序章~幻島:出発・直線距離・素材・強襲・対応・拘束・送還・目的地集合・出会い・脱出・そして~
う、ん。あれ何か、何処かの時間で勝手に誰かに話が進められていたような。
・・。
気のせい、かなあ。
はあ、あの場所まで時間が掛かるなぁ。
さて、再開といこうかな。
こんなのまで思い出す必要てあるかなあ。
僕はこの時、お頭さんとお姉さんと総隊長に幻術使いに元重要危険人物そして先生。
この七人で僕達のあの幻島での探索に関しての詳細な計画を話し合い、そして、人選を僕が担当させられました。
抗議しても受けられず。
任された事に条件を出し、嫌々に受け入れて人選を決めました。
それが右ルートにエルミリスさんの家族を中心としたお頭さんの部下を加え、更に二人を附けました。
それが総隊長と幻術使い。
そして左ルートにヴァドロッドさん率いる強盗中心にしたお姉さんの大事な人達を加え、此方も二人を同行させました。
先生と元重要危険人物。
そして、中央の脇に逸れなければ一本道となる簡単で最短なルート。
この道は僕が一人で進むことに。
当然、反対はされましたけど、僕の出した条件。
『僕の出す人選には絶対に従ってください。反論抗議は認めませんし受け入れません』
それに六人が認めたのでこのような人選にしました。
まあ、後々良かったと思いました。
出立の時間。最終確認をして一時解散の挨拶をした後、僕は見送られて中央の道へと足を踏み入れました。
まあ、本当に見送られていたのかは疑問ですけど。
最終的には最も時間が掛かりました。
はい。結論から言ってです。
それをこれから詳細に話しましょうか。
で、中央の道へと踏み入れて背後からの気配が掻き消えました。それは振り返るでもなくそれすらも必要としない。そんな事態が僕の前に現れたからです。
複数の竜巻が遠方に背後が閉じると同時に現れ、一つに束ねられていく。例えるなら意思を持って獲物を狩る肉食種のように群れで攻めてくる。そんな感覚。
恐怖で動けないはずの肉体なのに思考は気持ち悪いほどに冷静に分析していました。
たしか何かを感覚で確信して迫ってくる竜巻に向かって普通に歩いて向かいました。
近づく竜巻に恐怖は通り越して、震えず喚かず恐れず静かに歩いて、全身に感じる猛烈な風に怯まず、数歩で触れる位置に竜巻と僕は相対しました。
激しく揺れる荷物と棚引く服。大音を響かせてました。
息苦しさも多少ありましたけど考えてもなにも始まりませんので竜巻に向かって歩みを進めました。
必然当然既決。
竜巻に近づくと軽い浮遊感を感じて、一気に地面から引き離され僕の視界は縦横無尽に狂って、体に掛かる衝撃に耐えきれず意識を手放してしまいました。
そうやってどれだけの時間意識を手放していたのか今でも検討がつきませんけど。それでも不可解な事に体に痛みが無かったのです。
何故だろう。そう思ってもう1つの不可解な事に気づきました。
僕は、立っていました。もたれ掛かるでもなく。ふらつくでもなく。確かに二本の足で立っていました。
夢なのかとおもったのですが、周囲に散乱した荷物。現実だと受け入れました。
竜巻に呑まれ、高くに飛ばされたら、うん。普通は地面に強打して、良ければ全身骨折。全治何ヵ月だろうかは解りかねますが。悪ければ即死。そんな二択のどちらかに成り果てていたでしょう。
助かっても死の手前。そんな光景が意識消失前に頭を過ったのに、現実は不可解なことこの上なく、負傷箇所破損箇所もなくやっぱり散乱する荷物だけ。
傾げて考えても答えなんて見つからないし、だから散乱する荷物を片して。
複数の人影に襲われました。
何処から出てきたのかはこの際置いといて、僕はその人達から頭へ一撃。肩を外され足も変な方に曲げられました。
驚き戦き相手の表情は逆光で読み取れなかったです。
僕の質問は無視され、何処に持っていたのか等間隔で変わった色をした鎖で首に掛けて前で交差。腰に回して手を背に鎖で固定してから再度前に持ってきて残った手を腹の辺りで固定して股に食い込ませて足に巻き付けて完了。
なんて縛りだろ。
引きずられ何処へ向かうのか聞く気にもなれず、どうせ答えてはくれないだろうとなんとなく判ってたので、そのままで抵抗をせずに引きずられていきました。
楽だったなあ。
連れられた場所は道を逸れた森林の中で、光も届かない陰鬱な雰囲気を漂わせていました。
地面に俯せにされていたので視界は悪く。どうやって先の事を。とかそんな事を考えていました。
そんな時、僕の端末が鳴りましたけど、抜き取られて遠くの方に投げ捨てられました。
呼び出し音が響くと、微かに聴こえる声でお姉さんだと判りました。それでも出るに出られず。声も出せず。少しすると端末は切れてしまいました。
一応、場に相応しいように悲壮な表情をしてみました。
それが良かったのか、笑い声が頭上から聞こえて更に引きずられ大木に鎖で繋がれこのとき初めて相手の姿を視認できました。
何故か殴打の嵐。
