第1章「後宮編」ep.2
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ーー13年前
「徐海様、お待ちを…、この子をお助けください。わたしは、もう……っ。」
小楓の母は、昔、家政婦として働いていた徐家の主、徐海に縋りついた。彼女は長く続いた内戦で疲弊していた。迫り来る敵兵に斬りつけられ、息も絶え絶え、そんな中、涙目で訴えられ、断りきれなかった徐海は小楓を徐家の邸へと連れ帰った。
美しく善良な小楓を見た妻が何を言ったか。
「この卑しい小娘がっっっ。お前のようなものがいると、それだけで腹立たしいっ!」
徐海はこうなることを想定してはいた。しかし、この状況を打開する手立てを思いつかないまま、時が過ぎていった。
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それから、小楓は必死に勉強し、徐家の令嬢として振る舞った。元々才能がある上、努力が身を結んだこともあり、誰よりも賢く善良な少女へと成長した。こんな小楓に妬み、僻みをつのらせた義母は小楓をいじめるようになり、その娘である姉もまた小楓をいじめるようになった。しかし、気の弱い徐海は見て見ぬふりをした。
今日、馬車で来なかったのも、義母たちが絶対に乗せてくれないからである。今までいじめられていることは誰にも言わないようにしていたが、幼馴染にはすでにバレてしまっていた。だから、こうして気を遣ってくれているのである。
待合室に着き、葛湯が運ばれてきた。
「さて、私はそろそろ行くとするよ。時間になったら、会場においで。」
「ええ。ありがとうございました。」
待合室には我が応臨国の四大名門貴族の各々が集まり、挨拶している。小楓も一人一人丁寧に挨拶をしてまわった。
ーーほどなくして、
「お集まりの皆様。我が応臨国の東宮唐明杰だ。さきほど、祝宴の準備が終わった。会場には10分後陛下と上級妃、それから皇太后がいらっしゃる。それまでに私たちは、席で待っていよう。我が従者について会場に入るように。」
各々が立ち上がり、会場へと入っていく。10分後、陛下と上級妃、皇太后がやってきた。もちろん、淑妃は皇女をつれて。四大名門貴族の家長がお祝いの言葉をそれから、陛下がそれに対する言葉を述べて、食事会へと移った。
「あら、あんた来てたの?徐家の席に座るなんて図々しい。空気が汚れるわ。まあ、でも来てしまったのなら、私の娘を持ち上げることね。ちょうど、婚礼を挙げるのにいい年齢だから、娘にはいい人に嫁がせたいのよ。あんたなんかよりもよっぽどいい人に、ね。そういえば、あんた東宮と仲が良かったでしょう。娘を紹介しなさい。徐熹は上品で気立てがよく、容貌も優れている、とね。必ず言いなさいよ。東宮との縁談が失敗、なんてことは許されないわ。」
凶悪な笑みを浮かべ、義母こと徐琳は徐熹のもとへと去って行った。
1人ポツンと座り、食事をしていると、東宮がやってきた。
「小楓、何を話していたんだい?」
「たいしたことではありません。そういえば、私の姉は結婚適齢期なのですが、どうでしょう。上品で気立てがよく、容貌にも優れている。良い縁談だとは思いませんか?」
「前にも言っただろう。私には一生君だけだと。もしかして、君の義母に言われたのかい?そう言え、と。」
隠してもしょうがないと思ったので、正直に答えた。
「ええ。」
東宮には昔から好意を寄せられているが、小楓には幼馴染以上の気持ちはない。だったら、姉と結婚してもらった方が、1人自分をいじめる人間が屋敷から減って、気が楽だと思っていた。そんな気持ちでいることに勘付いたのか、東宮は言う。
「君にとっては、それが最も良い案なのかもしれない。けれども、私はね、君と添い遂げたいんだ。ずっと君のことを愛してる。だから、その縁談は受けられない。私の方から上手く断っておくよ。」




