第5話 作戦会議
一夜明け、翌日の朝、佳織たちは村の宿屋へログインした。村に着いた後、英雄たちのために村人が宿屋の「英雄の間」を用意してくれたのだった。
アデッタ村に到着した避難民たちは、一部は村に残ったが、大部分は王都ハイネンに向けて移動を開始した。
中原は避難民に言った。
「もう安全じゃ。魔王軍の攻撃はしばらくないだろう。王都についたらわしの館を訪ねるがよい。約束通り金貨を渡そう」
「われらは先に行って準備しておく」
アデッタ村のはずれに黄色の石碑を見つけた佳織たちは、王都ハイネンにあるヘイデル屋敷に転移した。
ヘイデル屋敷は、もともとはメンテナンス用の拠点だった。矢向が出発前に、データを改変して作成した。王都にいるNPCにも貴族「ワルター・フォン・ヘイデル」の屋敷だと認識させている。
「なんか大変なことに巻き込まれてしまいましたね。これからどうします? 英雄ユリアンさん」
「オリビアさん、あんまりからかわないでください。とりあえず、避難民のことを国に知らせないといけませんね。」
「ワルターさんなら、貴族として王国各方面に顔が利くのでお願いします」
「我々の本来のミッションはどうしますか? アンネさんの記憶を改ざんしてうまく収まるってことはありませんか?」
矢向は少し困った顔をした。
「いまさら急に人格が変わったりしたら、宿川原会長に怪しまれるでしょう」
「まず、状況を整理してみましょう」
考えられる方策は4つ
1.宿川原会長――魔王ラインハルトを説得する
2.アンネさんを説得し、身を引いてもらう
3.ゲームのなかでアンネさんを倒す
4.宿川原会長――魔王ラインハルトを倒し、冒険をリセットする
「3番と4番は、宿川原さんに我々運営側の仕業だとバレたら大変なことになります。現在の状況だと王国側に勝つ見込みがなく、自然に倒すのは難しそうです」
「チート持ちのワルターさんでも、アンネさんに一対一で勝てませんでしたね」
「……あんな強力な水魔法が使えるとは思ってなかったからね。ユリアン君、どうやったら僕が吹っ飛ぶほどの大量の水が、すぐに生成できるんだい?」
「事前に集めていたか、他の人の集めた水をまとめたんでしょう。丘の上にはかなりの兵がいましたから。水魔法も使い方ひとつですよ」
「じゃあ、こっちの魔法攻撃がすべて防がれたのは?」
「魔素感知を使ったのでは? あと、魔剣や聖剣なら魔素をはじくことができますよ」
矢向が話を元に戻す。
「『1番』は宿川原さんに素直に『奥様の気持ち』をぶつけることになりますね。もし失敗すれば宿川原会長だけでなく奥様も我々から離れていくおそれがありますね」
佳織がうなずいて言った。
「それがうまくいくのなら、奥様がとっくにやっているのではないでしょうか。たぶん」
「僕なら嫌だな。『娘のことを忘れたわけじゃない。俺の人生に口出しするな』って言うかも……」
「じゃあ2番ですね。アンネさんを説得する。昨日会った感じではどうですか、ユリアンさん」
「姿は暗くてあまりよく見えませんでしたが、大人の女性って感じでした」
「そうか? 敵に一人でつっこんでくるなんて、無謀で自信過剰じゃないかい。オリビア君はどう思う?」
「私は彼女の口ぶりから、宿川原会長をものすごく信頼しているように感じました。」
矢向がため息をつく。
「もう少しアンネさんの情報がないと判断できませんね。あと宿川原会長には我々が干渉していることを悟られない様にしないといけませんね」




