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BLUE&GOLD  作者: 三日月


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2/8

JOKER

お楽しみください

——某国紛争地域——


 弾丸が激しく行き交う戦場で両手に銃を持った女が踊り狂うように銃を撃ちながら笑っていた。


 女は傭兵だった。

 しかし目的は敵を殺すことではないような動きだった。

 もっと単純な動機。


 戦闘狂——。

 

 対峙した相手との、一瞬の駆け引き。

 

 殺すか殺されるかではなく、勝つか負けるか。

 

 人の生き死には、その結果でしかない。

 

 そんな考えで戦っているかのようだった。 


 敵に囲まれていた。女は建物の4階の柱の影に隠れながら獰猛な笑みを浮かべていた。


 敵のゲリラ兵が網にかかった獲物を仕留めようとビルを取り囲んだ。


「本当にアレがカンパニー最強の傭兵【JOKER】なのか?」


「追い詰めたからには、ここで仕留めるぞ」


「よし。一斉にロケットランチャーを打ち込んで息の根を止めるぞ」


「いいか?よし!撃て」


 3発のロケット弾が同時にビルの4階へ撃ち込まれる。


 轟音と火柱が上がり4階は火の海となった。


 その瞬間……何かが4階の窓から飛び出した。


「やったぞ、自分からもう終わりだと悟って自殺してくれるとはな!」


「空中では身動き取れない!撃て!撃て」


 落下するJOKERを狙って、銃弾が発射された。

 

 しかし、一発も当たらない。

 

 落下位置を予測して放たれた弾丸は、すべてJOKERの足元よりも下の壁に着弾していた。

 

「なんだ? どうして落ちない!」

 

 JOKERの身体から淡い燐光が溢れる。

 

 その身体は、重力を無視しているようにゆっくりと降下していた。 


 上空からJOKERのエメラルドグリーンの瞳が敵を見据える。


 両手の銃が火を噴いた。

 

 連射された弾丸は、一発たりとも逸れることなく敵を撃ち抜いていく。


――カチン。


 弾切れ。


 二挺のスライドが後退したまま止まる。


 だが、射撃が途切れたのは一瞬だった。


 空のマガジンを落とすと同時に、両手を腰へ走らせる。

 銃を振るような動きで、特製のベルトに固定された予備マガジンをそのまま装填。


 スライドが前進する。


 次の瞬間には、再び二挺の銃口が火を噴いていた。 


 そしてJOKERがゆっくりと音もなく地上に降りた。


 後は炎がパチパチと爆ぜる音しか聞こえなかった。


「はぁ……退屈な敵しかいねえのか?」


 JOKERは1人つまらなそうに歩いていった。


 ◇◇◇


 世界的傭兵派遣組織【カンパニー】。

 世界中の紛争地帯に傭兵を派遣し、その対価を得る組織だった。

 どの国も【カンパニー】と揉めることは避けている。

 そのカンパニーに、一件の依頼が舞い込んだ。

 依頼元は管理局。

 内容は、16歳のレゾナントの少女を捕獲し、指定された施設へ移送することだった。

 依頼書には、対象の個人情報と顔写真が添付されていた。

〈重要捕獲対象共性〉結城舞 16歳

 さらに、対象の周辺にはアンドロギュノスの特殊戦闘員【フェアリー】が配置される可能性があるという。

 カンパニーの担当者は依頼書を確認し、通信端末を手に取った。

「グリード兄弟に依頼を回せ。バックアップにはJOKERをつけろ」

 

◇◇◇

 

 同じ頃、別の場所で重厚なデスクが置かれた部屋で、銀髪の女が一冊のファイルを閉じた。

 