何もしてないのに殴られ蹴られ、ひしゃげた手足を捻切られ皮一枚で辛うじて繋がっていました。
まあ、出血が酷かったですけど。
興奮状態の相手は次第に落ち着いたのか、息を整え、被っていたマスクを取り地面に投げ棄てました。
見覚えはありませんけど、予想は付いてました。だから。
「あなた方に質問しても宜しいですか、拒否されるなら今後一切喋りません。というかこの場であなた方の願いを叶えます。でもこの場から出る方法は僕しか知り得ません。何せ、この島を作り出したのは僕ですから。」
出任せでした。正直。
相手の眼は完全に疑ってました。当然ですね。
「あなた方は僕の方まで来るのに何の障害も妨害も弊害なく来られたと思いますが。正解でしょ。何故ならそういう風にお膳立てしたんですよ。有り難く思って敬ってください。」
その表情は苦悶とか憤怒とか悲哀とか。そんな負の感情を表していました。
「そうですね。もし僕の条件を呑むのなら最優先で出すことを約束しますよ。それにこの島はあの人たち。それとあなた方の主も想定外でしょう。で、どうします。僕に従いますか。それとも僕を殺して永遠にさ迷いますか。」
「くはっ。墓穴を掘ったな。標的よ。」
「墓穴、ですか。」
「そうだ。貴様はなんと言った。殺して永遠にさ迷う。それは裏を返せばこの島は貴様が作り出した存在ではない。そう読み取れるなあ」
「ああ、たしかにそうですね。ですが本当ですよ。だって僕の考えた事言葉にした事は実現しますから。」
それで僕は1つ言葉を紡ぎました。
「恨まないで下さいね。」
一人に視線を合わせて言葉を紡ぐ。
「燃え滅び失せろ」
瞬間。紡いだ対象は頭部から轟焔に包まれ悲鳴すら上げられずその場に崩れ落ち、微動しながら更に燃え上がって、最後には何も残しませんでした。
視線を残った人達に移すと険しく狼狽えていました。
瞳を細め、
「さあ、どうしますか。更なる証明を、お望みなら、そうです、ね。」
意味深な微笑を浮かべて視線を足下に。
「待て、理解した。確かに貴様はこの島を造った者だと。」
納得した一人に冷静さが戻ったのか、それまでの気性の荒さは失せていました。
「でもこれを取ることはしないでしょ」
頷く。
「はあ、では、幾つかの選択を示します。どれか1つ選んでください。」
1つ。僕に従って合流するか。勿論、全てを保証することを条件に。
1つ。頭を弄って僕を人形にして脱出するか。この場合はそちらの仕事が完了するでしょう。その後の保証は知りませんけど。
1つ。僕を当初の目的通り殺害。その後、幻島をこじ開けて脱出しあと依頼主に報酬を。これもその後は同じですね。
1つ。この場で亡骸となって世界と別れるか。
1つ。僕に従って空間から脱出するか。
「さあどれを選びますか。僕はそれを尊重します。」
「ふはっ。ならば少し待て。」
独断で判断すると後々分裂するだろうと。そう考えて相談することにしたらしく。
その結論は。
「で、従うんですか。」
「ふん。仕方ないだろう。俺もそしてコイツらも命は欲しいからな。」
「そうですか。まあ、なら従って貰いましょう。」
そうして僕は襲ってきた人達を伴って陰鬱な雰囲気漂う森から出ようとしました。
ああ。ホント。僕の考えたように動いていれば良かったかなと思ってます。
ええ。それは現れました。普通にこの世のモノではない。完全に別界の存在が僕達の前に現れたんです。
首から上に頭部はなく、代わりに首の上からは不可解な多分毒を有している巨大な刺のような尾が生えてました。
その異様すぎる存在に首から下の記憶が曖昧で覚えてません。
ああ、でもこれで1つ手間が省けたんですよね。
その存在を見ると僕を先頭に立たせ、処理させようという思惑が見えてました。
最初は狼狽えるように。それでも殺意を込めた一撃一撃は避けてました。
そうしないと面倒な感じがしたので。
というより拘束されているので反撃はできないです。
それで、頃合いを見計らって一撃を貰ったように見せて茂みへと自分から飛び込みました。
少し動かず、息を殺していると標的は僕からあの人達へと移っていって、それから悲鳴や何やがありまして。
茂みから覗いてみると。
あの存在は消えていました。
なんて。そんな都合よくいくはずなく、片し終えたからか再び僕に襲い掛かって来たんです。
バレていたのはしょうがないだろうと思いつつも、どう対処しようか悩まず、手っ取り早く相手の全身を何となく捉えてからこの世界から失せろ。という想いを込めて掌底を最も細い部分に宛がい、それで力を放って消し去りました。
ああこの時にはもう拘束は壊してたんで。普通に動けてます。
助かるかな。そんな事を考えて地面に横たわる人達を見るとその姿は消えていました。
はい。痕跡も無く。まるで初めから居なかったかのように。
そういった状況で何をしたか。
しようとしてました。
そしたら、端末が大きく鳴り響いて。画面を見ると先生からの連絡でした。
