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Heart of 6 〜赤と譲渡〜  作者: 十ノ口八幸
一章~転戦の日々~
35/111

一章~三つの道筋(経過)~2

船室で二人が顔を付き合わせて今後の方針を話し合っていた。

「でだ、俺達には何が待っている。」

第一声はヴァドロッド。彼の部下が出入り口を見張っているので容易く逃げられない。

「それは多分に含みすぎて、どう答えれば。」

「なあに、方針をな部下達に話さにゃならん。大まかな方針だけでも決めておこうかとな。」

「そうですか。でも、あの者と同じですよ。ようは、出たとこ勝負で行き当たり張ったり。だな」

「そうかい。ならその方針で行動しようか。なに。俺の所はその辺は慣れてるからな。」

「そうですか。ならそうですね。貴方、死んでくれますか。それか消えて下さい。」

これをもって頭であるヴァドロッドは死に、存在が消えた。


殺害状況を鑑みるに、犯人探しをして時間を取られるのに深く不快だと思いながらも、その現場を保存しておくように言明し、閉鎖した。

時間は深夜に近くかといって、夜にしては経っていた。

船内と云えども大型である。故にこの時この道筋を担当していたカーンマイルは焦らず的確な判断をしたといえる。

あの現場発覚直後に閉鎖させたことには意味があった。

なぜならあれ以上現場を荒らされ、物理的証明を消されるという心配は少なからず減ったといえる。

「彼は別にして、まさか船内での殺しとは。予想外にも程があるぞ。さてどうしたら良いのか」

通信機が鳴る。

「どうしました。」

「いえ、少し来ていただきたい。」

「至急の事かな。」

「そうですね。出来るなら早くで願いたい。」

了解して部屋を出る。


目を見張るものがその場所にはあった。理解が出来なかった。何故。と思考するしかない。

しかし、それは瞬間の事。状況と全員の位置とその惨状。そこから導き出されるものなど決まっている。

「そうですか。その者達を犯人としたのですね。なら動けないように厳重の下で監禁しておきます。次の目的島まで誰も入れないようにしておきます。」


数日後、犯人引き渡しのため属島手前の検閲島へと降り立ち、犯人を引き渡す。

「これで一つは終わりましたか。では、皆さんは専用へと乗り換えて属島へいきましょうか。」

と、号令と指示を出し、出発をしようとしていたが。

「待ちなさい。」

「ん、おや何か手違いでも。」

「大有りだ。」

引き渡した者達を指し示し。

「報告では君の後ろにいた者達と聴いていたが。どうしてこの者達なのだね。真っ当な説明を要求する。」

「そうですか。なら端末に詳細情報を送っておきます。後で見ておいてください。それでは、我々は急いでいるので此にて。失礼。」

捲し立て言葉を挟む間さえ与えず乗船した。

次に言葉を発したのはもう出航した後だった。


送信された情報から。

『先に書き記しておくと予想通りの展開で、自分の考え通りに事が運んだ。』

この書き出しから暫くは長い中身のない言葉が綴られる。

『さて前置きが長くなりすぎました。本題に入りましょう。どうして最初の報告と違うのかは以下で説明します。』

この後は箇条書きで記される。

・報告の前に実は単独で調べていました。

・尽き出した者達からの目を欺くためにその途中で報告を上げました。

・手始めに状況報告という呈を装い各人に個別で報告を(これの詳細は最後にでも)。

・状況と時間を鑑みて殺しの当たりは着けました。

・極秘に全てを把握する方法を用いて容疑を掛けた者を炙り出す。

・最後に動かぬ証明をして捕縛と意識を奪う。

此にて終了。

尚、当該の証明は音声、動画、画像となっている。別項の添付を参照されたい。


溜め息と船内の空気の淀み。それは先の検閲島での犯人引き渡しによる仲間の裏切りに他ならない。

が、ここで一つ疑問が生じる。

何故か同じようなそれか近い事が有ったように思われる。と思考しているが、どうしてか現実感がない。なので事は奥へと沈めていく。

目下の懸案事項は任された部隊の運用方針。

意気消沈の上に此方が提示したとはいえ、信頼する頭が居なくなったのだ。まあその辺りは力と通り名で何とか収まったが。如何せん、士気が低いことには手を施さねばならない。

