序章~其処までに至る回想~8
盛大な爆音が海上に響き海面から上空へと幾つもの水柱を造りだしました。
そう、僕たちはあの後、基本的な協定書を作成、細かなことは当事者に任せて次の島へと向かっていました。
島を出て暫くは穏やかな時間でした。が、案の定というべきなのか。
僕達は待ち構えていた勢力に追われて、包囲されていたのです。
まあ、随分と大所帯になってしまっていた事が回避運動を容易に出来なくさせていたのは一つの原因だろうと思っています。
計算外でしたけど。
それでも総隊長が指揮を執り、綿密な指示の下迎撃していきました。
僕はと言えば、荒れすぎて雑すぎて揺れる船隊に必死に獅噛みついていました。
揺れて足下は悪いし爆音は四方八方から際限なく轟いてるし、最悪でした。
悲鳴を挙げるしかできなかったですね。
「だっはははは。どうしたどうしたボウズ。こんなので悲鳴たぁ場が締まらねえぞ。」
相変わらずハイテンションな総隊長。なにが楽しいのか理解できないです。
「うう。最悪ですよ。ええ。本当に最悪です。場を締めるもなにもですね。島を出てこの状態なのは。はあ。穏やかに進みませんね。呪われてるのでしょうか僕。」
「何ですか君は、そんな負の思考をしても事態解決は出来ませんよ。」
薄ら笑いを浮かべました。
「ええ。そうですね。僕にしてみれば。事態解決とか、今の状態とか内容には入ってないので関係ないはずなんですよね。どう考えてもかけ離れてますし。それでも身に降りかかる火の粉なんでどうにかしたいですけど。もし叶うならですけど。腹腸かわ煮えくり返りそうなので、これを引き起こした人物を一撃、殴りたいです」
「そこは一発、ではないんだな。」
「ええ。当然です」
僕は誰ともなく、手を差し出して端末を要求しました。
誰が貸してくれたのかは忘れましたけど。
操作して、画面が出ないようにし、通信をしました。
『はい。こちら』
「僕は先程そちらから出たばかりのスワですけど。長さん、それか、あの元反乱勢力元締めを出してください。」
雑音が続いて、
『代わったが。何かな』
「色々と言いたいですけど。そちらに、そうですね不明者が居ないか確認してください。今すぐに。急を要しますのでお願いします」
『時間を貰えるか』
はい。と答えると、追って通信することも言われて一旦切りました。
結果。想像通りに僕達がハン・リイファから出る前後に行方不明者が出ていました。
それも複数。
「あ、有難うございます。それではそちらの結果は後日改めて。はい。お願いします。では」
切って、僕は総隊長に、あることを分かりきってましたけど通信で各隊各船に確認をしてもらいました。
「不審な人物は見当たらなかった。そうですか。ならこのまま進んで下さい。」
「ほう、元主よ。宜しいのか。我々の動きが」
「もう検討は付いてますから。気にしないで。今はこの場を切り抜けましょう」
言ってから総隊長改め船長が通信機で指示を出しました。
「こちら旗艦。全部隊に告ぐ。これより当海域より全速離脱。勿論全滅を兼ねてだ。さあ。始めよう。殺戮と謀略の宴を」
「今の、ホント何処の悪党ですか。板につきすぎて軽く引いてしまいましたよ。」
「がっははは。そら、俺達は今から悪行をするようなもんだろ。なあボウズ。それとも何か。俺達が正義の執行者とでも言っといた方が良かったか。」
「いえ、別にそうではないですけど。あのですね、大義名分とか僕には無いんですよ。判りますか。だって、これは仕事なんですよ。まあ、私怨や何やがあると思いますけど。それでも命の危険は無い。そう思っていたのに。うう。僕はただ依頼を完遂したいだけなのに。」
「ふむ。それは土台無理な話だぞ君。何せあの映像は現存はしていないが派手に巻き起こしたんだ。上の方は認識してるだろうなあ。上手くすれば、旨い汁が吸えるのだと」
「なんか、最後が生々しい。で映像て、何ですか」
「おや知らないとは思わなかったが」
「ひひひひひ。お前が去年やらかしたあの行事だよ」
あの行事と聞いて、思い出そうとしても思い出せず。
次期島主とか、賭け事とか、数年ぶりに巨額の金が動いたとか。なんかそんなのを聞いていて思い出しました。
「あ、そんなのありましたね。」
「ありましたね。とはまた他人事のように言う。」
「そう言えばあれって世界の主要人物に配信されているとか何とか。ああ。そう言えばそれが切っ掛けであの島の利権取得のための艦隊派遣でしたっけ。」
「なんだ知っているじゃないか。切っ掛けを作った本人が知らないなんてのはないだろう。」
