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果てなき世界の物語!  作者: もちもち大福
第二章 夏休み編
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24/77

24話 夏休み

次の日。


レイが学園へ向かうと、いつものように授業が始まる――はずだった。


しかし、教室へ向かっている途中。


「レイ、ユージ、アルス。ちょっと学園長室まで来てくれ」


教師からそう告げられた。


「俺たちが?」


レイは少し首を傾げる。


昨日のこともあって、まだ何か問題が残っているのだろうか。


三人はそのまま学園長室へ向かった。


扉を開けると、そこにはクウガもいた。


「お、来たか」


「クウガも呼ばれてたのか」


「ああ」


全員が揃ったところで、学園長であるクラウスが口を開く。


「まずは……昨日のこと、ありがとうなのじゃ」


クラウスはいつもの穏やかな表情で頭を下げた。


ユージは慌てて手を振る。


「いえいえ! そんな、頭を下げなくても!」


アルスも続ける。


「これで、あいつを無力化できたならいいんです」


そしてクウガも深く頭を下げた。


「こちらこそ、仲間の感情を取り戻してくださり、ありがとうございました」


「気にすんなって」


レイが軽く答える。


昨日、クラウスはゼファーから奪い返した《シーフロード》を使い、生徒たちの失われていた感情を少しずつ取り戻していた。


しかし――。


「じゃがな」


クラウスの表情が少し曇る。


「まだ記憶が戻っていない生徒もおる」


「……記憶はまだか」


レイが呟く。


感情を取り戻すことはできても、奪われた記憶まで完全に戻ったわけではない。


ゼファーが持っていた能力。


《忘却》。


その力によって奪われた記憶が、まだ戻っていない


「それでも、前には進めている。焦る必要はないのじゃ」


クラウスはそう言って、話題を変えた。


「ところでクウガ。昨日、お主が聞いていたことじゃが――これからの学園について話そうかの」


「はい」


クウガが姿勢を正す。


「今回の襲撃で、学園側は防衛体制を大幅に見直すことになった」


クラウスは机の上に置かれた書類へ目を落とす。


「それだけではない。闘技場の修復、破壊された学園施設の修理……やることが山ほどある」


「結構壊れてましたもんね」


アルスが苦笑する。


「ああ。じゃから――少し早いが、夏休みにしようと思っておる」


「え?」


三人が同時に反応した。


「夏休み?」


「そうじゃ」


クウガが驚いたように目を丸くする。


「そ、そうですか……」


「すまんのぉ。学園側の都合で休みを早めてしまって」


するとユージが手を挙げた。


「学園長!」


「なんじゃ?」


「休みの間も学園に来ちゃダメですか?」


「修復作業も行うからのぉ。工事中の場所も多い。入るのは危険じゃ」


「そうですかぁ……」


ユージがあからさまに肩を落とした。


「そんなに学園が好きなのか、お前」


レイが呆れたように言う。


「いや、暇になるだろ!」


「それは知らん」


「冷たっ!」


アルスが苦笑する。


「まぁ、仕方ないだろ。学園長も俺たちの安全を考えてるんだから」


「そうですよ!」


クウガも頷く。


「休めるなら、しっかり休みましょう」


「そうじゃそうじゃ」


クラウスが笑う。


「ちなみに、休みはいつからなんですか?」


アルスが尋ねる。


「一週間後から休みにするつもりじゃ」


「……一週間後?」


レイが聞き返す。


「まじか」


「すまんのぉ」


「いや、別にいいけど」


ユージが笑顔になる。


「学園長は悪くないので大丈夫です!」


「そうですよ! 気にしたらダメです!」


クウガも笑う。


「ありがとうのぉ」


クラウスは嬉しそうに目を細めた。


こうして、学園は一週間後から夏休みに入ることになった。


◆


その後。


四人はそれぞれの教室へ戻った。


席についたユージが、机に突っ伏す。


「早めの夏休みかぁ……」


「嬉しくないのか?」


レイが聞く。


「いや、嬉しいよ?」


ユージは顔を上げる。


「でもなぁ……」


「暇だなぁ」


「結局それかよ」


アルスが呆れる。


