↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

84/88

84 『絹織組合カエキリウスとの会談』

紀元前75年10月初旬

レンは今年収穫したパキポサの繭を絹織組合に納品するため、次席家臣エルンストと10名の護衛を連れて村を出発した。


荷馬車の数は4台、その上に積まれた繭の数は実に約46万個。7月に収穫した7万個に、9月に収穫した39万個である。


村を出て3日後の昼。

アグドの港に着いたレンは、中型の船を一隻レンタルし、繭を積み直してローマへと出航した。


船の船室で、レンは9月に羽化したパキポサたちのランク表を見ていた。


(今回も飛ばないパキポサは誕生しなかったか。まあ、目に見えてランクの低いパキポサは減ってきているし、Cランク以上の親に限定した効果が出てるから問題はないか⋯⋯)


『ランク表』

━━━━━━━━━━━━━━━━━

★オス:合計1万2628匹

(前回合計2298匹)

AAランク:9匹(前回1匹)

Aランク:1,023匹(前回97匹)

Bランク:2,849匹(前回278匹)

Cランク:5,012匹(前回552匹)

Dランク:1,717匹(前回713匹)

Eランク:2,018匹(前回657匹)


★メス:合計1万3372匹

(前回合計2216匹)

AAAランク:2匹(前回0匹)

AAランク:323匹(前回33匹)

Aランク:1,795匹(前回191匹)

Bランク:3,781匹(前回433匹)

Cランク:5,650匹(前回736匹)

Dランク:784匹(前回544匹)

Eランク:1,037匹(前回279匹)

━━━━━━━━━━━━━━━━━


(今回の繁殖は、Bランク以上を品種改良用に残し、それ以下は飼育員に繁殖を任せた。この分だと来年の2回目の繁殖はAランク以上限定に出来そうだな⋯⋯)




ーーーーー

4日後。

ローマの海の出入り口である、オスティア港に着いたレンは、愛人のクラウディアの大邸宅へと足を向けた。

繭の納品先である絹織組合の長カエキリウスとの会談が、クラウディアの邸宅で行われることになっていたからだ。


翌日の昼。

クラウディアの邸宅の広間に組合の人間がやって来た。


中央には、長卓が据えられ、上座には純白のトガを纏ったクラウディアが優雅に座し、その隣にレンが腰を掛ける。対面には絹織組合の長カエキリウスと、2名の組合員が緊張した面持ちで座った。


レンは席に就いたまま静かに居住まいを正し、落ち着いた声音で口を開く。


「お初にお目にかかります。レン村の村長の、レンです」


カエキリウスは年季の入った鋭い眼光でレンの顔をじっと見つめ、値踏みするようにゆっくりと頷いた。


「絹織組合の長、カエキリウスです。前回は、そちらのセルギウス殿と交渉させていただきました。……しかし、レン村というのは初耳ですな」


「ええ、実は半年前に、ガリア南部のアグドの領域に村を作ったのです。そちらの方がパキポサの好む餌が手に入りやすく、人も集めやすかったので、生産拠点をローマ近郊からアグドへ移しました」


レンはさも当然の経営判断のように語った。


「ほう……さようですか。辺境の大自然で育てた、と。……ということは、今回は去年よりも期待できる、ということでしょうかな?」


クラウディアが妖艶に微笑む。


「カエキリウス、心配しなくてもいいわ。レンが海を渡って持ってきた繭は、前回あなたが絶賛したあの極上品よりも“さらに上”よ」


カエキリウスが目を見開いてクラウディアを見た。


「それは本当ですか!? 前回見た繭はコス島の繭でも極上の品だけを集めたに等しい品質でした。その上となるともはやコス島のパキポサとは別物と言っても過言ではありませんぞ」


(クックック。品種改良は既に四代目だからな。今が一番効果が出る時期だ)