それは先生と元重要危険人物の組みを同行させた部隊。
ヴァドロットさん率いる強盗団。一騒動を片したあと先生は先行して一人先の洞窟を偵察していたとか、その時運悪く島の獸に遭遇してしまい。仕方なしに応戦しても多対一では疲弊することは見えていた。だからこの場を切り抜ける方法を。
そんなもの僕に聞かれても困るし、ならばと薬を混合させて狂わせれば良いんじゃないでしょうか。なんてのを言ったかと。
すると切っ掛けを掴んだのかお礼を云うと通信が切れました。
今更ですけど。考えてみると、多分先生は免罪符が欲しかったのだと思います。
あの検問の島での騒動の時に簡単な治療とか言っていたけど先生の持っていたトランクの中が少しだけ見えたんです。
治療用の器具の他に多種多様な形の容器。あれが全て薬なら、危険な。そう狂わせるほどの劇薬を造るのも可能でしょう。
使用対象が誰なのかは合流した時に聞いて驚きましたけど。
そんなに深く森に入ってないのに全然森から出られる気配がありませんでした。
胸騒ぎとか焦りはしなかったですけど、冷や汗が背中に。
ああ。実際問題と言えるのか知りませんけど、冷徹な悪意。冷酷な殺意。冷笑な戦意。最後に冷静な失意。
これらが背後、四カ所から僕に向けられていました。
逃げようと思えば逃げられたでしょう。
逃げましたけど。
追い付かれて背後からの一撃をもらい、走っていた速度と背後からの一撃での相乗効果により大分長く吹き飛ばされました。途中に有ったであろう障害物はへし折れ砕け通りすぎた後には不毛な景色があったでしょう。
速度が落ちて景色が視覚できないほどではなくなり、次第に地面が近づいて滑り止まったのは大きな石の塊に全身を強打したからでした。
「いた、くはない。どうして。」
「ふあはっ。久しく辛く」
「はあっ。できれば二度と会いたくは、なかったですが、ね。」
「はは。でもだからこそ出会うべくして出会うのだろう。」
「だけども、こんな状態で会うことはまた、意味があるのだと思うが」
体に痛みは無くて、だけど襲ってきたその人達が僕に向ける視線と言葉には黒い感情が込められてました。
何故か居心地の悪さがありました。
「誰ですか。何ですか。どうして何もしてないのに暴力を受けないといけないんですか。」
「ふあっは。我々を忘れたのか、なあ。」
「それが本当なら、腹立たしいにも程がある。」
「んん。ちょい待て。」
「な、何ですか。人の顔をジロジロと」
「冗談だよなあ。」
「話の、通り、か。」
ふと四方の表情が曇ったように見えたんですが、そこで強い衝撃と共に気絶させられました。
眼を覚ますと拘束捕縛監禁されていなくて、元々目指していた道まで戻っていました。
その脇に設えた簡単な建物ですけど。誰が設置したんでしょうかね。今更ながら。
「で、正直、我々に貴方をどうこうする気は無い。貴方に向けた意思は聞いたことが本当かを確認するための行為。許してほしいという、そう言った事は思わないが、それでも敢えて聞かせてくれないか。」
視線が他に移り。
「本当に我々をご存じない。覚えがない。そういうことで、間違いないですね」
頷く僕。
四方は諦めか納得か知りませんが、空中で手首から先が消えたように見えると引いて、僕の前に差し出してきたその手には、何でしょうか。多分、装飾品だとは思うのですが、それにしても歪でどう表現すれば正解なのか、解りませんでした。
「これは、大昔にある事情で壊れた物で、貴方の後々で役に立つもの、らしい。」
その物言いから誰かに頼まれたのだと判りました。まあ判ったからと言ってどうにかなるものでもないですけど。
「これが意味を成すのが何時なのかは知りませんか。知っているなら。て知らないですよね」
無言でした。
「まあ、貰えるものは貰っておきます。有難うございます」
すると四方が突然身構えました。
流石に狼狽え驚き思考が停まりました。
長くない静寂は誰かの謝罪で破られました。
「いや、我々が知る君と似たものからその様な謝礼の言葉を聞けると裏があると勘ぐってしまうのだ。許せ。」
もう、何が何やらですね。
「で、これを僕に渡すためにこの幻の空間に来たんですか。」
「ああ。それと俺達にそれを渡した男のような女のような奴の伝言だ。『君の先には苦難や絶望が待ち受けているだろうけど、気にすることなく進むと良い。別に立ち止まっても振り返っても誰も君を攻めたりしないし責めようとも思わない。だからこの先、君の前に現れた者が何であっても』だそうだ。」
理解できる人がいるなら教えてほしいです。中途半端にして云いたいことは半分しか解りませんでした。
当然、疑問しか浮かばなくて、だから理解しようと聞こうとすると、彼らの姿が消えていました。
何かの類いかなと思いましたけど、僕の手には歪な品が確りと有りました。
ふん。これが何なのかは今でも解りません。でも何かの役にとかの前に僕の何かでこれを見て、触れて、利用価値があると判りました。
今のところ何に使用するかは考えてませんけど。