だが、これまでそういった類いには縁がなく、施し方が判らないでいた。

それにしても、と。手元の資料を流し読みしながら机の上に紙の束を投げ置く。

指遊びをしながら足指を器用に動かし背もたれに寄り掛かる。

「何者なのか。出会ってから、いや依頼を受けてからずっと調べ続けていて、欠片すら手に入れられない。」

視線を左右に動かし、船室の調度品を(つぶさ)に視界へ納めている。

束を軽く捲るもその視線は別を見ている。

「さて、どうしたものか。自分の持てる物を全て使っても解らない。なら、答えは簡単だ。しかし、それは本当にあり得るのだろうか。まあ、今は置いておこう。現在の懸案事項はあの者達の士気をどうにか上げないといけない。さてどうするか。」

目を瞑り、思考を内に潜り込ませる。


数時間して着いた属島。旧英国。属島ツトル・ローゼ。

研究内容。動植物による世界の緑化推進。及びそれに関連したもの全般。

内容こそ成り立っているがその内は他の島の研究と似たような凄惨な内容となっている。

そして現在。不満が暴走して反乱が島の全てで勃発している。

そう、どう見ても事が終わっていないのだ。

遠目に見ていた監視も溜め息混じりに報告していたほどだ。


近づくと照明での暗号を送られ、島へと移動した。

降り立った港らしき場所には、負傷者や処理された死体その間を駆け回る医療班の人達。完全に真っ只中であった。

溜め息を吐き出す時間もなく、降りた者からある瓦礫のまだ建物としての呈を保っている場所へと集められた。

通された屋根無し窓無し寝床無しの三拍子揃ったその中で、傷みすぎてボロボロの軍服に身を包んだ軍人と相対した。

「咳払い失礼。んんっんっ。ようこそ。軍指令本部へ。と。お疲れの所申し訳ないが、現状を理解してもらうため、此方を見てもらいたい。」

自身の端末を操作して、大型の投影装置から照射された情報は、秒単位での推移を壁に映し出す。

「言葉を挟むことを失礼。古い映像は数十年も前になるか。これが最初の事だと推察されている。」

見せられた映像は何処かの監視映像。路地裏だと思われるが、映像が古いのか荒く詳細は解らない。

しばし何もない映像がながれるが手前から1人が駆けていく。その直後に別の者が駆けていく。そして路地裏の奥へと二人は消え、更に数分して画面が揺れ、映像は遠方を捉えると消えてしまった。

