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文化祭当日――。
「おっさん、久しぶり」
高校の文化祭にまったくそぐわない極彩色のスーツを着た潮田のおっさんは、真っ赤なポルシェで学院に乗り付けた。
「ジョージ、お前どうなってる?退学するって連絡が来たかと思えば、今度はマスコミ連中に声かけろだろ?一体何企んでんだ?」
潮田のおっさんは車から降りるなり、説教を垂れ始めた。
「色々あったんだよ。で、マスコミは集まった?」
「おう、地方新聞と、俺の顔に免じて何社か音楽の専門詩出してるとこが重い腰を上げた程度だけどな。ああ、あとお前が友達と撮って送ってきた写真見せたら、素人のイケメン特集してる女性誌が食いついてきた」
「十分だ。ありがと、恩に着るよ」
「なあにが十分だ。こっちの身にもなれよ。内容も分かんねーままこんなとこまで呼びつけて、ヘタなもん見せてみろ。信用問題だぞ」
「言っとくけどおっさん、今日来たマスコミ連中はそろって俺に感謝するぜ」
俺は会場におっさんを案内しながらほくそ笑んだ。
「えらい自信だな。で何を見せる気だ?昔の声でも取り戻したか?」
「まさか。エンジェル・ジョージなんか比べもんになんないもんだよ」
「おいおい、主役はお前じゃないのか?」
おっさんは狐につままれたように言った。
主役はもちろん岬だ。
今日はあいつが自由を得るための、そして過去と決別するための晴れの舞台なんだ。
「おい……あれ」
会場の前で、潮田のおっさんが急に立ち止まった。
会場前につけたリムジンから、理事長が姿を現したのだ。
俺は顔を背けておっさんの腕を引いた。
あの男の顔を見るのもイヤだった。
「ねえ、早く行こうよ」
「バカ、そんなわけいくかよ。理事長、岬理事長!」
何も知らない潮田のおっさんは、派手な身振りで理事長呼んだ。
逃げも隠れもできない場所で、一番会いたくない相手とでくわしてしまった。
理事長はSPみたいな取り巻きを引き連れて近づいてくると、物珍しげに俺たちを見つめた。
「いやあ、この度はうちのバカが大事な坊ちゃんに手出したみたいで……お詫びの言葉もございません。ホラ、お前も謝れ」
頭を押さえつけるおっさんの手を、俺は憮然としてはね退けた。
「イヤだ。謝る必要はない」
「何言ってんだ、ジョージ!すんません」
おっさんは目を丸くして、理事長に営業用の愛想笑いを振りまく。
「まあまあ。彼は彼なりに責任を取るつもりです。それでいいじゃないですか。それより、本日は我校のためにマスコミ各社にお声かけ頂いたとのこと、感謝しております」
すました顔して、理事長は笑った。
俺は頭に血が上るのを必死で抑えた。
「理事長、どうか退学だけは免除してやってもらえませんか?こいつは何もないのに暴力をふるったりするヤツじゃないです。きっと何か理由があったんだと……」
おっさんは俺のために、額が地面につきそうなほど深々と頭を下げる。
「おっさん、もういいよ……」
「もういいそうですよ、潮田さん。失礼、息子の舞台を見逃したら大変だ」
それだけ言うと、理事長は頭を下げたままのおっさんの前を平気な顔して通り過ぎて行った。
ああ、そうだ。
岬の舞台、見逃すんじゃねえぞ。
俺はぐっと唇を噛みしめた。




