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Heart of 6 〜赤と譲渡〜  作者: 十ノ口八幸
一章~転戦の日々~
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一章~不明地点、影、拷問尋問、破壊~

光魔は困惑していた。

生温い感覚のあと気がつくと知らない海の上。左右近くに何も無く、後方の水平線辺りには何かの筋めいたモノそれが左右にずっと続いている。前方には陸地。記憶はある地点で途切れている。

これまでの経緯は知っている。

それは目覚める前、夢で聞いた話。

顔は覚えてないし声も知らない。初めて会う。

知らないけれど話した、いや話された内容は覚えている。



何もない空間に三つの存在。一つは安座し、一つは横たわり、一つは手元で長い物を弄んでいる。

安座していた存在が横たわる存在に触れ、軽く揺すると閉じていた意識と瞳を開ける。

安堵も不安もなく淡々と意識を失してからこれ迄を語る二つ。

二つに対して物言いはあったが完全に無視され話を進められた。

一つは語る。経緯を。

一つは語る。注意を。

付け加え状況を把握させられる。

そしてその空間での自我が消滅したのだ。



不可解な空間が夢として位置付けてみても、あれが自分の内在的意思だとしたら軽く恐怖を覚える。

そうして現状、知らない地点で海上を揺れながら漂う。

「そういえば。」

と、前方を眺めながら考える。

「なんであんなに船がたくさんいるのですか。ねえ。船というより戦艦ですか。まあ僕には関係ないだろうし無視しても良いですよね。」

誰ともなく言葉に出ている。

当然誰も答える者は居るはずなく、言葉は虚しく空と海に溶けていく。

自分の端末を起動しても異常を意味する文字のみ。もう一つを出して操作しても同様だった。

動力炉は燃料が底を付いているので動かしようがなく、といって見えている戦艦にどうしても助けを求めたくはなかった。

仕方なく船室に戻って一眠り着くことにした。

だが、風を切り裂く音の後に船室の天井が陥没してしまった。

何事かを確認し、甲板へと出る。

やはり屋根が大きく潰れていて何かが当たったというより踏み込んだようになっている気がした。

突如陸地の方向から爆裂音が衝撃波を伴い耳に届く。

背にしていたので振り向くと戦艦の集団から数隻煙を巻き上げていた。

先程の音と関連付け何事かを推測したが、動けない現状以前に手も足も出す気は元から無かったので、その悲惨な光景を眺めている。

「ああ、何か知りませんけど、大変ですねぇ、お互いに。」

そんな言葉とは違い、どうしてか心では他人事のような心境だ。そして、戦艦の集団が全滅したあと、陸地に向かって何かが飛び出し消えていった。

どうしようかと思案しながら一つ思い出した。

夢で知らされた二つの荷物。宝飾品と装飾品。ある島での報酬だから好きに使用しても良い。とそう聞いていた。

なら好きに使わせてもらおう。が、一つ問題が。

該当する品と使用方法を知らない。そう至って迷った。

悩んでいると自然に言葉が溢れる。これは夢で教えられた言葉。何かを言っていた夢の存在。細かくは喪失したが言葉は無意識下に覚えていたらしい。

記憶の霧が少し晴れ装飾品と宝飾品に関した知識が流れてくる。

「はあ、何か知らないですけどまあ、未知から道が開けるようなんで行きますか。無駄な時間は正直に困りますので。」

中を探して知識にある、該当する品を取り出した。

取り出したのは四つ。

二つは鐵の環に鉄球の付いた枷と一つは宝石の嵌められた片手のみの手袋。

最後に、細かな金細工を施された見事なまでの腕輪。

「これを着けるのもしかして、でも記憶ではそうだし。まあ、やらないと話が進まないしねぇ」

鉄球の付いた枷を足に嵌め、手袋をポケットに仕舞い、腕輪を片腕に填める。

「深呼吸も無駄だし、始めますかね。それでここも、終わりますかなあ。」

実際は初めてもいないのだが、大部分が終了しているだろうと考えている。予想通りならばだが。

助走も反動もましてや方位も無視して停止した船のへこんだ屋上から陸地へ向けて一気に駆け出す。

云うならば海上走行だろうか。


たどり着く前に視界に見えた沈められた戦艦の残骸と脱出した船員。不思議な事に睨まれていた。

海岸に辿り着くと惨状は悲惨を極めかけていた。かけていた。というのは戦闘中だったのだ。

相手は見えない。陸地に着地して地面を滑り止まると手近な陰に身を隠す。

戦闘の激しい音は何故か無くなっている。陰から僅かに身をのり出し、攻撃を受ける。

呼び掛けられ、条件を提示して陰から出る。