「いえ。正直、胸糞悪い事が大半なので記憶の隅に追いやってました。」
「がははは。そんなに嫌だったかボウズ。」
「当たり前ですよ。あれのせいで僕の最初の一歩が端から崩壊したんですよ。今でも腹が立つのに。何が面白くて覚えていないといけないんですか。」
「いけないこともない。が、少しは覚えていても損はないと」
「大有りです。なんでくだらない。事を一々留めてないといけないのか。不愉快です。」
「まあ、そういうな。ボウズ。あれらに恩義を付けたんだ。それで良いじゃ」
「あれ知らないんですか。僕はあれに対する事には恩義等を無しにしているので無いですよそんなのは」
「んなっ」
「なんと勿体ない事を」
「ひへへへへ。気が知れないねえ」
「はあ、なんともまあ、推し量りかねますね。」
呆れられてましたね。
「それで僕と何の関係が」
「ふむ。元主よ私も拝見させていただいたのですがね。あれは一種の宣伝というか喧伝というか。兎に角あれは島外に対しての島の主の力を示す為の特殊で大切な儀式なんですよ。」
「儀式。そんなものに僕は巻き込まれたんですか。呆れてさらに腹が立つ。誰かに何かを言いたい。」
主に罵詈雑言を。
「きひききき。だぁが、各島では力を示す為の簡単な方法として現在も使われている。まあ、それに巻き込まれたお前には少し同情するがな」
「それと」
「まだあるんですか」
「ええ。君には理解しがたいだろうけど、あれは島の中枢を抑制する為とも言われているのさ。真偽は定かじゃないが。」
「なんですか中枢て。」
「さあ、詳しいことは。それでもね。囁かれているんだよ。」
「何をです。」
「君は不思議に思ったことはないかい。」
「不思議に」
「そう。世界各地に建造された島の目的は誰でも知っている。穴を塞ぐこと。」
「そうですね。誰でも最初に覚える事でしょうから通常なら」
「だがね。現在、それを確立させる技術はない。替わりはあるがね。」
「それは塞げないまでも拡大を抑える。そんな技術ですか。確か公表された技術では、島同士の莫大な力で相互干渉させて永久的に近い力で抑える。そんな技術でしょ。たしか」
「そうだね。でもねそれらを産み出しているのは何だと思う。」
「ええと。て、何か話がややこしく成ってきてますね。」
「ん。そう言えばそうですね。ではこの続きはいずれ近いうちにでも」
甲板に居る僕含めた全員が小さく息を吐き、飛び交う力や弾の中を全力で進んで行きました。
それは、僕にとっては他愛ないこと。誰かにとっては、考えたくない事。
僕は誰かにとってはあり得ない存在らしい。
ん、誰だろう。まあ、いっか。
『ねえ。、今はなんて呼んだら』
「好きに呼んでくれて構わねえよ。なあ、ボウズ。」
「はい。僕もそれで。」
「ですが、呼び方は統一させておいた方が賢明かと」
「それなら今は艦長だ。」
『なら俺達はなんと呼ばれれば』
「そうですね。お頭さんはヨウ。お姉さんはインでお願いします」
『『了解』』
「それとお二人のお仲間さん達はコヨウとショウインで」
『再度了解した』
『私もさ。じゃあ全滅させてみますか』
通信が切れると、待っていたかのように多数の船の色々な箇所から力や獣姿の影が堰を切ったように相手の艦隊に向かって行きました。
実際、敵艦隊を全滅させるのは不可能に近いと思っています。
「スゴいですね。と」
「達観してるがボウズ。俺達も参加せにゃ後で何を言われるか。」
「そんなの僕の知った事では無いので。皆さんでどうにかしてください。」
「お前は何様だ。」
「あえていうなら、仕事を完遂するためにいる者ですか。」
「それは元主よ。自身では手を出すつもりは無い。そう仰有りたいのですか。」
「近いようで遠いような。そうですね。その時になれば率先して嫌がおうにもしないとダメでしょうね。」
「ひひ。では今は」
「する気は無いですけど。しないわけには」
「いかんだろう。」
「はあああぁ。なんでこんな事に。」
「それで、どうする。次の目的地まで距離もある。海の中央だ。全周見渡しても隠れるような地形もない。場所もない。彼方も最後は物量で圧してくるだろう。」
「んん。先ずは、現在の位置とかを把握するのも時間が。無いですよね」
「ないな。」
「ないですね。」
「ひひ。ないねえ。」
「ないと思いますよ」
「はあ、なら運だのみで。」
僕は目を少し閉じて、適当に。そう本当に適当に指を差しました。
そこは敵艦隊の最も厚く最も突破困難な部分。
驚かせる間を与えずに通信で位置を指示して作戦を伝えて一点突破。
