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うちの村だけは幸せであれ ~前世の知識と魔法の力で守り抜け念願の領地~【書籍化】  作者: エノキスルメ
第五章 うちの村だけは幸せであれ

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第138話 取り戻した平穏

 純粋派ノーザーランド人との戦いが収束して数か月が経った、西暦一〇五一年の秋。ダリアンデル地方南東部アルデンブルク王国や、南西部の東側は、純粋派による蹂躙から解き放たれて復興が始まっていた。

 復興に際しては、周辺のダリアンデル人勢力による支援も積極的に行われている。決して善意からではなく、これらの地域が復興すれば純粋派の支配域に対する防壁になるだろうという打算のもとで。

 ノイシュレン王国も、特に西隣のアルデンブルク王国に対して多大な復興支援を行っている。純粋派による蹂躙を生き延びたアルデンブルク王国の領主たちが、家臣や領民を復興作業に注力させられるよう、主に食料などを無利子に近い破格の条件で貸与している。

 食料の輸送に際しては、西部国境地帯の領主やその傘下の商人たちが活躍している。


「おぉ~、この村も目に見えて復興が進んだねぇ」


 国境地帯の領主の一人として、アルデンブルク王国東部へ向けた食料輸送に自ら臨んでいるミカは、目的地のひとつである村に入りながら言った。


「ですね。新しい家屋が何軒も増えてる」

「凄いっすねー。前に通ったときはまだまだ廃墟だらけだったのに」


 念魔法で荷馬車を牽くミカの傍らを歩きながら、側近のディミトリと家臣ジェレミーがそう答える。

 ミカが牽く荷馬車の後ろには、馬によって牽かれる荷馬車がさらに数台続いている。御者や護衛には、ヴァレンタイン家とフォンタニエ家の家臣たちがついている。

 荷馬車隊の到着を受け、村の住民たちは廃墟の片付けや新たな家屋の建設、農地の整備や耕作といった仕事の手を止め、賑やかに話しながら集まってくる。

 純粋派の軍勢が蹂躙した後のアルデンブルク王国は、すっかり滅亡してしまったように見えて、しかし戦後になってみると案外多くの生存者がいた。ノイシュレン王国など周辺地域に逃れた者だけでなく、モーティマー領など純粋派の進路から離れた領地に逃げ込み、あるいは食料を持って森の中などに隠れ、少なからぬ者が生き残っていた。

 彼らは戦後、こうして各々の故郷に戻り、平穏な生活を取り戻そうと奮闘している。


「今回もご苦労さまでした、ヴァレンタイン卿」

「いやあ、いつも助かりますよ」

「おかげさまで復興の仕事に集中できます。来年からは自分たちの農地からの収穫分で食っていけそうです」


 ミカたちが村の中心部に辿り着き、この村に割り当てられた食料を荷馬車から下ろしていると、この村の領主やその家臣、領民たちが口々に礼や労いの言葉を伝えてくる。


「役に立てて何よりです。この村の復興ぶりを見たら、皆さんがすごく頑張っているのが伝わってきますね。凄いです」

「当然のことをしているだけですよ。ここは私たちの故郷ですから……うちの村を復興させられるのは私たちだけです。だから頑張らないと」


 ミカの言葉に、この村の領主はそう答えた。朗らかで、どこか誇らしげな笑顔を浮かべながら。

 自分にとってのヴァレンタイン領と同じように、誰にとっても幸せな場所であってほしい故郷があるのだ。彼の笑顔を見ながら、ミカはそう考えた。


・・・・・・


「……では、やはり純粋派は相当に大人しくなったものと考えて間違いないようだな」


 ノイシュレン王国の王都オストベルク。王城での御前会議の場。集った侯たちを前に言ったのは、国王ハインリヒ・ノイシュレンだった。


「それでよろしいかと。純粋派が先鋭化した原因のひとつだったという大首長も死に、まだしも理屈の通じそうな者が後を継いだとなれば、当面はこの状況が続くと期待できましょう。とはいえ、決して油断はできませんが」


 いつものことながら神経質そうな表情の王に、サンドラ・ユーティライネンはそう答える。

 王家と各侯家がそれぞれ収集した情報を見るに、先の戦いで大損害を被った純粋派ノーザーランド人は、明らかに守りに入っている。現在の戦力で十分に維持できる範囲まで支配域を狭め、周辺のダリアンデル人勢力に対して新たな大首長の名で「そちらが攻め込んでこないかぎりこちらから攻撃はしない」といった内容の意思表示さえ示している。

 戦力を減じたとはいえ、いざとなれば未だ千単位の兵力をかき集められる大勢力ではあるため、死にもの狂いの抵抗を受けることを覚悟でこちらから逆攻勢を為すのは難しい。しかし、外征を為す侵略者としての純粋派は消えたも同然。少なくとも、南東部の東側に領土を持つノイシュレン王国が間近に対峙する脅威ではもはやない。

 以降はアルデンブルク王国や、さらには南西部の東側に位置する各領地――アルデンブルク王国と同じように、南西部の東側に暮らしていたダリアンデル人たちも少なからぬ人数が侵略を生き延びていた――に対しても復興をできる限り支援し、純粋派の支配域に対する壁として育てていくのが最善。王と侯たちは話し合いの末、ノイシュレン王国としての方針をそのように一致させる。


「確か、北東部の方も勢力争いが落ち着き始めて、国を名乗る大勢力も出てきたのでしたか?」

「左様。先の戦いで、北東部全体が協働して動いたことが利益になったようだ」

「共に戦って友好を深めれば、勢力争いにおける妥協点を見つけやすくなるのも当然の話ね」


 昨年のルーザス平原の戦いで戦死したルートヘルに代わり、キーヴィッツ侯家の当主としてこの場にいる彼の息子が言うと、ノイシュレン王国の中でも北に勢力圏を持つヴィットーレ・ガリバルディ侯とシュザンヌ・ミストラル侯がそれぞれ答えた。

 北東部の南西辺りを占める勢力が王国を名乗り出した、という情報が南東部まで流れてきたのはつい先日のこと。その辺りを生まれ故郷とする義理の従弟ミカ・ヴァレンタイン卿の顔を思い出しながら、サンドラは再び口を開く。


「西も北も情勢が落ち着き、此度の戦いでは我々を助けず静観を貫いた南の御三家同盟の連中とも、少なくとも今は敵対していない。ひとまずは平穏を取り戻したと言えるだろうか」


 彼女の言葉に、他の侯たちも、国王ハインリヒも口々に同意を示した。


 全ての脅威が去ったわけではない。あくまでも、今このときは、今後しばらくは、平穏が期待できるというだけのこと。未だ変革の時代の只中にあるダリアンデル地方で、永遠の安寧など望むべくもない。

 それでも、此度の危機は乗り越えた。いつ来るかは神のみぞ知る次の危機に備え、休養し力を蓄える猶予は得られた。それだけでも十分な成果と言えるだろう。

次回の更新で本編はひとまず完結となります。

最後まで何卒よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
 そういえば例の王妃王女はどうなったんだろう?戦って取り戻したわけじゃなく戦争が勝手に終わったから戦果を挙げたわけじゃないという屁理屈で約束を反故にしなければいいが。
勝手に終わらないで!まだまだ先を見たいですよ!
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