「教えて下さい。この場の双方総指揮を担当する方か代理を出してください。抵抗はしても、疲れるので出来るなら止めてほしいですね。」

これを素直に聞き入れるのは愚かだろう。故に、当然攻撃される。

物陰に隠れるが、その一撃は重く、陰は無くなり反抗することなく拘束された。


なんかなぁ。と考えるのもアホらしく、尋問拷問を受けていた。

まあ、当然か。全身を打つ打撃。走る痺れ。息を止められる事を強要される。

ましだと思えるのはこれ迄を振り返ると拘束、宙吊り、は当たり前。四肢を潰されたりもした。手荒い歓迎もあった。

それには休むことなく続けられていた。

これ迄と対すれば椅子に座らされ尋問も一定時間以上は行われず、さらには適度な食事も供されていた。

「それでは最後の質問だ。素直に答えなさい。」

出された飲み物を二口呑み下す。

「君の本当の名前。所属している島。それと君を支援している者の名をこれに記してもらいたい。」

差し出された端末。

映し出されている内容を読み、渡されたペンを走らせる。

相手は内心笑っていた。

これ迄を考えてこの少年の背後には大物が必ず居るのだと。抑えたならば足掛かりにして上をも狙えるだろう。

と、そんな事を考えていたのだが。

「書き終わりました。どうぞ。」

返された端末の内容を読み、満足したのか控えていた部下に渡して調べるように指示を出す。

「それじゃあ。解放してくれますか。」

笑う。

「残念だが、無理だろう。先ほど君が記した内容を鑑みてもだ。これからは私の指揮下に入ってもらう。なに、悪いようにはしないと誓おう。」

「そうですか。ならそうですね。」

頬杖をして笑顔を張り付けて相手を見る。

「何かな。」

「いえ、何でも。」

相手の目を外さず見続ける。

「意味があるのかな。」

「さあ、どうでしょうか。」

「そうだ、二つ質問しても宜しいですか。」

光魔の瞳の奥には濁りはない。だからこそ図りかねてしまう。

「良いだろう。何かな」

「いえ、簡単です。僕がこの地に到達というか入る前に何かが襲ってきたと思うんですけど。知っていますか。」

控えていた者に耳打ちして何かのやり取りをすると。叱責して部下らしき者は慌てて出ていく。

「すまないが、それは何時の話だろうか。」

「いえ、だから僕がこの地に来た日ですね。要するに数日前ですか。あれ、もしかして知らなかったんですか。あれだけ大規模な爆発や複数の船なんかが沈んだのに。おかしいですね。」

「な、まさか。いやそれは。しかし、それなら即座に来るはずだ。」

と独り言を続ける。

部下らしき者が戻ってくると小脇に抱えていた端末を渡す。

受け取り内容を確認すると表情が変化していき、最後には頭を抱えてしまう。

どうするのだ。と一言呟くと部屋から出ていってしまう前に立ち止まり、

「そ、それともう一つは。」

「いえ、あの戦場の相手はどうなったのかなと。」

「それは訓練の一貫で気にするな。」

「なんだ。じゃあ、反乱とかないんですね。この地が何処かは知らないですけど多分入ってないでしょうし。放置しますか。」

納得して出ていく。

「あれ僕はどうすれば。」

「すまないが、先程隊長が申されたように指揮下に入り、以後は我々の為に動いてもらう。」

そして光魔の手足に枷を嵌め、個室へと収容する。

「はあ、予定通りに行かないですね。なんででしょう。」

虚しく部屋に独り言が響いていく。


更に6日程経過して光魔は島の上方に立っていた。

「じゃあ、僕はこれで失礼しますね。あと、この施設とか全部壊していきますから。それでは。」

この6日でこの地理が判明し、さらに詳細な情報と自身の持ち物の所在の把握。さらには諸々の事を調べあげ、そのついでに初日の艦隊に関しても。予想通りだったわけだが。

この日脱出するために行動を起こした。

「勝手は赦されてない。判っているだろう」

「はあ、何でですか。」

「言っただろう。指揮下に、と。それはすな」

「あれ。でも僕はそれに同意も了承もしてませんよね。なら従う理由がありません。」

口が塞がらない。

「簡単です。僕の返答をする前に貴方は確認を怠った。落ち度はそちらに在りますよね。なら問題は無い。と考えられるので計画通りに、この島を壊していきます。」

その場の全員が笑っていた。

悲観か悲壮かはたまた歓喜か愉悦か。絶望とも失望とも取れる空気が渦巻いていた。


慈悲と道理を無視して目につく全てを言葉の通りに実行していった。元々一部は壊滅に近かったがそれに加わる形で残りも消滅させた。その影響で死者多数負傷者多数行方不明者多数。と世界に配信された情報は錯綜しており、真実を知るものは皆無だった。

