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果てなき世界の物語!  作者: もちもち大福
第二章 夏休み編
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30話 未来視の戦い

翌日の朝。


レイはベッドの上で、布団に包まったまま微動だにしていなかった。


窓から朝日が差し込み、部屋の中を明るく照らしている。


しかし、レイはその光をものともせず、眠り続けていた。


「レイ様、起きてください」


フィーアがベッドの横に立ち、優しく声をかける。


「……まだ眠い」


「起きてください」


「眠すぎてやばい……」


「朝から何を言ってるんですか」


そのやり取りを見ていたメルナが、呆れたように笑う。


「お兄ちゃん、朝弱いね」


「おう」


「そこは否定しないんだ……」


フィーアは小さく息を吐くと、カーテンを開けた。


眩しい朝日が部屋いっぱいに差し込む。


「ほら、もう朝ですよ。朝食を食べて、準備しましょう」


「ん……」


レイはようやく身体を起こした。


メルナもベッドから立ち上がる。


「そうだね! 今日はダンジョン行くんでしょ?」


「そうですね。昨日、ラミールダンジョンへ行くことになりましたから」


三人は食堂へ向かった。


テーブルには、フィーアが用意した朝食が並んでいる。


焼きたてのパンに卵料理、スープ、そして色とりどりの野菜。


いつも通り、見ただけで食欲が湧いてくる。


レイは席に座ると、さっそく料理を口に運んだ。


「……うま」


フィーアは微笑む。


「ありがとうございます」


毎朝フィーアが作ってくれる朝食は、レイにとって夏休みの楽しみの一つになっていた。


そんな穏やかな朝食の途中、レイがふと思い出したように口を開く。


「そういえば、爺ちゃん今何してるか知ってるか?」


フィーアは少し考えてから答えた。


「確か、今は違う国へ交流に行っているはずです」


「同盟国になるためか?」


「はい。クラウス様はこの国の王からも認められている存在ですので」


「そうだったのか」


レイは意外そうに呟いた。


フィーアは続ける。


「クラウス様から色々と聞きましたよ、レイ様。忘却の楽園と戦ったんですよね」


「おう」


「クラウス様は、今後起こるかもしれない様々な危機に備えて、色々な国と協力するために動いているそうです。しばらくは戻らないでしょうね」


「お爺ちゃんらしいな」


レイは苦笑する。


クラウスがいないだけで少し寂しさはあるものの、世界のために動いているのだと思えば納得できた。


「何の話?」


メルナが料理を食べながら尋ねる。


「クラウス様の話です」


「お爺ちゃんね!」


メルナは嬉しそうに笑った。


「お婆ちゃんとも話したいな」


その言葉に、フィーアは優しく微笑む。


「そのうち、また話せますよ」


「だね」


三人の間に穏やかな空気が流れる。


そして、しばらくして――。


レイは食事を終えると、満足そうに椅子にもたれた。


「飯うま」


「満足しましたか?」


「めっちゃ満足」


「私もすごい満足!」


メルナも満足そうにお腹をさする。


フィーアは微笑みながら食器を片付けた。


「それでは、そろそろ準備してダンジョンへ行きましょうか。皆さんも待っていると思いますので」


「おう」


レイは立ち上がった。


そして、ふと思ったことを口にする。


「そういえば、フィーアってどう戦うんだ?」


メルナも興味津々にフィーアを見る。


「私も気になる!」


「前に『神速の双剣姫』って言われてたから、双剣か?」


フィーアは頷いた。


「はい。双剣ではありますが、正確には短刀ですね」


「短刀?」


「長い剣よりも、短刀を二刀流で使う方が私には動きやすいので」


「確かにフィーア速いもんな」


「ですよね!」


メルナも頷く。


フィーアは穏やかに笑った。


「では、実際に見ていただけるかもしれませんね」


「楽しみだな」


「私も!」


こうして三人はダンジョンへ向かう準備を始めた。


歯を磨き、着替えを済ませ、必要な荷物を確認する。


やがて準備を終えたフィーアが二人を見る。


「どうですか? 準備の方は」


「終わったよ」


「終わった!」


「では、行きましょうか」


レイはフィーアの姿を見て、少しだけ首を傾げた。


「フィーア、またメイド服で行くのか?」


