62話 パーティー
屋敷へ戻ったレイたちは、玄関をくぐった。
「疲れた……」
レイが靴を脱ぎながら、ぐったりと呟く。
「疲れた〜」
その隣では、メルナも同じように肩を落としていた。
レイはそんなメルナを見る。
「メルナ、お前なんかしたか?」
「シュークリーム食べた」
「……それだけ?」
「それだけ!」
「なら、これからシュークリーム禁止な。疲れるから」
「やだ〜!」
メルナが頬を膨らませる。
「子供か」
「子供ですぅ〜!」
「子供は寝とけ」
「かっち〜ん! 切れました」
「ご勝手にどうぞ」
「これだからお兄ちゃんは乙女心を知らないんだね」
「乙女心とシュークリームは関係あるのか?」
「ありますぅ」
「どういう理屈だよ……」
そんな兄妹のやり取りを聞きつけ、ミレーヌが笑いながらやってくる。
「二人とも、兄妹同士で仲良くするのはいいけど、私も混ぜて!」
「おう」
「いいよ〜!」
メルナはすぐにミレーヌへ駆け寄った。
「お母さん聞いて! お兄ちゃん、さっき鬼化を制御できてたんだよ!」
「え!?」
ミレーヌの目が大きく開く。
「本当!?」
「本当だ」
レイが頷く。
「良かったねぇ〜!」
ミレーヌは嬉しそうに笑い、レイの頭を優しく撫でる。
「よしよし。頑張ったわね」
「……子供扱いするなよ」
「ふふ。お母さんにとってはいつまでも子供よ」
そこへクラウスもやってきた。
「レイも強くなったのぉ」
「じいちゃんまでかよ」
「成長するのは良いことじゃ」
そして、その場にはもう一人。
ソフィアもいた。
「レイも酒呑童子の力を扱えるようになってきたわね!」
「婆ちゃんもいたのか」
「いるわよ!」
「いつから?」
「最初からよ」
「気づかなかった……」
ソフィアは楽しそうに笑った。
「明日には帰るけどね」
「そうなのか」
その時。
「二人とも、おかえり」
聞き慣れない声がした。
レイが振り返る。
そこには――
一人の女性が立っていた。
「ただいま、姉ちゃん」
「え?」
メルナが固まる。
「……もしかして」
女性が笑う。
「うん」
「姉のアイナちゃん!?」
「そう」
「お姉ちゃん!」
メルナは一気にアイナへ駆け寄り、そのまま抱きついた。
「今夜いっぱい話しよ〜!」
「そうしよう!」
アイナも嬉しそうにメルナを抱き返す。
レイはその様子を眺めながら笑った。
「メルナ、姉が欲しいって言ってたもんな」
「そうだよ〜!」
メルナはアイナに抱きついたまま答える。
「お兄ちゃんに女の子の話しても、鈍感だから何も分からないし」
「失礼な」
「はぁ〜……お兄ちゃんの鈍感アホボケ」
「言い過ぎだろ」
アイナが二人を見て笑う。
「二人とも仲良いんだね」
レイとメルナは顔を見合わせる。
「まぁ……色々あって、より一層仲良くなった的な?」
「うん!」
メルナが笑う。
「お兄ちゃんとはちょっとした喧嘩したら、仲良くなった!」
「……まぁ、そうだな」
アイナは少しだけ考える。
「私も仲良くなれる?」
レイは即答した。
「当たり前だろ。兄妹なんだから」
「そうだよ!」
メルナがアイナの腕を掴む。
「今夜、お兄ちゃんの愚痴言いまくろ!」
「それは看過できない」
「嘘嘘! 女の子だけの話!」
「だね」
アイナも楽しそうに笑った。
その時、ミレーヌが手を叩く。
「さぁ、パーティーするから準備するわよ!」
「は〜い!」
メルナはアイナの手を取る。
「お姉ちゃんも行こ!」
そして、ふと首を傾げた。
「ん? 何て呼べばいい?」
「呼びやすい方でいいよ」
「じゃあ、お姉ちゃん!」
「うん!」
二人は笑いながら準備へ向かっていった。
⸻
皆がパーティーの準備をしている中。
レイはソファに座り、ぐったりしていた。
