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果てなき世界の物語!  作者: もちもち大福
第一章 始まり
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21話 祭壇

レイたちは、黄昏の城へ向かっていた。


今回の目的は明確だ。


ゼファーの拠点である黄昏の城へ侵入し、奪われた生徒たちの感情と記憶を取り戻す。


そして――。


奈落の悪魔の復活を阻止する。


先頭を歩くのはクラウス。


その少し後ろにレイ、ユージ、アルス、クウガが続き、レイの隣には小さな姿になったアカマルが歩いていた。


アカマルは時折、周囲を見渡している。


普段の穏やかな様子とは違う。


どうやら、何かを警戒しているらしい。


「……なあ、アカマル」


「ガウ?」


「さっきからずっとキョロキョロしてないか?」


「グゥ……」


アカマルは森の奥へ視線を向ける。


レイもそちらを見る。


しかし、何も見えない。


「何かいるのか?」


「……ガウ」


アカマルが小さく唸った。


その直後――。


ガサッ。


茂みが揺れた。


「来るぞ!」


クラウスが振り返った瞬間、木々の間から数体の魔物が飛び出してきた。


狼のような姿をした魔物。


鋭い牙を剥き出しにし、一斉にレイたちへ襲いかかる。


「魔物か!」


ユージが雷を纏う。


しかし、その前に――。


「ガウッ!」


アカマルが前へ飛び出した。


小さかった身体が、一瞬で大きくなる。


ドンッ!!