「更に失礼。これは資料によれば、だが。その当時の事件。いや、戦禍の発端と成った映像と云われている。何度か調べているはずだが、詳細な資料が見当たらないのだ。」

場所の特定は基本的には不可能だろうと確信した。なのでこの映像は基本無視の方向で進めようとしていたが、横から余計な事を何者かが言い出した。

「あの、この場所に付いての詳細な資料か何かが有れば見せて貰いたい。無理なら場所の特定に時間を頂きたい。」

と誰かが進言してしまった。

これ幸いにと。

無理難題を突き付けられ。反論する隙もなく、調査する事になった。


指令部を退室してある一画へと集まった面々。

溜め息混じりに腰を下ろす者。カーンマイルは考えていた。

あれはどう考えても厄介者としてだろう。

そんな思考を巡らして視線を上げる。皆が同じような表情をしていた。

「仕方ない。ならばあの軍人の目論み通り、我々はあの映像の場所特定をしましょうか。もしかすれば面白いし、何かが手に入る、それか見れるかもしれない。」

そう決まれば早い。島の地形と地図を参考に升目のように区切り、四人から六人で一つの班を編成。一つの升目での調査時間は精々30と云うところか。

「それでは、各班の担当区画を調べてください。終わりましたらその都度報告を挙げてもらいます。精査は私が遣りますので。」

そうしてカーンマイルは拠点に残り、本部を出る前に借り受けた機材の設置と起動。プログラムを組み上げる。

頭部装着型通信機を装着して手元の機器を操作する。

「あーあー。試験中に付き。繰り返す試験中に付き。」

一度電源を切り、別の機器を起動させ画面を表示させる。

「先ず先ず、ですかね。では、んん。」

頭部装着型通信機の電源を入れる。

「これより軍人様のご厚意による戦争発端と云われている場所特定を始めます。取っ掛かりは何でも宜しいので出来るだけ多くの情報を集めてください。では。作戦開始。」


開始直後から真偽定かではない情報が膨大もたらされる。

「ほほう。こんなにも。ではでは、始めますか。」

手を擦り合わし、機器を操作しながら各班に大まかな指示を出す。

こうして集められた膨大で詳細な動画や画像、書庫等からの情報を細かく選定していき、残された物を仕分けていく。

「ほう。やはりなのか。それともそう言うことと云うべきか。判断は尽きかねますが、そうですね。」

頭部装着型通信機の発生部に声をあてる。

「皆さんのおかげで何とか情報が集まりました。ですが足りない部分もあるので引き続き御願いします。」

息を一つ吹き出し、作業を続行する。

「準備も整いましたし。後は、ふははっ。」

1人ごちながら黒い画面を眺める。自分の姿と背景とが見えている。


丸一日掛かって漸く精査が完了した。

背もたれに寄りかかり、仮の天井を見上げる。

さて、から初め。

「此にて調査終了。皆様お疲れさまでした。やはり人海戦術。」

幾つかの資料に区分けした調査報告書の内容を読み直すように視線を動かし、伸びをしながら首を軽く鳴らす。

「さて、皆さんが戻ってくるまで時間もありますし、はあ。片付けないと。いけませんからね。」

視線を天井から背後に移すその先には、がんじ絡めにした手足があり得ない方向へ曲げた軍服の兵士と襤褸服の人達。

「さて、時間も無限とはいきませんか、今から楽しいお掃除といきますか。ねえ。ミナサン」

向けられたその言葉には死を含んでいた。

猿轡をされ動けなくされていて、拒絶を表現するのはくぐもった漏れる声のみ。

「さあ、楽しみましょう。」

笑いと悲鳴が重なり、そして虚空へと消えていく。


数日して全班員が拠点に集合した。

気箱を六つ使った台に立ちながら集まった班員を見渡す。

「よしよし。ではこれからの事を話す前に労いを。」

深呼吸。

「先ず全員には1日掛かりの大変な仕事を押し付けてしまった事に感謝を。そして皆が集めてくれた情報にも有意義な物が有ったことを報告する。」

「そして昨日見せられた映像を散開直後に送って貰った後、分析した結果、面白いことが判明した。これは作戦本部で発表させてもらうため今は省く。それと我々、違うな。あの子供関連でやはり紛れ者が居たことが判明した。まあ、それは概ね、と言うより全てにおいて片が着いたと言っておくがまだまだ潜伏している輩もいるはずだ。もしかすれば我々の中にも居るかもしれないが其れはそれとして一先ずお疲れさまでした。」

深々と頭を下げる。

少しの静寂と直後の歓声と拍手の嵐。

顔を上げる。

「最後に謝らせてほしい。私の不手際で彼。ヴァドロさんを死なせてしまったことに。彼の行いは私は其ほど知り得ていないが、それでも彼の功績は大きいと知っている。この先、私に着いてこようと思わない人が居ると重々承知している。だが、我々の仕事は世界を救うことに成るだろうと思う。もし、これらが終わったなら彼に対しての色々な事を受け入れるつもりだ。それまで待ってもらえないだろうか。」

反論は無かったが、啜り泣く声がちらほらと。

「最後に言っておくが、私の言葉を鵜呑みにしないことだ。」

二度目の深いお辞儀をしてあの軍人の元へと戻る準備をして、終了すると出発する。


出発した部隊の表情は芳しくない。これはヴァドロの死を起因する面もあるがもう一つあった。

隊列の最後尾。其処には簡易であれど現在の中位から上位の下に位置する者達が堅牢な檻に四肢を不可解な方向に曲げ、拘束された状態で視界と嗅覚と声量。さらには聴覚までも封じられた状態で詰め込まれていた。