軽い伸びをして欠伸をしてから体の点検をして戻ってきた道を一人で歩いてました。
元々一人のつもりでしたし、寂しくもないですし。
不思議と眠気がありました。
歩く度にその眠気は強くなって、我慢はしてましたけど、限界で。だから近くの木を背もたれにして軽く眠りました。
これは不味かったんでしょうか。
深い眠りから覚めると僕の前には最初に襲撃してきた人達と違った人達が足下に呻き声を上げて倒れてました。
そう、また僕が意識を無くしたときに何かがあって、勝手に対処したんでしょう。
はあ、何ですかね一体。
最初の人達と同じように倒れている人達は僕が事前に調べた者達でした。
さて、どうしたものか。と思案していると何となくで数人を拘束して、数人をその場で殺害しました。
考えた通り殺害した人は姿が消えていきました。
あれを見ていたのでもしかしたらと考えてたんですけど当たって良かったです。
うん。ホント良かった。
もし消えなかったら人殺しになっていたでしょうし。
と、切り替えて道を進んで行きました。
最短の筈だと思うのに、どうしてか時間が掛かりました。
竜巻襲撃見知らぬ人達それから理解できない異形の存在。最後に貰った歪な品。 最後に気づくと襲撃者の対処。
品を荷物に紛れ込ませ歩いていると何かの咆哮か轟音が響いて現れたのは、四つ目の黒と灰が入り交じった体色の巨獣。醸し出す空気は見るものを威圧感だけで地面に縫い付けるでしょう。
現に片膝を地面に着けておきました。
唸る巨獣は即殺することはなくて僕の周囲を回ってました。
恐怖。普通はその外見に身体が宿んで息をすることも、思考することも忘れてしまう。
はっ、それは常識的な思考でしょ。
ですが現在その常識から切り離されている空間に存在している僕は、取り敢えず笑っておきました。
これを切っ掛けに襲い掛かって来るものと思ってたのですが、逆に鼻で嗤われました。
イラッと来たのがダメだったのでしょうか。
巨獣の姿が消えると強烈な吐き気と悪寒。全身から滝のように流れ出る汗。更に鼓動が速くなり地面に倒れてしまいました。
過呼吸も酷くなり、絶望が全身を覆い尽くしていき、瞼を閉じ全身から響く絶叫を伴って身体が軽くなりました。
瞼を開くとあの巨獣が逃げるように空に消えていきました。
心なしか体がボロボロのようにも見えましたが消えたので詳細は判りませんけど、どうやら僕の中に入っていたんだろうと、そう推察しました。
だけど何故僕の中から逃げるように出ていったのだろうか。
そんな疑問を抱きながら軽くなった体を起こして、集合地点に到着しました。
で、最初に説明したように僕が最後でした。
集合地点に集まった人数は最初の人数より減っていて、この場所迄の経緯を全て教えてもらい、暫くの休息に入りました。
まあ、僕が連れてきた人達を含めても少ないですけど。
負傷者は先生が治療し元重要危険人物と幻術使いは焚き火の準備。総隊長は各自に指示を出すことに奔走しているしお頭さんとお姉さんは其々の交換していた人達の話を聞いていました。
僕はといえば、連れてきた人達を適当な場所で解放して食料の加工。すなわち、料理を作ってました。
どこから誰から聞いたのか僕が料理出来ると知られていて、押しきられる形で作らされました。
解放した人達は状況が呑み込めないのか、戸惑いながら総隊長の監視の下で設営準備をしていました。
評判は中々に良かったと記憶してます。
あの集合地点に着くまでに三つの道で短時間でも数時間。最長で1日位ですか。
その最長が僕ですけど、なんでか何度も気絶してますからね相変わらず。
指定した集合地点には周囲を囲むような茂みが生い茂り、所々には茂みの向こう側が見えるように処理されてました。
何とも濃い内容だったあの地点までの肉体的精神的疲労は残った皆さんを疲弊させるには充分で、だから食事を済ませると早々に眠ることに成りました。
警戒することは更なる疲労を蓄積させてしまうとの先生の指摘で全員で好きな体勢で眠ることに成ったのです。
睡眠時は先生が調合した幻覚睡眠狂乱他諸々を誘発させる薬剤を数ヵ所に散布してもらいました。
これのお陰で皆さん十分に眠れたようです。
「さて、一応これまでの道で知り得た情報を統合すると、出口や脱出方法に関するものは出なかった。そうなるな。」
「打つ手を残してはいるけどね。簡単じゃないだろう」
「そうですね。もし其をすれば、まあ、死人が間違いなく出ますね。」
元々の最後の手段で大勢を総動員しての方法を考えてましたけど予想以上に人数が減っていたので本当の意味での最終手段でした。
「後の後半部分はどうしますか。」
「総隊長。後半は僕一人で行かせてくれますか。」
「理由を聞いても」
「はい。どうも、この島は僕に対して寛容と言うか都合が良いのか。皆さんより大変な目には合ってないんで、ですからこの先は一人で行かせて下さい。」
「許可は出せんな。最低でも一人は着けてもらいたい。」
