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 バレンタイン中に書き終えたかったですが……難しそうですね。


 バレンタインに予期せぬ用事が出来た……というと、聞こえは良いですが、実際は雑務が増えただけで。


 バレンタインを終え、様々な感傷に浸っている皆様に楽しんでいただけるように、出来るだけ早く更新していきます!

 五十嵐と葛西がエスカレーター前にて、野沢晴子と対面していた頃。

 地下一階、生鮮食品の売場に突入した桐生率いる先行部隊は、着実に作戦を進めていた。

 生鮮食品売場は、彼らの目的にとって、あまり重要な場所ではない。重要なのは一階の、お菓子や調味料などが並ぶエリア。……パン屋なども重要だ。

 しかし、地下には生鮮食品と共に、レジ向かいにお土産やら贈り物やらのコーナーがある。

 彼らの目的はそれだった。ここを落とさない限り、彼らの小さな小さな復讐劇は終わりを向かえないのだ……ッ!


 桐生は事前に調べておいた地下の上面図を頭に描き、迷うことなく走り抜ける。

 そして、すぐに目的の贈り物コーナーを見つける……。


「な………ッ!!」

 そこで先頭の桐生が驚愕に顔を歪める。後ろの隊員たちも何事か、と立ち止まり、桐生が見据える先を見る……。そして、同じように驚愕した。


『2月13日、さくらテレビ“ガールズ・ガールズ”にて、貴店が紹介されました!!』


「そ、んな……。」

 バレンタインデーを控えた番組による紹介。しかし、作戦予定店が前日に紹介されるなんて……、想定出来るわけがないッ!!

 そして桐生は、続く文字にさらなる驚きを感じる。


『お買い上げ時に、番組で発表された合い言葉を言うと、先着300名様に、オリジナルチョコを贈呈!!』


「んな……ッ。」

 彼らは大いに動揺する。彼らの作戦の“核”に関わる事態だったのだ。


「合い言葉なんて、ありきたりだ……。良く推理するんだ……。簡単だろう? 俺……。」

 桐生は眼鏡をクイッと指で直すと、頭脳をフル回転させる……。

 ……何しろ時間が無い。郷田は外の女性を『タイムサービス目当て』と楽観視していた……。

 しかし、いまやその『タイムサービス目当て』というのは、この洋菓子屋を指すのだ……ッ。


「……そうだ。俺だってそういう番組を見たことがないわけじゃないだろう。ア○街とか面白いよな。単純な答えだったんだ……。」

 桐生は一人で納得すると、また眼鏡をクイッと直し、後列に留まるように視線で促した。……自分が上手くいったら、続け、という意味だ。


 桐生は歩きながら、懐から黒く光る『ソレ』を取り出す……。

 大小の“玉”が入っている……『サイフ』を。結束の証に支給されたサイフは、バレンタインの明るい彩色を飲み込み、後に控える『ホワイトデー』を否定する色として……黒が選ばれた。

 そして、桐生は洋菓子店の店員の前に立ち、自信溢れる回答を、誠意に満ちた声で言った。


「『ガールズ・ガールズ見ました』!!」

「あ、あの…お客様、合い言葉、でしょうか…?違うんですが……。」


 ……………。

 な、な、………、

 なんだってーッ!!


 桐生は驚き、……あ、これが開いた口が塞がらない、ってヤツなのか……。


 いつも冷静な桐生が見せる驚愕の表情に、後列の隊員も同じく驚きの表情を浮かべる……。


 ……そこにドタドタドタ!! 階段を駆け降りる騒音が響く。

 地下に行く唯一のエスカレーターは塞がれている。しかし、階段の防御については楽観視されていた……ッ。

 いや、彼らがそうしてしまうのも仕方ない。階段の使用率を調べた上で、そこに人員を割く必要性を判断したのだ。

 その結果に、こうなった。……テレビで紹介される、という想定外の事態が無ければ、彼らの目論見は成功しただろう……。


 しっかし……、足音が大き


 シュッ………。


 その時、風を切る音がした。

 彼らは遮られ、真っ白になった思考を取り戻そうと、まばたきをする……。

 え……? レジの前に立つ桐生の横に、いつのまにか知らない女が立っていた。

 長い黒髪。……それは日本の怪談の恐怖を想起させ……。


「ひぃぃぃぃッ!!!」


 桐生は反射的に叫び、後ろへ跳び退く。……そこには後列の隊員がいたため、彼らは揃って尻餅をつくのだった……。


「疾ッ……。」

 桐生はついに感想を述べることしか出来なかった……。

 専門店側入り口、あるいはガーデニング店入り口からここまで、走ったとして、桐生なら1分で早い方だろう。

 しかし、この女はそれを30秒近く更新した。しかも、それでいて息切れひとつしていないのだ……ッ。

 トリック? タネ?

仕掛け? 違うッ!!

 ……ならば、それは女の執念がなせる技なのか……?


 あぁ、そんなこと、どうでもいいじゃないか!この女がここにいる。この時間にッ!! それが指し示す、単純明快な解答は……?


 桐生は冷静な思考を取り戻すと、女の一挙手一投足をじっくりと観察した……。


 この女は、もしかしたら合い言葉を知っているかもしれない……ッ。


 桐生は女を凝視し、唇の動きを待った……。


「お客さんッ、困りますッ!!」

 その凝視が原因で、桐生は店員に咎められる。……合い言葉を聞き出そうとしていることがバレたのだ。

 普通なら、それを店員が咎めることはあまりない。……しかし、桐生は一度回答を間違えてしまった。番組を見ていないことがバレバレなのだ。

 店員はだからこそ、桐生の卑怯な手を許したくなかったのだ……!


 シュッ……!


 また、風を切る音がした。女が急に走り出したのである。

 それを見て、桐生は確信する。『女は合い言葉を知っている』……と!

 女は店員に気を遣って走り出したのだろう……。桐生は勝手にそう納得し、立ち上がった。


 女から合い言葉を聞き出す……!


 桐生は俊足を繰り出し離れていく女を追うのだった……。

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