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おやじ彼女  作者: ponta
壮士凌雲
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小手調べ

「おー、こらー! 三鷹水産の島で、でけえ面してんじゃねえぞ!」


威嚇されても、金は余裕の表情で、たばこを取り出し、火をつける。

雰囲気はあるけど、20人からに囲まれてどうにかできるとは思えない。


どう切り抜けようと思っているのか、ちょっと興味がわいてきて、

私は遠巻きに様子をみることにした。


「儂に喧嘩売るゆうことは、死ぬ覚悟あるんやろうな?」


金はそういって、右手を懐にいれた。

刃物でも出すのかと思ったら、銀色のボトルをとりだし、蓋をあけた。


金が手を懐に入れたとき、身構えた連中は、

安心したようで、目をぎらつかせる。


「朝鮮高校がなんぼのもんじゃ! 思い知らせろ!」


金にかかろうとした数人に、金はボトルを振って中の液体をかけた。


「くせっ」

「ガソリン?!」

「おい、待て!」


「くくくっ。まさか儂が、お前ら焼き殺すような残酷な男と思っとるんか?」


そういいながら、金はにやっと笑う。

金を囲んでいた連中が、金から離れていく。


なるほど。頭がキレるらしい。脅すタイミングを心得ている。

私は人垣を押しのけ、金の前に出た。


「あらあら。帰ったかと思ったら、こんなことしてたの。

 私も遊んでくれる?」


「またお前か。李には、止められちょったが、ちいと相手したらあ」


金は笑いながら、手に持っていたボトルを投げ捨てる。


「あら。武器捨てていいの?」


「でかい口をたたきよるのー。いつまで続くか見物じゃ」


金が両手を上げて構える。脇を開けた妙な構えだ。

格闘技の経験があるわけではないらしい。


金が左のパンチを打つ。打ってはすぐに同じ位置に手を戻す。

ジャブ? なら、これはボクシング?

ずいぶん、変わった構えだけど。


ボクシングなら、練習の成果を試してみたい。

プロには通じなくても、素人相手にどこまでやれるか試すいいチャンスだ。

私もボクサーのようにアップライトに構える。


まずは、ジャブ。

スナップを効かせ、鞭をイメージして手首をはじき出す。


拳が金の手を打ち、すぐさま元の位置に戻す。

拳が届くギリギリの距離。


かなり危険な距離だ。

この位置では、掴みかかられてしまったら避けるのは難しい。


金が踏み込んできて、左右のフックを打ってくる。

バックステップ、スウェーバックで躱し、ワンツーを叩きこむ。

しかし、金は顔色を変えない。


「やるのー。しかし、軽い。軽すぎる。

 こんなんで、三鷹水産締めたって嘘じゃろ?」


その言葉に、私はムッとしてしまう。

金の首は太い。顎もしっかりしている。

私の普通の打撃では、効かせることは難しい。


「馬鹿にしてくれるわね。私が本気だせば、こうなるわ!」


私は踏み込み、右のハイキックを側頭部に叩きこんだ。

金はぐらついて、顔をしかめる。


「効いたー。効いたわい。なるほど、蹴りが武器いうわけか」


「そういうこと。さあ、這いつくばってもらうわよ」


跳び膝蹴りを出そうとすると、金が右手を上げて、ストップをかけた。


「待てい。今日はあいさつに来ただけじゃ。後日、改めて勝負してもらおうか」


「ダメージを負ってるあなたをこのまま逃がすとでも?」


「……。見え取ろうが」


「何が?」


「女じゃろうが。恥じらいをもたんかい」


「何をわけのわからないことを……」


私はハッとして、スカートの上からお尻を触ってみた。

しまったー。スパッツ履いてくるの忘れてた。


「まったく。こんな大勢の前で、大股開くとは、なんつう恥知らずじゃ。

 わしゃー、逃げも隠れもせん。

 お前らみたいに、一人に大勢でというのも好かん。

 わしゃー、本物の男じゃけんのー」


ぐっ。言い返せないような。

でも、言われっぱなしじゃ、なんかいや。


「さっきから気になってたんだけど、あなたどこの出身?

 博多弁じゃないわよね?」


「広島は呉の出身よ。福岡には、儂見てえな男はおらんじゃろうが」


「ふーん。やきそばもどきをお好み焼きと言い張る県の出身かー」


私の挑発に、金は少し顔色を変えたが、駐輪場の方へ歩いていき、

止めてあったアメリカンバイクにまたがる。


「言い返さないの?」


「本物のお好みを食うたことない女子に、何言われも悔しゅうないのー」


「食べたことあるわよー」


「ガキじゃの。まあ、ええわい。とにかく今度やるときは、それなりの恰好してこいや。

 下着をいちいち見せられたんじゃ、気が散ってしかたないわい。

 もっとも、そういうやり方しか知らんのなら、話は別じゃが」


「そ、そんなわけないでしょう? わかったわよ。

 ちゃんとスパッツ履いてくわよ」


「あんまり背伸びせんことや。ほいじゃの」


そういうと、金はバイクで走り去っていった。


金の腕前は、そこまではなかった。私の敵ではないと感じたのに、

この負けた感じはなんなのだろう。


学校に着き、教室に入ると、松下君のところに、田崎君がきていて、

何やら話し込んでいた。

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