「そうですか、なら其処のメガネの兄さんで」
「理由は」
「はい。先ずこの人は医療の心得があります。僕が負傷しても治療してくれます。さらにほら複数の薬品の調合で数百もの効能を持つ薬も造れますから」
「確かになあ、あの兄さんでなら負傷やその他諸々の対処も容易だな。」
皆さん納得してくれました。
「では、言って参ります。」
「おう、此処は心配せず行ってこい。」
僕は適当に荷物をかき集め、先生は自分のトランクを1つ。
身軽だね。
茂みを出て歩いて感覚的に数時間。僕達の前に人が現れました。僕達に気づくと徹底して逃げ、追い付いた場所は洞窟でした。
入ると奥まで一本道。着くまで思い風音が反響してました。
その人は面白い仮面を被り、屍の山に腰かけていました。
先生は身構え、少し距離を取りました。僕は何もせず、見ているだけでした。
『やあ、来たね。大丈夫。警戒しなくても良いよ。僕は味方だ。此処まで来れた事に称賛を、おめでとう。』
ん。やはり今でもそうだと確信してます。
『で、だ。自分の言うことを』
「その前に聞きたいのですが」
『・・し、しし。どうぞ』
「ご免なさい。話の腰を折るようなことに」
『かまわない。で、何をす』
「何処かで会ったこと、ないですか。」
『ふむ。むむ。ないぞ。』
「そうですか、なら続きをどうぞ」
『そうか、なら。んん。そうだな』
「と、すみません。私の話も聞いてもらえますか」
『あぐあぐあぐ。どうぞ。』
「単刀直入に言わせてもらいますと、貴方、いえ君は現在の人では無いですね確実に。」
『ん、んんん。その根拠は』
「そうですね、君が纏う気配というのか、それがどうも違和感を覚えるもので」
『ほうっ。空気と。で、それは具体的にどういった物で』
「ええ、まあ。言ってしまえば過去の映像と話しているような」
『へえ、て、事は、だ。此方にとって二人は先の時間で生きる者という事で。そちらに取っては死人と話すような。そんな感じかね』
「ええ。そうなりますか。まあ、君が何者かは知りませんが」
『ほら、知らないほうがて言葉もあるし。その辺は詮索抜きで』
僕は先生の意図を読めず、正確には読まず。視線を相手にずっと合わせてました。何故か。
『で、脱出方法は知りたくないのかい。』
先生の視線は僕に向けられていたと思うのですが、完全に疑ってました無視してました。
「確かに僕達はこの空間から出る方法を探してますが、何の見返りもなく教える。そんな美味しい噺は無いですよね。」
『ああ。そうだな。まあ、そうなるわな。うん。』
一人で納得してました。
『心配しなくても良いぞ。あのな、お前がこの空間を出ないと此方も出れないからな。』
それは彼も某かに巻き込まれた。そうであってもどうして脱出方法を知っているのか疑問が残ります。
「それなら、教えて下さい。お願いします」
『簡単だ。拒絶の道理を使えばこの空間から抜け出せる。なあ三代目。』
その視線の先には僕が居て。
「それで、その拒絶の道理とかはどうすれば手に入るのですか。」
『おう。・・それはそこのお前が一番知ってるだろ。』
何を言ってるのだろうとか僕を指していたこととか、それが僕に向けられていたと気づくのに少し時を要しました。
「元主。どうやら貴方の様ですよ。」
「ふぇ。僕、ですか。」
何が何やらと言った方がいいのかそれとも努めて考えたほうが良かったのか。
『おお。そうか。今のお前では話にならんか。』
とそうだ。
この言葉を聞いてから僕の記憶は少し飛んだんでした。
お、おお。なんだあ。てぐぇっ。
引っ張られてしまった後の衝撃で気を消失させてしまった。
眼を覚ますと俺を覗きこむ二人。
『お、起きたか。』
「ふう。良かった。もしあのままなら。」
クロメガネが相手のあんちゃんを睨み付ける。
「お、ええ。ちょい待ち。現状把握するから。」
俺は確かあの神擬きとコウマ以外の話を聞いてたはずだ。んで、一通り聞き終えて寛ごうとしてたら、何の脈絡もなく肩を掴まれてから引っ張り上げられて、そうだ。何かの声みたいなのを聞いて。ほう、そうかそうか。
「なあ仮面の兄ちゃん取り敢えず殴らせろ」
『うん。嫌だ。無理』
「はあ、予定としては俺はもう少し先で顕現するつもりだったんだけど。どうやって俺を器に戻した。」
『明かせるとでも。』
「はあ、まあ、いいか。こんなんで問答しても無意味だし。で、なんだ。俺を詠んだのなら何かをさせようとしてんだろ。」
『ええ。だから拒絶の道理を使用してもらいたい。』
「はああ。拒絶か。まあ、やれんことはないが。確実に此処を崩壊させるならそれしか無いわな。」
「失礼。少し挟ませてもらえませんか。」
「お、おお。あん時の総主じゃん。なんでこんな所に」
「へ。それは貴方が選んで。てそうでなく。あのもしかして、君は、あの時の方、ですか。」
「ん、そういやそうだな。」
クロメガネの肩に手を置いて、俺は考えた。
考えて出た答は。
