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果てなき世界の物語!  作者: もちもち大福
第一章 始まり
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5話 試験

魔法学園入学試験当日。


ラミール王国の魔法学園には、朝早くから多くの受験生が集まっていた。


広大な敷地。


立派な校舎。


そして、その周囲を歩く大勢の少年少女たち。


誰もが緊張した面持ちで、試験会場へ向かっている。


レイもその中に混ざりながら、周囲を見回していた。


「……結構、人いるな」


思っていた以上の人数だった。


これだけの人間が同じ試験を受ける。


当然、その中には自分よりも強い人間もいるだろう。


レイは少しだけ気を引き締めた。


「まあ、やれるだけやるか」


受付を済ませ、指定された会場へ向かう。


すると――


「受付はこちらです」


試験官が受験生を案内している。


「ここか」


レイは受付を済ませ、そのまま最初の試験会場へ向かった。


***


最初の試験は魔法。


会場へ入ると、広い訓練場のような場所が広がっていた。


その中央には、人型の的がいくつも並べられている。


試験官が受験生たちへ説明する。


「最初の試験は魔法試験です。皆さんには、あちらの的へ得意な魔法を一つ放っていただきます」


「なるほど」


レイは的を見る。


「要するに、あれに魔法を当てればいいんだな」


「はい。ただし、威力や魔法の精度なども評価対象になります」


「分かりました」


その時――


「レイさん!」


聞き覚えのある声がした。


振り返ると、そこにはカナが立っていた。


「カナ」


「おはようございます!」


「おう。ちゃんと来たな」


「はい!」


カナは嬉しそうに笑う。


「今日、頑張りましょう!」


「そうだな」


「私、昨日教えてもらった魔法を少し練習したんです」


「お、じゃあ期待できそうだな」


「頑張ります!」


カナは的を見る。


「……あの的に打てばいいんですよね?」


「そうだな」


「じゃあ、私から行きます!」


カナは一歩前へ出る。


試験官が頷いた。


「どうぞ」


カナはゆっくりと息を吸う。


そして――


「風魔法――ウインドブラスト!」


圧縮された風が一直線に放たれる。


ドォンッ!


風圧によって、的が大きく吹き飛んだ。


さらにその衝撃で、的の一部が壊れる。


「…………」


レイは目を丸くした。


「昨日より威力出てるな」


「はい!」


カナは嬉しそうに頷く。


「昨日、宿に戻ってから少し練習したんです!」


「一晩でここまで上げたのか……」


レイは感心したように呟く。


カナは少し照れながら笑った。


「レイさんに教えてもらったので」


「なるほどな」


試験官が記録を取る。


「次の方」


「じゃあ、俺もやるか」


レイは的の前へ歩いていく。


「得意な魔法……か」


少し考える。


そして右手を前へ向けた。


「炎魔法――フレイムバースト」


瞬間。


地面から巨大な炎が噴き上がった。


ゴォォォッ!