「……」
「大丈夫、レイ?」
ミレーヌが心配そうに声をかける。
「鬼化の後から、体がダルい」
「そうなの?」
ミレーヌはレイの隣に座ると、優しく抱きしめた。
「どう? 少しは楽になった?」
「……すごいな」
レイの表情が少し緩む。
「めっちゃ楽になった」
「でしょ?」
ミレーヌが微笑む。
「私の『安らぎ』は、心だけじゃなくて体も和ませるのよ」
「本当に楽になった。ありがと」
「なら良かったわ!」
ミレーヌは嬉しそうに立ち上がる。
「じゃあレイ。少しグリムの部屋に行って、呼んできてくれるかしら?」
「もちろんだ。すぐ行ってくる」
「頼むわよ」
⸻
レイは父親の部屋の前までやってきた。
「父さん、入ってもいいか?」
「おう。入ってくれ」
「ありがと」
扉を開ける。
部屋の中では、グリムが大量の書類を整理していた。
「母さんがパーティーの準備してるから、手伝ってって言ってた」
「分かった。すぐ行くよ」
レイは部屋を見回す。
「何してたんだ?」
「色々とな」
机の上には大量の書類が積まれている。
「領主も中々キツそうだな」
「キツイぞ」
グリムは苦笑する。
「レイも次期領主になるか?」
「俺には向いてないかもな」
「そんなことないさ」
グリムは笑った。
その時、レイの目に一枚の写真が入った。
「……ん?」
若い頃のグリムとミレーヌが写っている。
「父さん、若いな」
「若い頃の写真か」
「カッコいいな」
レイは別の写真も手に取る。
「どの写真もカッコいい。父さん、この頃何してたんだ?」
「この頃は冒険者をしていたな」
「冒険者?」
レイの目が輝く。
「世界中旅してたのか!?」
「ああ。旅してたぞ」
グリムは懐かしそうに写真を見る。
「その中でミレーヌと出会ったんだ」
「それで一目惚れと?」
レイが意地悪そうに笑う。
「ま、まぁ……そういうことだ」
グリムが少し照れたように視線を逸らす。
「父さんもそういうことあるんだな」
「どういう意味だ?」
「いや、別に」
レイは笑いながら、さらに尋ねた。
「じゃあ、父さんはどうやって領主になったんだ?」
「それは……まぁ、色々あって国から頂いた」
「え? 国から?」
「ああ」
「何で?」
「まぁ……色々あったんだ」
「またそれかよ」
レイは苦笑する。
「もう一ついいか?」
「何だ?」
「冒険者は辞めたのか?」
グリムは少しだけ黙った。
「……辞めたな」
「何で?」
「俺は怪我をして、戦う力を失ったんだ」
レイの表情が変わる。
「そんなに酷かったのか?」
「相当酷かった」
グリムは静かに答える。
「一時は身体がほとんど動かないくらいだった」
「……」
「だが、ミレーヌが看病してくれたおかげで、普通に暮らせるまでには戻った」
レイは少し考える。
「何となく思ってたんだけど……母さんって聖女だったのか?」
グリムは少し驚いた。
「よく分かったな」
「やっぱりか!」
「ミレーヌは元聖女だ。回復魔法や『安らぎ』の力で、多くの人を救っていたらしい」
「今はその聖女の力はないんだよな?」
「ああ」
「なるほど……」
グリムが立ち上がる。
「レイ、そろそろ行くぞ」
「ああ」
二人が部屋を出ようとした時。
レイは部屋の隅に飾られている一本の剣に気づいた。
華やかに装飾された鞘。
丁寧に手入れされた刀身。
「……」
レイが横目で見る。
「どうかした?」
「いや、別に」
グリムがニヤリと笑う。
「なんだ? 惚れた女性のことでも考えてたか?」
「違う!」
「思春期か?」
「あのなぁ……」
「悪かった」
グリムは笑っている。
レイも呆れながら笑った。
⸻
リビングへ戻る。
しかし――
「遅い!」
「遅いよ!」
ミレーヌとメルナが待ち構えていた。