レンが笑う。

「カエキリウスさん。まずは現物を見せましょう。エルンスト頼む」

「はい」


エルンストが上質な木箱を長卓の中央へ置き、慎重に蓋を開ける。


その瞬間──

カエキリウスと二名の幹部は言葉を失った。


「な……こ、これは……!」


箱の中に並んでいたのは、前回の繭を超える上質な繭だった。不純物のない輝き。均一さも前回より明らかによくなっている。


クラウディアが静かに告げる。


「どう? 前回よりさらに品質が上がっているでしょ。この品質の繭が、オスティアの港の船に46万個積まれているわ」


「よ、46万……っ!? それが──すべてこの品質なのですか……!」


「ええ。そうよね、レン?」


「はい、クラウディア様。もちろん、良し悪しはありますが」


カエキリウスだけでなく、後ろに控えていた2名の組合員も、椅子から腰を浮かせかけて驚愕に目を見開いた。


「46万個……。それだけの量とこの品質ならば、組合の長である私が扱うにふさわしい案件になりますな。わっはっは!」


ひとしきり笑ったあと、カエキリウスは繭の表面を指でそっとなぞりながら呟いた。


「これだけの密度と大きさがあれば……東方の絹にはおよばなくとも、コス島の繭と一線を画す絹織物が作れるでしょう」


レンがニヤリと笑う。


「前回は2000個の繭を100デナリウスで買い取って貰ったそうですが──今回は、もう少し高く買っていただけるということでしょうか?」


カエキリウスは即座に頷いた。


「もちろんですとも!

今回の品質なら……2000個につき 120デナリウス をお支払いしましょう!」


前回の査定から1.2倍の値に対し、レンは卓上で軽く指を折って脳内で素早く計算した。


(2000個につき 120デナリウス。ということは、1万個で600デナリウス。46万個の繭なら……約3万デナリウスだな。悪くはない。だが今の俺には物足りないな)


「カエキリウス殿……もう一声お願いできませんかね?」


カエキリウスは苦い顔をして、両手を広げた。


「レン殿。これ以上値上げをできない理由があるのです。我々ローマの絹織組合は、買い取った繭を組合で糸に加工しているわけではないのですよ」


レンが怪訝そうに眉をひそめる。


「ローマで糸にしていない?」


「はい。絹織り組合は“糸を布に織る”ための組織なのです。繭を糸にするのは我々の仕事ではありません」


レンが首を傾ける。


「では誰が?」


「パキポサの絹産業の流れはこうです。

まずパキポサの 『繭』が、本来の産地であるコス島の繰糸職人の手で『糸』になります。

次に我々ローマの絹織組合が、その『糸』を買い取って『布』に織ります。

そして最後に衣服職人ギルドが『布』を買い取って裁断し、『服』に仕立てるのです。ただ、貴族の方の場合は、直接『布』を買い取り、ご自分の奴隷に服を作らせる方も多いです。

──これがローマの絹産業の仕組みなのです」


レンが頷く。


「なるほど……工程ごとにギルドが分かれてる“分業体系”ってことですね」


「工程? 分業体系?」


「えっと、気にしないでください。ガリア人の専門用語ですから」


「はあ?」


カエキリウスは不思議そうな顔で、取り合えず納得したように頷いた。


「そういう訳で、我々は買い取った繭を一度船に乗せ、コス島へ送ります。ですので、繭のまま買い取る場合、我々は“加工費”を負担しなければならない。輸送費も、職人への支払いも、歩留まりの損失も、すべて我々持ちなのですよ」


