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Heart of 6 〜赤と譲渡〜  作者: 十ノ口八幸
一章~転戦の日々~
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一章~出会い~

光魔は床に伏せて寝転がっている。

顔を壁に向けており表情は読めないが、泣いていることは明らかだろう。

どうしてか。

「そんなに水分を体外に排出しない方が良いと思うけど。床が凄いわよ。はあ、全くどうなってるのかしらねえ。」

嵌め殺しの強化窓硝子から見える背の高い木々。陽光が所々差し込んでいて見た感じは清々しそうだ。

床を濡らしている光魔の涙。

鳴き声は、いや泣き声は聞こえないが濡らしている水気で理解できていた。

「はあ。着いた途端あんな事に巻き込まれるなんて、君も相当面倒事に好かれているのね。」

視線は窓の外。言葉は光魔。しかし思考は別へ向いていた。

『どうしよう。面白そう。と言うのが本音で建前的には責任を取って。とか言っていたのだけれど。そんな中途半端な考えでこの少年に着いてきたのだけど。これから先、大変な事に幾度も巻き込まれるのかしらね。』

この考えは思考内の言葉通り幾度も眼にし、体験する事になり確信へと至る。


不思議な事にこの島に着いた彼と私は抵抗さえ許されず拘束された挙げ句に、どうしてか私は無視され、違うわ優遇されたわね私だけは。でも彼は仕事を幾つも押し付けられて、それも事前に反論は認めず彼に全て解決させた。

それもたった一日で終わらせよとか。酷すぎる上に最後は彼に何かを飲ませていたようだし。あれだけの理不尽を被っておきながら無駄な抵抗もしない彼も不気味よね。

まあ、源核から離れているから例の方法は使用できないでしょうけど。

それだけ彼は警戒される何かを持っているのだろうと思うけれど。

拘束され、この牢屋まで考えて、はあ。着いた途端に彼は床に伏せ、声を殺して泣き続けているし。

正直どうしましょう。


時間にして数分だろうか。

泣き続けていた光魔の涙が止まっていた。

それを見越していたかのように固く重い扉の鍵が開いた。

「ほう。これはこれは。まさか本人に出会えるとは望外だ。映像だけでは信用出来なかったのだが。そして、ふん。理解しているのかこの状況を」

その足取りは確りと地に足を着けて、自信に溢れていた。

彼女は困惑して、動けない。少しでも動けば、何をされるのか理解しているから。

「おいおい。私自ら質問しているのだ。光栄に思いながら膝まずき素直に答えるのが下種(かしゅ)の義務だろ。」

近づくことせずその位置からうつ伏せに横たわる光魔に疾空の一蹴り。

光魔は壁に叩きつけられ、血反吐を吐き、 全身の力が抜けていく。

このような突如の蛮行に悲鳴か駆け寄って無事を確認するものだろう。

それはその場を支配している者が赦さない。

要するに、動けず、推移を見守るしかないのだ。

「ふん。下種如きが、なんの因果かこのような事を引き起こすなど。…まあ良い。此れを上に突きだして、更に後ろで手を引いている者共をふふふ。」

嘲笑いが牢屋で反響する。

彼女は耐えているが、光魔は暴力に抵抗せず、尚も成すがままにボロボロの布のように続けざまに蹴り上げられ、殴り飛ばされ骨や筋繊維に突き抜ける暴力は内蔵まで潰れる音。笑いと重なり更なる狂気の光景と化している。

「ふうふう。ふうううぅ。はっ。これに懲りたなら二度と上位に逆らおうなどと考えず這いつくばって生きていくのだな。いや、もう二度と生きては行けないな。はっは…」

「五月蝿いですねぇ。この滓塵屑は人が空いた時間を有効利用して気分よく考えと感情を洗い流して此れまでを纏めているのに矢先に耳障りな音響とか、少し、いえずっと黙っていてくれませんか。」