「え?」
「準備、もう終わったんだけど!」
気づけば、パーティーの準備は完全に終わっている。
そしてなぜか。
レイとグリムは床に正座させられていた。
「すまなかった」
「以下同文」
「お兄ちゃん、反省してる?」
「してます」
「あなたは反省してる?」
「してます」
グリムも神妙な顔で答える。
そこへソフィアが笑いながら口を挟む。
「まぁまぁ。二人とも、今日はパーティーなんだから楽しみましょう」
「お母さんがそう言うなら」
「は〜い」
ミレーヌとメルナが許す。
レイとグリムは顔を見合わせた。
そして、二人で小さな声で話す。
「父さん、母さんの尻に敷かれてるな」
「レイこそ、メルナに言いくるめられてるな」
「……やっぱ血が繋がってるな」
「そうだな」
二人は笑い合う。
その瞬間。
「二人とも!」
「はい」
「はい」
レイとグリムの声が綺麗に重なった。
⸻
その夜。
アイナの歓迎を兼ねたパーティーは、大いに盛り上がった。
料理を囲み、皆で笑い合う。
メルナとアイナはすっかり意気投合し、ミレーヌとソフィアも二人を見ながら楽しそうに話している。
そして――
パーティーが終わった後。
なぜかレイとグリムだけが、もう一度説教を受けていた。
⸻
一方、その頃。
メルナ、アイナ、ミレーヌ、ソフィアは別の部屋で話していた。
「グリムはねぇ、覚悟を決めるとちゃんとできる人なんだけど〜」
ミレーヌが懐かしそうに笑う。
「お母さんは、お父さんのどこに惚れたの?」
メルナが尋ねる。
「それはねぇ……」
ミレーヌは少し照れながら答えた。
「グリムは、何もかもカッコよかったの」
「何もかも?」
「ええ」
ミレーヌは昔を思い出すように目を細める。
「私を守るために身を挺してくれて……身体がほとんど動かせなくなるほどの怪我をしたの」
「……」
「それでも、最後まで私を守ってくれた」
ミレーヌは優しく笑う。
「命をかけて守ってくれたの。だから……惚れちゃった」
「ふ〜ん!」
メルナが頷く。
「お父さん、かっこいいねー」
「命をかけて守るとか、かっこよすぎだね」
アイナも感心したように呟く。
「流石よね」
ソフィアも頷く。
メルナがふと疑問を口にした。
「お父さん、そんな怪我してたのに今は普通に生活できてるよね?」
「私は元聖女だったからね」
ミレーヌが答える。
「聖女の力を失う代わりに、グリムの身体を治したの」
「全部治せたの?」
「いいえ。全部ではないわ」
ミレーヌは少し寂しそうに笑う。
「それでも、今こうして普通に暮らせているだけで十分よ」
「そうなんだ……」
「メルナたちは知らないと思うけど」
ミレーヌは少しだけ誇らしそうに言う。
「グリムは、昔は本当に強かったのよ」
「そうなんだ……」
アイナが驚く。
「初耳!」
メルナも目を丸くする。
「でもね」
ミレーヌの表情が少し曇る。
「怪我の後遺症で、戦う力をほとんど失ってしまったの」
「……」
「今、こうして生活できていること自体が奇跡なのよ」
メルナが黙り込む。
「……本当に残念だったわね」
ソフィアが静かに言う。
ミレーヌは俯いた。
「グリムは私を守って酷い怪我をしたから……実際は、私が全部悪いのよ」
「お、お母さん……そんなことないよ」
アイナが慌てて声をかける。
「そうだよ!」
メルナも続く。
「気にしなくていいよ! お父さん、今幸せそうなんだし!」
ソフィアも穏やかに笑う。
「グリムさんはミレーヌを守るために、自分で覚悟を決めたのよ。考えすぎなくていいわ」
「……そうかしら?」
ミレーヌが呟いた。
その時。
扉が開いた。
「何の話だ?」
レイ、グリム、クラウスが入ってくる。
「か、過去の話よ」