先程の説明の中にあった紛れ者と理解しているが、どうしてかその質問関連は出来ていない。

カーンマイルもこの者達の関連した詳細は後に話す事を確約していたので、それ以上の追求は無粋と思い誰もしなかった。

その雰囲気に気づいているカーンマイルも別段取り繕わず指令本部まで戻ってきたのだった。


地下。それは人工島で有るがゆえの当然の理由。

建設時の資材搬入等に使用され後は廃棄されたある通路に連なる一室。その中に応対した軍人とその部下、更には敵対組織たる反乱軍までもが集まっていた。

その前でカーンマイル以下の仲間は一列に並び、壁際に立っている。


「では、これより面白い事の発端をお話いたします。野次に関しては最後の質疑にて答えたいと思います。まあ可能で在れば、ですが。」

軍人。政府軍人ツトル・ローゼ鎮圧部隊隊長。トトル・アリアス少佐に投影装着の電源を入れてもらう。

「ありがとございます少佐殿。では、これで準備も整ったので始めさせてもらいます。」

長い木を少し加工して造った指し棒を使って、映し出された調べた情報について説明していくことした。


発端と云われているあの映像ですが、島内で調査をした結果。結論から申し上げますとふふ。驚きましたよ。何せ、該当地形が有りませんでしたから。勿論、過去の事なので整備や隠蔽のための工作も視野に入れて調査をしてます。それでもこの島のどの区画にも一致する場所は有りませんでした。これが結論です。あ、そうそう我々が無理矢理にと仰るかと思いましたので此方をどうぞ。


手元の装置を操作するとそれまで投影されていた映像が切り替わる。

映し出されたのは複数の人の顔。それと持っている得物。

位置的には遠くからだろうと考えられる映像と多角から撮られたと思われる映像。

壁際に立っていた者達は納得。そして政府軍と反乱軍の表情も驚きを隠せないでいた。

映像には他方面からある部分へと向けられる数えられない人の影。

それはある映像で詳細に判明する。

それは先程の簡易である堅牢な檻に閉じ込められた二組織の衣服を着こんだ者達。

そしてそれらは合図を待っていたようにある人物目掛け襲いかかる。

椅子に座っている、作業中だと思われる者は気付いた様子はなく、勿論軍人と反乱軍は危ないと口に出す。

が、それはそれ、予想だにしなかった事が起きる。

その映像で理解し難い事が映し出されていた。


一斉に襲わずに合図をもって、身近に居た者が死角と思われる背後から得物を振りかぶり一気に下ろす。だが触れるより前にその者は吹き飛んでしまい、背後を数メートル地面を滑る。

呻き声は聞こえない所を見るとどうやら死んだようだ。


言っておきますが、彼は死んでませんよ。


これに関連して周囲に隠れ潜んでいた者達は作戦を変更して一斉に襲いかかる事にしたようだった。


襲うという選択肢は間違っていると、後で彼らは後悔してましたよ。何故なら本来の作戦では自分を動けなくしてから情報を削除するという簡単な仕事なんですから。それはほら見ていてください。


映像には襲いかかる複数の人を相手に、座っていただけのカーンマイルは腕のみで捌き、椅子を武器のようにして絡めたり防いだりしながら制圧していった。

適当に設置されていた記録機器を持ったのか画面の一つが揺れ動き、捕縛した者達の1人に近づく。

その中で幾つもの質問に素直に答える者は、次第に顔が引き吊っていく。


『さて、お疲れさまでした知りたい事は粗方知れましたし。あ、そうだ先に言っておきますね。逃がす気は更々有りませんので悪しからず。では。』

喚きは直後に鈍く響く音を伴い悲鳴と絶叫に変わっていく。

最後には笑顔のカーンマイルと不条理すぎる状態の人の山。

これが部隊が目撃した両手足が不自然な方向に曲がっていた者達の理由である。


この中で言っていたのが、この島の地形とあの過去と云われる映像の違いの理由です。それが。

「それがあの映像の大元はこのツトル・ローゼとは別の島での爆発事故を使った。」

「だ、だが、現に死者や」

それは過去と云われている記録映像上です。実際の記録に照らし合わせてもその様な痕跡は見当たりませんでした。我々が機材を用いて録画した物にはその様な場所が有りませんでしたから。時間も掛けたので確実です。それがこの映像ですよ。


示された映像は該当されると思われる場所だが、周囲と比べても遜色なく経年劣化も同じと見える。


それにこの捕縛拘束した者達の後ろには、現在も長く続いている各属島内部抗争を裏で調整している輩が見えてしょうがないんですよ。自分としては腹立たしい事この上ない。なので質問です。反乱軍である貴殿方の後ろ楯。それも資金援助や武器の売買に関して知っていますか。その出所を。