レンは残念そうに息を吐いた。


「⋯⋯だから、これ以上は高値では買い取れないと言うことですね」


「はい。これらを考慮すると……120デナリウス。これが、我々がこの繭に支払うべき正当な“価格”でしょう」


レンはわずかに身を乗り出した。


「分かりました。ではもし――私が繭を糸にしてお渡しすれば、幾らで買い取っていただけるのでしょうか?」


「あなたが⋯⋯糸を作る?」 


レンは自信満々に頷く。

「そうです」


カエキリウスが呆気に取られたように目を丸くした。


「⋯⋯レン殿、いいですか。コス島の職人ギルドは命がけで技術を秘匿しています。外部のよそ者には、糸の作り方など絶対に教えてはくれませんよ?」


隣に座るクラウディアは、レンの次の一手を見守るように、琥珀色の瞳でじっと見つめる。


「それは承知してます。しかし、私が糸にして渡せば、幾らで買い取って頂けるのかが知りたいのです」


「それは⋯⋯もちろん買い取らせて頂きますが⋯⋯。値段は……そうですね。完成した糸の出来次第となりますが、この繭を糸にすればコス島の繰糸職人なら、2000個で200デナリウスぐらいの極上の糸を作るでしょうな」


レンは顎に手をやり計算する。


(ということは繭を糸にする加工賃は、2000個で80デナリウス。46万個の繭なら約2万だな。下層労働者100人を1年間雇える金額だ。よし、繭を糸にするのは俺の村でやろう!)


「分かりました。では、来年からは繭ではなく、『絹糸』にしてお渡します」


カエキリウスが慌てて身を乗り出し、正気かと言わんばかりに声を荒らげた。


「はっ!? ……な、何を言われているのですか。 先程も申し上げた通り、コス島の職人ギルドが秘匿しておるのですぞ」


カエキリウスの狼狽(ろうばい)を遮るように、上座のクラウディアが笑みを浮かべた。


「カエキリウス、心配しなくていいわ。レンが『出来る』と言えば、それは必ず出来るの。――このわたくしが、我が家の名誉にかけて保証します」


「ク、クラウディア様が、保証を……っ!? 分かりました。ですが繭を取ってすぐに糸には出来ないでしょう。取り敢えず毎月、繭4万個分の糸の納品と言う予定でよろしいですか?」


「ええ、それで結構です。価格交渉や本契約は、実際に糸が出来てからにしましょう」


「いいでしょう。では来年からは絹糸を受け取る予定でお待ちしております。ですが――繭への変更の際は、すぐに連絡ください」


「分かりました」


レンはカエキリウスと笑顔で握手をし、口約束を結ぶ。


「ところで中国……東方の絹は糸で入ってくるのですか? それとも布ですか?」


カエキリウスはレンの唐突な問いに、首を傾げながら答えた。


「東方から届く絹は『糸』ではありません。すべて完成した『布』です。

東方の絹があれほど滑らかなのは、コス島の絹と違って『木から採れる』との噂さもありますが、真偽は定かではありません。パルティアの商人たちですら『東方の絹がどのように作られているのか』を知らないそうです」


(ああ、なんかそんな話がラノベに書いてあったな)


カエキリウスは続けた。


「東方の絹は、主に布の形でローマに入って来ますが。時には仕立て済みの衣服として入ってくることもあります」


(なるほどな。と言うことは――コイツら(絹織り組合)はいらないかもな。俺も『布』を作った方が儲けそうだ)


「カエキリウスさん。布の相場ってどのくらいですか? 東方とコス島の絹布はどの程度値段が違うのですか?」


カエキリウスは、レンの質問に一瞬だけ眉をひそめた。

布の相場を語れば、自分の利益幅が露呈する──だが、市場に行けば分かること。クラウディアの手前、素直に応えることにした。


「……布の相場、ですか。

東方の絹布はとても滑らか質が高い。しかも年間に500反(たん)程度しか輸入されません」


「たった500反(たん)ですか?」


「はい。とても希少でパルティアの貴族にも大人気だとかで、なかなか手放さないそうです」


(ふーん。100年後にはローマにも、年に3万か4万反(たん)の絹が輸入されるんだけど、この時代はそんなに少なかったんだな。ドラマだと、カエサルが凱旋式で日よけの天幕に絹を使ったり、絹の服を着たりして見せつけたから、東方の絹の存在が民衆に知れ渡り、貴族の間でも東方の絹への需要が跳ね上がったって話だったけど)


