続・ミアのお仕事_4
スパイドンの群れを片付けた俺たちは
ピラミッドのさらに奥へと進んでいく。
その道中の話題は、さきほどのカルボナの奇行であった。
「カルボナ。魔物をなでながら観察するなんて、どうかしてるよ。」
ミアは理解ができないといった表情で、カルボナを見る。
確かに、人類、獣人達にとって相容れない魔物とスキンシップをとる彼女の行動は信じられない光景であった。
カルボナは俯きながら前を歩くミアについて行く。
その横で歩く俺は
「もしかして魔物が好きなんですか?」
と尋ねてみるた。
「い、いえ…魔物が好きっていうわけではなくて…」
カルボナは両手の人差し指の先をもじもじと突き合わせている。
「もしかして」ミアは振り返り、
「虫が好きなの?」
「は、はいぃぃぃぃ!」
ミアの質問に即座に答えるカルボナ。
その声は華麗に裏返り、奇声へと変貌した。
「わぉ…そんなに虫が好きなんだね…」
若干引き気味のミアに対し、
カルボナは先ほどの返事を反省し、
恥ずかしそうに俯きながら
「こ、子どものときから、む、虫が大好きでして…」
と小さな声で答えた。
「へぇ~。どこが好きなんですか?」
気になった俺は理由を尋ねた。
「まずフォルムですよね。あの造形美。自然が創り出した美しいデザイン。
種類によっては、生き物とは思えない金属のような質感に、流線型が合わさって、
まるでこの世のものとは思えない未来的なものを感じます。
でも虫の造形は単なるデザインではなく、その形になるべくなったもので、
つまり虫が生存していくために長い時間をかけて進化を遂げた形であり、
機能的な観点からいっても見事に計算尽くされたデザインとなっているわけで…」
カルボナは呪いの呪文を唱えるように口先からデロデロと言葉を積み重ねていく。
序盤から聞くのを放棄した俺は、
カルボナのその止まることを知らない口をなんとなく眺めて話が終わるのを待っていた。
ミアはミアで、「終わったら教えてと」と言うと、
荷物の整理を始めだした。
5分ほど時間が経過したころ、
「といった理由で私は虫に人生をささげるようになったわけです!」
とカルボナは満足した様子で話を終えた。
「ミア。終わったぞ。」
「いや、途中ですること無くなって
自分の半生を振り返っていたよ。」
ミアは三角座りをして膝に顔をうずめている。
「あ…す、すみません。少し話過ぎてしまいましたか?」
カルボナは俺たちの様子に気づいて頭を下げて謝った。
「全然大丈夫ですよ!質問したの俺からですし。
いいですね。好きなものがあるのって。」
「そ、そうでしょうか…」
「はい。話しているときのカルボナさんとても楽しそうでしたよ。」
「でも魔物に近づくのは止めたほうがいいよ。」
ミアは伸びをしながら忠告した。
「は、はい気をつけます…」
と答えたカルボナは少し嬉しそうだった。




