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Heart of 6 〜赤と譲渡〜  作者: 十ノ口八幸
序章~戦地にて回想。後に夢での回想~
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序章~それは二つの存在を掛けた賭け~

存在にとって相棒以外は取るに足らない、腹を満たす餌にすぎず。屠るは当然のこととして認識していた。ゆえにある時相棒から激しい暴力を受けた衝撃は生涯忘れることはできないだろう。


ある日の事だった。

存在は何時ものように与えられた任務を遂行し、成果を挙げていた。

さして当たり前に任務を終えて自室という牢屋に戻る最中に一つの出会いがあった。

それは後の二つの存在意義を確定させる出会いだった。

結論からいうと、後に一方は運命を呪い覆す為の力を欲っし、一方は全てを肯定し認められる力を欲っした。

二つの願いは同時間に叶えられる。事件を。この場合は事件より故意な事故と言った方が正しいだろうか。


で、話を戻すとその出会いは存在のこれまでに生まれなかった感情、それを芽生えさせた。

端的には恋だろうか。

その出会いから相棒を除け者にするように、出会った彼女に頻繁に会いに行っていた。

それでも任務は完遂していた。それ処か完遂率が上がっていた。


上層部も容認して会うことを認めていた。

苛烈な任務を全て完遂する存在は異常だったがその比率には黙るしかなく。放置に近かった。


確かに成功は大きく、他の組等からは大きく離すように実績を積んでいった。

確かにそれに比例してあの悪臭漂い寒風吹き付ける牢屋から出て、簡素な部屋、家具の整った部屋、広い部屋、そして一個小隊を任されるまでになった。


存在達の任された隊は似たようなそれでも根幹は異なる力を持つ組が選抜されていた。

存在達と似てもどちらかが劣っていた。 それは完璧など否定するかのように。

訓練や投薬で強化していくが限りがある。限界を超えれば器が悲鳴を挙げ崩壊か消失していく。

この消失は自我ではなく双方の力のほうのである。

それが原因と判明するまで幾つの組が崩壊していったのか。


それでも存在は頑張った。成功率も更に上がった。

だから相棒の中で何時からか視界や思考から自身が外れていた事に気づくのには遅かったのだろう。


その日は彼女との日課となっていた散歩の日。

何時ものように何時もの場所で待ち合わせをしていた。

気分は最高潮。彼女の事を考えるだけでそれまで以上の力を出す事ができた。

上も喜んでいた。この先の作戦は問題なく完了できるだろう。と。

それは後に驕りだと組織の全てが理解した。


花畑の思考が相方を蔑ろにしていたと。

その光景を見て始めて気づいてしまった。

そう、相方が愛して止まない彼女の喉元を噛み喰らい、滴る血の全てを腹に納めるそれを見るまでは。


悲鳴がした。

誰の。

絶叫した。

誰の。

嗚咽に咽び泣いた。

だから誰の。

理解したらいけないと。目の前の光景を無かったことにしたかった。

だから、そのそれから逃げた。逃げてしまった。

後悔無かった。それで理解した。

それまで彼女に抱いていた感情は恋などとは程遠い感情だと。


だから数日して彼女に関する感情は消えていた。


だから相方に対する思考は消えていない。

が、その日を境に存在の完遂率は激減していった。


この事に関する報告は資料にして纏められ図書館(アーカイブ・ライブラリー)に登録されている。


事件は、正確には誰かの陰謀による仕掛けであるが。

それは元に戻され、牢屋暮らしになって数年。


今までにない苛烈すぎる戦場で起きた。だから必然かも知れない。


夜営地で鋭気を養っていたころ、敵からの夜襲に合い、部隊の全てが捕虜か殺されてしまった。


命乞いなどしない。

その場にいた命は大なり小なり全て刈り取る対象なのだから。

その時はこれまで放出したことのない力。

制御を離れて関係ない人達まで殺してしまった。

だからって罪の意識に囚われるなんてのは一切無かった。

二つの存在にしてみれば他の存在は自身が生きる術の糧でしかない。

あの組織に居たのも生きる技術と知識を得るためでありそれ以外は関係なかった。

だから、逃亡した。

敵前逃亡と云われるだろうが自身ではそう思っていない。

なぜならこの時を気を揉みながら待っていたのだから。


行動は直ぐに移した。

自分達は計り知れない存在なのだろうと理解していたし、自分達がどんなに相手から知られているのか。どれだけの驚異を抱かれているのか。それらを知っているからこそ自分達には強力な枷を嵌めていたのだろうと理解していた。

