ、この場に至るまでを思い出す。


「どうして僕が居る事に一応は思い出しました。ですけど。あれもしかして、僕は死んだので。」

「ほほ。そうだな。当たらずとも、というべきさの。なに少し危険な状態だったのでな、一時的に空間(ここ)まで落としたのよ。安心せい死んではおらぬよ。死にかけてはいるのだが。まあその間はあれらに少々頑張ってもらわにゃならんが。のう。」

「のう。て、他人事のように。ジジイ。何を呑気に。この流れはどう考えても。」

「くかっ。今更ながらなにを言っておる。あの時に仕損じた主が原因だろうて。」

「ぐっ。」

「で、これより主には表へ出て処理して貰うが。なに簡単じゃ。この品を目的に対して接触させればよい。それだけで後は勝手に事が進むように調整してある。」

「はあ、そうかい。じゃあ。まあ、行くかね。」

受け取り再び玩ぶようにして気がつくと消えていた。

それの疑問を打つける間もなく進行してしまう。

「なんじゃ、簡単に引き受けるのか。もっと食い下がるものと思っておったのだが。」

「ああ、そうだな。」

黄昏漂う眼差しを明後日に向ける。

「うん。凄い置いてけぼり感、半端ない。で、なんですか。」

「なんじゃ。聞くまでも無かろうに。」

「そうだな。ホントは知ってるだろ。この空間では全てが解除されるしな。」

「はあ。そうなんですよ。でもどうして僕の存在がこの場に居るのか。たしかにソチラの存在が不吉な事を言ってましたけど。それと関係が。あるんですよね。」

「それはの。」

「単純明快。そこのジジイも言ってたろ。全弾撃ち尽くすなんぞすれば、体力枯渇の上に気力枯渇。んで結果。最後は死を待つだけの状態だ。あの場で的確な事を出来る者なぞ1人だけだろうな。まあ、しないだろうが。」

