表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/5

第4話 脱出行

 夜になっても脱出の準備が進む。

 避難の手伝いをしていた冒険者の一人が言った。

「軍のやつら、出撃していったぞ」

「方角は……王都ハイネンの方だ。やつら逃げやがった」


「ワルター様どうしましょう」

「うーん。この状況、どこかで……」


 何かを思いだしたように、中原(ナカハラ)が突然、皆に呼び掛けた。

「皆の者、避難の開始だ。遅れるな!」


 避難を手伝っている冒険者の一人が言った。

「ワルター・フォン・ヘイデル殿、われらは兵も少なく、襲われれば終わりですよ」


「大丈夫だ。敵は魔王ラインハルト。逃げ出した軍の動向など、つかんでいるに違いない。逃げられるものか。我々は軍の逃げた方向とは異なり、アデッタ村を目指す」


「しばらく音を立てず、静かに移動しようぞ」


「オリビア君、私と一緒に先頭を頼む。ユリアン君は最後尾だ」


「わかりました。ワルター様」


 避難民の行列はアデッタ村へ出発した。



 アデッタ村への旅程の1/3ほど来た時、道が細くなっている場所に来た。左側が川、右側は少し高い丘となっている。


 丘の上に星明りに照らされて、人影が見える。兵士だ。100人近くいる。

 丘から数人の騎士が降りてきた。


「魔王様の言った通りね。逃げ出す奴がいたなんて」


わたくしは魔王ラインハルト様の忠実なる(シモベ)、アンネ」

「降伏しなさい。逃げ出したエルシルの軍は降伏したわ」


 中原が前へ出る。

「我が名は魔術士ワルター・フォン・ヘイデル。降伏するのは貴様の方だ!」


 中原が「ファイア」と叫ぶ。見えない何かが飛んで行った。


 アンネはそれを剣で払った。アンネの目が赤く輝く。

「なかなかやるわね。でもわたくしには通用しませんわ」


 中原が何度もファイアを繰り返した。が、全部はじかれてしまった。


 アンネの剣が迫る。速い。中原は避けられなかった。

 だが、中原の体には傷一つ、つかない。


「くっ。貴様は……。ではこれでどうかしら」

 一旦、距離を取ってアンネは呪文を唱えた。

 風が吹き始めた。嵐のようだった。アンネの頭上に水の塊が出現し始めた。

 突然、風向きが変わり、大量の水が中原の方に飛んできた。


「ウップ。ゴボゲボゴボ」

 中原は水にはじかれ川に落ちて行った。


「ワルター様~!」


 佳織(カオリ)は剣を抜き、アンネと対峙した。

「あなた、魔王ラインハルトの娘ね」


「そうよ、よく知っているわね。私はラインハルト様の娘であり、忠実なる僕よ。ラインハルト様に逆らうものは許さないわ。」

「あきらめて降伏しなさい。あのへっぽこ魔術師は助けなくていいの?」


 騒ぎを聞きつけ、矢向(ヤコウ)が来た。

 状況を確認すると呪文を唱えた。

「ストーム!」


 矢向の周りの空気が上昇していく。空から星明りが消え、雷鳴が聞こえる。

 矢向は続けて叫ぶ。

神の雷(トールハンマー)!!」


 丘の上に雷が落ちた。兵士が次々に倒れていく。


「貴様、よくもわたくしの兵士たちを」


「今、引くなら追撃はしない。立ち去れ!」


 アンネは部下を連れて丘の上に戻ると、矢向のほうを向いて言った。

「貴様、名は?」


「我が名はユリアン。ユリアン・ボーゲンだ」


「覚えておくわよ。ボウヤ」


 佳織は、川に落ちた中原を見つけ、助け出した。

「いいところを全部持っていかれましたね。ワルターさん」



 一同はアデッタ村に到着した。


 ほっとした避難民たちや村人たちが口々に叫ぶ。

「エルシルの英雄だ!」

「魔術師ユリアン!」

「ミラクル・ユリアン!」


 矢向は少し照れながら頭をかいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