③
ルネッサンス調の豪華な扉の前に立つ。
はやる呼吸を整えて、俺は扉をノックした。
かつては囚われの姫君が一人ぼっちで涙に暮れていた場所。
だが、今日からは違う――。
「ジョージ、お前今日から岬恵介と同じ部屋で暮らせ。あいつの受けた精神的なショックを癒して、側で支えてやるんだ」
新理事長になった男は、ニヤつきながら俺にそう命じた。
「……てめえ、なんか企んでるだろ?」
俺はピンときて、校長と教頭の制止を無視し、新理事長に詰め寄った。
上手い話には裏がある。
一芸能事務所の社長が、大金はたいてこの学院の理事を買って出た理由もきっとあるはずだった。
「俺はお前だけじゃなく、岬恵介の後見人にもなるつもりだ。二人で歌ってるとこ見て確信したよ。お前とあいつはいいコンビになる。金の卵を一緒に育てていっぺんに売り出すのさ。どうだ?悪くないだろ」
あいた口が塞がらなかった。
将来得るであろう利益を見越しての投資というわけだ。
「結局商売かよ!」
それでも、断りきれない俺がいた。
だって――。
カチャリとドアが開く。
心臓が跳ね上がった。
ドキドキして、ぶっ倒れそうだった。
「ジョージ……こんな朝早くどうした?」
長いガウンを羽織った岬が可愛い唇を尖らせる。
「もうお昼前だよ、ねぼすけ」
どうやら、まだ目覚めたばかりらしい。
眠い目をこすり、寝癖のついた髪を恥ずかしそうに直す仕草がたまらなく愛おしかった。
「まだ寝ててもいいよ。俺は隣で何時間でも恵介の寝顔を見てる」
俺は半ば強引に部屋に押し入って、岬を包み込むように抱いた。
「そんなわけにいくか……」
「どうして?」
そっとキスすると、透けるように白い頬が一瞬でピンク色に染まる。
「これからはずっと一緒なんだぜ?」
「……どういうことだ?」
岬はまだ、俺たちが双子の卵になったことを知らない。
「言葉通りだよ。俺たちは今日からずっと一緒なんだ」
廊下のトランクに気づいた岬は、何も聞かず俺の首に腕を回してそっと呟いた。
「ジョージ、あとで薔薇を摘みに行こう。部屋いっぱいに飾るんだ」
薔薇の蕾がほころぶような笑顔で――。
【完】
最後まで読んで下さったみなさま、本当にありがとうございました。
たったひとつ願いがかなうなら。
あたしは今はもう存在しないカストラートの歌声を生で聴いてみたい。
そう思っています。
この作品にはそんな愛着もあり、マニアックな話ですが続編も描けたらなぁなんて考えていたりします。
もしもまた機会がありましたら、どうぞよろしくお願いいたします♪
FUJICO