「はえ。はぁぁぁああああ。」

「おや、あひゃっいつの間にか全裸に、あ、すみませんが元管理長代理。その辺に置いてもらった荷物を取ってくれませんか。恥ずかしいのと寒いので死にそうです。」

言葉とは別にその態度には幾分も感じていないように見受けられる。

どうにかこの場の支配者が放つ圧倒する力に震え続ける体を動かし指示された荷物を光魔に渡し力が抜けるように再び座ってしまう。

苦しみを含むその視線は光魔に向けられ、暴行し嘲笑い困惑するものを交互に見ている。

小言を言いながら着替える光魔。

「良かった。着替えが入ってて。元々の荷物全て船に置き去りにしてしまいましたから。あの時もらった荷物一式。はあ感謝感謝。と。」

誰に聞いてもらうでもない独り言を呟きつつ。

暗闇とは云えないがそれでも光源は外から差し込む光のみ。

この牢屋では三者三様。一人は困惑し、一人は混乱し、一人は鼻唄を奏でながら独り言を呟き着替えている。

時折平衡感覚が狂っているのか体勢を崩してしまうが。

「ああ。サッパリしました。次はお腹空きましたし、食べ物無いかなあ。おっ、有りました。では、早速。んくんぐ。なにふぁふふぇはいふぉいとほれはらはひほらいへんれひょうれ。んく、と。あ、扉が開いてますね。よしよし。この島のお偉いさんと交渉して出来る限りの情報も仕入れて、出来れば何事もなく次へと行きまたいですね。ねえ元管理長代理。」

初めて管理長代理をまともに視認し、表情と態度を見て気がついた。

「あれ、どうしました。ん。あら、まだ居たのですか。ていうかアナタは誰ですか。」

驚きは直ぐに奥へ抑え、居ずまいを正す。

「ふん。下種が軽々しく口を開くな。俺はお前達より上の存在だぞ。」

この返答が。

「うん糞屑が。一つ教えてやる。態度は時と場合と相手の素性を理解してから行動しろ。」

言葉に怒りは込められていないが、表面だけなぞれば相手には不快な感情を抱かせるには充分だろう。

「ほ、ほほう。そうか。まだ自分の立場と云うものが理解できてないようだ、な。」

強い一歩を踏み出し、その勢いで光魔の頭部へ蹴り抜く。

意思に反して面白い言葉を出しながら天井や壁に何度も当たり、着替えた衣服は再び襤褸になる。

なのに、げぶっ。や、がはっ。などが在るはずなく回転する視界の中で考えていたように見えたのは、彼女だけだろう。

その彼女も、半ば呆れていたような表情をしていた。

なので少々おどけたような言葉で初めて。

「あ、あのヴァン・クルス・チエール様。その辺りでお止めくださいますか。その、その者が死んでしまいますので。」

実際は心にも思っていないのだが、一応は止めるように進言しておく。後々に光魔から何かを云われないための打算も含まれている。

その進言が効いたのかヴァン・クルス・チエールは二度目の肩で息をしているが、少し気が晴れた面もあるのだろう。光魔への行いを中断させた。

「ふうう。ふううう。はあぁ。失礼。躾は上位たる私の責務。少々熱が入りました。」

着いた埃を軽く叩き落とす。

「では、行こうか管理長代理。何、手続きは済んでいる。」

静かに歩みより手を差し出す。

無言でこの手を取れといっている。

「どうしました。ほら早くしなさい。」

代理は言葉に逆らえず震えながら差し出していた。

この時ヴァンは細くそ笑んでいた。

重いものが落ちる音が聴こえていたが、気にはしない。

何故なら。

『は、はははは。これは面白い。これでこのモノに一つの貸しができた。さて、何を。おと。涎が。ん。なんだ。この手は。』

自己陶酔している。

その表情は完全に逝っていた。


光魔は考えていた。

どうして、こんなに。

〈事が運ばないのだろうか。〉と。

次に。

〈皆さんは大丈夫でしょうか。先生は何気に連絡を取れましたけど。ん、ちょい待て。たしか、その為に。ふぶえ。〉

気が付くと再びの裸に近い状態に成り果てていた。

痛みは多少なり在ったが我慢できる程度。起き上がるも力が入らず。顔を上げると何やら怯えた代理とほくそ笑みを浮かべている名もなき何か。

消えてなかったのですか。と思い。

だから苛立ち紛れに、嫌がらせの意味を込めに込めて、代理より先に差し出されていたその手を横から握り返す。

で。


牢屋に聞くに耐え難い拒絶の声が反響した。

「煩いな。男に触れられただけで。そんな声を出さないでもらいたい。迷惑です。」

「あ、あがががが、が」

嘆息しかでない。

「さて、どうやら普通に出しては、貰えなさそうなので。代理。ここで二つの選択が。あります。なに、簡単です。一つ。このまま朽ちるまで居座るか。一つ。強行突破して脱出するか。ですね。正直なところしたくは、ありませんけど。それと」