「そうだな。このままグダグダしてても時間がなあ。と言って俺がやるのも正直面倒だし。うん。そうだな、ならこうしよう。」
色々詰めてからクロメガネの元総主と話し、さらに変な面を着けてる存在に向けると仮面の奥に隠れている視線が合わさったように思ったのだが。その視線は直ぐに反らされた。
『では、それでこの空間から出れるなら此方は有難い。で、だ。1つ助言を』
「なあ。誰の差し金か知らんが、お前も大変だな。」
表情が消えた。
仮面を着けてるから実質は違うが、何となくそう見えた。
無言。後。落涙。それは滝。
全身の水分を流してるのではとかどうでも良いことを考えている。
そうすると。
『ふふ、ふ。これで1つ仕事終わった。肩の荷は、全部とは云えず。か。』
「で、だ。これからどうするよ。段取りは決めたし、そちらがいう場所には確実に結果がもたらされる。ならそれまで戸々にいるか、それとも近くで終始見守るか。」
『うん。それならこの後の指示は決まってないし。着いていくかな』
「渋ると思ったが、すんなりと答えを出したな。」
『ふうん。そうだな迷っても無駄、だろ。なら即断即決だ。』
どうしてか俺と面から自然と笑いが込み上げてきた。
「君は、その元主では無いのだね。」
「ん、ああ。そうだな俺は俺。もう1つのはもう1つ。別だよ」
「今は何と呼べば。」
「それは好きに呼べば」
「なら変わらず元主と呼ばせてもらいましょう」
「・・・お好きに」
「で、早速なのだが元主。聞きたいのだが」
「ふん。なんだ。」
「何時になれば戻るのですか」
「それは俺が。それとも場所か。」
「いえ、あの面の者です。」
「さあ、着替えてくるとか言ってどっか行ったからな。まあ、戻ってくるだろ」
「ですが、時間も推してますし」
「さてさて、どうなるかな。お。来たな。」
「あれが本当の。」
「てか、衣服は何処から手に入れた。」
『気にするな。さあ、集合場所へ行くぞ』
さてさて、この先は何があるのかねえ。
うーん。どうしても思い出せない。何でかあのお面の人が居なくなってて、代わりによく解らない服装をした同い年くらいの人がいたんですよね。
まあ先生から詳細を聞いてましたけど。でも何か違和感が。
「さて、あの奥での出来事は先程話した通りです。ですが、まだまだ時間が掛かるのもあり、なので後1日猶予を貰いたいんです。」
「じゃあ、ボウズその薄い部分てのは検討が付いてるんだな。」
「付いてはいますが、その」
僕は、先生に合図のように視線を送りました。
明後日の方を向いてました。
まさに、えええええ。です。
焦って混乱していると唸る咆哮が聞こえて、数えられない影が先生の下に集まってきました。
それは話に聞いていた魔なる獸。また、幻獸と呼ばれる者達。
それらが先生に傅いて、腹を見せていたり。媚びを売るような鳴き声を出していたり。中には自身の大事な部分だと思われる箇所を自らその一部を献上したりと。中々珍しい光景が見れました。
元重要危険人物の人が驚き、お頭さんやその部下も皆さん臨戦態勢に入ってました。
「心配なさらず。これらは私の思うままに動きますから。下手に刺激すれば知りませんけどね。」
それでも武器を下ろさなかったので、僕の指示で納めてもらいました。
「で、どうするんだ。それを使って。」
「はい。どうもこの者達は感覚が通常より鋭敏らしく、もしかしたらと考えて事前に実験を行った所、その的中率はほぼ完璧に近く、検討を附けた場所から更に絞り込めるかと。」
「その絞り込みに1日猶予がほしい。そういう事かい。」
「それもありますが。もう1つは皆さんの身体を休める為です。」
先生は一人に近づくと軽く。そう軽く押しました。
その結果、押された人は起き上がれず。軽い衝撃を受けてました。
「この場まで来るまで様々な道のりでした。私含めた全員の疲労が限界をとうに越えてます。なのでこの島での休息を1日設けさせてもらいます。」
皆さん異論はなく、納得してました。
この時、僕は、先生、エルミリスさん、ヴァドロさん、総隊長、元重要危険人物、幻術使いと一緒に最も薄い場所と知らされた所へ向かってました。
その間僕の周囲には唸り声。殺意を込めた視線。足先には鋭く恐ろしい爪。尾が生えてるものは毛が逆立って。口端から覗く牙も恐ろしさに磨きをかけてました。
どうしてそれ全て僕に向けられているのか考えても答は得られず。
悩みと向けられる殺意を伴って目的地点に到着しました。
「これよりこの者達に最も薄く、弱い部分を見つけさせます。判明次第に乗船。その場所まで行きましょう。」
先生は言い終わるとトランクから二つの容器を出して、獸達に浴びせました。
嗅がせるんじゃないのかい。とか心で叫んでました。
そんな僕の叫びはさておいて、浴びせられた獸の様子は、それだけじゃなく、変異していきました。
いや、確かに幻の島。とか云われてますけど流石にやりすぎではとか思っていなかったり。
「いいですか。これから君達には教えた場所を特定してもらいます。ですが、それは」
