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果てなき世界の物語!  作者: もちもち大福
第二章 夏休み編
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28/73

28話 女子会

夏休み。


レイの家では、いつもとは少し違った時間が流れていた。アルス、ユージ、ラウスが話していた


「……暇だな」


ベッドに寝転がりながら、レイは天井を見つめていた。ユージ達も寝転がっていた


その頃。


レイの部屋から少し離れた場所にある、ルナの部屋では――。


「女子会~~!」


ルナが両手を上げて宣言していた。


部屋の中央にはテーブルが置かれ、その上には色とりどりのケーキや紅茶が並んでいる。


集まっているのは、ルナ、カナ、セニア、メルナ、そしてフィーア。


さらに――。


「クゥン」


アカマルもいた。


「はいはい、アカマルちゃんもこっちね~」


ルナがアカマルを自分の隣へ呼ぶ。


しかしアカマルは少し考えた後、メルナの方へ歩いていく。


「えっ、そっち!?」


「ふふ」


メルナが笑いながらアカマルを抱き上げる。


「アカマルちゃんは私がもらった」


「ガウ」


「裏切られた~!」


ルナが大げさに嘆く。


その様子を見ていたカナはクスクスと笑った。


「アカマルさん、人気ですね」


「本当にそうね」


セニアも微笑む。


「こんなに可愛ければ当然ですわ」


フィーアは紅茶を注ぎながら、静かに頷いた。


「レイ様の自慢の相棒ですからね」


「レイが自慢してるところ、あんまり見たことないけど」


メルナが言う。


「兄さん、そういうの表に出さないから」


「確かに~」


ルナがケーキを一口食べる。


「……うん! 美味しい!」


「美味しいですね」


カナもケーキを食べながら頷く。


「このケーキ、どこのものなんですか?」


「街で買ってきたのよ」


セニアが答える。


「せっかくの女子会ですもの。少しくらい豪華にしてもいいでしょう?」


「さすがセニアちゃん~」


ルナが笑う。


「それじゃあ――」


ルナはケーキを置き、皆を見渡した。


そして――。


「今回の議題は!」


大きく息を吸う。


「カナちゃんとレイのくっつけ作戦~~!」


「……え?」


カナの動きが止まった。


「素晴らしい議題よ」


セニアが即座に賛成する。


「か、カナちゃんがお兄ちゃんのこと!?」


メルナが驚いたように目を見開く。


フィーアも少し考えた後、納得したように頷いた。


「そういうことですか。全面的に協力しますよ」


「ルナちゃん何言ってるんですか!」


カナの顔が一気に赤くなる。


「まぁまぁ~」


ルナは楽しそうに笑う。


「せっかく女子だけで集まったんだから、こういう話しようよ~」


「作戦よね」


セニアが真剣な顔をする。


「どうすればレイがカナちゃんの気持ちに気づくか。これはかなり重要な問題ですわ」


「お兄ちゃん、鈍感だからなぁ……」


メルナが腕を組む。


「本当にそうよね」


セニアも頷く。


「かなり鈍感ですわ」


「そうですね」


フィーアまで同意する。


「皆さん……」


カナは困ったような顔をする。


「レイ様は、人の気持ちに鈍感というより……自分に向けられているものに気づきにくいところがあります」


「それを鈍感って言うんじゃない?」


メルナが言う。


「確かに」


フィーアが頷く。


「じゃあ、まずは兄さんの好みを調べよう」


メルナが言った。


「好み?」


カナが首を傾げる。


「どんな女の子が好きなのか知れば、作戦を立てやすいでしょ」


「なるほど~」


ルナが身を乗り出す。


「フィーアはずっとお兄ちゃんと一緒だったんでしょ?」


「はい」


「何か分かることない?」


フィーアは少し考える。


「レイ様の好みですか……」


「うん!」


「そうですね……」


フィーアは思い返すように目を閉じる。


「髪が長い人が好きかと」


「へぇ~」


メルナの目が輝く。


「お兄ちゃん、ロングがタイプなんだ」


「恐らくです」


「何でそう思ったの?」


「奥様からの質問攻めに、一度だけ答えていました」


「ナイスお母さん!」


メルナが拳を握る。