「はい」


「いや、いいんだけど……なんていうか」


フィーアは自分の服装を見下ろす。


いつものメイド服。


武器を持ってダンジョンへ行くには、どう考えても普通ではない。


「全然大丈夫ですよ」


「フィーアなら大丈夫でしょ」


メルナも頷く。


「なら行くか」


「はい」


「うん!」


三人はラミールダンジョンへ向かった。


⸻


しばらくして――。


ラミールダンジョンの入口。


すでに仲間たちは集まっていた。


「レイ!」


ユージが手を振る。


「すまん、少し遅れた」


「許す!」


「おう」


相変わらず軽いやり取りだった。


アルスがダンジョンの入口を見る。


「早速行くのか?」


「だな」


ラウスもやる気満々だ。


「よし! 行こう!」


そこへカナたちも合流する。


「おはようございます!」


「早く行こ〜」


「行きましょう」


「うん!」


フィーアは全員を見渡した。


「それでは、どの階層まで行きますか?」


ユージが首を傾げる。


「どの階層?」


「はい。ダンジョンは階層によって出現する魔物が変わります。また、十層ごとにボスが現れます」


「へぇ……」


ルナが考える。


「どのくらいがいいと思う〜?」


「そうですね……十五層か二十層くらいなら、皆さんも良い戦いができると思いますよ」


レイは少し考えた。


「じゃあ、そこまで行こう」


「はい」


アルスも頷く。


「確かに良さそうだな」


カナも気合を入れる。


「頑張りましょう!」


「そうね」


セニアも頷いた。


こうして一行は、ラミールダンジョンの中へ入っていった。


⸻


「久しぶりの感じするなぁ」


ユージが周囲を見渡す。


「だな」


以前訪れたときとは違う感覚。


ダンジョン特有の冷たい空気が、全員を包んでいた。


フィーアが先頭に立つ。


「皆さん、私についてきてください」


「おう」


一行はフィーアについて進んでいく。


すると、途中で魔物が姿を現した。


「グルルル……!」


巨大な狼型の魔物が数体。


ユージが構える。


「来たか!」


しかし――。


シュッ!


一瞬だった。


フィーアの姿が消えたと思った次の瞬間。


魔物たちは全員、地面に倒れていた。


フィーアは何事もなかったかのように短刀をしまう。


「先へ進みましょう」


「……」


全員が固まる。


「速すぎじゃないか、フィーアさんの動き」


ユージが呆然とする。


「だ、だよな……」


レイも驚いていた。


ルナは目を輝かせる。


「かっこいい〜!」


カナも頷く。


「ですよね」


「参考になるわ……」


セニアまで真剣にフィーアの動きを見ていた。


ラウスは苦笑する。


「僕の加速でも勝てないね」


メルナは一言。


「強すぎ」


フィーアはそんな反応を気にすることなく歩き続ける。


「もうそろそろ十層です」


レイが前を見る。


「ってことはボスか」


「はい。十層にはボスがいます」


フィーアが振り返る。


「倒しますか?」


レイは皆を見る。


「どうする?」


「倒す!」


ユージが即答した。


「分かった」


「ちなみに、十層のボスはオークゴブリンですね」


アルスが笑う。


「なら余裕だな」


一行が十層へ到着すると――。


ズシン……。


地面が揺れた。


巨大な二体のオークゴブリンが現れる。


それぞれが巨大な斧を手にしている。


「……二体か」


カナが一歩前へ出た。


「私が戦ってもいいですか?」


レイはすぐに頷く。


「いいぞ」


「おう!」


ユージも応援する。


「頑張って〜」


「カナちゃんなら余裕だわ」


レイはカナを見る。


その横で、フィーアが少し心配そうに尋ねた。


「本当にいいんですか? カナさんを一人で。オークゴブリンとはいえ、ボスです。思っているより強いですよ」


「カナが一人で行きたいって言ったしな」


レイは冷静に答える。


「それに、何かあったらすぐ倒せる位置にいるだろ」


「……確かに」


フィーアも納得する。


レイはカナから目を離さない。


「それに、未来視も見てみたいしな」


カナは少しだけ笑った。


「はい!」


カナがオークゴブリンの前に立つ。


大きく息を吸う。


そして――。


「未来視」


カナの瞳が変わる。


次の瞬間。


オークゴブリンが巨大な斧を振り回した。


ブォン!