「あ、そうか、この島が幻なら其所に住む存在は当然消えるんですね」
で、襲われ切り刻まれ咥えられ全力で遠くに投げられました。
「イタタッ。」
「ちょっと待て」
「つつッ。と、なんですか。」
「あれだけ凄惨な事をされて服はともかく、どうして無傷で戻って来ている。」
「えと、それはほら、この島の影響としてください。細々と説明すると話が進まないので」
質問した人に納得してもらい。襲った獸は先生の指示で薄い場所の特定に着いていました。
時間にして思ったより掛かって、場所の特定が終わりました。
「では、戻って脱出の準備をしましょうか。」
先生の掛け声で寛いでいた人達は何かを話してました。
これは僕の発案で乗船の割り当てをしてました。
その発案者の僕は何をしていたのか。
それは周囲の探索でした。
皆さんの視線が届く範囲内ですけど。
で、先生の戻る宣言で準備をして戻りました。
言っときますが、戻ったら部隊が凄惨なことには成ってませんよ。
どうしたのか。
あの同年代と思しき人と宴会をしてました。
これのせいで更に1日島から出られなく成りました。
イラッ。
先生は慌ててその人に詰問して事の詳細を聞いてました。
どうも傍観していたのがバレたらしく、記憶飛ばしのために薬を偲ばせた飲み物を振る舞ったとか。
それで全員が潰れてたのね。
まあ、皆さんはこれ幸いと寛いでました。
ムカッ。
先生はじゃれてくる獸の相手をして過ごしてました。
「先生。聞いても。」
「なんですか。」
「実は必要無いですよね、その子達の調査」
「ふふ。気づいてましたか。流石に騙せませんね。皆さんも」
「で、どうしてあんな事を」
「いえ。出発前にも云いましたが、1日での出来事で見えないほどの疲労が蓄積してました。ですが、それへ肉体的にも有りますが、問題は精神面です。全員が見た目以上に心が疲弊してましたから、この島を脱出した後を考えたら疲労を残すというのは不味いので。まあ、あの者のお陰で更に回復が見込めますから良かったですね。で、君は何をしているんですか」
地面が盛り上がり腕が這えてくると次にあの同年代の人が出てきました。
呆気に取られて、見ていると着いた土やらを叩いて落とし、伸びをして、僕達に振り向きました。
「いや、何か捻りが要るかな。そう思って地面に潜んでた。」
僕の思考はそれで戻って、この場所に来た理由を聞いてみました。
「ほら、助言をしようとしたら話の腰を折られたからね。それを伝えようと思って。」
助言。そう確かに言ってたんですね。でも、先生が話に割って入ったので聞けなかったとか。
「なに。君はこの先大変で面倒な事に巻き込まれ中か今も。でも、先ずは自分を疑え、信じろでなく疑え思考行動道程記憶。打つかる場面で絶対に必要な行為だから。」
そういって姿を消しました。
反論も反応も出来ず、僕と先生はその場でただ消えた場所を見ていました。
2日して、慌ただしく動く部隊。機材や資材を回収してまとめ、数人で担いでいました。
本来前日に脱出する手筈なんですが、潰れた部隊の回復が思うより芳しくなく、仕方なしにもう1日休息してました。
んで、その次の日、船に戻ることにしたんです。
僕を含めて幹部(というのが正しいのか疑問がありますね)で、船の割り当てをしました。
まあ、影響を考えて当然の割り当てになりましたけど。ね。
行きと違いまして、戻る時は何の妨害と障害はなくて。まるであの妨害者を一掃するために用意された舞台のように感じてしまいました。
正直助かりましたけど。
けど、それは裏切られて。
最後の試練と云わんばかりに襲われまし。
この場合は部隊全員が全回復していて人数も一定を越えてましたし、さらに面の人も、違いますね。面の人は手伝わなかった。
僕達からは見えない場所で傍観に徹してました。
詳細に云うと部隊から面の人の記憶は消えてました。
それでも視線は感じられたので距離を更に開けて見ていたんでしょう。
疲弊疲労なく襲ってきた物は全て葬りさって海岸へと出たんです。
そこがまた、困惑と混乱の場面だったんです。
左右に別れた人達が好き好きに得物を持って乱闘してました。
なんだ。これは。
どうしてこう成った。
切っ掛けを探したほうが早いのでは。
ほっほう。こうなるのか。面白い。
ではでは、事の発端を見つける前にこの島最後の大仕事と行きますか。
で、僕を除いた全員で乱闘の中へと駆けていきました。
止める間もなく乱闘は殺戮へと。
まるで軽い運動後のように一服する皆さんに対して拘束されている乱闘していた人達。
その人達の中の数人を視認して驚きました。
「で、なんで島で死んだはずの者達がいるのか。説明できるか。それと乱闘に至った経緯も含めて」
質問に答えたのは船から出てきた人。
留守中の全権を任された人。
その人が満身創痍で船から出てきました。
名は、ウドレヴェルカ・サンファル。
