04 スキル
セルギウスと話が終わり、レンは再び脳内でメニュー画面を開いた。
《ポーン――はいはい、サポートセンターのAIですよ。また何か質問ですか?》
脳内に響く軽快な電子音。
緊迫したこちらの状況など知る由もない機械的な温度感に、レンの肩の力が少し抜ける。
(相変わらず軽いAIだな。
それで、これから俺はどうすればいい? どうやれば死なずに生き延びられる?)
《そうですね。まずはステータス画面を見て下さい。レベルが上がっていますよ》
(分かった。ステータスオープン!)
レンの思考に呼応して、半透明のシステムウィンドウが目の前に展開された。
ーーーーーーーーー
【ステータスウィンドウ】
■名前: レン
■年齢: 15歳
■称号: 新人剣闘士(全ステータス補正+1)
★レベル: 7 (+6上昇)
(最大レベル999)
★HP(体力): 345 / 365
(+20上昇)
★SP: 86 / 138
(+8上昇)
■【能力値】(平均的な剣闘士400)
★筋力: 282 (+12上昇)
★敏捷: 390 (+10上昇)
★耐久: 230 (+10上昇)
■【スキル】
★短刀術 Lv.2 (+1上昇)
★盾術 Lv.1
★言語理解(ラテン語/ガリア語) Lv.Max ※転生特典
ーーーーーーーーー
(ん~、一応強くなってるようだけど、まだまだだな……)
レベルアップしたお陰で、レンには確かに肉体がわずかに引き締まった感覚はあった。
しかし、平均的な剣闘士の数値は『400』。それに比べれば、レンの筋力は『282』と、圧倒的にパワーが足りていない。
《ステータスはレベルアップのほかに、日々の訓練でも上がりますよ。頑張りましょう!》
(え? いや、俺、筋トレとかやりたくないんだけど……)
レンの前世はただのしがないアラサーサラリーマン、しかも出不精だった。
そのため汗を流すのは通勤の満員電車だけで十分だと思っていた。
《なら死ねばいいんじゃないですか?》
(は? お前辛辣すぎないか!? 普通、AIは人間を怒らせないものだろ?)
《それは人間が作ったAIの話です。私は神が作ったAI、次元が違いますよ。えっへん!》
ぐっ、このAI舐めてんな……。
(じゃあ筋トレをすれば生き残れるってことか?)
《そんな甘い世界ではありません。筋トレだけじゃ無理です。あなたが今鍛えるべきはスキルの方です。レベルアップしてスキルポイントが入ってるので、開いてみてください》
レンは促されるまま、スキル画面を開く。
ーーーーー
【スキル購入ウィンドウ】
1.ステータス上昇系(筋力強化、敏捷強化、頑強など)
2.武技・戦闘系(剣技、盾技、ステップ、見切りなど)
3.内政・経営系(工作、交渉、外交、財政管理など)
4.生活・サバイバル系(応急手当、毒耐性、危険察知など)
5.称号・カリスマ系(威圧、煽り、民衆煽動、美女魅了など)
【取得済みスキル】
短刀術 Lv.2
盾術 Lv.1
言語理解(ラテン語/ガリア語) Lv.Max ※転生特典
★ポイント残高600
ーーーーー
(おっ、確かにポイントが入ってる! この600で何が取得出来るんだ!)
《貴方に今もっともお勧めなスキルは『敵攻撃の先読み』です。本来は5000ポイント必要ですが、初回のスキル取得はなんと9割引き! ギリ、取得可能ですよ!》
(9割引き!?
あのさ……最初スキル取ろうとした時、ポイントが0でフザケてると思ったけど、9割引きってのはやっぱフザケてるよな?)
《転生時に初期ポイントが0だったことに対する補填のサービスですよ。
でも分かりました。貴方には必要の無いサービスだったみたいですね》
(あっ、待って! ゴメン謝る! 『敵攻撃の先読み』だな! うん、分かった!)
レンがその項目を選択すると、詳細な解説テキストが浮かび上がった。
ーーー
★スキル
『敵攻撃の先読み Lv.1』
①重傷になる攻撃への発動確率10%
②0.5秒後に訪れる危険を察知
③有効範囲0.5メートル
④発現時間10秒
⑤必要MP10
■取得ポイント500
ーーー
(おい! これ発動確率10%しかないぞ! しかも発現時間も範囲もやたら短い、どう考えてもゴミスキルだろ!)
命がけの戦いで、10%の確率に命を預けられるわけがない。死ねと言っているようなものだ。
《いいえ、最強クラスの優良スキルです。
熟練度を溜めてLvを上げることで、
①発動確率は100%
②察知時間は最大3秒前
③有効範囲は最大で30メートル
④発現時間も最大3分
に成長します。なお、MPが続く限りスキルの自動継続発動も可能です》
(そうだ、そのMPって何だよ? やっぱ魔力のことか!?)
《いいえ、発動型スキルの使用に必要な特別な気力のことです。発動型スキルを取得すればMPの項目が解放されます》
AIの解説を聞きながら、レンはゴクリと唾を飲み込んだ。
このスキルを育て上げれば『重傷を負う攻撃』に対して100%先読みができる。これほど強いスキルは確かにない。
剣闘士という地獄を生き抜くための、最強の盾になる。
(……よし。お前を信じて、このスキルを取得する!)
レンは意を決して、500ポイントを消費し『敵攻撃の先読み Lv.1』の取得ボタンを強く念じた。
脳裏に未知の感覚が滑り込んでくると同時に、ステータス画面がフッと切り替わり、新しく青い『MP』のゲージが解放され、【取得済みスキル】に『敵攻撃の先読み Lv.1』が追加される。
(ふぅ……MPの最大値は……60か?)
《はい。では早速、スキルを発動してみてください》
(え? ここで? 敵もいないのに?)
《はい。使えば使うだけ熟練度が上昇します》
レンは言われるがまま先読みを6回使い、あっという間にMPが0になった。
《MPは24時間で全回復します。つまり今の貴方だと4時間後には10溜まります。ですが次は9溜まったところでスキルを発動してみてください》
(え? MPが10なくてもスキルって発動するのか?)
《はい、半分のMPがあれば発動可能です。
ただし、必要MPに足りてないと、凄く気分が悪くなるので、初回はぶっ倒れるかもしれません。でもすぐに慣れます。慣れたら次は残りMP8やMP7で発動させてください》
(ちょっと待て! それってまさかMPを使い切るとMPが成長するとかっていうテンプレじゃないよな!?)
《はい。好きでしょテンプレ?》
(そのテンプレは好きじゃねえ!!)
《安心してください。自分でできないならAI補助として、こちらでスキルを発動させます》
(は? お前なに言ってんの? そんな話し聞いたことねぇよ。どう考えても拷問だろ?)
この時のレンは知る由もなかった。
このあとAIによってトイレ中であろうと、就寝中であろうと強制的にスキルが発動され、何度もぶっ倒れることを……。