「そ、それは。ん、あ、れ。」

やはり強力な意識拘束が施されていますか。まあ、自分の身内にそれに詳しい者が居るのでその者に調べてもらいましょうか。では、次にですが。

「待ってもらえるか。話が早すぎて理解できないのだか。」

それは今は諦めてください。詳細な説明は後程添付情報で送りますので。それでは続けますよ。


それで自分は、あの映像が一体何時何処で撮られた品だったのかを調査しました。

映像には幾つかの証拠がありました。 一つは時間。

これは空の明るさから見て朝から正午過ぎて三、四時間位ですね。根拠は明るさもですが太陽の位置です。

現在世界を覆う穴の影響で太陽からの光には散発的な有害物質が含まれて地上へ注がれています。

そして過去の記録と照らし合わせた結果、当該の時間と地形が完全一致した場所。それがこのツトル・ローゼの姉妹島の一つ。属島ナルシサス。

この属島の地形と太陽光の差し込みかた、そして時間が完全に一致しました。

ここで疑問なんですがどうしてこの映像がツトル・ローゼの映像として記録されたのか。それは推測ですが、昔、この英国領域の島々の間には何か争い事が有ったのではと。その上でこの映像を証拠として提出すれば当時の杜撰(ずさん)な管理や審査など穴が空いていたので、それと時間も限られていたと思われます。なのでこれを検証せず鵜呑みにして現在まで長く続いている戦争遊戯が始まったと。

では、お聞きします、お二方。

この情報となる映像をこれまでの間に詳細に調べたと思いましたか。それか一致する場所を探したとか聞いていますか。

「待て、待て待て待て。は、記録。調べる。なんだそれは。何を言っているのか理解に苦しむぞ。」

「待ってください。ど、どういった経緯か知らないが、は、それはこの戦争の発端を根本から」

否定しますよ確実にね。

「だ、だが、もしそれが本当なら、今まで行われてきた。」

はい。この内乱は無意味になりますね。

心中察することは有りませんが。お二人に取っては自身の何かを賭けた事だったのだと思われますが、では、どうしてこのツトル・ローゼとは関係のないあの映像がそう伝播されたのか。これは誰にでも推測は立てられます。何故なら世界に蔓延している怨嗟の根幹には必ず何かしらの要因が有るのです。それが。まあ分かれば苦労はしないのですが。云えることは、一つです。何者かが意図的にこの状況を造り上げている。そう推測するしかないですよね。普通なら。

ですが。この先を知りすぎると必ず世界から剥離されますね。

ふふふ。

では、以上の事を踏まえて、軍と反乱軍。双方の意見を聞きましょうか。

視線は二人。軍人であるトトル・アリアスと反乱軍最高責任者アルメイド・カルシクル・ヴェロートへと向けられる。



此処からは二人の証言という独白のようになっているかも知れず。


さて、先ずは此方が話させてもらおう。

俺の名はアルメイド・カルシクル・ヴェロート。知っているだろうが名乗らせてもらう。

そうだな。俺はこの島。ツトル・ローゼの内乱が産まれる前から始まっていたと聞いている。

聴いている限りで、百年は行くんじゃないかね。細かい事は知らんが。そう聴いている。

先に言っておくが、映像も含めて見たこともある。

さっき言っていた例の調べ事だが、少し待ってもらえないか。何せ、俺の情報網は複雑でな、この反乱軍を統括しているが全部を把握している訳じゃない。何故なら、今は使用不能となっているモノもあるからなまあ、何かの役に立つかと思って定期的に繋がりは保っているがな。

