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果てなき世界の物語!  作者: もちもち大福
第二章 夏休み編
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41話 衝突

「ここは俺に任せろ」


レイが静かに言った。


アルスは黒い騎士を睨みながらも、レイへ視線を向ける。


「だが、あいつは……」


「いいから」


レイは一歩前へ出る。


「アルス達はメルナ達を守ってくれ」


「……分かった。無理はするなよ」


「ああ」


レイは刀を握り直した。


黒い騎士は、ゆっくりと立ち上がる。


そしてレイを見つめると、手にしていた黒い剣を地面へ投げ捨てた。


「……?」


次の瞬間。


黒い騎士は、新たな黒い剣を一本生み出すと、それをレイの前へ放り投げた。


レイは落ちた剣を見つめる。


「俺と一対一ってことか」


黒い騎士は何も答えない。


ただ、レイを見つめている。


「……俺も、それを最初から希望してた」


レイは黒い剣を拾い上げた。


「お前が何者なのかは分からない」


ゆっくりと構える。


「でもな……ちょっとムカついてるんだよ」


その瞬間。


黒い騎士の赤い目が、僅かに細くなった。


レイには、それがまるで――笑っているように見えた。


「……何笑ってんだよ」


レイが地面を蹴る。


一瞬で距離を詰め、黒い騎士へ剣を振り下ろした。


――キィン!


