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果てなき世界の物語!  作者: もちもち大福
第一章 始まり
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16話 忘却

カナ達視点。


バトルクロスの会場。


突如として現れたゼファーとガイムによって、会場は完全に混乱に包まれていた。


結界によって外へ逃げることもできず、生徒たちは怯えた表情でその場に立ち尽くしている。


その中で、ゼファーは周囲を見渡しながら、楽しそうに口元を歪めた。


「さてと……誰から廃人になりたい?」


誰も答えない。


「誰も挙手しないなら……無差別にするが」


その言葉に、生徒たちの間からさらに動揺が広がる。


しかし――


「俺たちが、そうはさせない」


ローベルが前へ出た。


隣にいたソフィアも、ゼファーを真っ直ぐ見据える。


「そうよ」


その時だった。


「――待て」


一人の少年が、二人の前へ歩み出る。


学園の生徒会長。


クウガだった。


「この俺たちのチームが相手だ」


クウガの後ろには、カレン、フォン、ヴィル、ミツルの四人が並んでいる。


魔法学園でも最強と呼ばれる五人のチーム。


生徒たちの間から、わずかに希望の声が上がった。


「クウガ先輩だ……!」


「あの人たちなら……!」


クウガは剣を構え、ゼファーを睨みつける。


「ここで終わりだ。お前たちは、この学園には手を出させない」


カレンも一歩前に出た。


「あんた達はここで終わり」


それを聞いたゼファーは、鼻で笑う。


「雑魚が、ほざくな」


次の瞬間。


ゼファーの姿が消えた。


「――え?」


気づいた時には、ゼファーはカレンの目の前に立っていた。


そして、その肩へ静かに手を置く。


「カレン!」


クウガが叫ぶ。


ソフィアもすぐに魔力を集中させた。


「それ以上やめなさい!」


炎が彼女の周囲に集まり始める。


しかしゼファーは、カレンを盾にするようにしながら笑った。


「火魔法を使ってみろ」


その声からは、一切の焦りが感じられない。


「怪我するのは……俺だけか?」


「……!」


ソフィアは魔法を止めた。


カレンはゼファーの手を振り払おうとする。


「その手……どけて!」


「はぁー……」


ゼファーはため息をついた。


そして、カレンへ向けて手を伸ばす。


「忘却」


瞬間。


カレンの意識から、大切な記憶が抜き取られていく。


「……っ」


カレンの力が抜け、その場に倒れ込んだ。


「カレン!」


クウガが駆け寄ろうとする。


「お前……何をした!」


ゼファーは何でもないことのように答えた。


「記憶を貰っただけだ」


「……!」


クウガの表情が変わる。


「みんな、いくぞ!」


ミツルがすぐにカレンのもとへ駆け寄り、回復魔法を使う。


「ヒール!」


淡い光がカレンを包み込む。


一方、クウガたちはゼファーへ向き直った。


フォンが拳を握る。


「いこう」


ヴィルも剣を構える。


「いくぞ!」


ローベルも続いた。


「俺らも一斉にかかる!」


ゼファーは両手を広げる。


「かかってこい」


ソフィアは危険を察知して叫ぶ。


「だ、ダメ!」


全員の動きが一瞬止まった。


「あいつに触れられたら終わりだわ!」


ローベルが歯を食いしばる。


「ですが、このまま何もしなかった方が、もっと状況は悪くなります!」


「わ、分かってます……だけど……」


ゼファーが笑った。


「精々、足掻いてみろ」


その瞬間――


クウガたちとローベルたちが、一斉にゼファーへ向かっていった。


「よくもカレンを!」


クウガが剣を振り下ろす。


ヴィルとローベルも左右から同時に攻め込んだ。


三人の剣が、ほぼ同時にゼファーへ迫る。


しかし――


ゼファーは、それを余裕を持って受け流していく。


「弱いなぁ」


剣を避けながら、ゼファーは笑う。


「攻撃が単調だ」


何度攻撃しても、ゼファーには届かない。


その隙を狙って、フォンが魔法を放った。


「水魔法――ウォータージェット!」


凄まじい勢いの水流がゼファーへ向かって飛んでいく。


さらに教師たちも動いた。


「雷魔法――イナズマキャノン!」


複数の雷撃が一斉に放たれる。


ソフィアも杖を掲げた。