カナは紙一重で避ける。


しかし――。


もう一体のオークゴブリンが、カナの背後へ回っていた。


巨大な斧が振り下ろされる。


「カナちゃん!」


メルナが叫ぶ。


「流石にあれは避けれないよ!」


だが、レイは落ち着いていた。


「いや、避けれるな」


カナはまるで背後が見えているかのように身体を横へ滑らせた。


斧が空を切る。


「なっ……!」


メルナが驚く。


カナはそのままオークゴブリンとの距離を取った。


「大分、使えるようになれました!」


「今の避けれるの!?」


「普通なら難しいかもな」


レイは感心したように言う。


「未来視で次の攻撃を見てるんだろ」


「はい!」


カナは頷く。


「少し先の未来が分かるので、攻撃される前に動けます!」


「なるほど……」


アルスも興味深そうに見ている。


カナは二体のオークゴブリンを見据えた。


「では、次は私から行きます!」


カナが魔力を集中させる。


「炎魔法――ファイアーローズ!」


カナの周囲に、無数の炎の薔薇が咲く。


炎の薔薇は一斉にオークゴブリンへ向かって飛んでいった。


「グオオオオ!」


無数の炎がオークゴブリンを包み込む。


次の瞬間――。


ドォン!


炎が一斉に爆発した。


一体のオークゴブリンがその場に倒れる。


「あと一体!」


残ったオークゴブリンが怒り狂ったように斧を振り回す。


しかし――。


カナには、その動きが見えていた。


右。


左。


上。


斜め。


すべての攻撃を、カナは最小限の動きで避けていく。


「すごい……」


メルナが呟く。


ユージも目を見開いていた。


「完全に攻撃を読んでるじゃん……」


カナは攻撃を避けながら、魔力を集中させる。


そして――。


「炎魔法――フレイムバースト!」


カナが地面へ手を向ける。


オークゴブリンの真下から巨大な炎が噴き上がった。


「グオオオオオッ!」


炎が勢いよく弾ける。


オークゴブリンはそのまま倒れた。


静寂が訪れる。


カナはゆっくりと振り返った。


「倒しました!」


レイは素直に感心する。


「強いな」


「凄いよ〜! カナちゃん!」


「めっちゃカッコよかったわ!」


セニアも笑顔になる。


「すごい……」


メルナも驚いていた。


「めっちゃカッコよかったなぁ!」


ユージも興奮気味だ。


「参考になった」


アルスも頷く。


「僕にはあんな動きできないな……」


ラウスも苦笑する。


フィーアは満足そうに頷いた。


「完璧です」


「えへへ……」


カナは嬉しそうに笑う。


「先に行きましょう!」


「はい」


再び一行は歩き始める。


ユージは先ほどの戦いを思い返していた。


「まじですごかったなぁ、あの動き」


「そうだな」


レイも頷く。


「魔力操作だけなら、ユージより上手いぞ」


「だよな!」


ユージが即答する。


「……なんでそこで嬉しそうなんだよ」


「いや、俺より上手いって認めてもらったから!」


「競うところそこじゃないだろ」


レイが呆れる。


そんな二人を見ながら、カナがレイに尋ねる。


「レイさん、どうでしたか?」


レイは少し考えてから答えた。


「すごい成長だ」


「本当ですか?」


「ああ」


レイは先ほどの戦いを振り返る。


「魔力で身体強化しつつ、未来視で敵の攻撃を避ける。かなり相性がいい」


「ありがとうございます!」


「近接戦の方が似合うと思うぞ」


「そうですか?」


「おう」


レイは頷く。


「でも、魔法も良かったな」


「はい!」


カナの表情が一気に明るくなる。


その様子を後ろから見ていたルナが、セニアたちに小声で話しかける。


「セニアちゃん、メルナちゃん、フィーアちゃん……あれ、いい感じだよね〜」


「ええ。めっちゃいい感じね」


セニアも楽しそうに笑う。


「すごい仲いい……」


メルナも二人を眺める。


フィーアは微笑みながら頷いた。


「もしかしたら、私たちが協力しなくても大丈夫そうですね」


「かもね〜」


ルナが笑う。


一方、そんな会話が後ろで行われていることなど知らず――。


レイとカナは、ダンジョンの奥へ向かって歩いていた。


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