表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おやじ彼女  作者: ponta
壮士凌雲
496/570

別れ

俺が頭を下げると、横井は笑顔で近寄ってきた。


「わざわざ来ていただいて、すみません」


「なーに、良いってことよ。嬢ちゃんの頼みならことわれねえ」


「それで、見つかりました?」


「連れてきてるぜ。おう、須藤」


スーツ姿の他の3人とは違い、チンピラ風の派手なシャツをきた男が、

事情がわからないのか困惑した表情で、横井の傍へと歩いてくる。


「初めまして。大野奈津美です。須藤さんが、森のバックについてる方ですね?」


「そ、そうだけど……」


「率直に言いますね。森が、私の同級生に売春やらせてるんです。

 別れさせたいんですが、同級生の方がどうしても別れないと言ってまして。

 別れさせてもらえませんか?」


「なんで俺が」


横井が須藤を殴り飛ばし、足蹴にする。


「てめーは、言われたとおりにすりゃいいんだ! この大野奈津美は親父っさんの、

 お気にいりだぞ!」


「す、すんません! 若頭、勘弁してください!」


ひとしきり、須藤に蹴りをいれた横井は、肩で息をしながら、

首元を緩めた。


「最近の若い奴は、口答えばかりしやがる。

 嬢ちゃん、そういうことなら、俺が追い込みかけてやろうか?」


「いえ、横井さんのお手を煩わせるようなことでもありません。

 それにきっと、須藤さんが別れさせてくれますから。

 ねえ、須藤さんそうでしょう?」


俺が話を振ると、須藤は目を伏せ、口から流れている血を右手で拭った。


「わ、わかった」


「ありがとうございます。さすが本職の方は話が早いですね」


俺は呆然と立ち尽くす森に近付く。


「森、聞こえたろ? 別れないとどうなるかなあ。

 博多湾に沈められるか、山に埋められるか。

 お前、どっちがいい?」


「な、なんでお前が、六道会と……」


俺は森の腹に蹴りをいれ、膝をつかせる。


「タメ口効くなって、何回言えばわかるんだ。

 シンナー吸いすぎて、脳が溶けてんのか?

 もうさ、無理に別れなくていいよ。

 どうやっても、理恵は別れたくないみたいだし。

 お前がこの世からいなくなればいいや」


「か、勘弁してくれ。死にたくねえ……」


「いいじゃん。愛のために死ねば。

 なんか、かっこよくないか?

 って、汚ねえなあ。鼻水たれてるぞ。

 俺も鬼じゃないからさ、最後に理恵といちゃついていいよ。

 10分だけ。10分経ったら、最後のドライブな」


森はボタボタと涙と涎が混じったものを、地面に垂らす。

理恵が俺の前にきて、土下座する。


「お願い。お願いします。この人を助けてください!」


あらら参ったな。田崎までなんか助けてやれよって顔してる。

しかし、ここから追い込まないと、元の木阿弥だ。


「須藤さん、さっさとこの馬鹿、連れて行ってもらえます?」


須藤が森に近付き、手を引くと、森はその場にしゃがみこんで、首を振る。


「勘弁してください! 俺がなにしたっちゅーんですか!

 須藤さん、止めてください!」


須藤は先ほど、横井に蹴られた腹いせなのか、森を蹴りまくる。


「てめーが、妙な真似しなけりゃ、こんなことになってねえんだよ!!」


須藤の目は血走り、このまま蹴り殺さんばかりの勢いだ。

ひとしきり、その様子を眺めたあと、俺は須藤の肩に手をおいた。


「疲れたでしょう? 少し、休憩されては?」


「ああっ!!」


歯をむき、血走った目の須藤は振り返ると、俺の顔をみて、先ほど横井にやられた

ことが頭をよぎったのか、半歩あとずさりして、脇へよけた。


血と涙でドロドロになった森の前で、しゃがんで俺は頬杖をつく。


「あらあらいい男が台無しね。

 根性のある森君のことだから、ここで理恵とは別れないって

 言ってくれると思うんだけどなあ。

 森君、どう?」


「か、勘弁してください。わ、別れる。別れますから……」


「うん? なんて言ったのかな? よく聞こえないなあ。

 じゃあ、須藤さんにまたお願いするかな」


立ちあがろうとすると、森が俺のスカートのすそを掴んだ。

俺は踵蹴りを、森の右鎖骨に落とした。


「ぎゃっ」


「スカートが汚れるだろ? それぐらい考えろよ」


「別れる。別れるから、助けてくれ……」


「あれー? 最初の勢いはなくなったのか?

 理恵、森はこう言ってるけど?

 いいんだぜ。好きにして。森は死んじゃうけど」


理恵はぽろぽろと涙を流し、下を向く。


「返事なしか。別れるってことでいいんだな?」


「別れないと、竜一を殺すんでしょ? それしかないじゃんか……」


「いやいや、俺は殺さないよ。須藤さんがどうするかは知らないけど。

 森、二度と理恵と会わないってんなら、助けてやってもいい。

 どうする?」


森は顔をあげ、俺を見て何度も頷く。


「する! 約束する! 絶対に、理恵とは会わない!」


「ふーん。ほんとかなあ。お前みたいな奴って、信用できないんだよね。

 やっぱ、埋めてもらおうかな」


「待ってくれ! 俺は、こんな女、なんとも思ってねえんだ!

 こんな公衆便所のために、殺されちゃかなわねえ!」


「あん? お前、理恵と結婚するんじゃなかったか?」


「だれが、こんな女と。こいつはな、ちょっと褒めりゃ、だれとでも寝るんだよ。

 こんな股の緩い女となんか、結婚するわけねえだろう」


森の言葉に、理恵はブルブルと震えだした。


「そんな……。ひどい。ひどいよ!!」


理恵は、そういうと泣きながら、走っていった。


「松下、理恵を追ってくれるか?」


「わかった」


理恵が走っていった方角へ、松下が走り去ってから、

俺は森に微笑み、しゃがんで顔を両側から挟んだ。


「よくできました。約束通り、埋めんのは勘弁してやるよ」


「ほ、ほんとか?」


「ああ。だが、女にあの言葉はねえよなあ」


そういって、俺は右の拳を振りかぶる。


「や、やめっ!」


右の拳を地面に突き刺すように、振り下ろすと、

森はその場で気を失った。


横井がつまらなそうに、耳をほじる。


「なんでぇ。終わりかー? ドラム缶とセメント用意してやってたのによー」


「もう、怖いこと言わないでくださいよ。私、学生ですよ?」


「ははは。違いねえ。用が済んだなら、帰るぜ。

 たまには、本家に遊びにきてくれや。親父さんも会いたがってる」


「はい。近いうちにお邪魔させていただきます」


横井たちが、去ってから、三野と松下と合流し帰路についた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