第1章「後宮編」ep.3
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ーー10年前
「火事だーっ!皆逃げろーっ!!」
東宮を気にもせず、我さきにと逃げ惑う従者たち、そして金と権力にがめつい者たちは、荷物を背負って一目散に逃げていく。
宮殿内の寝室に1人閉じ込められた東宮唐明杰は崩落してきた柱に足が挟まり、逃げることができずにいた。
「……っ、誰か…っ。助けてくれ……。」
明杰のか細い声に気づく者もおらず、もはやここまでか、そう思った時、ある1人の少女がやってきた。
「大丈夫ですかっ?今柱を退けますから、もう少しの辛抱ですよ。」
その少女の名は徐小楓、名門貴族徐家の長女であった。彼女は梃子の原理を使って、柱を動かし始めた。明杰は火事で崩落し始めている寝室内に入る勇気、そして彼女の賢さと類稀な美しさに魅了され、虜となった。
無事、明杰は救出された。
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ーー祝宴が終わり、屋敷に着く。小楓は湯浴みをした後、義母に呼び出された。
「東宮から聞いたわ。今回の縁談はなかったことに、ってね。でもその代わり、第二皇子の唐星宇を紹介してくれるって言うの。今までは東宮に徐熹を嫁がせれば、私たちは生涯安泰だわ、と思っていたけれど、そういえば東宮は体が弱いのよねぇ。それに比べれば、先日また武功をあげて帰ってきた第二皇子の方がよっぽど魅力的だわ。小楓、残念だったわね。」
満足そうな笑みを浮かべ、義母は帰っていく。
(残念だったわね、…か。それにしても、お姉様のお相手があの方だとは…)
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「お母様!聞きましたよ!私のお相手は第二皇子ですって⁉︎どうして彼が私のお相手なのですか⁉︎」
徐琳はフッと笑いながら答える。
「だって、東宮は病弱じゃない。それに対して第二皇子は体が強く、そして何より将来、東宮が死に、第二皇子が皇帝になる可能性が高い。あなたにとって、良い話ではなくて?」
「…でもっ、第二皇子は冷酷だって聞いたことがあるわ。今まで、第二皇子との縁談があった者たちの大半が彼の非情さに耐えきれず逃げ出したって。」
徐熹はぷるぷる震えながら、徐琳の顔を見上げた。
「そんなの噂よ。それにこれは千載一遇の機会なのよ。我が一家が四大名門貴族の中で頂点に立つ方法。あなたも分かっているのでしょう?」
「………」
「とりあえず、一度第二皇子と会ってみなさい。」
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