話が大分逸れたな。

んん。でだ、俺の情報はカベと呼ばれている連盟所属の情報屋だ。大体はこいつらから仕入れているよ。

まあ信頼しているが、俺達でも仕入れた情報の裏を独自に精査はしている。

間違いようがない。最後は俺自身で確認しているからな。

そうだ。ちょい待ってくれ。おい。俺の端末を持ってきてくれ。そうだ。


これが俺の端末だ。色々改造しているから俺にしか動かせない使用に成っている。

でだ、これをこうして、更には此処を、出た出た。これだ。

これまで集めた仕事の上では欠かせない情報を逐一仕分けして纏めてある。


見せて貰った画面には確かに色々な情報が網羅されていた。


これがこれまで仕入れた情報だ。自由に見てもらって構わない。


カーンマイルは端末を操作して内容を全て記録した。


でだ、此が俺の情報源だが。


何気に納得して端末を返却、自身の端末に何かを書き込んで天井を見上げる。


解りましたでは、次に貴方による告白を御願いします。


先に述べたようにこれは独白であろうか。


今度は、私か。そうなら。

んん。では、改めて名乗らせてもらおうか。

私の名はトトル・アリアス。このツトル・ローゼの全指揮を任された者だ。

それは先程の情報が本物としたならば瓦解してしまうのだが。

でだ、先に云うとだな、私の情報は上からだ。

私の権限ではその大本を知ることは出来ないと言っておく。

そして、私も其処の者と不愉快だが、同じように調査しようとしたことはない。独自の情報網は構築しているが、それに関しての調査はしていない。

先程そちらが言っていた事が真実なら、我々や敵対しているこの者等に何時、何処でその様な処置をされたのか。

記憶に軋みのような部分はないと思われますがね。

そう言えばそちらには詳しい者が居るとか。そうですか、なら、決めました。

一時停戦を申し込む。勿論、此方の手数は揃えてあるので何時でも始められる用意は整っている。

そして、そちらがその気なれば、今すぐにでも始めたいと思うが、如何かな。反乱軍殿。


ここで話を振られ狼狽するが其処は上に立つ者であるゆえか、臨戦態勢に入っていた部下を制して冷静に対処する。

この一連の二組織の独白した其々の頭の話を聞いて、カーンマイルは少し傾げて居た。表には出さず、内にだが。

「少し宜しいかお二方。」

二人が返答する。

「いや、二人には独自の若しくは長きに渡る構築した情報網が在るのですよね。」

二人は肯定する。

「なら矛盾しませんかね。どうしてそれを使っていて使ったという記憶、あ、そうですか。だから矛盾しているんですね。納得です。」

何が云いたいのか要領が得られない。

「失礼。そうですね。ではこれを見てもらいたいのですが。」

と投影装置を端末で操作して何かの画面が表示される。

「これは資料館と云われていた場所からの物です。始めにお会いしたときに仰っていた過去の資料ですが、予想通り何者かが大部分を破棄してました。犯人はあの出入りの形跡を見た限りですが、歴代の現場指揮官でしょうね。つまりは、後催眠を用いてある条件を満たした場合にのみ発動する。そういった類いの術を掛けられていたかと。」

トトルの腰が少し浮くが思い止まる。

「質問ですが。これまで思い出す限り矛盾する記憶は現時点でありますか。」

思い出すように視線をさ迷わせ、腕を軽く叩くが、「済まない。今はまだ分かりかねる。」

何となく納得する。

アルメイドにも視線で聞いてみるが同様の反応。

「そうなんですね。なら、お二人には後々ある者に会ってもらいます。拒否権は有りませんので。と、これくらいにして。話を進めましょうか。」

次に操作して映し出されたのは何処かの画像複数。

「これは随分と苦労したようで、まさかあんな深くに紛れていたとは。」

一つは廃墟。一つは壊れた複雑な装置。一つは何かの遺骸らしき物。更に一つは壊れ朽ちた頑丈な鉄屑。頑丈なのに壊れているとかは無しで。なんだろうと誰かと言わずその場に居たものは思うだろう。それを察して。