「まぁ、これに関してはしょうがない」


「だよなぁ」


そんな会話をしながら、レイはふと思い出した。


「……そういや」


「どうした?」


「ガイムはどうなったんだ? あの後」


ユージとアルスも顔を見合わせる。


「あいつなら、ゼファーと同じで牢獄に入ってるはずだ」


アルスが答えた。


「そうなのか」


「うん」


ユージが驚く。


「あいつもか!」


「まぁ、俺たちが倒したんだからな」


「そうか」


レイは短く答えた。


脳裏に、あの戦いが蘇る。


ガイムは敵だった。


だが最後には、敵としてではなく、一人の戦士としてレイと向き合った。


「……また会うこと、あるかな」


レイが小さく呟く。


「ん?」


「いや、なんでもない」


そのとき――。


「レイさん!」


聞き慣れた声がした。


振り返ると、カナたちがこちらへ歩いてきていた。


「レイさん! 大丈夫でしたか?」


カナが心配そうに尋ねる。


「大丈夫だった」


レイは少し間を置く。


「……まぁ、疲れたけど」


「やっぱり疲れてるんですね」


カナはそう言うと、何かを取り出した。


「これ、食べます?」


「……何それ」


「シュークリームです!」


カナが差し出した。


レイの目が少しだけ輝く。


「食べたい」


「どうぞ!」


レイは受け取ると、一口食べる。


「……美味い!」


「よかったです!」


カナが嬉しそうに笑った。


その様子を見ていたユージが口を挟む。


「いいなぁ、レイ」


「お前も欲しいのか?」


「いや、俺は昨日食べたからいい!」


「ならいいだろ」


「そうだけど!」


カナが笑いながらユージとアルスを見る。


「ユージさんとアルスさんも大丈夫でしたか?」


「大丈夫!」


ユージが胸を張る。


「俺ら、グリードに再戦して勝ったんだぁ!」


「そうだな」


アルスも頷く。


「俺たちも大丈夫だ」


「よかったです」


そこへルナとセニアもやって来る。


「帰ってきてたんだ~」


ルナが手を振る。


「お帰りなさい」


セニアも穏やかに微笑んだ。


「ただいま」


レイはそう答える。


昨日まで死闘を繰り広げていたとは思えないほど、いつもの日常が戻ってきていた。


◆


それから一週間。


いつもの授業を受け。


放課後には皆で遊び。


時には訓練をして。


そして――あっという間に一週間が経った。


夏休み前、最後の日。


教室では担任のローベルが生徒たちへ向かって話していた。


「明日から夏休みが始まる」


教室から小さなどよめきが起こる。


「嬉しいからといって、くれぐれも羽目を外しすぎないように」


「はい!」


ユージが元気よく返事をする。


ローベルは苦笑しながら続けた。


「それから……言うのが遅くなったが」


ローベルがレイたちを見る。


「ユージ、アルス、レイ」


三人の名前を呼ぶ。


「よくやってくれた」


教室が静かになる。


「今回の件は、お前たちにとって決して簡単なことではなかっただろう。それでも、よく戦った」


レイは少しだけ目を伏せる。


「……はい」


ユージは照れくさそうに笑い、アルスも静かに頷いた。


「それじゃあ、夏休み前の最後のホームルームを終える」


ローベルはそう言って教室を出ていった。


扉が閉まる。


すると――。


「レイ」


ユージが声をかける。


「何だ?」


「夏休みの予定はあるかぁ?」


「ないな」


即答だった。


「だよなぁ!」


ユージが笑う。


「なら遊ぼうぜ!」


「考えとく」


「なんでだよ!」


アルスが笑いながら口を挟む。


「俺も遊ぶぞ」


「もちろんだ!」


そこへルナも入ってくる。


「私達も~」


カナも頷く。


「はい!」


「私もよ」


セニアが言う。


「まぁ、実家には帰らなきゃいけないけど」


「そうだった!」


ルナが思い出したように言う。


「セニアちゃん、大貴族だもんねぇ~」


「グランヴェール家、肩書だけよ」


「それが凄いんだって~」


「そんなことないわ」


セニアは苦笑する。


その様子を見ながら、レイは窓の外を見る。


こうしてレイ達の夏休みが始まった。

夏休み編突入!

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