ヤクザ
「森、どこにかけるつもりだ?」
「お、お前らもう終わりだぞ。俺のバックには須藤さんがついてんだからな!」
「いきなり、強気か。その須藤さんってのは誰だ? やくざか?」
「ああ、そうだ! お前、売られるからな! 覚悟しとけ!」
「ふーん。そりゃ、怖いな」
俺はポケットからスマホを取り出し、電話をかける。
「あ、こんにちは。大野奈津美です。はい。ご無沙汰しております。
ちょっとお願いがありまして。ええ、はい。
実は、暴走族のバックについてる人と話をしたくて。
そうです。地元の。博多連合とかなんとか。
今ですか? そこのリーダーの森って奴のアパートです。
いえ、そんな。そうですか。申し訳ありません」
電話を切ると、俺を不思議そうな顔で森が見ていた。
「ど、どこにかけやがった」
「別にヤクザの知り合いがいるのはお前の専売特許じゃない。
来てくれるってさ」
俺は台所の方へ行き、冷蔵庫をあける。
中には缶ビールが数本と飲みかけの牛乳しかない。
「なんだよ。飲み物すらないのか。
三野、ジュース買ってきて」
「え?」
きょとんとする三野に、俺は再度言葉をかける。
「喉が渇いたんだ。ジュース買ってきてくれよ」
俺は財布を取り出し、千円札を出す。
「なんで、今なんだよ?」
「いいから、行け」
俺が睨むと、三野は察したのか、黙って出て行った。
「さてと。西田、松下、森を押さえろ」
理恵を森から引き離し、逃げようとする森を、松下と西田が両脇から抑え込み、
座らせる。
尚も森にすがろうとする理恵を、田崎が羽交い締めにする。
「やっちゃん、止めて、止めてよー! なんで、こんなことするの!!」
「諦めな。うちの頭が、お前の男が気に入らないとよ。こいつのヤキ入れは怖えぜ」
俺は田崎の言葉に、微笑みを返し、森の鼻先に顔を近付ける。
「三野は、お前の後輩だからな。今からやること見てたら胸が痛むだろうから、
外してもらった」
「な、なにするつもりだ?」
俺は森の顔を張る。
「なに、ため口効いてんだ? 自分の立場がまだわかってねえんだな」
俺は体を起こし、森を踏みつける。
俺に顔を踏まれながら、森は俺の股間を凝視する。
俺は踏むのをやめ、床に転がっていたウイスキーの瓶を拾い、
森の頭を殴った。
「ぐうううっ」
「お前、俺のパンツ見て、ただで済むと思ってんのか?
何とか言えよ」
今度は森の鼻面を殴ると、森は鼻血を流しながら、涙目になる。
「やめてくれ。俺が何したって言うんだ」
「タメ口効くなって言ってんだろうが!!」
ウイスキーの瓶で、森の頭や肩を何度も殴ると、森は痛みに心が折れたのか、
泣きを入れだした。
「か、勘弁してください。頼んます……」
「やっと立場わきまえたみたいだな。手間かけさせやがって。
でも、許してやんない。だって、お前ムカつくから」
俺がウイスキーの瓶を振り上げると、森は恐怖の表情で顔を背ける。
次はどこに振り下ろそうかと考えていると、外からクラクションの音が聞こえてきた。
「おっ。来たみたいだな。さてと、外に行きますかね」
連れ立って、アパートの外に出ると、ベンツが止まっていて、4人の男たちが立っていた。
六道会若頭の横井の顔もある。
俺が頭を下げると、横井は笑顔で近寄ってきた。




