第1章「後宮編」ep.4
祝宴から数か月経った頃、小楓は徐海に呼び出された。
「小楓、これから第二皇子の宮へ行く。徐熹の伴侶となる可能性がある御方だ。分かってはいるだろうが、無礼なことはせぬように。」
(何かお義母様に言われたのかしら、それとも他の誰かに……?)
「承知しました。」
小楓は徐海とともに馬車に乗り、第二皇子の宮へと訪れる。呼び出された理由も分からないまま、第二皇子の宮の応接室に迎え入れられた。
第二皇子、唐星宇は無言のまま、小楓と徐海の目を見ている。それから少し時間がたつと、星宇は口を開いた。
「よく来たな、徐海。その娘がお前の言っていた徐小楓だな?」
「はい、殿下。」
徐海は恭しい態度でこたえる。
星宇は小楓のほうを向き、尋ねる。
「ところで、徐小楓。今日、お前を呼び出した理由を父親から聞いているか。」
「いえ、聞いておりません。」
「そうか。では、お前の姉、徐熹と私の縁談の話は知っているか。」
「はい、存じ上げております。」
(この件は、お姉様と関係があるのね。なんとなくそんな気はしていたけれど。)
「そうか。では、話は早い。私は徐熹との縁談の条件に応臨国最高峰の学問所、久習館の卒業を命じようと考えている。このことを徐海に話すと、小楓と二人同時に久習館へと入学、卒業させたいと申してな。本当に図々しい奴だが、徐海には世話になっている。今回はそれを認めることにした。特例中の特例だが、お前には久習館に入学してもらう。よいか。」
「承知しました。」
話は終わり、徐海と小楓は退室する。
星宇のもとに、護衛の王月がやってきた。
「殿下、徐熹と徐小楓に久習館への入学、そして卒業を命じるのは、やはり……。」
星宇は、しかめた面でこたえる。
「私の心の内をはかろうと?……ああ、そうだ。久習館は侍女のいない全寮制の厳しい学問所と有名だ。私の管轄下にあり、校訓は自立と責任。徐熹と徐琳の目論見は分かっている。信用できない者を妻にできると思うか。私は絶対にできないと思う。だから、徐熹が久習館での生活に耐えかねて退学することで、この縁談が破談になることを待っているのだ。徐海が小楓をも入学させるように申してきたのは、徐熹の世話をさせるためだろう。」
時がたち、久習館入学の時がやってきた。徐熹は強張った面持ちで正門をくぐる。そんな彼女の後に小楓が続き、空を見上げた。
(今日から、また新しい生活が始まるのね。)