「お母さん、そこだけは仕事してる!」


「そこだけって……」


カナが苦笑する。


セニアはカナを見る。


「ロングが好きなら、カナちゃんは大丈夫ね」


「え?」


「もうロングでしょう?」


「そ、それは……」


カナが自分の髪に触れる。


「そうですけど……」


「だね~」


ルナも頷く。


「第一条件クリア!」


「第一条件って何ですか!」


カナが慌てる。


「じゃあ次は性格かな」


メルナが続ける。


「お兄ちゃんはどういう性格の人が好きなんだろう」


「優しい人では?」


フィーアが答える。


「レイ様は昔から、困っている人を放っておけない方でしたから」


「それならカナちゃんも大丈夫ね」


セニアが即答する。


「カナちゃん、優しいもの」


「そ、そうですか……?」


カナはさらに顔を赤くする。


「それに――」


フィーアが続ける。


「レイ様は、自分のことより他人を優先する方ですから。自分の弱いところを受け止めてくれるような人とは、相性がいいかもしれません」


「……」


カナが黙る。


ルナがニヤッと笑う。


「カナちゃん、今ちょっと嬉しかったでしょ~?」


「嬉しくないです!」


「顔赤いよ?」


「暑いだけです!」


「部屋、涼しいけど」


「……」


カナは何も言えなくなった。


メルナが笑う。


「これは分かりやすいなぁ」


「メルナちゃんまで……」


「ごめんごめん」


メルナは笑いながら謝る。


しかし、すぐに真剣な表情へ戻った。


「でも問題は、お兄ちゃんがアプローチしても気づかないことだよなぁ」


「そうね」


セニアが腕を組む。


「普通なら気づくようなことでも、レイは気づかないでしょうね」


「そうですね」


フィーアも頷く。


「ですから、少し分かりやすくする必要があるかもしれません」


「分かりやすく……」


カナが呟く。


「たとえば?」


ルナが考える。


「隣に座る!」


「いつも座ってますよ」


「じゃあ、いっぱい話す!」


「それも……結構しています」


「じゃあ――」


ルナは少し考え込む。


「……もっとガンガン行こ~!」


「む、無理です!」


カナが即座に答える。


「どうして?」


「恥ずかしいです……」


「カナちゃん、かわいい~」


ルナが笑う。


「でも、本当にガンガン行かないとレイには伝わらないと思うよ」


メルナも頷く。


「あの鈍感なお兄ちゃんでも、ガンガン行けば流石に気づくよ」


少し間を置いて。


「……気づくよね?」


メルナが不安そうに尋ねる。


フィーアは少し考えた。


「どうでしょうかね」


「えぇ……」


「レイ様ですから」


「それはそうだけど……」


セニアも腕を組む。


「難しく思えてきたわ」


「むぅ……」


カナは頬を膨らませる。


その姿を見て、メルナが笑う。


「カナちゃん、どうぞ」


メルナは膝の上にいたアカマルをカナへ渡した。


「え?」


「ほら」


「ありがとうございます」


カナはアカマルを受け取る。


「アカマルさん」


「クゥン」


カナはアカマルを優しく抱きしめる。


「ふわふわですね」


「ガウ……」


アカマルは気持ちよさそうに目を細めた。


「可愛い~」


ルナも頭を撫でる。


「アカマルちゃんって、本当に皆に懐いてるよね」


「兄さんのところから離れても平気なんだ」


メルナが言う。


「レイが寂しがるかもね」


「……それはないと思います」


カナが笑う。


「レイさん、アカマルさんが戻ってくるまで普通に待ってそうです」


「確かに」


セニアが笑う。


「レイらしいわ」


しばらく皆でアカマルを撫でていると、ふとメルナが思い出したように尋ねた。


「そういえば――」


メルナがカナを見る。


「ユージさん達は、カナさんの気持ち知ってるんですか?」


「ユージは知らないよ~」


ルナが答える。


「アルスさんは?」


「知ってるわ」


セニアが答えた。


「ユージに伝えたら暴れそうだったから、教えなかったけど」


「暴れる?」


メルナが首を傾げる。


「きっと大声で騒ぐでしょうね」


フィーアが苦笑する。


「『マジかよ!』とか言いそうです」


「めっちゃ想像できる」


メルナが笑う。


「アルスは堅実だからね~」