「火魔法――フレイムバースト!」


炎が爆発的に広がり、ゼファーへ迫る。


三方向からの同時攻撃。


だが――


「生ぬるいなぁ!」


ゼファーは地面へ手をついた。


「城壁!」


地面が大きく盛り上がり、巨大な壁が出現する。


魔法が壁へ次々とぶつかり、土煙が舞い上がった。


「今だ!」


煙の中からクウガが飛び出す。


「一刀流――真空斬!」


鋭い斬撃が空気を切り裂き、ゼファーへ飛んでいく。


しかし。


「まだまだだ」


ゼファーはその斬撃を見ながら、笑った。


「再現」


その瞬間、ゼファーの背後に巨大な古い大砲のような魔道具が現れる。


「魔力砲」


砲口が、魔法を放っていたフォンたちへ向く。


「着火」


――ドンッ!


高密度の魔力が一気に放たれた。


「うわっ!」


フォンが吹き飛ばされる。


教師たちもその衝撃によって後方へ押し戻された。


「フォン! 先生!」


クウガが叫ぶ。


「くそッ!」


ローベルは止まらなかった。


一気に距離を詰め、ゼファーへ連続して攻撃を仕掛ける。


しかし――


「面白くない」


ゼファーが右手を掲げる。


「再現――槍」


一瞬。


ゼファーの手に一本の槍が現れた。


ローベルの攻撃をかわすと同時に、その槍で動きを止める。


「――っ!」


ローベルが苦しそうに息を漏らし、その場に倒れ込んだ。


「ローベル!」


クウガが叫ぶ。


ゼファーは冷めた目で彼を見た。


「まだやるのか?」


「くっ……先生まで!」


クウガは剣を握り直す。


そして、フォンへ叫んだ。


「フォン! 止まらずにいくぞ!」


「おう!」


クウガとフォンが同時に走り出す。


二人は互いの動きを合わせ、ゼファーを挟み込むように攻撃を仕掛けた。


「少しはやるな」


ゼファーは二人の連携をかわしながら呟く。


「まぁ、関係ないが」


「黙れ!」


クウガが剣を振る。


「真空斬!」


ゼファーはそれを軽々と避けた。


「それはもう見た」


「トライアウト!」


フォンも追撃する。


二人の攻撃が、ついにゼファーを捉えた。


――だが。


ゼファーには、傷ひとつない。


「……!」


フォンの顔が強張る。


ゼファーはため息をついた。


「ほんと弱い」


そして、静かに告げる。


「弱すぎる」


「再現――羅刹」


ゼファーの手に剣が現れた。


次の瞬間。


無数の斬撃が放たれる。


「うっ……!」


フォンとクウガは攻撃を受け、その場から大きく後退する。


フォンが倒れ込んだ。


「フォン!」


クウガが叫ぶ。


怒りに震えながらゼファーを睨みつける。


「お前を……絶対に許さない!」


ゼファーは肩をすくめた。


「怖いなぁ」


そして、さらに魔力を集中させる。


「再現――古代魔法」


地面から巨大な鎖が現れた。


「古の鎖」


鎖がクウガの身体を包み込み、動きを封じる。


「と、解け!」


クウガが必死に抵抗する。


しかし、鎖はびくともしない。


ゼファーはクウガを無視し、倒れているフォンへ歩いていく。


「さて……」


フォンの前で立ち止まる。


そして手をかざした。


「シーフロード」


ゼファーの手から黒い魔力が伸び、フォンの感情を奪っていく。


「フォン!」


クウガが叫ぶ。


ゼファーはフォンを見下ろしながら呟いた。


「記憶も盗んどくか」


その手が、フォンへ伸びる。


――その瞬間。


「これでも盗めるか」


声が響いた。


ゼファーの手が、フォンへ触れる寸前で止まる。


次の瞬間――


「……あ?」


ゼファーの手が、斬撃によって弾かれた。


ゼファーが初めて驚いたような表情を見せる。


「アルス……」


誰かが呟いた。


そこに立っていたのは、Sクラス魔力量ランキング第一位。


アルスだった。


その隣には、ユージも立っている。


アルスは剣を構え、ゼファーを真っ直ぐ見据えた。


「こっからは俺とユージが相手だ」


ユージも拳を握る。


「そうだ!」


会場の空気が、一瞬だけ変わった。


ゼファーは二人を見つめる。


そして――


初めて、ほんの少しだけ目を細めた。


「……なるほど」


アルスとユージ。


二人が、ゼファーの前へ立ちはだかった


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