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BLUE&GOLD  作者: 三日月


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3/8

青と刃

お楽しみください。

 ゆかと、そのバディである茜は、閑静な住宅街で保護対象者の様子を窺っていた。

 

 対象は、結城舞さんという16歳の少女だ。


 管理局が重要捕獲対象としていた。


 アンドロギュノスの諜報局が結城舞のことを調べたが六年前に結城家の養子となる以前の経歴は分からなかった。

 今の家族とは血の繋がりがないということになる。


 しかし数日間の保護監視でこの少女が父と母を本当の親のように思っていることは痛いほどわかった。


 今日も女子高生らしく、短いスカートに、よく似合っているブレザーの制服。

 赤い髪を後ろで束ね、学校へ向かうようだった。

 

「お母さん。今日バイトだから遅くなるよ」

 

 わざとらしく振り返りにっこりと笑って叫んだ。

 

「今日はお父さんとの結婚記念日でしょ?二人で食事にでもいって!机に手紙置いてるから私のいない所で読んで〜」


 はにかみながら綺麗なフォームで走っていく。


 その様子を母親が温かい目で見守っていた。


 この家族を護らなければ……ゆかと茜に決意の光が宿った。


 学校へ入っていく結城舞を見届ける。


 まさか学校でなにか仕掛けてくることもないだろうと、ゆかは思っていた。


 ◇◇


 しかし念の為に、ゆかと茜は交代で学校を見張っていた。


 もう少しで授業が終わる時間だ。


 茜が車から正門の監視をしていた。


 ゆかは学校の外周を回りながら警戒していく。


 今回の任務は、結城舞を影から護衛することだった。

 本来なら危険を知らせ、アンドロギュノスで保護した方が安全なはずだ。

 

(でも、直接保護すれば舞さんの生活は一変してしまう……)

 ゆかは、今朝見た舞と母親の笑顔を思い出した。

 

 危険が迫っている以上、この方針が正しいとは言い切れない。

 

 それでも今は、舞とその家族の日常を壊さずに護り抜く。

 

 ゆかはそう心に決め、警戒を続けた。


 人がほとんど通らない裏道に来た。


 ゆかは立ち止まり、ふと、この間の夜のことを思い出す。

 

 あの金髪の女性との出会い。

 

 あの時、公園まで二人で手を繋ぎ走った。

 途中で買った缶ビールで乾杯して、そのまま名も聞かず別れた。

 

 連絡先交換も、どちらからも言い出さなかった。


 ただ笑いあった。


「あんた無茶苦茶だね、人のケンカ半分横取りなんて」

「あはは、見てられなくて、でも楽しかったよ」


「私もさ」


 ——名前も何も知らない、聞くこともしなかった。

 何故だろう。また会える予感があった訳でもなかった。


(名前など必要なかった。といえばロマンチック過ぎるか?)


 空を見上げるといつの間にか太陽が少し西に傾きかけていた。


 その眩しい光の中に小さな黒い影が見えた。

 

「黒点?」


(違う!)


 ゆかの細胞が叫んだ。

 

 ゆかの魂が闘いの準備を完了させた。


 黒い影が太陽を背にゆかの頭上に急速に迫ってくる。

 

 (いつまでも太陽を見ていたらダメだ)

 

 目を伏せ地面の影を見る。

 

 影が腕を振りあげる。

 

 ゆかは咄嗟に首を横に振り避けた。


 次の瞬間、鋭い刃がゆかの青い髪を一束切り落とした。


「ひっひっひ!お前フェアリーだな?お前を殺してからあの子供をもらう!」

 

「お前!確かグリード兄弟の!」

 

 資料でしか見たことはないがカンパニーの傭兵。

 どんな仕事でも請け負う、何でも屋だった。

 

 殺人狂、兄弟で殺すことが目的でカンパニーの仕事をしているということを資料で見たことがある。


 目がイッていた。


「お前ら傭兵なんだろ?どうしてこんな戦場でも無いところで!」


「あはは、何を言ってるんだ?戦場ではみんな死を覚悟してるじゃないか!そんなもんを殺して何が楽しいんだ?俺たちはな、弱いものをいたぶるのが何よりも好きなんだよ!幸せを一気に地獄へと落とすのがな!」


「反吐が出るわ!このイカれサイコ野郎!」


「褒めてくれたお礼にバラバラに刻んでやるぜ!俺はアトロ・グリード、長男だ」


 ゆかがグローブをはめながら間合いを計る。


 (マユリがグローブをバージョンアップしてくれた。確かこうか?)