当たり前だろう、光魔が辿り着いた陸地は陸地に非ず。

陸地には違いないが、自然系統の島に存在を隠された続島の一区画。

名をアリス・リリウン・エクスミイトゥシウドゥ。

旧フランス領南端に位置し元々複数の島からなる世界大災害をほぼ免れた陸地の一つ。

表では地下からのマグマが止めどなく吹き上がり、危険と判断し厚く高い壁を周囲数十を囲み立ち入り禁止とされていたが、実質は他の島と同様に秘密裏に研究されていたのである。

だが、その内容に秘匿する理由があった。

何故ならばこの島の研究内容はある関連する大量兵器。

世界に現在も存在する戦場。

その戦場に投入するための殺人兵器の開発と運用。情報収集と改良。

兵器の対象は有力者と獣人。

上の一部は黙認して開発を続けていた。

この開発は災害より古く長い歴史があるが、光魔には関係ないこと。それ故に島を焦土と化したのだ。

幸いか、不幸か、秘匿するための壁が脱出を阻む。

その上、秘匿されていた島という事もあり、光魔を除き島を脱出できたとしても性質上処分されていただろう。


壁の近くに塵を集めて作った筏を寄せ、エクスミイトゥシウドゥから脱出する際に没収された荷物とついでに奪っておいた食料を口に入れながら水を流し込む。

「ふうぅ、食べた食べた。」

屑を筏の隅に拵えた箱に投入して服を着替える。

「さて、どうしましょうか。」

島の全域を破壊しつくして次の島へと思い、即席の筏を造り海に出たまでは良かったのだが、失念していたのだ。

潮流が複雑で海域を出ることが出来なくなってしまった。さらに分厚く高い壁には海上からの出入り口が無い。

諦めて戻れば生き残った者達から何をされるかは容易に難くない。

では、どうするのか。

「仕方ないなあ。」

壁に接岸して軽く叩いてみても鈍い音しか響かず、壁の内側は詰まっていると確認できた。

「はあ、本当ならもっと終わってる筈なんですけど、ちゃんと考えて承ければ良かった。」

独り言を口にして見上げる壁。凹凸もない垂直の壁を数回叩き、変わらない鈍い音。

「やりますか。時間は有限ですし、こんな所で細々していても無駄に浪費するだけですからね。」

荷物を開けて目的の品を探し取り出す。


左右を確認してから両手に装着した物を確認する。

「ええと、記憶には。」


名:五指御雷砲。

能力:雷系統による様々な砲撃。

射程:中距離~超長距離。

形状:装着形

使用方法:大きな環を手首に嵌め、環から鎖で繋がれた五つの小さな環を其々の指に嵌める。装填できる力は指と同じ五発分のみである。それ以上は出来ない。撃ち方は、指を立て標的に向けてから頭で撃つ想像を描いて射出させる。

威力:水が存在する場所ならば一発分で相手を行動不能に陥らせる。全てを一発で放てば触れた物を融解消滅させられる。


「とかそんなのかなあ、本当かなぁ。はあ。」

壁の厚さは200メートルはあり簡単には瓦解できないように耐爆耐能耐獣を施されている。

壁の上方にも侵入対策を施している。外界からも簡単には知覚出来ないように全周には強力な幻が敷かれており、さらには全感覚を狂わせる装置を等間隔に設置してある。

なので、壁の近くに来る存在は例外なく、通常は間違いなく発狂する。


光魔はそんな知識に対して不思議に不可解に思い考えながら構える。

壁から筏を離し、距離を取る。

「撃つときに言葉必要だけど、時間が勿体ないから省略で良いですよね。」

大きく息を吸い込んで、腕を突き出して手を開き、片足を前に片足を後ろに固定して。

「御雷砲全弾一点発射準備」

手首の環から指に嵌めた環へ力が注ぎ込まれ、少しずつ指を閉じていく。

「雷閃光」

光が光魔を包み、細い雷が壁の一点に放たれると同時に空気が周囲に音を届けていく。

それは溶けていく音と触れた部分が海水に触れ爆発する音。

壁が貫通するまで続けられ、終わる頃には海中生物の死骸が浮かんでいた。


穴が完全に冷え固まったことを確認して、御雷砲を外して荷物へと仕舞う。

「ふう。以外と体力が削られますね。まあ、持ちましたし良しとしますか。」

伸びをしながら回収されずに放置されていた船に横付けして乗り移り船尾へ移動して、大声で別れの挨拶をする。そして動力炉に注いで満たした燃料を確認して、音声で動力炉を起動させ穿った壁の穴へと侵入する。

歯痒く見守ることしか出来ない者達からの熱烈な視線を浴び、光魔の乗る船は壁の中へと消えていった。

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