部隊の運用から編成指揮。全てをお頭さんから任され、お姉さんもその技量には一目おいていたとか。
ウドレヴェルカさんの話によれば、僕らが戻る数日前、突如まとめて部隊の一部である。僕からして死んだと思っていた人達が各船の上空から落ちてきたらしく。
急いで各船の船室に運ぶよう指示。その上で目を覚ました人から事情を聞いているとどうも僕らの中に裏切り者やスパイが紛れているとか。その者達の手によって拘束され、あげくには試しとして危険な事をさせられて気がつくと船に戻っていた。
それを指示したのがお頭さんやお姉さんだとか。その二人は紛れた裏切り者やスパイに操作され。
と。言うなれば、自分達がどういった事で戻されたのかは知り得ない。
この島で死は拒絶されるらしく全員最初の場所まで戻されるようで、ホント何なんですかね。
「それで、この乱闘は戻った人達がしでかした。貴方が抑えられなかった。それはああ。だからなんですね。」
説明を聞いている間に裏切り者とスパイを調べていた皆さんは何かを見つけてきました。
見せてもらうと。
「なんだ。こんなものが今も流通してたのか全て廃棄されたのかと」
「なんですかこれ。」
「一種の錯乱薬。その強さ故に随分と昔に製造流通販売所持を完全禁止された代物ですね。勿論、これに関する機材や素材も含めてですが。」
「最後に付け加えるとこれの亜種も含まれる。」
「これが有るってことは。裏で製造されていたのか。」
「それとも残った品が流通されているのか。これのレシピは残ってないでしょ」
「それは置いとくとして、どうしますか。これ。」
「まあ、船室にでも閉じ込めて、あとは黒さんの薬で眠らせるかしないとね。」
僕が指名したのは先生。このときは未だ先生とは言ってないです。
これには誰もが納得してました。
「構いはしませんが、誰も疑問に思わないんですか。僕が彼らに薬を渡したとか。」
「それはあり得ますが、しないでしょ。実利が無いですし。理由も無いですし」
「こんなので時間を費やしてもな。急ぐぞ」
総隊長の号令で拘束した人達を各船の船室に閉じ込めて、先生特製の薬を蔓延させて動けなくしました。
「さて、これから行うのは少々強引なやり方です。我々がするはずだった方法とは別の方法です。これで脱出出来た後に何が有るかは正直解りません。ですが、このような無意味な場所に止まるのは得策でもないので始めましょうか。」
この時僕が乗船した船には何時もの人達。あの面の人はいつの間にか姿を消していて、感じていた視線も消失していました。探す隙も無かったので諦めました。というか探さなくても大丈夫だと、なんでか自分で納得してました。
なので船長、元重要危険人物、幻術使い、先生、お頭さん、お姉さん。
そして、僕が乗船してました。船室にはもし、邪魔されても困るので拘束していた人達は他の船に。
僕が船の甲板に仁王立ちして強風を全身に浴びながら前を向いてました。
『では、これより現空間から脱出する方法を開始します。』
先生の声は響きました。当たり前ですけど。
『さて、至極簡単です。元主の中に眠る1つを世界に顕現させて振るうだけです。以上。』
それだけでした。
皆さん困惑してたでしょう。僕も困惑してましたけど不思議と納得して、呼吸を整え心を落ち着かせました。
調べた薄い場所の近くまで船を寄せて動力を完全に停止。耳に届くのは静寂を破る船体に当たる波と繰り返される波音。それから繋がる揺れ。
『準備は』
「何時でも行けます。」
『なら、始めますか。んん。では、《開門》』
その言葉で僕の身体は僕の意思と関係なく動き出しました。
《今もまだそう有るように。底に在るように。道を違えて進む刃を持って。以下省略。》
ええ。何これ。略して良いの。
『あ、不味。しっ』
とその言葉で僕の意識と身体は合致して自由に動かせました。ですが、片手に宿り集約される存在感は僕の心の底から警鐘を鳴らしていました。
てか、何か。最悪な事態のような。
見ては駄目だと理解しても見なければいけない。そうじゃないと意識が全て持っていかれる感覚が在り、見るしかありませんでした。
短い悲鳴を上げてしまいました。
それは本当に。何処までも全てを拒絶する色と形を持った、鞘に納められた長身の刀。
刀と言っても持ち手は抜き身の状態で、その持ち手は鞘より色は何処までも濃く。
迷いました。振り切って良いのか、それか納めた方が良いのか。でも心ではどうしてか振り切れと騒いでました。
目端で後ろを見ると全員が言葉で表せない顔をしてました。
死を予感したんでしょうか。
「はあ。」
そうだ、溜め息が出たんですよね。何でだろ。
諦めか。
脱力か。
それでもう、どうにでも成れとばかりに、構えて振り抜きましたよ。ええ。振り抜きましたとも。
この瞬間鞘に納められている状態から放たれた力は、薄い部分に触れると悲鳴に似た音を響かせ、入った時と真逆の現象を起こして世界が歪んで圧縮。弾けて僕を含め全てを呑み込んでいきました。
はあ、疲れた。