ミレーヌが少し慌てる。
クラウスは興味深そうに笑った。
「面白そうだのぉ」
「お母さんとお父さんの馴れ初め的な感じの話!」
メルナが答える。
「何だ、そんなことか」
グリムが苦笑する。
レイがすかさず突っ込む。
「そんなことで済ませられるのか?」
「それは……」
グリムが言葉に詰まる。
するとメルナがミレーヌの背中を押した。
「お母さん、お父さんと話してきなよ!」
「え?」
「二人でゆっくり話した方がいいって!」
そして、ふと思いついたように言う。
「アカマルちゃん連れてくのもあり!」
「そうするわ」
ミレーヌは近くにいたアカマルを抱き上げる。
「アカマルちゃん、ちょっと借りるわね」
「ガウ〜」
アカマルは嬉しそうにミレーヌの腕の中へ収まった。
レイが首を傾げる。
「アカマル必要あるか?」
「二人で話すより、ちょっとした可愛い生物がいた方がいいでしょ」
「そういうものか?」
「そういうもの!」
「グリム」
ミレーヌが夫を見る。
「ちょっと話しましょ!」
「おう。話そう」
二人はアカマルを連れて庭へ向かっていった。
その背中を見送りながら、メルナが呟く。
「既に仲良いけど、もっと仲良くなってほしいな」
「なれるさ」
レイが笑う。
「うん。なれるよ」
アイナも頷いた。
するとクラウスが皆を見回す。
「三人とも、何かグリムについて知りたいことはあるかのぉ?」
「う〜ん……」
メルナが考える。
「大体聞いたしなぁ」
アイナも首を傾げる。
するとソフィアがレイを見る。
「そうかしら? レイは何か聞きたいこととかないの?」
「ある」
「何何?」
レイは少し考えてから口を開いた。
「父さんは、この土地や領主になることを国から得たって言ってた」
「うむ」
「国から貰うってことは、相当国に貢献したと思うんだ」
レイは続ける。
「それこそ、国を魔物から守ったり、支援したりな」
そして、まっすぐクラウスを見る。
「父さんは……何をしたんだ?」
クラウスがニヤリと笑う。
「いいところに気がついたのぉ、レイ」
「父さんは、どこかの国から何かを得たんだ」
メルナが呟く。
「じゃあ逆に聞くが、グリムは何をしたと思うかのぉ?」
「う〜ん……」
メルナが考える。
「貧しい人への支援!」
「難しいなぁ」
アイナも腕を組む。
レイは少し考えた。
「例えば……英雄だったとか?」
一瞬。
部屋が静かになった。
クラウスが目を細める。
「……本当に鋭いのぉ、レイは」
「合ってるのか?」
ソフィアが答える。
「合ってるわよ」
レイの目が見開かれる。
クラウスがゆっくり口を開いた。
「グリムは以前、英雄だったのじゃ」
「……」
「数多の魔物や悪魔と、たった一人で対峙し――その全てを倒してきた男じゃ」
「……何それ。やば」
レイが思わず呟く。
クラウスは続ける。
「レイに前に言ったろう?」
「四災害に対抗できる存在を、一人だけ知っておると」
「ああ」
「それが――グリムじゃ」
レイたちは言葉を失った。
「……父さんが?」
「あやつの若い頃は、本当に誰も勝てなかったのぉ」
クラウスは昔を思い出すように目を細める。
「弱点も、一つしかなかった」
「弱点?」
「ミレーヌじゃ」
レイが黙る。
「グリムにとって、ミレーヌはそれほど大切な存在だった」
クラウスの表情が少しだけ険しくなる。
「しかし、グリムをよく思わない者たちもおった」
「そいつらに……」
「嵌められたのじゃ」
クラウスは静かに語り始める。
「ミレーヌを捕らえられたグリムは、助けに向かった」
「その場所には、上位の悪魔や最上位の悪魔……そして数多くの魔物までいたらしい」
「……」
「じゃが、グリムは止まらなかった」
クラウスの声に力が入る。