地面を揺らすほどの巨体へ変化したアカマルが、魔物たちの前に立ちはだかった。


「おお……」


アルスが思わず声を漏らす。


「アカマル、やれ!」


「ガウッ!!」


アカマルが咆哮する。


その一声だけで、魔物たちが怯む。


そしてアカマルが地面を蹴った。


一瞬。


次の瞬間には、魔物たちが吹き飛ばされていた。


「……相変わらずすげぇな」


ユージが呆れたように呟く。


アカマルは何事もなかったかのようにレイのところへ戻ってくる。


そして再び小さな姿になった。


「助かったよ、アカマル」


「ガウ」


レイが頭を撫でる。


そのまま一行は進み続けた。


森を抜ける。


次に現れたのは、深い渓谷だった。


一本の古い橋が、谷を横切っている。


「……これはまた、随分と古い橋じゃな」


クラウスが橋を見る。


「これ渡るの?」


ユージが不安そうに聞く。


「他に道はないようじゃな」


「嫌な予感しかしないんだけど……」


ユージが一歩踏み出した瞬間。


――バキッ。


橋の木材が軋んだ。


「……」


ユージが動きを止める。


「今の聞いた?」


「聞こえたな」


アルスが答える。


「帰ろうぜ」


「帰るな」


クラウスが即答した。


「ですよねー」


一行は慎重に橋を渡っていく。


アカマルはレイの後ろを歩きながら、何度も谷底を覗き込んでいた。


すると――。


谷底から巨大な影が飛び上がった。


「なんだ!?」


巨大な鳥型の魔物が、一行へ襲いかかる。


クウガが刀へ手を伸ばす。


しかし――。


「任せろ!」


ユージが雷を纏って跳躍した。


「雷豪!」


空中で雷を爆発させる。


魔物はそのまま吹き飛ばされ、谷の向こうへ消えていった。


「やるじゃん、ユージ」


「まあな!」


少し得意げになるユージ。


「……でも、まだまだじゃな」


クラウスが笑う。


「なんで!?」


そんなやり取りをしながらも、一行は歩き続けた。


やがて――。


景色が変わった。


森が消えた。


空が暗くなっていく。


まだ夕方にもなっていない。


それなのに、辺りはまるで夜のように薄暗い。


「……ここからか」


レイが呟く。


クラウスが頷く。


「黄昏領域じゃ」


空気が重い。


魔力が濃い。


そして――。


霧が出始めた。


最初は薄かった。


だが、一歩進むごとに濃くなっていく。


「クラウスさん」


クウガが声をかける。


「なんじゃ?」


「この霧……普通じゃないですよね」


「その通りじゃ」


クラウスが周囲を見回す。


「ここから先は、絶対に儂から離れるな」


「分かりました」


クウガが頷く。


レイも周囲を見る。


数メートル先すら見えない。


「これじゃあ、道が分からないな」


「だからこそじゃ」


クラウスが答える。


「黄昏の城は、この霧に隠されておる。迷えば二度と戻れん可能性もある」


「……怖いこと言うなよ」


ユージが苦笑する。


その時だった。


アカマルが立ち止まった。


「……グルル」


「アカマル?」


レイが振り返る。


アカマルは霧の奥を睨みつけていた。


「何かいるのか?」


「ガウ……」


霧の中から――。


巨大な影が現れた。


四足歩行。


しかし、その身体は通常の魔物とは違う。


全身が黒い霧のようなもので覆われている。


「……霧の魔物か」


クラウスが呟く。


魔物が咆哮する。


その瞬間、周囲の霧が一気に動いた。


「来るぞ!」


アルスが刀を抜く。


魔物が突っ込んでくる。


しかし――。


「ガウッ!!」


アカマルが前へ出た。


激突。


轟音が響く。


アカマルと魔物が押し合う。


「アカマル!」


レイが叫ぶ。


アカマルがさらに力を込める。


そして――。


「ガァァァッ!!」


魔物を地面へ叩きつけた。


地面が大きく揺れる。


レイが走り出す。


「俺も!」


剣を抜く。


炎が刃を包む。


「焔纏い!」


一閃。


魔物を炎が包み込む。


魔物は霧となって消えていった。


「……倒したか」


レイが剣を収める。


アカマルも小さな姿に戻った。


「ありがとな」


「ガウ」


再びレイの隣に戻る。


そして――。


霧の向こうに、巨大な影が浮かび上がった。


レイが目を細める。


「……あれは」


クラウスが静かに答える。


「黄昏の城じゃ」


霧の向こう。


巨大な城が姿を現した。


壁は黒く染まり、空へ向かって伸びる塔。


窓は一つも明かりがなく、まるで城そのものがこちらを見ているようだった。


「……ここか」


レイが呟く。


クラウスが城を見上げる。


「ここからが本番じゃ」


一行は城へ近づいていく。


そして――。


クラウスが足を止めた。


「ここじゃな」


霧に包まれている城を見つめる。


「皆、絶対に儂から離れるなよ」


「分かりました」


クウガが頷く。


レイも頷く。


「行こう」


アカマルも「ガウ」と小さく鳴いた。


そして――。


六人は黄昏の城へ侵入した。


「……広いな」


城の中を見渡し、レイが呟く。


外から見た以上に広い。


長い廊下。


高い天井。


左右には無数の扉。


しかし、人の気配はない。


「そうじゃな」


クウガが周囲を警戒する。


「だからこそ離れるでない。一人のところを狙われるからな」


一行は慎重に城の奥へ進んでいく。


進めば進むほど――。


壁が変化していった。


白かった壁が、黒く染まっていく。


まるで何かに侵食されているようだった。


「……なんだよ、これ」