光魔から腕を振りほどこうとして必死にもがいているヴァン。

「そんな激しく振らないでください。痛いですから。」

代理と話している間もずっと手に触れていた光魔。

さすがに必死な雰囲気で振りほどこうともがいているヴァンに言葉を投げ掛ける。

「く、この、下種が、早く、離せ。さもないと。」

「あ、そうですね。何時までも触れていては気分が悪いですからね。離します。」

あれだけ(ほど)こうとして出来なかったのに直ぐに離れた。

離した勢いと自身の抵抗力の相乗効果で倒れてしまう。

「う、卯」

「悲鳴は止めてほしいのですが。」

「うぎやああ。」

ため息。困り顔。

「気が済んだなら出ますよ。」

とだけ発言して再び荷物から服を取り出し着替える。

「あ、先程の質問ですがどうしますか。一つは事態の推移を待つ。一つは、この島を廃島にして後腐れを残して出るか。ですけど。」

俊巡し不意に見上げた小さな窓から見える空は、何時までも変わらない空模様。

「多分、その必要は無いかも。」

息を吐き出口に向かう。

この時も、邪魔が入る。

即ち、素直に事は簡単には運ばない。

「待て下種。代理は許可を得ているが。下種には出獄許可は出していない。これより僅かでも境界を越えれば私が処罰する。」

立ち直りが意外に。いつの間にか出口で立ちはだかり何か勝ち誇ったような。その笑みは、光魔の何物も触れない。

だから短く。

「あそ。」

言って線を迷いなく境界を歩き越える。

「はっ、やはり下種。短慮にして後を考えない愚かな存在よ。己が愚行を悔いて。」

殺意を全身から遠慮など元から無く。溢れだす。

「消し飛べ。」

力は間違いなく。光魔の中心を穿った。

卑怯と誰も云えない、背後から避ける間もなく感触も確かにある。

結果。ヴァンは笑った。何かに勝ち誇ったように。笑った。高らかに。

だから、次の言葉には理解が追い付けない。

「はあ、理解出来ないようですね。さっきも言いましたけど、その笑いを止めてくれませんか。後、よく調べることですね。」

穿たれた力は間違いなく光魔を突き抜けるとその位置を起点として周囲へ飛散、一部に亀裂を走らせるほどの高威力だった。

頭を押さえて笑っていたヴァンはその言葉に、不思議な感情を抱いくしかなく。

いや、抱かずにはいられなかった。

そうしなければ自身の何かが音を響かせ、崩壊してしまう。


これまでヴァン・クルス・チエールという者の思い道りに行かなかった事は一つとしてない。

欲しいものは金と権力で手に入れ、歯向かう存在には徹底的にその身に深く刻むまで容赦なく叩き込んだ。

中には無謀と理解しても歯向かい続けてくる愚かも居るが。

その過程で命をちらした存在も数多にあったが、ヴァンはそれを気にもしない。

どうでも良いから。

だから今回も暇潰しにこの近辺を専用船で彷徨(うろつ)いていた。その道程で面白い情報を耳にし、これを使って一つの繋がりを造れると確信してわざわざ、この辺鄙な島で降りたのだ。