現に首に繋がる幾重にも束ね捻り加工した頑強な特殊な紐。手足には同じような造りの紐の先端に1つ数十もの重しが足に三つ手に四つ附けられている。

視界遮断のためのこれも特別製繊維で編まれた布を用いて塞がれており、口にも中に口内を塞ぐための減衰の珠。その大きさ故に呑み込むことも出来ない。そして吐き出しを防ぐために当たり前だが視界遮断と同じ布を宛ている。

視界は遮られているが相方の存在は感じられている。


口を塞がれ視界も鼻も同様に施されている。少々苦しいが問題は無かった。

自身の末端には逃亡防止用に特別な器具を装着されている。

逃げる気は元から無かったがそれでも気分が良いものではなかった。

喋れはしないが言葉なくともくぐもる声で側にいる相棒に合図を送ることは出来た。


思考していた。この後の事を含めてだが、現在を先優先で処理する方法は何時ものようにする。

しかし、一つの懸念材料がある。

それはこの数年で把握し理解し熟考して出した結論は、そうか、あの事が引いていたのか。

本当は分かっていた。

殺したのは感情であって、思考ではない。故に任務中もそれが思考を鈍らせ、標的を仕損じる事が多くなっていたのだと。

ならどうする。決まっている。そうだ。決まっている。

それをして間に修復できないキズを浸けてしまうだろう。

それでもやらないと先へは進めないだろう。


痛みなど有っても無い。

あのときに比べれば、風に吹かれているのも同義だろう。

だから力を全身に込めて足枷だけを壊して外す。

目を覆っていた布を軽く外して相方を探す。

そんな必要はなく、隣に寝転んでいた。

此方が動いたのに気づいたのか体の一部が僅かに動く。

足で軽く蹴ると、重そうな体を起こすように立ち上がり首に繋がっていた特殊な紐を一噛みで食い千切り。力を使って現状を把握する。

どうやら生きているのは自分達しか居ないらしい。なら。と気兼ねなく力の行使をする。


これまで同様、当たり前に響く声は壁越しに聞こえてくる。

不思議と全身が奮い立つ。


時間も掛からず、反響する音はなく、自分と相棒の息づかいが小さく聞こえているのみだ。


行儀よく扉から外に出るのは気分が悪いので最短距離で外に出ることにした。

媒体になる物は無いかと周囲を探すもその辺りには抜かりなく、埃1つ塵1つない。目に見えて警戒していたのが理解できた。

が、媒体なら足下にある。

そう拘束していた枷。これを使用する。


力を掛け合わせ壊した枷に宿らせる。

本当は何処でもいいがあえて一番遠い場所に置いて距離をとる。


思考を集中して枷に合わせ、想像する。

発露のための言葉を埋め込み発動させる。

淡い光が枷から放たれ形を変異させ触手のような物を部屋全体に張り巡らせていく。


壁の中にも枷から生えた触手のネが食い込んでいる。

十分に張り巡らされているネ。建物の大きさも把握していたから此で最後の発動させる言葉で出ることができる。

発動させる言葉は壊す言葉。

口にして淡い光は消え、壁や天井が瓦解していく。

それと同時に瓦解していく物を足場にして脱出していく。


以外と予想よりも早く外に出られたので拍子抜けしても良かったが、その暇はなく瓦礫の山となった建物のから離れなくてはならない。しかし、あてはない。それでも逃げるしかないだろう。


