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57 シルフィウムの種の発芽確認

紀元前76年5月


カプアに帰還したレンは、試合後の2週間の休養に入っていた。

今回の興行で歴代最高賞金を稼ぎ出したレンは、養成所でセウテスと並ぶ花形剣闘士として、最高の待遇を受けるようになった。


(やっぱトップっていいよな。人に気を使うより、気を使って貰う方が俺は好きなんだよ)


レンはふと、リクトスたちのことを思い出す。

(先輩たちもここにいたらもっと楽しかったのにな……)


彼らがいないことを寂しくは思うが、自由を買ったことを後悔はしていない。仲間に剣闘士をさせていたら、いつ死なれるか分かったものではないからだ。


(タルトたち、今頃はギリシャに無事に着いた頃かな……)


セルギウスたち3人はひと月前までは、ローマ近郊の農村でパルポサ蛾を飼う小屋を準備していた。


そして一週間前。

レンからパルポサを捕まえるための追加の資金、5000デナリウスを受け取った。そして旅の支度をし、今は船に乗ってパルポサの生息する、ギリシャのコス島へ向かっているところだった。


この時代の平均年収は約80デナリウス。5000デナリウスは、移動費のほか現地民を雇って大きな繭を採らせたり、現地人から繭を買い取るために十分な資金だった。


(賞金をいっぱい貰えたから、クラウディア様に借金しなくてもよくなったのはデカいよな。……デカいと言えばクラウディア様の大きかったな、ぐふふ。また試合に勝ってご褒美を貰おう)


レンは、イオが洗濯に行ってる間に、ステータス確認をする。


(ステータスオープン)


■名前: レン

■年齢: 16歳

紀元前92年9月産まれ

■出身地:ガリア

■容姿:黒髪黒目の美形。戦闘適性の高い体格。


■家族なし

■パトロン クラウディア

■配下4名


■所持金 

金貨514枚 銀貨18枚、銅貨14枚

交換比率1対20対300

■資産 パキポサ小屋(価値金貨40枚)


■称号:ガリアの英雄(全能力値補正+20%)

■加護

★イオ(全能力値補正+10%)

効果時間1日


■レベル: 132

(+53上昇)

★HP(体力): 617/617

(+107上昇)

SPスタミナ: 305/305

(+103上昇)

★MP: 3/527

(+105上昇)


■【能力値】(平均的な剣闘士400)

★筋力:389

(+105上昇)

★敏捷: 595

(+102上昇)

★耐久: 443

(+108上昇)


■■【スキル】

■非発動型

★二刀流術 Lv.31(攻撃力&防御力+310%)

(レベル+1上昇)

★回復術 Lv.83

(レベル+1上昇)

★カンフー Lv.30


■発動型(必要MP 10)

★筋力強化 Lv.59(筋力+560%)

★スタミナ強化 Lv.59

★敏捷強化 Lv.59

(レベル+1上昇)

★集中力強化 Lv.58

(レベル+1上昇)

★耐久力強化 Lv.58

★『敵攻撃の先読み Lv.75』

★動体視力強化 Lv.37

(レベル+7上昇)


■■重要度低スキル

■非発動型

★短刀術 Lv.11

★盾術 Lv.5

★言語理解(ラテン語/ガリア語) Lv.Max ※憑依転生特典

★気力枯渇耐性Lv.93。ダメージ94%カット。気絶無効。

(レベル+1上昇)

★毒抵抗 Lv.33

(レベル+3上昇)

★病気耐性 Lv.30

★性病耐性 Lv.30(maxLv.50)

■発動型(必要MP 10)

★地獄耳強化 Lv.30

★隠密強化 Lv.40

★跳力強化Lv30

★話術 Lv.40

★避妊 Lv.50(maxLv.50)

★毒検知 Lv.50

★視力強化 Lv.30

★性的技巧 Lv.41

(レベル+11上昇)

★感情伝播 Lv.51

■ポイント残高9万8368


(20人も倒したから一気にレベルが上がったな。金も入ったし、AIに新しいお勧めのスキルでも聞くか。HELP)


《ポーン――レンさん、ご質問ですか?》


(新しい戦闘スキルでお勧めを教えて)


《レンさんは必要な戦闘スキルは一通り取得しています。なのでポイントを温存し、その時に必要なスキルをその都度取るのがもっとも有効な方法だと思います。特に内政系は戦闘系より多くのスキルが存在しますから、使い時が重要です》


(そうか。あっでも、痛覚無効とかのスキルがあるなら欲しい。試合でワザと軽傷食らったら痛かったからな。それと金貨400枚をポイントにしといて。あとは二刀流は必修だからレベル50まで上げといてくれ、今回はそれだけでいい)


《了解しました》


★ポイント残高89万8368になりました

非発動型スキル★痛覚軽減Lv.1を取得しました。

(レベル1に付き痛み1%軽減。レベル75で重症度別の軽減レベルの設定解放)

★二刀流術 Lv.31→Lv.50になりました

★ポイント残高78万1963になりました


(ちょっと待て★痛覚軽減って非発動型なの!?)