ユージが壁を見る。


アルスも表情を険しくする。


「禍々しい魔力だな」


そして――。


一つの広間へ辿り着いた。


そこには祭壇のようなものがあった。


祭壇の周囲には黒い魔力が渦巻いている。


空気そのものが重い。


息を吸うことすら忘れてしまいそうになる。


「……っ」


ユージが息を詰まらせる。


「な、何だよこの圧……」


アカマルも身体を低くし、祭壇へ向かって激しく威嚇している。


「グゥルルル……」


「アカマル?」


レイがアカマルを見る。


しかしアカマルは答えない。


ただ祭壇を睨み続けている。


クラウスが静かに口を開いた。


「……奈落の悪魔じゃ」


「……!」


全員がクラウスを見る。


「奈落の悪魔が封印されておる」


「こ、ここに封印されているのか……」


アルスの声が震える。


クウガも祭壇を見つめる。


「ふ、封印されててもこの圧……」


その時――。


コツ……。


コツ……。


背後から、足音が聞こえた。


全員が振り返る。


クラウスが目を細める。


「……おでましのようじゃ」


霧の向こうから、一人の男が歩いてくる。


服はボロボロ。


身体にも傷が残っている。


それでも、その目だけは死んでいなかった。


ゼファーだった。


「……攻めに来たか」


クラウスが前へ出る。


「感情を盗む魔道具をよこせ。あと、生徒の記憶を返せ」


ゼファーは笑う。


「できないな!」


その視線が祭壇へ向く。


「アビス様に感情をあげないといけないからな!」


「そうはさせない」


クラウスが構える。


ゼファーの表情が歪む。


「あと少しなんだ……!」


そして叫ぶ。


「どけーー!」


クラウスが一歩前へ出る。


「皆、いくぞ」


「おう」


レイが剣を構える。


「すぐ倒そう」


ユージが雷を纏う。


「そこをどくのはお前だ」


アルスが刀を抜く。


「仲間の感情、記憶を返せ」


クウガも構える。


そして――。


クラウスが一気にゼファーとの距離を詰めた。


「ぬんっ!」


ドンッ!!


蹴りがゼファーを捉える。


「グッ!」


ゼファーが吹き飛ぶ。


しかし――。


「再現――グリード!」


ゼファーの背後から巨大な魔物が現れた。


「グリード……!」


ユージが目を見開く。


ゼファーがさらに手を掲げる。


「同時再現――グランドジーク!」


ズンッ!!


もう一体。


巨大な水色の魚が空中に現れた。


青色の硬い鱗。


全てを砕くほどの強靭な顎。


そして、刃物のように鋭いヒレ。


その巨体が、空中を泳ぐように動いている。


「グリードとグランドジークか」


クラウスが敵を見据える。


そしてレイを見る。


「レイ。グランドジーク、倒せるか?」


レイは巨大魚を見上げる。


「……頑張るよ」


「俺らはグリードだな!」


ユージが拳を握る。


「リベンジマッチだ!」


アルスが頷く。


「ああ。あの時はレイに助けられたからな」


クウガも刀を構える。


「俺も手伝うよ」


レイが隣のアカマルを見る。


「アカマル、手伝ってくれ」


「ガウ!」


アカマルが大きく吠える。


クラウスがゼファーを睨む。


「儂はゼファーを」


「任せた、爺ちゃん」


ゼファーが叫ぶ。


「やれ! お前ら!」


グランドジークとグリードが同時に動いた。


「来るぞ!」


ユージが叫ぶ。


グランドジークが空中を泳ぎながら突っ込んでくる。


同時にグリードが巨大な拳を振り下ろした。


「危な!」


ユージが横へ飛ぶ。


拳が床を砕く。


「倒そう!」


アルスが走り出す。


「おう!」


クウガも続く。


「雷豪!」


ユージが雷を纏い、グリードの拳を紙一重で避ける。


その隙に――。


クウガが一気に懐へ入った。


「一刀流――一献像斬!」


閃光のような斬撃。


グリードの左腕が切り裂かれる。


「グオォォォォ!!」


グリードが大きく吠える。


残った巨大な右腕を振り上げ――。


アルスへ向けて振り下ろした。


しかしアルスは動かない。


静かに目を閉じる。


大きく息を吸う。


そして――。


「ふぅ……」


目を開く。


「一刀両断」


一閃。


グリードの右腕も切り落とされる。


「グゥゥゥ……!」


グリードが暴れ出す。


巨大な身体が振り回され、アルスとクウガが吹き飛ばされる。


「うっ!」


「ぐっ!」


「今だ、ユージ!」


アルスが叫ぶ。


その瞬間――。


ユージはグリードの背後に回っていた。


「雷衝」


身体を纏っていた雷が、右腕へ収束する。


バチバチッ!!


雷が一点へ集まる。


「これで……終わりだ!」


右腕を突き出す。


ドォォォン!!


凄まじい雷撃がグリードを包み込む。


グリードの巨体が大きく揺れ――。


そのまま崩れ落ちた。


「……倒した!」


アルスが立ち上がる。


「すごいな、ユージ」


「二人ともありがと」


ユージが笑う。


クウガも刀を収める。


「新一年生にはびっくりするね」


その頃――。


レイは空中を泳ぐ巨大魚を見上げていた。


グランドジーク。


攻撃も防御も兼ね備えた巨大な魔物。


そして――。


その隣には、巨大化したアカマルがいる。


「……俺も、倒すか」


レイが剣を握り直す。


炎が静かに刃を包んだ。


アカマルが隣で吠える。


「ガウッ!」


レイはグランドジークを見据えた。


「行くぞ、アカマル」


「ガウ!」


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