感覚にしては僅かな時間だろう。

強い衝撃で起こされた。

枷や視界を覆っていた物は全て取り払われ処分している。

軽い疲労で走りに走ったその先で朽ちた廃屋に辿り着き、泥のように眠った。

そうして重い瞼を開けると頭上の先にはこれまで見たことのない形相の相棒が見ていた。

有無を云わさぬ突如の暴力に只、耐えることはせず反撃した。が、それは軽く交わされ更なる痛みが全身を貫く結果と成った。


最初は言っている事が理解できなかった。

理不尽だと思った。だから反抗した。それでも容赦ない力になす術なく一点のみに痛みを加えていった。

その行為が幾日経ち、全身は無事だが集中的に攻撃された部分は回復不能に近く。その状態に至って漸く理解したのだった。

相棒のいう言葉と時折見せる苦しくも悲しき表情に。

だから意思を伝えた。一言だけを。

相棒は、絶叫して自分の頭を一撃だけ殴り、意識を手放させられた。


相方に対する感情はあの娘が滴る血で地を濡らし喉元に立てられた鋭い二本の刃が深々と突き刺さっていた。

もう助からないと理解していた。理解していても感情が思考を混濁させ最悪の選択をさせてしまった。

そう現実から逃げるようにその場所から逃げてしまったのだ。

後悔は自室に戻って押し寄せて身も心も切り刻まれ突き刺され業火に焼かれる悪夢を見続けていた。

忘れよう。そうあの娘に対する感情を忘れてしまおう。そうすれば、こんな悪夢は見なくてすむ。

それでも思考は、相方に対する思考は絶対に忘れない。

それを固定するのに時間が掛かりすぎ、気が付けば作戦の失敗を量産し、部隊は解散。部屋も大元の牢屋に戻されていた。


何時かはその身に叩き込んでやろうと思い知らせてやろうと願い、好機は訪れた。

そう相方と自分しかいない部屋に閉じ込められ。それまで離れていた心を無理やり統一させて脱出。

そして、走ってたどり着いた廃屋に倒れるように眠った相方を見守り、思考を爆発させた。

反論を赦さない一撃は相方の一点に衝撃を与える。最初はそれほど力を込めていない。

僅かな苦しみを含んだ声は重そうに瞼を開くと視線が合ったのか、それとも自分の表情に対してなのか判断は付かなかった。いやよしんばついたとしても濁り淀んだ思考ではまともな判断などできないだろう。不思議がるその目を無視して更に最初と同じ箇所に全力を込めて蹴り込む。

反撃をしてくるがそんなもなは今の自分には関係ない。交わして横から一撃。

床を滑って崩落した壁の一部に体が止まる。

そうやって相方のした行いを理解させるため容赦ない制裁を加えていった。

何日経ったのか知れない。相方は己の行いに対して意思を伝えてきた。が、それは遅すぎて一点を除いた部分は完全に回復していた。

相方は懸命に立ち上がろうとしていた。完全回復とはいえ数日間一点を攻撃されたのだ、その部分から走る痛みで満足に立ち上がれないだろう。

向けられる視線に目を合わせず。懇願とも畏怖ともいえる。瞳の奥に宿る感情は自分が惨めになるだろうとわかっていて、それで、声を張り上げ、相方と袂を別った。

尚もすり寄ろうとする動作を感じると容赦なく力を奮った。


何度も振り返った。見えるその背には後悔と憤怒が混ざる。

小さく鳴いて、少し大きく啼いて、痛む一部を背負いながら廃屋を後にした。

痛みを(こら)え、森林を走った。不可解なほど静寂に包まれていたがそんなものを気にする余裕はなく。

我に返ると森林の反対側に出ていた。

潰れそうな肉体を息を吐いて整え。

空に向かって大きく哭き。二度と振り返らず宛てなどなく走り始めていた。


どれだけの月日が流れたのか。二つの存在は其々が高い地位に着いていた。

それはあの時を忘れるように心身を削る様に任務をこなしていき、大きな部隊を任されるまでに成っていた。

だが、二つの存在は皮肉にも合間見えてしまう。敵同士として殺し合いの戦場で。

最初は五分。それから幾度も相対して潰し潰されを繰り返して、関係は憎しみの相手からあの時のような相棒、相方の関係に近くなっていた。

それでもまだその間には、埋めようもない深い底知れぬ溝が大きく深く空いていた。


ある年の戦場で二つの存在の運命は転換する。

その時はこれまでの集大成と呼ばれる大規模作戦の最終段階。相手は自軍含めた敵味方総勢数千万単位の大規模戦場。

混線を避けるため特殊な記号を用いた伝達処理を各軍は用いていた。

時間が経過していくと疲弊し磨耗する部隊から攻め入られ瓦解していく。

何とか凌いでも反撃する気力は全てになく。

上からの命令も何とか遂行できる状況だった。


そして、その瞬間は訪れた。

力や獣、銃弾が飛び交う中、轟き鳴り響く空と揺れ隆起する大地から二つの影が現れる空と大地の中間で1つに成った。

これは後にカミともアクマとも呼ばれる世界の機密を暴露する切っ掛けの始まり。

この時は世界全てには知られていない事象。

理解しがたいその物体か何かは灰色の外套を纏い口元は見えないよう隠れている。

戦場に前兆も前触れもなく現れ頭を抱えて笑うと外套から見えた視線に敵味方問わず全てが射ぬかれ硬直してしまった。

直後、戦場全てが大規模爆発に巻き込まれ全ての命が終えてしまった。


二つの存在も例外なく抵抗も出来ず世界から肉体を消滅させられてしまった。


二つの存在は同時に願った。

『終われない』

『まだやることがある』

『力が欲しい』

「全てを覆す力を」

「全てに認められる力を」

言葉は違えど始まりはあの時。

だから二つの願いは距離を無視してある上位のモノを呼び覚ました。

その契約に二つ存在は迷うことなく頷き。眩い光景から気がつくと戦場から離れた場所にいた。

其々の側には姿は違っても醸し出す空気でかつての相方と相棒だと悟り。

お互いに笑い合い殴りあって気が済むと、記憶に刻まれた時までに目的を迎え撃つための準備をするため立ち上がり。二つの存在は光灯さぬ闇夜に姿を紛れ混ませるようにその場を去っていった。

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