《はい、その通りです》

(ならレベルなかなか上がらないじゃん。うーん、じゃ取り敢えずレベル50までポイントで上げて)


★痛覚軽減 Lv.1→Lv.50になりました

★ポイント残高62万2673になりました


(ありがとう、またなんかあったら呼ぶから)

《了解しました》




ーーーーーーーー


クラウディアがクラッススに、種を渡してから2週間後。


クラッススは、クラウディアとその執事のアンドリューを連れて、種の発芽状況を確認するため、ローマ近郊のトゥスクルムにある農地を訪れた。


太陽が照りつける農場の入口で、管理を任されている奴隷頭のマルクスが、丁重に三人とその護衛たちを出迎える。


一行はマルクスに案内され、農場の一角に足を運んだ。

しかし、そこに広がるのは乾いた茶色の土ばかりで、一点の緑もない。


クラッススは腕を組み、冷酷な眼光で隣に立つクラウディアを見つめる。


「クラウディア、そなたの用意した種は発芽しなかったようだな」


「……残念ですわ」


クラウディアは申し訳なさそうに目を伏せる。


その瞬間、背後に控えていたアンドリューが、待っていましたとばかりに一歩前へ出た。


「クラッスス様! クラウディア様は悪くありません、騙されたのです! あの剣闘士には死をもって償わせますのでどうぞクラウディア様をお許しくださいませ!!」


クラウディアは、すべての責任をレンになすりつけ、その首を撥ねるよう主張するアンドリューをじっと見つめ、悲しげな声を出す。


「あなたは……シルフィウムの芽が出なかったことを、死に値する罪だと思うのね?」

「当然です。断じて許せません!」


息を荒くし断言する執事の言葉に、沈黙していたクラッススが冷徹な笑みを浮かべて深く頷いた。


「まさにその通りだ。──そなたの罪は万死に値する」


「っ……え、クラッスス様!?」


アンドリューは一瞬、クラッススが自分の意見に同意したのだと思った。だが、大富豪の冷酷な視線が向けられているのは自分自身だと気づき、心臓が凍りつく。


クラッススはアンドリューの動揺を無視し、奴隷頭へ向き直った。


「マルクス、案内せよ!」

「はい、こちらでございます」


マルクスは恭しく一礼し、すぐ隣にある別の農地(200㎡前後)へと皆を誘導した。

その農地では、暖かいローマの初夏の土を割り、瑞々しい青々としたシルフィウムの芽が一斉に頭を覗かせていた。


「クラウディア、そなたの頼みで私が追加で用意したシルフィウムの種2000粒のうち、この通り半分ほどが芽を出したぞ。わっはっは!」


クラッススが笑い声をあげる中、アンドリューが顔を真っ青にした。


「クラウディア様! こ、これはどういうことでしょうか!? 私たちがシルフィウムの種を、管理するのではなかったのですか!!」


アンドリューは狂ったようにクラウディアに詰め寄った。


「ええ、本当はそうしたかったわ。……でも貴方が悪いのよ」


「っ!? どういう事ですか!」


「あなた、レンに私の名で毒を渡すなんて、馬鹿なことをしたわね。もし私の名を使っていなければ、あなたの裏切りに私たちは気付かなかったでしょうね」


その言葉を聞いた瞬間、アンドリューはすべてを理解し、顔から完全に血の気が引いた。


クラウディアは自分を疑って罠を仕掛けていたのだ。クラッススに種の発芽方法を教えて罠を張り、自分はそれにまんまと引っ掛かったのだ。


「違います、私ではありません! そ、そうだダリウスの奴です! あいつにクラウディア様の名でレン殿に強壮薬を届けるよう頼んだのです! あいつが途中で毒を入れたのです! あいつはイオに惚れておりましたから間違いありません!」


すべての罪をダリウスになすりつけ、見苦しく逃れようとする執事を、クラウディアは感情の失せた目で見つめた。


「そう……ならダリウスも殺しましょう」


「っ!? く、クラウディア様、私は無実です!!」

「アンドリュー安心しなさい。これまでの忠義に報います。あなたの家族には山賊に襲われた際、あなたは私を庇って死んだと伝えます」

「そ、そんな! どうか命だけは──!」


アンドリューがクラウディアの衣服にすがりつこうとした瞬間、クラッススが周囲の部下へ命じた。


「もうよい、こやつを斬れ」

「「はっ!」」


即座に武装した部下たちがアンドリューの身柄を拘束し、引きずっていく。


「は、放せ! 私は奴隷では無いぞ! 市民権のある平民だ! ローマの法はこのようなことを認めていない! まずは裁判をしなくてはならない! 勝手に殺すのは犯罪だ!」


アンドリューの叫び声も虚しく、クラウディアたちから20メートルほど離れた場所で、絶望的な悲鳴が響いた。


「ぎゃあぁあーー!!」


クラウディアがクラッススに頭を下げる。


「お手間をおかけして申し訳ございません」


「かまわぬ。種の製造法に比べればこのくらい安いものだ。あの男はいわば我々の信頼の証になったのだ」


クラッススが豪快に笑う。

クラウディアは静かにカプアの方角を見つめた。


(レン、アンドリューの裏切りを貴方が指摘しなければ大変なことになっていたわ。貴方にはアテナの加護だけでなく、運もあるのね)

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