第2章「学問所編・護衛編」ep.2
翌週、朝9時頃。
今日の天気は快晴。肌にあたる強い太陽光が生徒たちを、さらに苦しめている。
今、小楓たちが何をしているか、それはまさに武道だ。休憩も取らず2時間ぶっ続けでへいあんしょだんとやらを何度も繰り返し練習している。東の方の国で考案された初歩の形らしいが、腰を落とした状態であらゆる方向に突きを繰り出すこの技は、確実に生徒たちの疲労を増加させていた。
「……もうっ、無理だ。」
ある一人の生徒がその場に倒れこんだ。体中汗だくで、顔を真っ赤にしながら苦しそうにしている。そこに星宇がやってきた。
「立て。」
その生徒は懸命に立ち上がろうとしているが、足がつったのか、痛みに顔をゆがめながら星宇の顔を見ている。
「この程度で倒れるようなものは久習館にはいらない。」
星宇はそう告げると王月の方向を向き、目くばせをした。すると、王月は退学願を取り出し、生徒の前に置く。赤かった顔を真っ青にして、星宇に許しを請う生徒は積み重なる疲労と暑さ、渡された退学願に対する衝撃があまりにも強かったのか、その場に昏倒してしまった。居てもたってもいられなくなった小楓は生徒のもとに行き、こう告げた。
「彼はおそらく熱中症になっています。涼しいところへ彼を運び、お医者様のもとで治療を受けさせてもよいでしょうか。」
小楓にまっすぐ見つめられても、星宇は何も言おうとはしない。まるで、「そのような貧弱なものは相手にするものではない。」と言っているかのように。
「久習館に通う生徒の多くは、高貴な家系の出身者が多いことは殿下もご存じかと思います。現にこの者も応臨国の四大名門貴族の出身。何の治療もせず、そのまま放置してしまうと殿下の名声が傷つく可能性がございます。」
星宇は小楓の様子を探るかのように口を開く。
「脅しているのか。」
「滅相もございません。殿下の利益を最優先に考えた結果でございます。」
「そうか。では、小楓お前はこいつを運べ。」
小楓はその生徒を連れ、医師のいる保健所へと向かった。
* * *
治療が終わり、熱中症の彼が寮へと戻ってくる。
小楓の方へと歩いてきて、こう言った。
「今日はありがとう。俺はもう…退学するしかないみたいだけど。家業を頑張るよ。何か助けてほしいことがあったら、いつでも言ってくれよな。」
涙のたまった目で告げる彼は小楓にニコリと笑った。
彼の名は劉暁。夜が明けかけている今の空模様は彼の名前を表しているかのようだった。
* * *