「ん、それじゃあ。」

「だからの寸前で落としたのだ。そうだな、お前にはこの空間で少しの間留まって小休止。其奴に任せておけ。一通り終われば表へと出してやろう。」

「はあ。尻拭いとはなんともはや。」

「なんじゃ。まだ言っておるのか。諦めよ。それに主も理解しておろう。あれが分岐。故に諦めて進むしかなかろうて。」

「どうして彼処で仕損じるのかね。」

「確かに。だが嘆いたとて過ぎた事よ。現状を利用して事を完遂するしかないわい。」

「なら。とっとと行って。さっさと終わらせて来るか。」

短い溜め息を吐き出すと何処かへと向かって歩き、瞬間で空間から消滅した。


残された二つの存在。先に―静寂らしい時間は無かったが―破ったのは。

「暫く留まること。先にも申したがな。退屈じゃろうと。思うてはおらぬが一応表の状況を確認してみるか。」

何処から取り出したのか、それとも元から存在していたのか。

示された方には小さなテレビが鎮座していた。

随分と古くさい型のようだが。

何もしないが勝手に画面が点く。

ここまで再現する必要が在ろうか思うほど画面が点くまで少しの間掛かる。


どういう角度とか。

どうしてとか。

そんな疑問が湧き上がるより早く、

「この画面は何方の視点なんですか。」

そう。画面に映し出されたのは。一人称の視点でなく。

完全なる俯瞰視点。

それだけに在らず、というもの画面は幾つも切り替わり、俯瞰は先の通り、主観も含めて多角的に映されていく。

これを誰が。というものは野暮というもの。


では、では、見てみるかのう。


無視され流され、話を進められてしまった。



下手な動かしかたをしたからだろう。

首が妙に痛く、体の部分的な箇所からも鈍痛が走る。

「現状把握。」

と小さく呟く。

どうやら現表が指示した通りに三人が先の話をしているようで、耳に届く会話の内容が部分的にでも聞き取れる。

大部分は船体に当たる音で聞こえづらいが。


手を出す気は皆無。自力で打開して貰わなければ此方としても面白くない。

何のためにあの全てを放置しているのか。

『て、それは偶然の状態だから関係ないか。』

聞こえてくる内容も大分詰めてきた。

方針が決まるまで眠る事にしよう。と思い立ち、全身の力を抜いて眠りに落ちる。

正直、肉体の限界を越えていたのだ。

意識を保つのも辛い。

動けるまで暫く時間を要するしかない。

甲板から話し合いが聞こえている。大詰めかな。


次に目覚めると思っていたより状況が悪化していた。

予想外に船が流されているのだ。

慌てる二人は相談事をして、ヴァンは操舵室へ元管理長代理は荷物からこれまた、予想外の武器を取り出した。

慌てても良かったのだが、大元の目的を完遂するため放っておく。

見ると、一人が笑いながら、壊れた肉体を網に絡められ、しかし、目の奥に輝く鈍いモノを遠目に確認して、行動に移る。


状況が状況だけに、光魔を気にする素振りは一切ない。

いって何をするでもない。

傍観するだけだ。 その時が来るまで。


と、まあ、早く動いてくれていた。

元管理長代理が融解の光糸を放った。

傍観していたが、つと、ある一点に思い。

行動する。目的は何時でも果たせるのだ。


案の定というべきだろうか。窓から中を見ると体を崩しながらも意識を保とうとして膝を着き、苦しそうな表情に踞りながら床に突っ伏し、それでも限界は来ているように見受けられる。

此処で倒れられて手間を掛けるのも時間の無駄。で処置するため中へと入ることにする。


嘆息はしない。

入ると、今まさに意識を手放そうとしている者が一人。

なので意識を保つために一撃入れる。

何処に、とはご想像に。

一応、労いの言葉などを述べて。

覗きこむと驚き。次いで何か言いたげに声を出そうとするも、それは言葉として成立せず、空気の漏れる音でしかなかった。

その理由を簡潔に説明する。立ち上がり窓へと視線を合わせる。

意識を今度こそ落とそうとするも、携帯医薬品装置を使用して意識を失わせないようにした。

軽く言葉を紡いで引きつる表情で満足して道具を仕舞い、外へ出る。


扉を開けると雨が降り始めていた。大分薄まっているとはいえ、噎せるような空気の残滓。それは光魔には無意味といえるだろう。

「ふう。さて、と。やはり、こうなるよな。じゃあ、始めるとするか。」

倒れている元管理長代理に近づきつつ、手放された融解の光糸を確認。船の縁で乾いた音を発てて揺れている。

「へえ。知ってたけど。原型を留めておけるとは。それほどに重要なのかね。と。早く処置しないと。」

耳元で息の確認。

息はある。

「変容も変異も変位も見当たらない。やはり。」

意識を失って尚も原型を留めている彼女に再度確認し、処置していく。


はあ、漸くか。だが、此処でてのも味気ない。一つ、遊ぶか。


そんな事を処置終了直前に思い、視線を固定して硬直と歯を鳴らす。

耳に聴こえる船のひしゃげる音。それと圧するような空気。

元管理長代理に触れ、隠す。

背後で何かを述べ、途中から愚痴のような事を勝手に喋りだした存在。

どうでも良いような情報まで話し出す。

そして離れ、敢えて放置していた荷物を担ぐ、意外な重さに軽く驚いても関係ないように話を進める。

最後の言葉の途中で邪魔が入る。

が、その一撃を軽く掴み、甲板に叩き伏せる。

言葉は驚きを紡ぐが、心情は全く籠っていない。

そうして叩きつけられた者は憎しみと戸惑いの表情で噛みつく。

対して涼しげに見下し、それに返答する。

簡単な話。

このモノは目的を果たすまでの隠れ蓑として下に身を寄せていたに過ぎず。

事が終われば用済み。

引き留めの言葉に対しては、自身の手首を深々と切り裂き、夥しい出血を甲板に溢れ出させる。

それは次の動作で止血、いや、その痕すら残さず消えてしまうのだが。

満足したように土産というものを残し、最後の挨拶を終えると、世界から姿を消してしまう。


その隙間を縫って光魔はその瞬間へと小さく飛び付いた。

これが、光魔一時消失までの過程である。



「ほうほほ。抜け目ないのう。やはり見せられぬよの。そう、思うだろう。」

向けられた言葉にどう返答したものかと、思案しながら古めかしい画面を見ている。

「最中で悪いが、これから先は見ることは叶わぬ。どうしてかと聞かれてもな、返答に困る。」

画面に映されているのは雨が降り打つ甲板で倒れる一人と困惑しながら起き上がるひとり。

表情は苦悶と混乱。

雨は尚も激しさを増していく。

画面が暗くなる。

「見ていても面白味のない事態になるしかないからの。故にの、我の話を聞いてもらえるか。なに、老者の暇語りに付き合ってもらえるか。」

反論を許さない覇気を込めている。

「と言ってもの、お前の記憶には残らんのだが。ここは。一種の《夢》だからの。」

それでも聞いてほしいと云うことか。と素直に納得するしかない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