炎が複数の的を一気に飲み込む。


一つ。


二つ。


三つ。


次々と的が壊れていく。


「…………」


会場が静まり返った。


レイは炎が消えたのを確認する。


「……中々だな」


しかし、周囲の受験生たちは唖然としている。


カナも目を丸くしていた。


「へ?」


「どうした?」


「……レイさん」


「ん?」


「強すぎません?」


「そうか?」


「そうですよ!」


カナは思わず声を上げる。


試験官も困惑したようにレイを見る。


「……素晴らしい威力です」


「ありがとうございます」


「ただ……」


試験官は壊れた的を見る。


「一度の魔法で複数の標的を破壊するとは……」


「やりすぎました?」


「……いえ。評価はしておきます」


「ならよかった」


レイは特に気にした様子もなく、列へ戻った。


カナが小声で話しかける。


「レイさん、すごいです……」


「カナも十分すごかったぞ」


「私とは全然違いますよ!」


「そんなことないって」


レイは笑った。


その後も試験は順番に進んでいく。


そして――


「魔法試験は以上です」


試験官が告げる。


「次は能力試験へ移ります」


***


「能力試験……ですか」


カナが少し不安そうな顔をする。


「うぅ……」


「どうした?」


「私、能力を上手く使えないんですよ」


「まあ、筆記試験で取り返せばいいんじゃないか?」


「そうですね……!」


レイはカナを見る。


「でも、さっきの魔法を見る限り、魔法の方は充分他の人よりすごいと思うぞ」


「レイさんのおかげです!」


「俺はちょっと教えただけだよ」


「その『ちょっと』が大きいんですよ!」


カナが笑う。


「じゃあ、能力試験の会場に行くか」


「はい!」


二人は能力試験の会場へ向かった。


◇◇◇


会場では、受験生たちが一人ずつ呼ばれていた。


「次の方」


「はい!」


一人ずつ試験官のもとへ進んでいく。


しばらく待っていると――


「次、レイさん」


「俺か」


レイが立ち上がる。


カナが声をかける。


「レイさん、頑張ってください!」


「おう」


レイが歩き出す。


その背中を見ながら、カナはふと思い出した。


「そういえば……」


レイが振り返る。


「ん?」


「レイさんの能力って、何なんですか?」


「俺?」


「はい」


レイは少し考える。


「まあ……身体強化みたいなものかな」


「身体強化……」


カナは納得したように頷く。


「なるほど」


――本当は酒呑童子の力だ。


しかし、それをそのまま説明するつもりはない。


レイは心の中でそう考えながら、試験会場へ向かった。


すると、カナが自分の能力について話し始める。


「私は未来視なんです」


「未来視?」


「はい」


「めちゃくちゃすごい能力じゃん」


「そうなんですけど……」


カナは苦笑する。


「使いこなすのが難しくて」


「まあ、能力は人によって難しさが違うからな」


「いつか上手く使えるようになりたいです」


「そのうちできるようになるだろ」


「……そうでしょうか?」


「きっとな」


レイが笑う。


その時――


「次の方、どうぞ」


「俺の番だな」


「また後で!」


「おう」


レイは試験官のもとへ向かった。


***


「能力を教えてください」


「身体強化です」


レイは答える。


「では、試しにそこの測定器を攻撃してください」


「分かりました」


目の前には、魔力や身体能力を測定するための装置が置かれていた。


レイは軽く拳を握る。


「これ、殴ればいいんですよね?」


「はい」


「分かりました」


レイは拳を引く。


そして――


「ん!」


ドンッ!


