↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
果てなき世界の物語!  作者: もちもち大福
第二章 夏休み編
PR
36/74

36話 囚われる

あれから――四日が経った。


ミリアは毎日のように外へ出ていた。


目的は一つ。


メルナを探すこと。


宿に戻ってくるたび、少し寂しそうな顔をするものの、それでも翌日になればまた外へ出ていった。


その日の朝も、ミリアはすでに出かけていた。


レイは窓の外を眺めながら、ぽつりと呟く。


「今日も行ったのか?」


「行きましたね」


フィーアが紅茶を淹れながら答える。


「まさかミリアがフィーアを巻くことができるとはな」


「上手く逃げられました」


「……地味にすごいな」


「ですね」


二人は顔を見合わせる。


「まぁ、アカマルがついていってるから大丈夫だろうけど」


「そうですね。アカマルもミリア様を気にかけていますから」


そこでフィーアが、ふとレイを見る。


「……レイ様」


「ん?」


「最近、何かありました?」


「何で?」


「魔力の質が変わった気がします」


レイは自分の手を見つめた。


以前とは、確かに少し違う。


魔力の流れ。


制御。


身体への巡らせ方。


ここ数日、レイは一人で鍛錬を続けていた。


「強くなろうと思ってな」


「それはいいですね」


フィーアは微笑む。


「このままじゃ、メルナに負けるからな」


「メルナ様に、ですか?」


「おう」


レイは少しだけ笑った。


「だから、メルナに負けたくなくてな」


フィーアは少し驚いたように目を開く。


「先日お会いした時も、メルナ様の魔力量はかなり多かったですね。それに、恐らく魔力操作も以前より上達しています」


「……成長速すぎ」


「ですね」


二人の間に、妙な沈黙が流れた。


「……俺も頑張るか」


レイはそう呟いた。


――その頃。


メルナはというと。


「……あ、あのー」


「逃がさない」


「ガゥ」


「えぇ……」


ミリア、アカマル、そしてカナたちに囲まれていた。


「まさか、レイさんがエルフの子と暮らしていたなんて……」


カナはミリアを見ながら驚いている。


「すごいよね〜。皆かわいいし」


ルナは楽しそうに笑う。


「可愛いし、美しいですわ」


セニアも頷く。


「え、ええと……」


メルナは完全に困っていた。


「大丈夫ですか、メルナさん?」


「だ、大丈夫」


「だいじょばない!」


「ミリアちゃん……」


ミリアは頬を膨らませる。


「むぅ……仲直り!」


「仲直りですか?」


カナが首を傾げる。


「もしかして、レイと喧嘩した?」


「え、えっと、その……」


「相談に乗るわよ」


「ケーキ食べに行こー」


「ですね! 皆さんでケーキを食べましょう」


「そうよね」


結局、メルナは半ば強引に連れていかれた。


そして――。


「美味しい……」


「美味しい!!」


「美味しいです!」


ケーキ屋の店内。


テーブルの上には色とりどりのケーキが並んでいた。


メルナは久しぶりに、素直な笑顔を見せていた。


すると、ミリアがメルナの服の袖を引っ張る。


「ん?」


「……」


「……わ、分かったよぉ」


ミリアに促され、メルナは小さく息を吐いた。


「……私ね」


皆がメルナを見る。


「お兄ちゃんと喧嘩したんだ」


「やっぱり」


ルナが頷く。


「レイが原因なの?」


「違うよ」


メルナはケーキを見つめながら答えた。


「私が原因」


「……」


「私がお兄ちゃんを突き放して、それで喧嘩になった」


自嘲するように笑う。


「これが原因」


セニアが心配そうにメルナを見る。


「メルナちゃん……」


「その顔やめてよ」


メルナは苦笑した。


「私だとは思わなかった顔だね。ハハハ……」


そして、少しだけ目を伏せる。


「私は……仮面を被ってるから」


カナは何も言わず、ずっとメルナを見ていた。


やがて口を開く。


「メルナさんは……レイさんのことが嫌いなんですか?」


「ずっと嫌いだよ」


ルナの表情が一瞬だけ曇る。


「……でもさ」


メルナは続ける。


「これは完全に私のせい」


「どうしてですか?」


「私が勝手に怒って、勝手に突き放したから」


しばらく沈黙が続いた。


その中で、カナだけはメルナから目を逸らさなかった。


「……メルナさん」


「ん?」


「メルナさんがなぜレイさんを嫌いなのか、私にはまだ分かりません」


「……」


「でも」


カナは柔らかく微笑んだ。