※

この時期、中国は数万〜10万反以上の絹を輸出していたが、中東のパルティアが絹を独占していた。

そして仲の悪いローマへは値を吊り上げて少量だけ売り、それ以外の周辺諸国に積極的に転売していた。インドなどでは絹を、金銀に代わる実物通貨として貯蔵し、使用されたほどだった。


「ですので、東方の絹はとても希少なのです。1反あたり 3000デナリウス 以上で取引されています。極上品ならば1万を超えることもありますよ」


「1万!」


(おいおい1反で作れる服は基本1着だけだろ。服1着に下層労働者の生涯年収支払えって、ボッタクリかよ!)


カエキリウスは続けた。


「対してコス島の絹布は、東方ほど高くはありません。まあ、それでも1反(たん)あたり300〜800デナリウスが相場です。私たち絹織り組合が織った布も、この範囲に収まります」


(んん? ちょっと待てよ)


「カエキリウスさん、俺の繭から作った糸は、当然上位の800デナリウスの価値のある布になるのですよね? と言うことはあなたの利幅は680ですか?」


「あ、いえ。先程申した通り加工費用と輸送費がありまして……」


「あなたは、コス島の職人なら200デナリウスの極上の糸を作るとおっしゃっていましたよね。ならばあなたの利幅は600では?」


「そうではありません。高価な布を作るのは上級職人です。彼らへの賃金もあります。600全てが利益ではないのです」


レンは眉をひそめる。


「賃金のコストがいくらかは知りませんが、それでも400くらいは利益になるのではないですか? 少し取り分が大きいと思いますが?」


カエキリウスは眉を寄せ首を振った。


「いいですか、レン殿。 加工費用として糸の値段の3倍、4倍にして売るのは常識です。私は組合の長として組合の利益を守らねば示しがつかない。どうかご理解頂きたい」


カエキリウスの有無を言わせぬ態度に、レンはやむを得ず頷いた。


「なるほど、よくわかりました」

(俺から安値で買い叩きたいと言うことだな)


カエキリウスが安堵したように笑う。


「分かって頂けましたか」


「はい。常識なら仕方ありませんよね?」


「はい、仕方ありません」


(自分で作った方が儲けるなら取引は終了する。これ、常識だから仕方ないよな?)


「あはは。無理を言ってすいませんね」


「いえいえ、交渉は大切ですから」


(笑っていられるのは今だけだ。見てろよ。ローマの遅れた技術じゃなく、この時代で最高峰の中国の技術で『布』を作ってやるからな!)


レンとカエキリウスが笑顔で笑い合う中、隣ではクラウディアが怪しげな目つきでレンを見つめていた。





ーーーー

10日後。

レンはクラウディアを伴い、カプアのバティアトゥス養成所を訪れていた。


目的はただひとつ──ガリア派閥の一流剣闘士、クリクススと会うことだ。


レンが頼んでもバティアトゥスはクリクススには会わせないだろうと考え、クラウディアを連れて来たのだ。


案の定、クラウディアがバティアトゥスに頼むと簡単に許可が下りた。


養成所の執事ルキウスの案内に従い客室で待っていると、やがて扉がノックされ金髪のライオン――クリクススが顔を出した。


「クリクススさん! お久しぶりです!」


扉が開くや否や、レンは勢いよく立ち上がって声を上げた。


「おう、レンじゃねえか。美人の貴族様が直々にお呼びだって聞くから期待して来てみりゃあ、お前がオマケに付いてやがったか」


「あはは、相変わらずですね。でも、元気そうで何よりです」


「お前も元気そうで何よりだ。セウテスとのデスマッチの後、そのまま奴隷から解放されたって聞いたから、もう二度と会えねえと思ってたぜ」


「はい。あの後は色々と忙しくて……。本当はすぐにでも、クリクススさんにお世話になったお礼を言いたかったんですが……。でも、俺ひとりでカプアに来ても、オーナーが会わせてくれないでしょうから。クラウディア様にお願いして一緒に来てもらうのに、少し時間がかかっちゃいました」