拳が測定器へ叩き込まれる。


次の瞬間。


バキッ。


「…………」


「…………」


レイと試験官。


二人とも動かない。


測定器には、大きな亀裂が入っていた。


「……あ」


レイが呟く。


試験官の顔が引きつる。


「こ、壊れるなんて……」


「すみません」


「い、いえ……」


試験官は慌てて記録を確認する。


「……もう一度、別の測定器で」


「はい」


しかし――


「……やっぱり壊れました」


「…………」


試験官は頭を抱えた。


「……もう大丈夫です」


「そうですか?」


「大丈夫です」


「分かりました」


「あ、あの弁償とかって...」


レイはビビりながら尋ねる


「大丈夫ですよ」


「すいません...」


レイはそのまま試験会場を出ていった。


◇◇◇


数分後。


「レイさん〜……」


カナが戻ってきた。


「どうだった?」


「うぅ……ダメでした〜」


カナは肩を落とす。


「能力、全然上手く使えませんでした……」


「まだ全然チャンスあるって」


「そうだと嬉しいんですが……」


カナは顔を上げる。


「レイさんはどうでしたか?」


「まあまあだな」


「まあまあ?」


「身体強化だし」


「でも、レイさんなら使いこなせるんじゃないですか?」


「そうかな」


レイは少し考える。


「でも身体強化なら、魔力を身体に纏わせるだけでもある程度は強化できるからな」


「確かに……」


「まあ、次の試験頑張ろう」


「はい!」


カナは元気を取り戻す。


「次は最後ですよね?」


「ああ」


「筆記試験!」


「そうだな」


「私、筆記は頑張りました!」


カナは自信満々に胸を張る。


「めっちゃ自信あるんだな」


「めっちゃってわけではないですよ!」


カナは少し慌てる。


「でも、充分頑張ったつもりです!」


「なるほど」


レイは笑った。


「こりゃ負けるかもな」


「負けませんよ!」


「じゃあ行くか」


「はい!」


◇◇◇


二人が筆記試験の会場へ向かっている途中――


カナがふと思い出したように尋ねた。


「そういえば……」


「ん?」


「アカマルさんは?」


「ああ」


レイは笑う。


「宿で寝てるよ」


「また寝てるんですか?」


「昨日もずっと寝てたからな」


「ふふっ」


カナが嬉しそうに笑う。


「また会いたいです!」


「おう。もちろんだ」


「嬉しいです!」


二人はそのまま筆記試験の会場へ入っていった。


◇◇◇


「席に座ってください」


試験官の指示に従い、レイとカナはそれぞれの席へ座る。


「これより筆記試験を開始します」


机の上に問題用紙が置かれる。


「試験科目は魔法、数学、歴史の三科目です」


「…………」


レイは問題用紙を見る。


「……思ったより難しいのか?」


しかし、ここでフィーアとの特訓が生きた。


魔法の基礎。


魔法理論。


歴史。


数学。


これまで何度も勉強してきた内容だ。


レイは一問ずつ問題を解いていく。


少し離れた席では、カナも真剣な表情で問題を解いていた。


――そして。


長い試験時間が終わった。


「そこまでです」


受験生たちが一斉に筆記用具を置く。


「これで全ての試験は終了です」


試験官が告げる。


「合否の判定は数日後、皆様のもとへ手紙にてお届けします」


「……ふぅ」


レイは大きく息を吐いた。


「疲れましたね……」


隣にいたカナも疲れた様子だった。


「疲れた」


「筆記試験、どうでした?」


「大分解けたと思う」


「私もです!」


カナが嬉しそうに笑う。


「じゃあ、もしかしたら二人とも受かってるかもしれませんね!」


「そうだな」


レイも笑った。


試験は終わった。


あとは結果を待つだけだ。


◇◇◇


試験会場を出た二人は、学園の外へ向かって歩いていた。


「結果が届くまで数日かかるらしいし……」


レイは街を眺める。


「この国を見て回ろうかな」


「…………!」


カナが反応する。


「私もそうします!」


「そうか」


「よ、よければ……」


「ん?」


カナの顔が赤くなる。


「い、い……」


「い?」


「…………」


カナは頭の中で必死に言葉を探す。


一緒に国を回りませんか?


ただそれだけを言えばいい。


それなのに。


なぜか緊張してしまう。


「い……」


「い?」


「い、芋は好きですか?」


「…………」


レイが固まる。


カナも固まった。


「芋?」


「…………はい」


「芋は好きだけど?」


「そ、そうですか……」


カナの顔から少しずつ力が抜けていく。


「…………」


「…………」


「なんか、しょんぼりしてない?」


「してません……」


明らかにしている。


レイは首を傾げる。


「もしかして、芋嫌いだった?」


「ち、違います!」


カナは慌てて手を振る。


「芋は好きなのですが……」


「そ、そうか」


「…………うぅ」


カナは俯いた。

言い間違えすぎました。


本当は、一緒に国を回りませんかって誘いたかったのに。


どうして私は「芋は好きですか」なんて聞いたんでしょう……。


カナは心の中で頭を抱えた。


一方のレイは、何が起きているのか全く分かっていない。


「……ほんとに大丈夫か?」


「だ、大丈夫ですぅ……」


「ならいいけど」


レイは笑う。


「それじゃ、またな」


「……はい」


「またです……」


二人はそこで別れた。


◇◇◇


レイが宿へ戻ると――


「ガウ!」


「お、起きてたか」


アカマルがレイへ駆け寄ってくる。


「ガウ?」


「うん、そうだな」


「ガウガウ!」


「確かになぁ」


「グゥルル……」


「まじかぁ!?」


レイはアカマルと何かを話している。


傍から見れば、ただの鳴き声と独り言にしか聞こえない。


しかし――


なぜかレイには、アカマルの言葉が分かっていた。


そしてアカマルも、レイの言葉を理解しているようだった。


「……俺たち、普通に会話できてるな」


「ガウ!」


「まあ、いいか」


レイはアカマルを抱き上げる。


「試験も終わったし、結果が来るまで暇だな」


「ガウ?」


「そうだな」


アカマルが尻尾を振る。


レイは笑った。


「じゃあ明日は――」


少し考える。


「この国を見て回るか」


「ガウ!」


「アカマルも来るか?」


「ガウガウ!」


「分かった」


レイはアカマルの頭を撫でる。


「明日は街を探索だな」


アカマルは嬉しそうに尻尾を振った。


◇◇◇


試験から二日後。


朝。


レイは宿の部屋で身支度を整えていた。


「今日は国を見て回るか」


「ガウ!」


アカマルも元気よく返事をする。


「よし」


レイは笑う。


まだ合否の手紙は届いていない。


だからこそ、今は自由に過ごせる。


魔法学園。


新しい街。


そして――


昨日出会った少女、カナ。


レイの知らない世界は、まだ始まったばかりだった。


「行くぞ、アカマル」


「ガウ!」



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