ルナが言う。


「そうね。アルスなら余計なことをせず、ちゃんと協力してくれそう」


セニアも頷く。


フィーアが紅茶を一口飲む。


「それなら、彼にも手伝ってもらう方がいいかもしれませんね」


「だね!」


メルナが頷く。


「特に――」


フィーアは少し考える。


「私たちでは聞きにくいことを聞いてもらうのがいいでしょう」


「聞きにくいこと?」


カナが恐る恐る尋ねる。


「レイ様の好みなどです」


「……」


カナの顔が再び赤くなる。


「それは……」


「いいですわね!」


セニアが乗ってくる。


「男性同士なら、そういう話もしやすいでしょう」


「確かに~」


ルナも笑う。


「アルスならレイに自然に聞けそう」


「ユージさんは?」


メルナが尋ねる。


「ユージはダメ」


ルナとセニアが同時に答えた。


「なんで!?」


メルナが笑う。


「絶対余計なことまで聞くから」


「そして絶対大声で言うでしょうね」


「……なるほど」


メルナも納得した。


「じゃあアルスさんに決定!」


「勝手に決めて大丈夫なんですか……?」


カナが困ったように言う。


「大丈夫大丈夫~」


ルナが笑う。


「カナちゃんのためだよ~」


「うぅ……」


カナはアカマルを抱きしめる。


「クゥン……」


「アカマルさん……」


「慰めてるのかな?」


メルナが笑う。


「優しいね」


カナはアカマルの頭を撫でる。


「ありがとうございます……」


アカマルは気持ちよさそうに目を閉じた。


「それじゃあ、次は――」


ルナが再びケーキへ手を伸ばす。


「どうやってレイにカナちゃんを意識させるか!」


「まだやるんですか!?」


「もちろん!」


「女子会ですもの」


セニアも楽しそうに笑う。


「とことん話し合いましょう」


「私も協力するよ」


メルナも笑う。


フィーアも頷く。


「私もできる限りお手伝いします」


「皆さん……」


カナは恥ずかしそうにしながらも、少しだけ笑った。


「……ありがとうございます」


その後も女子会は続いた。


レイが好きそうなもの。


レイが苦手そうなもの。


どうすれば自然に二人きりで話せるか。


そして、どうすればレイの鈍感さを突破できるのか。


様々な案が飛び交った。


しかし――。


「……これ、本当にレイさん気づきますかね?」


カナが最後に呟く。


「……」


全員が黙った。


「難しいかもね」


ルナが苦笑する。


「やっぱり?」


「でも、諦める必要はないわ」


セニアが言う。


「作戦はまだ始まったばかりよ」


「そうそう!」


メルナも頷く。


「お兄ちゃんが鈍感なら、私たちが頑張ればいいんだよ」


「……はい」


カナは小さく頷いた。


そして、アカマルを抱きしめる。


「頑張ります……!」


「ガウ!」


アカマルも元気よく鳴いた。


「アカマルちゃんも応援してる~」


ルナが笑う。


そんな賑やかな時間も、やがて終わりを迎える。


フィーアが時計を見る。


「そろそろレイ様の部屋に戻りましょうか」


「だね~」


ルナが立ち上がる。


「楽しかった~!」


「私もよ」


セニアも立ち上がる。


メルナはカナからアカマルを受け取った。


「じゃあ、アカマルちゃん。お兄ちゃんのところに帰ろうか」


「クゥン」


「ほら、行こう」


「ガウ」


五人と一匹は部屋を出る。


廊下を歩いていると――。


「……そういえば」


メルナが呟く。


「お兄ちゃん、今何してるんだろう?」


「寝てるんじゃない?」


ルナが答える。


「ありそう」


セニアが笑う。


フィーアは少しだけ苦笑した。


「おそらく、何も知らずにのんびりしているでしょうね」


「……」


カナが黙る。


そして――。


「……それはそれで、レイさんらしいですね」


小さく笑った。


女子たちは知らない。


このとき部屋の中で呑気に寝転がっているレイが――。


自分についてどんな作戦会議が行われているのか、何一つ知らないことを。


そして


「レイ様の鈍感さをどう攻略するか」


その議題だけは、まだ終わっていなかった。

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