そして、まさに望外の光景が其処にはあった。

見せられた映像には彼女が居たのだ。それとついでの目的であろう下種も。手続きの後で自分の玩具に仕立てあげようと考えていた。

先に彼女の出獄許可を取った。

こうしてあの汚ならしい部屋へと足を踏み入れ、対面し交渉でなく脅しで屈服させ、従順な最強の一枚を手に入れたと、そして、同時に新たな玩具も手に入れられた。

まあ、愚かにも此方の忠告を無視して汚ならしい部屋を出たのだ。権利行使で殺しても誰も文句は言うまい。

そして、力を込めた一撃をその背後に穿った。

後は肉塊を此処の監守共に任せて代理を連れ出せばまた、面白い出来事が待っている。そう確信して、気分が高揚し自然と笑いが込み上げ出てしまった。抑える事はない。

だのに、どうした事だ。どうして。確実にその中心に力を穿ったのだ。本来なら大穴を開けて肉塊と化しているはずだ。なのに。なのになのになのに。なのにっ。


とか考えていたのだ。

それは光魔の知るべき事ではないので。

「あ、そうそう。元代理。此処に詰め込まれて何日経ってますか。」

いきなり話を振られて返答に淀んでしまう。

「えと。まだ3日くらいかな。たぶん。」

「そうですか。本当。素直に行けませんね。お、来ましたね。ふふ第三の選択肢。」

光魔の見る方向には。


目の前の、下等で矮小な存在の背中部分である布が破れている以外は、その穴どころか掠り傷も打撲も見当たらない。

困惑していると遠くから足音が近づいて来るのが聴こえてくる。三人の前にこの検閲島の最高責任者と思われる人物が部下を伴い降りてきていた。

どうして思われるのか。

それはその相貌が見るからに落ち窪んで、両目の下に深い隈が現れ最初に謁見した時にはこの者が。と思っていた。

だが、その表情はヴァンが見た少し前より酷く険しい。

上位存在に近しい自分が相対した時より遥かに困惑と()()が見えていた。

到着すると最初に牢屋の前で軽い伸びをする光魔。その背後の牢屋内で混乱しているヴァン。更なる奥には力なく割り座で床に居る元代理。

状況が今一読めないが、一つだけはっきりと報告しておこうと敬礼をする。それはヴァンに対してではなく。元代理でもなく。

そう光魔に対してである。

その光景にヴァンは更に混乱。驚愕の声を牢屋に響かせた。

「お勤めご苦労さまであります。長い駐留をご容赦頂きたい。何分此方も問題が発生しており、照会等に時間が掛かってしまいました。では、此方へどうぞ。」

手招きされ着いていく。

「あ、何してるんですか元代理。行きますよ。」

呼ばれて何とか足に力を入れようとしたが入らず。

薄ら笑いを浮かべて誤魔化す。

「なんですか。お腹空いてるならほらこれをどうぞ。」

差し出した物を見ても首を振り、俯いてしまう。

「泣いてるのですか。」

首を振る。

じゃあなんだろう。と思考しているとその手を差しのべる人がいる。

ヴァンである。

先程のような打算ではなく純粋に助け起こす為に差し出されたその手を僅かに戸惑うが、視線を光魔に向けても傾げるだけで、諦めて手を取り起き上がらせてもらう。

付いた埃等を軽く払い、考える光魔に視線を向けるが、最高責任者である者に連れていくよう話、牢屋を後にする。


「ふあぁ。眠い。あ、そうだ。連絡系統はやっぱり無理なんですか」

「は、はい。数日前より他島への連絡が途絶えてまして。人員派遣はしているのですが、それもまだ。」

「はあ。そうですか。それなら連絡の仕様がないし。仕方ない。目的の島へ向かいますか。面倒ですし待っていても時間の無駄ですから。」

自分の端末を操作して。情報を打ち込み、送信する。

『端末の送信は出来るんですね。まあ、受信されるかは不明ですが。』

端末をしまう。

「さて、えと、次の属島はたしか。二桁前半でしたっけ。」

「は、はい。此方が貴方が行かれる。その。属島です。あの一応、規則なので発言しますと。その。現在この属島。は一人の重罪者が掌握してまして。近づくことさえ難しく。」

「ふうん。どうせ。簡単には落とせない。とか短絡的に考えてたんでしょ。んで結果が島の陥落と全権掌握。さらに人質ですか。ふはは。まあ、人質は諦めて貰って。早いとこ済ましますか。」

「は、え。そ、それは」

「僕は関係ないですよ。何せ交渉人。でなく仲介人。ですから。まあ、身から出た何とかという事で諦めてください。では、準備も終わり次第行きますか。知りたい情報も知れましたし。」