 新しいグローブにエナジーを込めると、肘まで覆われているアーマーが燐光を放つ。


 アトロ・グリードが刀を袈裟に振ってきた。


 (信じてるよ!マユリ!)


 ガキッ


 ゆかの二の腕のアーマーが刀を弾いた。


 (おお……刀を防げる!なんだっけこのガードアーマーの名前……確かパーフェクトアームナンチャラカンチャラ!アホすぎる長い名前!記憶の中のマユリがドヤ顔で笑っていた。でもこれで戦える)


 左腕で受けて右ストレートを打ち込む。


 刀で拳が受けられた。


 アトロ・グリードがコマのように回転しながら刀を振ってくる。

 ゆかはアーマーで刃を受け、次の一撃をしゃがんで避けると、アトロの軸足を蹴った。

 しかし、軸を乱されたアトロの回転は不規則になり、かえって刃の軌道が読めなくなってしまった。 


「クルクルと鬱陶しい」

 

 ゆかは思い切ってガードを固めアトロの足にタックルを仕掛けた。

 

 刀が頬を掠め、血が流れた。


 どこでもよかった。

 

 ゆかはアトロの身体に拳を押し付け超伝導ナックルを打ち込んだ。


 放たれた衝撃波が、アトロの腹部を掠めて地面に穴を穿つ。


「ぐぁぁぁ」


 アトロ・グリードが腹部を押さえて立ち上がった。


「やりやがったな!」


「次は外さない!」


「ここで本当はフェアリーはぶち殺すつもりだったのによ! 楽しみは今度に取っておくぜ! 俺にはやることがあるんでな」

 

 アトロ・グリードはこれから狩りに向かうような残忍な笑みを浮かべ、走り去っていった。

 

(あいつ……まだ何か企んでる!)

 

 ゆかが茜に連絡を取ろうとしたそのとき。

 

 校舎内から悲鳴が聞こえた。

 

(学校にも敵が……!)

 

 駆け出しかけた足が止まる。

 

 学校には茜がいる。

 

 だが、この男を逃がせば、別の場所で何が起こるかわからない。

 

(茜、舞さんをお願い!)

 

 ゆかはアトロを追って走り出した。 


 茜は悲鳴と同時に車から飛び出しフェンスを飛び越え校内に入っていく。


 (……広範囲探視……)

 

 見えないエナジーの波が校内に広がっていく。

 

「いた!結城舞さん」

 

 (悲鳴も同じところからだ)


 茜は階段を2歩で飛んだ。踊り場の壁を蹴り反動で次の階段に飛ぶ。

 

 三階の廊下に両手に短刀を持った男が歩いていた。

 

 生徒たちはパニックになり逃げていた。

 

 結城舞もその中のひとりだ。

 

 男が走って飛んだ!

 

 結城舞の目の前に着地し、ニヤリと笑った。

 

 結城舞は尻もちをついて後ずさる。

 

「な……何?」


 男の短刀が一閃すると結城舞のカッターシャツだけが切り裂かれた。


「キャー」

 

 はらりとシャツがはだけ、腹部に共鳴紋が見えた。

 結城舞が咄嗟にシャツで共鳴紋を隠す。

 

 共鳴紋——共性と呼ばれるレゾナントだけに生まれた時から刻まれている紋様。


「結城舞だな?来てもらうぞ!」


 男が結城舞に手を伸ばす。


「させない!」


 鋭い声と同時にすごいスピードの飛び蹴りが男の顔面に飛んだ。

 

 身体を捻って男が避けた。


「ちっ!フェアリーか?」


「お前は……確かカンパニーの……」


「ケラ・グリード」


「ボクがこの子を護る!」


 茜の全身にエナジーが湧き上がり足のレガースが燐光を放つ。


 ケラの短刀と茜のレガースの蹴りが交錯した。


 




 

 

 


 

 


 



 


 



 

 


 



 


 


 


 

 


 

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