黒い騎士は剣を滑らせるようにして攻撃を受け流した。


「こいつ……!」


レイはすぐに二撃目、三撃目を繰り出す。


黒い騎士も剣を振るう。


互いの剣が何度もぶつかり合った。


「……!」


レイは僅かに目を見開く。


剣術だけなら――互角。


しかし。


「チッ!」


レイは黒い剣を投げ捨てた。


「この剣、重いな」


腰から愛刀――演舞を抜く。


「こっちの方がいい」


再び黒い騎士へ斬りかかる。


だが――


黒い騎士の動きがおかしい。


レイが次に繰り出す攻撃を、まるで最初から知っているかのように受け流していく。


「……なんだよ、こいつ」


レイは距離を取り、刀に炎を纏わせる。


「焔纏い――炎撃!」


炎を纏った斬撃が黒い騎士へ迫る。


しかし。


黒い騎士は剣を一振りしただけで、その炎ごと斬り払った。


「何でも斬るのかよ、お前!」


レイは止まらない。


「鬼炎乱舞!」


炎を纏った斬撃を連続で叩き込む。


「一閃!」


一瞬で懐へ入り込む。


だが、黒い騎士は全てを受け流した。


「こいつ……俺の技を……」


そのとき。


黒い騎士が刀を構えた。


――居合。


「……は?」


次の瞬間。


レイの身体に衝撃が走った。


「ぐっ……!」


気づけば、右腕が大きく傷ついていた。


「今……こいつ……」


レイが驚く間もなく、黒い騎士の蹴りが直撃する。


「ぐあっ!」


レイの身体が真上へ吹き飛ばされた。


黒い騎士は追撃する。


空中へ跳び上がり、絶え間なく剣を振るう。


「くっ……!」


レイは左手だけで演舞を握り、必死に攻撃を受け流す。


そして――


黒い騎士の一撃に合わせて刀を振り下ろした。


「業火烈破!」


炎を纏った刀が地面へ突き刺さる。


次の瞬間、前方へ巨大な爆炎が噴き出した。


「吹き飛べ!」


爆炎が黒い騎士を包み込む。


レイは息を整える。


「……流石に、これは効いただろ」


白い煙が辺りを覆う。


しばらくして――


煙の向こうから、ゆっくりと人影が現れた。


黒い騎士だった。


傷一つない。


「……どんだけ硬いんだよ、その鎧」


黒い騎士が消える。


「――!」


次の瞬間。


黒い剣がレイの身体を貫いた。


「……ガハッ!」


レイの身体から力が抜け、その場に倒れ込む。


「レイ!」


ユージが叫ぶ。


「ユージ! 行くぞ!」


アルスとユージがレイのもとへ駆け寄る。


「くそっ……もっと早く助ければ!」


ユージはレイを抱き上げ、雷の力で一気に後方へ運ぶ。


「レイ! 大丈夫か!」


「……死ぬかもな」


「縁起の悪いこと言うな!」


レイは目を閉じた。


「レイの傷が……!」


ユージが焦る。


「このままじゃ……」


「俺は回復魔法が使えない」


「俺もだ」


ラウスも駆け寄る。


「僕も使えない……」


ユージは拳を握った。


「……やるしかねぇ」


黒い騎士を見る。


「俺たちであいつを倒して、レイを教会へ運ぶ!」


「分かった」


「ラウス! レイを見ててくれ。できるなら応急処置も頼む!」


「うん!」


アルスが剣を構える。


「レイがあれほどの攻撃を受けた相手だ。気を抜けば、一瞬でやられるぞ」


「……分かってる!」


二人は同時に駆け出した。


「雷衝!」


「一刀両断!」


黒い騎士は二人の攻撃を軽々とかわす。


「クッ!」


「攻撃する暇を与えるな!」


「おう!」


アルスが連続で斬撃を放つ。


「一刀流――騒乱!」


無数の斬撃が黒い騎士を襲う。


確かに命中している。


しかし――


鎧には傷一つない。


「……おかしいだろ、あれ」


ユージが叫ぶ。


「雷撃!」


黒い騎士の頭上から巨大な雷が落ちる。


「これなら!」


黒い騎士の動きが一瞬だけ鈍る。


だが、やはり鎧には傷一つついていない。


「どうやってあれを破壊すんだよ!」


「分からない!」


そのとき。


黒い騎士が剣を地面へ突き刺した。


「……?」


地面が震える。


次の瞬間、前方の地面が扇状に隆起した。


「なっ……!」


ユージが目を見開く。


「こいつ……!」


「レイの技を……!」


黒い騎士は、レイの《業火烈破》を思わせる攻撃を、炎ではなく地面そのものを隆起させて再現した。


「何なんだよ、こいつ!」


二人の動きが止まる。


その一瞬だった。


黒い騎士がアルスの背後へ回り込む。


「アルス!」


「ぐっ!」


アルスが攻撃を受け、その場に膝をつく。


「いつの間に……!」


ユージが雷を放つ。


「雷衝!」


黒い騎士はもう一本の剣を生み出した。


そして――


ユージの攻撃を避けながら、一瞬で距離を詰めた。


「……っ!」


ユージもその場に倒れ込む。


「強すぎ……だろ……」


アルスも立ち上がれない。


ラウスは二人を見て息を呑んだ。


「アルスさん……ユージさん……」


黒い騎士が、ゆっくりとこちらへ歩いてくる。


メルナは動けない身体を起こそうとする。


「……ラウスさん」


「メルナちゃん!」


「ミリアを連れて……外へ逃げて」


「でも!」


「このままじゃ……全滅しちゃう」


「なら、メルナちゃんが!」


メルナは小さく首を振る。


「私は……もう動けない」


「……っ!」


黒い騎士が近づいてくる。


一歩。


また一歩。


そして――


メルナの目の前で立ち止まった。


黒い剣の切っ先が、メルナへ向けられる。


「……私も、ここまでか」


メルナは静かに目を伏せた。


そして、少しだけ笑う。


「せめて……お兄ちゃんと仲直りしたかったな」


声が僅かに震える。


「ちゃんと謝りたかった……」


「逃げて、メルナちゃん!」


ラウスが叫ぶ。


メルナは振り返らない。


「ラウスさん……頼みました」


「メルナちゃん……!」


ラウスに抱きかかえられているミリアが叫ぶ。


「メルナ!」


メルナがミリアを見る。


「……ミリアちゃん」


そして再び、目の前の黒い騎士へ視線を戻した。


黒い騎士が、ゆっくりと剣を振り上げる。


メルナはただ、それを見つめていた。

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