席を立ち出ていこうとする。が一人妨害者が立ち塞がった。

「まて下種。貴様、見捨てるのか、高位の方々を。それでも」

「ああ。まだ居たんてすか。てか何でさも当たり前のように同席してるんですか。まあ別に良いですけどね。はあ、で先程もそこの監守長さんに言いましたけど、僕は仲介人。人質とか、何だとか云われても。元々戦後処理の仲介として仕事してるので、内容には含まれていません。人質。は、はは。もしかして重罪者。でしたか。通信できるなら僕はこう言います。『好きなようにすれば宜しいでしょう。』とね。これでも一応は譲歩している方なんです。これ以上は疲れるのでやりませんよ。僕は。」

「ふん。やはり下種か。それほどに上位者を恐れているのか。もっと思慮を広くもて、もし人質を救出できたなら、それは上位者に多大な貸しができるのだぞ。それを易々と手放して。愚かにも程があるぞ。」

「へえ。で。」

「で、だと。」

「はい。それで僕に何か美味しいことがありますか。」

「やはり馬鹿か。言ったろうが。」

「上位共に多大な借りを作れる。ですか。はっ、それこそ馬鹿らしい。そんなもの作ったところで何の意味がありますか。出したら出したで揉め事に巻き込まれるのが目に見えてますよ。ならそんな愚かな事をせず本来の目的を完遂すれば上位共とかは傲慢が保たれるでしょ。」

姿勢を変えて。

「更にはそんな事をした場合。上位共の事。様々な手を尽くして交渉を無かったことにしようとするでしょうね。何故なら、上に立つものが下にその様な不様な姿勢を見せてしまえば。それは即ち自分達の全てが崩壊してしまうからです。なので、その場は上手くいっても後々に残されるのは平穏とは程遠く、何時如何なる場合であっても休まる事がない、赤き水に全身を浸かるような情景しか見えませんね。」

一言で言ってしまうと、面倒だからやりません。と言っている。

「それでも上に借りを作った方が良いですか。」

光魔の視線はヴァンの視線を外し、その後ろへ。

「きさ。」

「や、やっと、見つけましたよ。坊っちゃん。フヴェ。」

「何度も言ってるだろうが。隊長と呼べと。」

「ひ、ひいひひ。す、すみません。ぼっちゃ。あ、た、隊長。」

「で、どうしてはぐれた。」

「い、いえ隊長が入管手続き中に先へ行かれたからで、はあ、探す身にもなってください。」

「知らん。」

「話に割り込ませてもらいますけど、誰ですかその人は。」

「下種、お前が気にする必要はない。」

「そうですか。では話を進めますね。えと、何処まで話しましたかね。あ、そうそう。んん。では。んん。」

三度姿勢を変える。

「どう考えても僕には悪いほうしかありません。美味しい想いは他の人達が全て持っていってしまうので。だから貴方が好きにすれば良いでしょ。僕は一切干渉しませんから。」

「それはなにか。お前はただ傍観するだけと。そう言うことか。ふん屑が。あのようなものたかが罪人一人だ。簡単に済ませられる。まあ、良いだろう。暇潰しには丁度良い。燻らすのも。」

「それはお兄さんがその罪人というのを処理するということで良いですね。言っておきますけど、手に負えない、代わりに。なんてのは拒絶しますから。」

「ふん。下種が。俺が引き受けた事を途中で投げだすことは絶対に有り得ない」

荷物を纏めに入る。

「そうですか。それではお二人の荷造りが終わり次第行きますか。次の目的島へ。とその前に出してくれますか。」

「なんの事を」

「ボケには早すぎますよ。判っているでしょ。なんなら」

「ふん。いいだろう。だが、預けるだけだ。」

「当たり前です。僕は掠め取るなどという愚行などしませんよ。後々面倒になることは目に見えてますから。」

「はっ。ならば良かろう。」

首元にあてがい、それを外す。無言で渡された品は光魔が受け取らず、元代理が預かることになった。

「では話も纏まりました。懸念材料も一つは潰せました。今度こそ行きますか。」


これを纏まると云うのでしょうか。

と、元代理は思うのだった。

「さあ、それは人其々なのでなんとも言えませんね。」

無言で返すしか無かった。

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