「家族として。兄妹としてのレイさんは……好きなんじゃないですか?」


「ッ……!」


メルナの目が大きく開く。


「当たってますか?」


「な、何でそう思ったの……」


「私から見て、レイさんとメルナさんは、とても仲が良かったからです」


カナは静かに続ける。


「例えメルナさんが仮面を被ってレイさんと接していたとしても……私には、心の底から楽しんでいるように見えました」


「そ、それは……」


言葉が出てこない。


「仲直りしませんか?」


「……」


「心配しなくてもいいと思うよ」


ルナが笑う。


「私達もいるし」


「そうよ。私達も一緒にいるわ」


ミリアは何も言わず、メルナに抱きついた。


「わっ……!」


「レイ呼んでくる!」


「えっ!?」


ミリアが立ち上がる。


「ま、待ってよ!」


しかし――。


「レイー!」


ミリアは止まらない。


「……行っちゃった」


メルナは呆然とする。


カナは微笑んだ。


「私達もいますから、大丈夫ですよ」


「……うん」


メルナは小さく頷いた。


――しかし。


ミリアがレイたちのいる宿へ向かって走っていた、その途中。


「きゃっ!」


誰かとぶつかった。


「ご、ごめん……」


ミリアが顔を上げる。


そこにいたのは、四人組の冒険者だった。


「……こいつが、あいつと一緒にいたのか」


「そうっすよ」


男の一人がミリアを見る。


「エルフじゃねえか」


「へぇ……」


男たちの視線がミリアに集まる。


ミリアは一歩後ろへ下がった。


「や、やめて……」


一人の男が前へ出る。


「俺の名前はカイネル。このパーティーのリーダーだ」


カイネルは笑った。


「少し付き合ってもらうぞ」


「いや……!」


ミリアの腕を掴む。


「離して!」


「大人しくしてろ」


ミリアが必死に抵抗する。


「痛い!」


その声を聞いても、カイネルは手を離さない。


「お前、あのガキと一緒にいるんだろ?」


「……」


「それに、あいつは俺達に恥をかかせた」


カイネルの顔から笑みが消える。


「ずっと復讐する機会を待ってたんだよ」


「……!」


ミリアの顔が青ざめる。


「近くにあいつの妹みたいな奴が、友達と一緒にいるのを見ました」


「本当か?」


「はい」


カイネルが笑う。


「そいつらも巻き込むか」


ミリアの背中に冷たいものが触れる。


「大人しくしろ」


「うっ……」


「抵抗したら、この子がどうなるか分からないぞ」


「……!」


ミリアは動けなくなった。


そして――。


カイネルたちは、ミリアを連れてメルナたちのところへ戻った。


「ミリアちゃん?」


カナが立ち上がる。


「どうしたんですか……?」


ルナが男たちを見る。


「そこの男達、誰〜?」


セニアも首を傾げる。


「親戚……ではなさそうですわね」


その時。


カイネルがメルナを見る。


「……お前」


「え?」


メルナの顔が固まる。


「フィーアに絡んで、ボコボコにされた奴ら……!」


「覚えてたか」


カイネルが笑う。


「あの時のこと、本当に癪でよぉ」


「……!」


「ずっと復讐したくてな」


メルナは立ち上がりかける。


「ミリアちゃんを返して!」


「おっと」


カイネルがミリアの肩を掴む。


「動くな」


「……!」


カナが拳を握る。


「何を言ってるんですか!?」


「動いたら、この子に危害を加える」


カナは悔しそうに唇を噛み、ゆっくりと座った。


「……分かりました」


「分かってるじゃん」


ルナもセニアも、悔しそうに男たちを睨む。


「ミリアちゃんを返して」


「返して」


「だから――」


カイネルが笑う。


「黙って俺達について来い」


メルナが睨み返す。


「……ついて行ったら、ミリアちゃんを返してくれるの?」


「おう」


「……分かった」


メルナは拳を握った。


「行くよ」


「メルナさん……」


「大丈夫」


ミリアが涙を堪えながら呟く。


「ご、ごめん……皆……」


「大丈夫だよ」


メルナはそう言った。


そして四人は、カイネルたちに連れられて歩き始めた。


「どこに向かってるの?」


「グールダンジョン」


「グールダンジョン!?」


メルナが驚く。


「なぜ、ダンジョンへ?」


「いいからついてこい」


カイネルたちはそのままグールダンジョンへ向かった。


そして――。


ダンジョンの入口。


カナはふと、自分の隣を見た。


「……え?」


そこには、いつの間にかアカマルがいた。


「アカマルさん……!?」


驚きながらも、カナはすぐに状況を理解する。


「いつからいたんですか……」