「この画像は昔のそれも随分と古い施設らしいです。」

「そ、それと我々のその、戦争に関係が」

「いえ、無いですよ。ただ、これを見せておいた方が役立つかなと。そしてこれが見てもらいたい物です」

転げたり呆れたりしていた皆を無視して話を進める。

その画像が映し出された刹那に二人の表情が一変する。

「これが撮られたのは数百年も昔だとか。情報処理中に見つけまして。もしかしたらと思ったのですが。どうやら、当たりのようですね。」

「そんな。」

「まさか。」

「合成や細工の類いを疑い、事前に調べましたよ。結果。完全一致の本物という解答を得ました。」

画像の情報を二人の端末にも送信する。

「双方でも調べてもらえれば此方としても幸いです。」

受信の音が鳴り、画面を確認すれば確かに眼前の画像と詳細な情報が添付されていた。

「この方はご存じですよね。」

「し、知ってるも何も、世界府庁最高顧問。ウルイア」

「反乱軍創始者にして初代軍団長。アーヴスタ」

と二人の答えは食い違う。

「先に言っておきますが、二人の答えは正解ですよ。」

驚く二人とその部下に微笑みながら話を続ける。

「現政権より以前の世界府庁は皆さんも知っている通りです。ですが、その最高顧問は変わらずなのですよ。ええ。そして、反乱軍はそれより少し後に創設されました。」

次に映し出されたのは並立つ集合画像。

「これは先程より、そうですね。三桁後に撮られた物です。」

ある一部を拡大する。

「んな。」

「そ、そんな、筈は。」

拡大されたのは1人の人物。その人物は二人がよく知る人物だった。

「これについても貴方方に依頼したい。調べてほしいと。そして現在の姿がこれになります。」

三枚目は先程の二つと比べてもあり得ない程に年老いた老人が写っていた。

「驚くなかれ、あれほど不老と思われていた人物が急激に老けてます。何か在ったのでしょうか。」

何が何やらと言う他ない。

「さて、どうしてこの人物が二つの組織をと思われますがね。その答えは。」

「旧上層部の戦争遊戯。なのですか。」

「そ、それは」

「ご名答。といっておきます」

そう、今より数年も前に暴露されたあれは世界を震撼させ、信者と云われる者達を関係なく根絶やしにし1人の英雄を生み出した。

「で、では彼は」

「はい。面白可笑しくするために、そしてあれを生き延びた唯一の人物ですね。まあ、今現在、我々やその他を持ってしても危害を加えることを不可能にしています。まあ、1人を除いて、ですが。」

瞼を閉じて思考する。

「ではこの話を終わらせて次に進めますが、何せ彼を害する方法は今現在ありません。なのでこれは一旦置いて交渉と行きましょうか。」

呆気に取られる一同。これはカーンマイルの仲間みたいな者達を含める。

「で、ですね。仲介である自分の提示する交渉内容ですが。此方になります。」

投影された画面には二組織に対する大まかな譲歩内容が記されている。

「これを考慮してまあ、納得は出来ないでしょう。ですが納得してください。」

「ふうっん。」

「お、面白いな、これは」

「言っておきますが、自分に抗議しても無意味ですよ、て、納得ですか。もしかして。」

「ええ。」

「ああ。」

「簡単には行かないと思っていたのですが存外行きましたか。」

その後は早く、調印式の前に二組織の幹部による組織内の構成員たちの説得に長い時間を要したが、最後には全員が納得してしまう。

「はあ、よもやこれもですかね。、ではこれよりこのツトル・ローゼ終戦協定を始めます。先ずは此方にお二人の遺伝子情報の登録を。」

二人は用意された刃物で其々の一部を少し切り裂き、赤き液体を垂らし、調印とする。 これは映像として、後に確たる証明として記録される。これは逃れを防止させるための一種の措置である。

「では、これにより終戦協定を此処に受理します。これでこのツトル・ローゼでの戦闘行為は一切禁止されました。如何なる理由でも例外は認められませんので。そのところは徹底してくださいね。あ、それと第三者その他も同義ですよ。」

笑顔が怖いと全員が思ったのは誰が知りようか。


さらに幾日かしてカーンマイルは瓦礫の側で悩んでいた。

『ふむ。これでこの属島の内戦は終結の運びとなりましたが、自分、いや、あの少年の仕事一つは終わりを告げました。ですが余りに素直に進みすぎているような気がして成らない。もしかして何者かの意志が介在しているのだろうか。』

それは終わった事として別にし、次の属島でも一波乱ありそうな予感がしてならない。

それでも何か充足感が在ることに満足している自身がいる事に気持ち悪さを覚えている。

気がつくと港に出ていた。

今は復興のために二組織が協力している。

和む気にはどうしてか馴れないが、一つの仕事を終えた充足感が心を満たしていた。

「さて、皆さん。此にてこの属島での我々の仕事は終結しました。ですが、まだまだ仕事は山積みです。次の属島でもやはり、同様の一波乱が在るでしょうが、頑張りましょう。」

『おおうっ』との返答に満足はしてない。なぜならこれは始まりに過ぎないと、カーンマイルは理解しているから。


数時間して乗ってきた船に熱が入り、動力炉が轟音を響かせる。

「後の処理に関しては一括で送信願いたい。自分が精査して大元に送信しておきますので。では、出港準備。」

港には二人の人物。ツトル・ローゼ制圧軍少佐。トトル・アリアスと元反乱軍総指揮、アルメイド・カルシクル・ヴェロートしかいない。他は復興支援で手が離せないので双方の代表として二人が出向いたのである。

「もう会うことはないと思いますが奮闘と発展を期待していますよ。」

優雅な礼をして即座に解くと、「出港。目的島は、属島ナルシサス東港。」

「サーイッエッサー。」

こうしてカーンマイル以下を乗せた船はツトル・ローゼを離れ一路次の目的島、ナルシサスへと進んでいく。

振り返ると港には今だに敬礼している二人の姿が見えていた。

息を一つ吐き、二人から視線を外し前方へと視線を向ける。


見上げた空は重い雲を抱いて先行きを暗示しているかのようだった。

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