 そこには、赤い髪の少女の顔写真が載っていた。

「見てて、リタ……」

 女は誰に聞かせるでもなく呟いた。

「四柱……どんなことをしてでも、必ず見つけるわ」 


 ◇◇◇


 女がバーで飲んでいる。

 鮮やかな金髪とエメラルドグリーンの瞳、端正な顔立ちが人を寄せつけない程のオーラを出している。


 時折、身の程知らずで空気の読めない男がナンパしに来るがすぐに彼女の何者も寄せ付けない雰囲気に気付きすごすごと消えていく。


 ウィスキーを一気に喉に流し込み、グラスをカウンターに叩きつけるように置いた。


 激しい音がして一瞬店内が静かになるがすぐにまたガヤガヤと元の騒がしさに戻る。


 金髪の女は怒っていた。

「私がバックアップ??おまけに組む相手があのグリード兄弟だなんて……ちくしょう!」

 

 断ることもできたが依頼のメールで唯一気になるところがあった。

 

 あのアンドロギュノスの特殊戦闘員【フェアリー】が警護しているレゾナントを拉致するという。


 拉致対象は16歳のレゾナントの少女だという。


「ふぅ……くだらない」


 息を吐き下腹部に手を当てた。

 

 話には何度も聞いていたアンドロギュノス。

 レゾナントを守り保護する組織。

 

 JOKERは直接フェアリーとは対峙したことがなかった。

 

 今回、もしかすると会って戦うことになるかもしれない、そう思うとこのバックアップというポジションも自由が利き、悪くはないと自分を納得させる理由にした。


「フェアリーか……これで退屈な奴だったら私が殺る!」


 握りしめたグラスにヒビが入った。


 その時、四人の男がJOKERを取り囲んだ。

 

「いい女じゃねえか、付き合ってもらうぜ」

「…………」

「何黙ってんだよ」

「………………」

 険悪な雰囲気に周りの客が好奇心と共に遠巻きに見ていた。

 

「私は今日は機嫌が悪いんだよ、坊やは帰んな!」

 

 明らかに年上のイカつい男が坊やと言われて頬をペチペチと叩かれた。


 残りの3人も身体が大きく暴力が染み付いていた。


「ははは、こんな強気の女、久しぶりだぜ!さぁいいから来い」


 男が女の腕を持って引っ張る。


 エミリーは引っ張られた勢いでそのまま加速して男の鼻っ柱に頭突きをぶち込んだ。

  

 男の鼻が潰れ大量の鼻血が流れた。


「このアマ!!」


 金髪の間からエメラルドグリーンの瞳が笑ってるように見えた。

 (ちょうどいいぜ、スッキリさせてもらう)


 四人をぶちのめす十通りの手順を一秒もかからずに組み立てた。


 しかしその手順は、一つも実行することが出来なかった。

 青い風が金髪をなびかせた。


「美人1人に男4人って羨ましすぎるね!2人ちょうだい」

 女が飛び込んできて鼻血の男に飛びかかり三連の飛び蹴りをぶち込んで吹き飛ばした。テーブルの上に仰向けで止まり、下から金髪を見つめていた。

 

 金髪が上から見下ろす。

 

 青い髪がたまらなく魅力的な笑顔でJOKERを見つめてウインクした。

 

 あまりの出来事に金髪は吹き出した。


「あはは……なんなのおまえ?こんな面白いことある?いいよ!でも早い者勝ちな」


 と言うと2人目の男の顎に回し蹴りを当て、着地と同時に回転し3人目に後ろ回し蹴りを放った。

 蹴られた男が壁際までふっとんだ。


 四人目が唖然としているところに青と金のパンチが同時に男の腹に入った。


 二人が顔を見合わせてニヤリと笑った。


 青髪が十分過ぎる額の紙幣をテーブルに置いた。

 

「奢るわ」

 

 そう言いながら走って逃げた。

 金髪も後を追う。

 

 二人はいつの間にか手を繋ぎ、人波を見事な足さばきでかわしながら走っていく。

 

 JOKERは、隣を走る女をちらりと見た。

 

(……何なんだよ、こいつ)

 

 思わず笑みがこぼれる。

 

 名前も知らない。

 

 どこの誰かもわからない。

 

 ただ、もう少しだけ、この女と一緒に走っていたかった。

 

 青と金が邂逅した。 

 

 

  

 

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