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「ジョージ、約束だ。何があっても、絶対にここから出てくるな」


情けないことに、俺は恐怖に震えていた。


興奮した理事長の叫び声は迫力を増し、金縛りのように俺を動けなくさせた。


「それが本当に……お前を助けることになるのか?」


恐ろしい足音と、悪魔の目のような光がステージの真ん前までやってくる。


岬は深く頷くと、俺を残して暗転する舞台に飛び出して行った。



「お父さん」


岬は勢いよくステージから飛び降りると、獣のように吠える父親に近づいた。


俺は寒さと異様な恐怖から舌を噛みそうなほど震えていた。


次に起こることの、おおよそその検討がついていたからかもしれない。


「恵介っ、お前……!」


呼びかけに呼応して、怒りに満ちた理事長の肩が大きく上下した。


床に投げ出された懐中電灯は、まるでスポットライトのように岬を照らし出した。


次の瞬間――。


悪魔に魅入られた理事長は容赦なく岬の頬を手の甲で打った。


「――!」


一度ならず、二度、三度と。


思わず声を上げかけ、俺は両手で口を塞いだ。


自分の身に降りかかるなら、殴られる痛みなどたいしたものじゃない。


だが岬が打たれる音を聞く度、俺の心は張り裂けんばかりの悲鳴を上げた。




頼むから抵抗するなり、逃げ出すなりしてくれ――。


「恵介、自分のしていることが分かっているのか!」


俺の願いも虚しく、岬は力なく床に倒れ込んだ。


「分かっていますとも……。あなたみたいに気がふれてるわけじゃない!」


相手を見下す喋り方が、ますます理事長の逆鱗に触れる。


「お前っ!」


理事長は馬乗りなって岬を殴り続けた。


岬はまるでそれを望んでいたかのように、振り下ろされる拳をただ真正面から受け入る。


こんな仕打ちがあるか――。


飼い主の言いつけを守る犬にでもなった気分だ。


今の俺は、生気を失ってゆくあいつを目の前にしても、言いつけどおり影に隠れて立ち尽くすことしかできない。


無力な自分に言い聞かせる。


これがあいつを、岬を守ることになるんだって――。


「私がどんな想いでお前を育ててきたか……分からんとは言わせんぞ!」


理事長がぐったりした岬を足蹴にする。




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