「へえ、じゃあ今日はわざわざ礼を言いに来たってことか?」


「いえ、お礼だけじゃありません。実は……クリクススさんを剣闘士から解放して欲しいって、オーナーに掛け合おうと思ってます。今は大富豪のクラッスス様も俺のパトロンに付いていますし、大金を積めば、バティアトゥス様も断れない筈です。俺に、あなたの身請けを任せてくれませんか?」


レンとしては最高の恩返しのつもりだった。

だが──クリクススは太い腕を組み、ウ〜ンとひとしきり唸ったあと、あっさりと鼻で笑った。


「いや、俺はいいよ。今の生活が気に入ってるからな」


「え!? 自由になりたくないんですか!?」


レンの驚愕の声を、クリクススは呆れたように一蹴する。


「自由になったところで、俺みたいなのがまともに金を稼げると思うか? ここならいくらでも大金を稼げる。あと10年はアリーナで稼ぎまくるつもりだ。それにだ。ヴェルコスのおっさんはともかく、アラトリクスのヤツは跳ねっかえりだからな。俺がいなくなった何をするか分からねえだろ」


レンは眉を顰めた


(……あれ? クリクススってスパルタクスの乱に加わってたよな? 同名の別人か? そう言えばテレビじゃ金髪じゃなかった気がするな。いや、金髪だったっけ? 忘れた……)


「分かりました。でも、養成所を出たくなったらすぐに俺に言ってください。ファビアから守ってくれた恩は絶対に返しますんで!」


クリクススは軽く笑い飛ばす。


「ああ、あれか。あんま気にすんな。仲間を守るのは当然だろ」


「いいえ、絶対に忘れません。だからクリクススさん、ハッキリと言います。実は俺、ガリアの神から『予言』を授かったんです」


「はあ、神の予言だぁ?」


クリクススが怪訝そうに眉をひそめる。

レンは周囲にクラウディアとクリクススしかいないことを確認し、真剣な顔で声を潜めて言う。


「あと数年以内に、このカプアの養成所で『スパルタクス』っていう奴が、奴隷反乱を企てるって神が夢で告げたんです。……だからその反乱には絶対に参加しないでください」


レンの言葉に、初めてその話を聞いたクラウディアが驚愕した。


「レン、それは本当なの?」


「本当だ、クラウディア。いえ、クラウディア様」


クリクススがしばし固まったあと、そんな訳がないと手を振る。


「ハッハッハ! 養成所で反乱だと? どんな命知らずの馬鹿だよ。ここの警備がどれだけ厳重か知らねえわけじゃねえだろ」


「笑い事じゃないんです!」


レンはかつてないほどの鬼気迫る表情でクリクススの目を真っ直ぐに見据えた。


「俺がこうしてクリクススさんに話しても、その反乱は多分起きます。そして、神が言うにはそれに加わった剣闘士やその家族は、最終的に全員がローマ軍に惨殺されて全滅するそうです。……クリクススさん、俺と約束してください。絶対に、その計画に乗らないって。家族を死なせないって、俺と約束してください!」


レンの尋常ではない迫力に圧されたのか、クリクススもようやく笑うのをやめ、真面目な顔つきになって短く息を吐いた。


「ああ、分かったよ。そこまで言うなら約束してやる。そのスパルタクスだか何だかって奴に誘われても、鼻で笑って無視してやるよ。なんなら、そいつをオーナーに突き出してやるさ」


「……ありがとうございます。信じてますからね」


レンはホッと胸をなでおろした。


(よし。これでクリクススさんが反乱に加わって死ぬことはないはずだ。何せ『スパルタクス』っていう首謀者の名前をピンポイントで教えて釘を刺したんだからな。もし歴史の修正力とやらでスパルタクス自身が動けなくなったら、別の奴が代わりの反乱を起こすだろうけど、その時は俺がクラッスス軍に参加して叩き潰せばいいだけだ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。