「ミレーヌの元へ辿り着くまで、立ちはだかる敵を全て斬り伏せた」
「すご……」
メルナが呟く。
「じゃが、敵はミレーヌを人質に取った」
クラウスは続ける。
「そして標的をグリムからミレーヌへ変えた」
「……!」
「グリムは、ミレーヌに向けられた攻撃を全て自分で受けた」
レイは拳を握る。
「酷い怪我を負った」
「それでも……」
クラウスは笑った。
「グリムは止まらなかった」
「重傷を負いながらも、最後まで敵を蹴散らし――ミレーヌを連れて帰ったのじゃ」
「……まじか」
レイは思わず言葉を失う。
メルナも驚いた顔をしている。
「お父さん……めっちゃ強いんだね」
「私も驚いたよ……」
アイナも目を丸くする。
そこへフィーアが静かに口を開いた。
「旦那様はお強いですよ」
「フィーアも知ってたのか?」
「はい」
フィーアは頷く。
「私が初めて旦那様にお会いした時は……それこそ、クラウス様以上にお強かったかと」
クラウスが笑う。
「間違っていないのぉ」
レイは少し考える。
「なぁ」
「なんじゃ?」
「もう父さんは戦えないのか?」
クラウスはすぐには答えなかった。
「覚悟次第じゃ」
「覚悟?」
「もしかしたら、あやつの覚悟によっては……戻るかもしれん」
クラウスは静かに続ける。
「じゃが、ほぼ無理に等しいじゃろうな」
ソフィアが口を挟む。
「私の能力なら、一時的に全盛期へ戻せるわ」
「婆ちゃんの能力って……若い頃に戻れるの?」
「私の能力は『巻き戻し』」
ソフィアが指を立てる。
「対象の状態を、過去へ巻き戻すことができるの」
「それでグリムを?」
「ええ。怪我を負う前の、全盛期の身体へ一定時間だけ戻すことができるわ」
「すごいな……」
しかし、クラウスが続ける。
「じゃが、ソフィアの能力には代償もある」
「代償?」
「寿命じゃ」
メルナが驚く。
「使うたびに減る」
「じゃあ、頻繁には使えないのかぁ」
「そうよ」
ソフィアは苦笑した。
アイナがふと思い出す。
「だけどさ」
「ん?」
「龍神戦の時に、お父さんの剣術見たけど……綺麗だったよ」
クラウスが頷く。
「確かに、剣術自体は衰えていなかったのぉ」
「ただ、筋肉や肺は衰えておる」
「怪我の影響もあるじゃろうな」
レイは考える。
「じゃあ、体力とかを戻せたら戦えるのか?」
「それは分からん」
「え?」
「全ては、あやつの能力次第じゃ」
レイが首を傾げる。
「……能力?」
「じいちゃん、父さんの能力知ってるの?」
クラウスはニヤリと笑った。
「知っておる」
「じゃあ教えてくれよ」
「嫌じゃ」
「口硬いな」
「まぁの」
クラウスは楽しそうに笑った。
⸻
それから数十分後。
庭からミレーヌとグリムが戻ってきた。
ミレーヌは、どこかスッキリしたような表情をしている。
レイは二人を見て微笑んだ。
「楽しそうで何より」
「ええ!」
ミレーヌが笑う。
そしてグリムを見る。
「愛してるわ、グリム」
「お、俺も……その……愛してる」
グリムが少し照れながら答える。
「うん。仲良くて良かったよ」
メルナも嬉しそうに笑う。
「そうだね」
アイナも頷いた。
レイは家族を見回す。
父。
母。
姉。
妹。
祖父。
祖母。
そして、皆がここにいる。
当たり前のように続いている、この時間。
レイはふと、穏やかに呟いた。
「……こんな仲が良くて、楽しい生活が……ずっと続くことを願うよ」
メルナがじっと兄を見る。
「お兄ちゃん、急にらしくないこと言わないで」
「……ぶっ殺す」
「お姉ちゃん助けて〜!」
「はいはい、仲直り!」
アイナが二人の間に入る。
「兄妹なんだから、仲良くね」
「うい」
「はーい!」
再び笑い声が響く。




