序章~総主(お頭)の話~
おう。次は俺だな。
そうだなあ。俺は有り体にいやあ盗賊よ。
他所様の命を奪うなんてのも日常茶飯事。
金品強奪。身ぐるみを剥いでそこらいに捨てたこともあったな。
昔は民家に押し入って全てを奪い尽くしていたらしいがな。
まあ、今の時代にゃ合わねえよな。それでも何時の世にも逸れは居るもんだ。
最初は何から始まったのかは知らねえよ。何せ物心付いた頃にはこの中だ。それが俺の当たり前で、常日頃の事だと思ってるよ。
奪われたらそれ以上で奪い返す。なんてのもあるな。
まあ、それでもそんな事をしていたのは昔の話だ。
俺が上に成ってからはそういう行いを極力避けるように勤めてきた。
俺は周囲とか別の奴らなんかにはバカと言われるが自分では博識だと思うよ。自称とか云われるが、それでも俺が上に成ってからは報復とかは一切合切無くなりつつあるからな。まあ、それでも小さな諍いは絶えないが。
その時は双方の言い分をまとめて、真に始まりを公平に判断することにしてはいる。
そんな組織を昔に造ったよ。
今では若い奴とかが運営してるが。
まあ、中には未だに納得できない。て老人共や中堅の奴らもいるがな。
それでもまともに動いているよ。
さて、俺には確認したい事があるが。良いか。そうだな。そこの、そう、アンタだ。五人の中で一番の知識を持ってそうだからな。
俺の質問は一つだ。それを聞けたら。
俺が聞きたいのは一つだ。
そうか。なら俺の聞きたい事を聞けたし。すまんな。
さて、話が脱線したがな。俺の名はヴァドロまたは、ヴァドロットと呼んでもらいたい。
大体が前者の呼ばれ方をするがな。
俺は先々代の頭の血筋なんだと。
はは。言っとくが元々俺の生まれは旧オーストラリアの人工島居住区だ。
まあ、登録番号までは知らねえよ。
あの区画は無数の大小の島々で成り立ってるからな。
判らねえよ。
それで、なんでそんな事が判ったのかは。まあ、偶然だろうな。
そこの姉ちゃんも言ってたろ。
そうだ。あの大戦さ。俺達も参加してたんだよ。
俺達の場合は志願してだがな。
それも末期大戦じゃなく、初期の方さ。
若かったというより幼かった俺も当時の世界には嫌気が差してたからな、少しでも力になって早く終わらせたい。なんて幼心に意気込んでたもんだ、それは数日で打ち砕かれたがな。
この辺りは関係ないから省くぞ。
それでな、そんな事があって、戦線離脱したのさ。
要は逃げたのさ。
当たり前だろ、幼いと言っても片手で足りる歳だぞ。
あの悲惨な戦場で正常な思考を保ち、さらに正常な判断を取れる人間などいねえよ。
必ず心に大きな爪痕を残して良くて入院。
悪くて自ら命を。
そんなのが吐いて捨てるほど居たよ。
だから逃げた。
辛うじてまともな思考ができる間に。
夢中で脇目も振らずに。走ったよ。
そうして辿り着いたのが。
総合管理施設。
そこの玄関に倒れ込んでそのまま泥のように眠った。
で、眠ってその後に起きたら血を抜かれ、皮膚を少し切り取られ、髪をごっそり刈り取られ。
薄着に着替えさせられてその後は何時ぶりかの風呂に入らされたな。
行水だったがまあ、それまでの泥水より遥かにましだったな。
でだ、俺はその施設で数日過ごしたがな、その中で問診と検診を受けさせられて、それで判明したんだと。
俺が赤子の頃に居住区から拐われたん子供だと。その本人なんだと。
まあ、親は姿を眩まして行方知れず。
住居も施設の者が調べてたが記録が抹消されていたらしくてな、調べても何も解らなかったんだと。
で、一時的に併設されていた似た境遇の子供を集めた施設に預けられていた。その間にも調べていたんだと。
その過程でどうにか俺の血縁が判明してな。
調べている時にある記録から判明したんだとさ。
先々代には子供が複数居たらしいんだが個々に徒党を作って独立したんだと。
だが、その内の一人が一般人として足を洗ってあの島で暮らしていたとか。その情報をどういった経緯で仕入れたのかは定かじゃないが。それを元に先々代が直に最初は交渉して子供を引き取ろうとしたらしい。
後継がいないのもあったらしいが。
まあ、結果は目に見るより明らか。
大喧嘩になって。一旦引き上げた。
それから数日後、そうだ。
俺は拐われたのさ。
それから俺の親はどうしたと思う。
くくっ。探さず諦めて居住を売り払って島を出た。その後の行方は不明。だとさ。
最悪だろ。親ならそれも実の子供だぞ。どんな手を使ってでも奪い返す事をするだろ。
それをせずに逃げるように消えたんだとさ。
この辺は後になって頭になったとき再調査して判ったことだ。
当時は信じていたよ。だがな、幾ら待っても親は現れず俺は捨てられたんだと理解して、俺みたいな子供を増やさないために一層世界を平和にしたいとか思ったわけよ。
今じゃ若すぎる至りだよ。
そんな努力も虚しく、長期に渡る私利私欲を含めた大戦が続いたのさ。
人1人の力でどうにも出来ない典型的な例えだな。
そんなある時、先代が永遠の眠りに着いた。とかで戦線から呼び戻され、まあ俺のそれまでの戦果で反論する奴はいなくてな。
あっさりと頭に就いたよ。
それからは身内を養わねえといけねえから手の限りを使って何でもやったよ。
勿論、若い奴の教育の一環で大戦の参加をさせていたんだが。
姉ちゃんも知ってるだろ。
末期中の末期に現れた通称センシン。
敵味方関係無く圧倒的な力で戦場の全てを屠った存在を。
実はあれには家から数名派遣してたんだが、あれのお陰で一人がなんとか逃れて後は全滅だよ。
おかげでかなりの打撃を受けて傾きかけたよ。
それからだよな、あの大戦が本当の意味で瓦解していったのは。
まあ、その後で公表されたあれには正直俺も驚いたが、だからと言って身内が帰ってくる事もないからな。終戦から半年くらいして弔いをして盗賊業を再開させたのよ。
その内の一つに姉ちゃんが断ったあの誘拐事件に1人手練れを派遣したのよ。
二度と帰ってこなかったがな。
本当に手痛いがそうも言ってられないからな。なんとか手を尽くして生き延びてきたよ。
それである随分前に情報を見ているとでかい仕事。ようは今回の仕事が入ってたのよ。飛び付いたよ。
その報酬額もさることながら、複賞のほうが一番目に付いたな。
ああ。俺んとこは盗賊業を買ってあるお偉いさんの私兵に成る。というものがあってな。
それまでの事を考えて疑う余地も無かったんで二つ返事で引き受けたよ。
まあ、失敗したがな。
で今に至る。てわけだ。
何人かを置き去りにしたし。
旨い話には、てやつだな。
反省して次に活かすよ。
んあ、なに。心配ないだと。
そうかあいつらは助かるのか。なら良かった。
で、これが俺の話だ。