しかし今は、それを聞いている場合ではない。


カナはカイネルたちに気付かれないよう、アカマルへ小さな声で話しかける。


「アカマルさん」


「ガウ」


「念のため、レイさん達に助けを呼んでもらえますか?」


アカマルが頷く。


「お願いしますね」


「ガウ」


アカマルはその場から静かに離れていった。


カイネルたちは気付いていない。


そして――。


「ほら、行くぞ」


一行はグールダンジョンへ入っていった。


中へ進むほど、魔物たちの姿が増えていく。


しかも――。


「……魔物、いつもより凶暴じゃない?」


メルナが呟く。


「関係ねぇよ」


カイネルが剣を抜く。


「こいつら程度ならな」


襲い掛かってきた魔物を、カイネルたちが次々と倒していく。


「雑魚いよなー」


「……」


メルナは黙って周囲を観察していた。


このダンジョンの魔物たちは、明らかにおかしい。


やがて、一行はダンジョンのかなり奥まで進んだ。


そして――。


突然、魔物の気配が消えた。


「……?」


カナが周囲を見る。


そこには何もいない。


「ここはセーフエリアだ」


カイネルが笑う。


「魔物が湧かない場所だ」


「……」


「それに、人もほとんど来ない」


メルナの表情が険しくなる。


「……何するつもり?」


「さぁな」


カイネルは不気味に笑った。


「ここまで来てもらったのは、復讐するためだ」


「……!」


メルナたちは警戒する。


「お前らは俺達より強い」


カイネルが続ける。


「だから、人質を取った」


ミリアが震える。


「でもな」


カイネルが剣を抜く。


「この状況なら、お前らも簡単には動けないだろ?」


「卑怯な……!」


ルナが睨む。


「最低よ」


セニアも怒りを露わにする。


「好きに言え」


カイネルは笑う。


「俺達は、お前らをここから逃がすつもりなんてねぇ」


メルナは拳を握り締めた。


――その時。


「……メルナさん」


カナが小さく呟く。


「私が囮になります」


「え?」


「これ以上、ミリアちゃんを危険な目に遭わせるわけにはいきません」


「ダメだよ!」


「でも……」


カナはメルナを見て、優しく微笑む。


「メルナさんは、レイさんと仲直りしなくちゃいけないんですから」


「……!」


「だから、ここは私に任せてください」


「カナちゃん……」


メルナの胸が締め付けられる。


――まただ。


また私は誰かに頼っている。


また誰かに助けてもらおうとしている。


「……ごめん」


メルナが俯く。


「何で謝るんですか?」


カナは笑った。


「私達は仲間でしょう?」


カイネルはカナを囮にした。


「でも、まだ癪だ」


カイネルはカナの服を剣で斬り裂いた

カナは胸部を腕で隠す



「ッ...!」


「いい体じゃねぇか!」


「上玉だなぁ!」


「それ以上はやめてよ!カナちゃんに!」


「うるさいなぁー」


「大丈夫ですよメルナさん」


カナはいつも通りの優しい微笑みを向ける


「カナちゃん...」


「絶対に許さない!」


メルナは拳を強く握る


その瞬間だった。


――ズンッ。


地面が揺れた。


「……え?」


全員が振り返る。


カイネルたちも動きを止めた。


「なんだ……?」


――ズシン。


また地面が揺れる。


そして。


カイネルたちの背後。


暗闇の中から――巨大な影が現れた。


「……オーク?」


メルナが目を見開く。


しかし、その姿は普通のオークとは違っていた。


身体は一回り大きく、目は赤く染まっている。


何より――。


そのオークから感じる魔力は、これまでとは比べものにならなかった。


「グォォォォォ……!」


低い咆哮がセーフエリアに響き渡る。


カイネルの顔から笑みが消えた。


「……おい」


男の一人が震えながら呟く。


「こいつ……」


メルナも静かに構える。


「……魔物がいない場所じゃなかったの?」


カイネルは答えられない。


なぜなら――。


そのオークが、ゆっくりとカイネルたちへ向かって歩き始めたからだ。


「グォォォ……!」


「……まずい」


メルナが目を細める。


「こいつ……私達だけじゃなく、全員を敵だと思ってる」


そして。


オークが拳を振り上げた。


「全員、避けて!!」


轟音とともに、地面が大きく揺れた。


――その頃。


グールダンジョンの入口では。


アカマルが全速力で走っていた。


向かう先は――レイ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。