作戦を悟られないために、各船の動きを適当に移動させるようにし、目的の一点まで進行させました。
それに伴って負傷者が何人か出ましたけど、まあなんとか切り抜けました。
どうにか包囲網から抜け出して、別々に指示した場所へと全速力で逃げていって、そのあと集合しました。
「ふう。何とかでもなるものですね。はは。」
「いや笑い事じゃないぞ君。此方が全て小型なのが幸いしましたけど、次に来られたら」
「その時はその時で今は取り敢えず、あれ、船長。今はどの辺ですか」
「んあ。いつつ。そうだなぁ。確かこの辺だと思うが。可笑しい。」
「何か問題でも」
「海の流れが俺の記憶と違いすぎる。この辺りは流れが複雑で簡単には進めないようになっているんだが。」
「それが無くなっていると。」
「そうだな。それに近いか」
「なんか。去年の事に似ているような」
「んん、そうだなあ。おい幻術使いの。どうだ感じる何かはあるか。」
「ふむ。そうですね。私は感じませんね」
「そうかい。ならあれは現実か。」
その船長の言葉に一同はあるものを見てしまいました。
それは。
「ああ。すんなりと、島へは行けないんですね。」
笑いながら僕が乗っている船含め、前方の雷雨吹き荒れる海域へと飲み込まれて行きました。
「ちょちょちょちょっと、なんでこんな近くまで気づかなかったんですか。」
『ちょっと。どうすんのさ。家族が怯えてるよ』
『おう。おれん所もだ今からじゃ回避できねえな』
問答をしている余裕はとうに過ぎていて、出来るだけの事を指示してもらいました。
それで、雷雨の海域へと入っていきました。
大波に翻弄され、激しい雷雨が船体を打ち付ける。
大声を出さないと相手には聞こえない。
そんな中、全体を包む光に目を眩ませると、それまで耳の奥を突き刺す激しい音は突如鳴り止んで、僕達の前には穏やかな海原とその中央に存在感を発している島が現れました。
全員。無言でした。
『なに、あれ』
『一応、島、のようだが。この海域に島はないはずだ。』
「ああ。最近の地図に照らし合わせても、この海域には突出した岩すらないはず。」
「絶対ですか。」
「ああ。絶対だ」
「そうですか。ならあれは幻か蜃気楼ですかね。」
この僕の言葉に即答したのはどの船かは定かではないですが。島に向かって力が放たれ、見える範囲の島の縁に当たると爆散しました。
これで幻などは完全否定され、でもこのままに。とはいかず船を集合させて相談。
主要幹部。というのは合っているのか知りませんけど、時間をとって緊急の会議を開きました。
「聞いても。」
「先程そちらのじいさんが言った幻。そう言った類いは一切ない。これはそちらのお嬢さんの家族や兄さんの部下にも同様の事をさせましたから。間違いはない。保証しましょう。」
二人が頷いたので納得するしかありませんでした。
「では、この海域から出るしか。」
「それと、もう1つ。いいかな。」
「聞きたくないですけど。どうぞ」
「ありがとう。では。我々はこの海域から出られなくなっている。理由は判らない。あの雷雨を伴った雲が原因だと推測できるが、それ以上は判断材料がないから結論は無理だ。」
「それは脱出方法も判らない。そういうことですか。」
肯定を示されました。
「で、その広さは」
「それは、検討もつかない。」
「調べていない。そういうことですか」
「違う。広すぎてか。感覚が狂っているのか。その両方か。調べたところ。自身含めて全員が戻ってきたときには呆然としている始末で。調べようがない。」
「それは記憶が欠落している。そういう事なんですね」
「そうだ。全員の欠落を確認した。時間にして僅かだろう。」
「そうですか。でも、その戻ってきた時間を計算すれば。
「それは不可能よ。」
「どうしてかは。聞いておきます。」
「ガキ。行ってから戻ってくるまでの時間が統一されていない。これには俺も同行してこの目で見ているから確かだ。」
「それは、同じ場所で。ですか。」
「そうだ。」
「お頭さんの言うとおりですよ。保証します」
「ならどうしましょうか。ねえ船長。」
「なあボウズ。」
「言いたいことは判ってますけど。一応。何ですか」
「時間が無いならもう方針は決まってるだろう。なら俺以下この場の全てがボウズに従うよ。」
「はあ、なら、そうですねえ。決めました。」
僕の答えに皆の視線が集まり。
「もう少し調べてからで」
全員から殴られました。
結果として上陸と成りました。
数名から睨みが注がれていました。




