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『お前は根っからの正義漢だ』潮田のおっさんの声が頭にこだました。


正義感じゃないって言ったろ?


俺はいつでも、自分が正しいと思うことをしてきただけだ。


岬が明らかにこちらを気にしているのが分かる。


念を押すように何度も振り返り、俺を暗闇に押し留めようとする。


俺は初めて自分の衝動ではなく、誰かの意志を尊重しようとしている。


でも――。


本当にそうすることが正しいとは思えなかった。


こんな状況、やっぱり間違っている。


岬が低く呻く。


俺は拳を固く握っていた。


「お前は私の宝だ。一生私の元から逃がしはしない!」


こんな約束はフェアじゃない。


俺は従順な犬になんかなれない。


理事長が叫んで、再び岬に拳を振り上げようとしたその時――。


俺は舞台袖から飛び出し、正面切って理事長の前に立ちはだかっていた。



数人の教師たちが小講堂に流れ込んできたのは、それとほぼ同時だった。


「理事長!」


小講堂の中に灯りが点され、突如としてその場はお祭り騒ぎのようになった。


「岬くんっ!」


岬の無残な姿を見た女性教師が悲鳴を上げた。


状況を全く読み取れない教師たちが右往左往する中、俺は微動だにせず理事長と睨み合っていた。


「結城くん……?」


先頭に立った教頭の小杉原が、どう考えても場違いな俺の名を呼んだ。


「一体どういうことですか?」


教師たちが口々に声を上げるが、理事長は俺から目を反らすことはなかった。


悪魔のような冷たい目に宿る狂気。


何を企んだのか、口元にうっすらと浮かぶ笑み。


俺はこの時はっきりと――岬の心に巣食う悲しみの元凶を理解した気がした。


「彼だ! 彼が恵介にこんな仕打ちを!」

 

理事長が俺に指を突きつけた。


「なっ……?」


言い訳する間もなく、俺は両脇から教師たちに取り押さえられた。


「ジョージ!」


助け起こされた岬がパニックを起こしたように暴れ、悲壮な声で俺の名を呼んだ。


「岬っ……」


だが、もう遅い――。


教師たちに引きずられ、岬から引き離される俺の目の前で、理事長は傷だらけの息子を愛おしそうにその手に抱いたのだ。








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