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裏銀河の冒険者  作者: 大星雲進次郎
宇宙船ハイペリオン号
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02-219 第四夜 シャルルのドキドキ大作戦

 予想に反して、ベアトリクスの機嫌は良かった。もちろん仕事上がりでそれなりに疲れてはいただろうが、死んだような目で「退屈だった」とい言い出さなかったのは意外だった。

「彼女、どうしたんだ?」

『無理せず好きにすればいいと、アドバイスしただけだ』

「そんなもんかね」

 シャルルはそれ以上は興味がなさそうで、明らかに適当に返事をした。

「では再開しようか。機材はどこに?」

『操舵席のところに。青いコンテナにアカリが仕舞った』

「ああ、あれか。コピーはどうしてる?」

『データのダウンロードと展開までは終わっている。今はデータの加工中だ』

 操縦室の最下層にある操舵席。船長席からでも知らなければ確かに見えない。

 青いコンテナには「封印」のシールが貼られていた。ボトルの封印シールなどではなく、映画やアニメで見られる、オカルト的存在を閉じ込めるためのやつだ。

「……アカリ怒ってないか?」

『アカリが言うには、最悪のファーストコンタクト、だそうだ。そう言えば、シャルルはまだコピーの今の状態を確認していなかったな』

 コンテナをよいしょと持ち上げる。特に重くはないのだが、癖だ。

「いったい何をしたんだ?」

『君が全力で調整したコピーの性格付けが、少しお茶目をやり過ぎた?』

 もしかしたらアカリは自分のことも怒っているかもしれないとシャルルは思った。コンテナにトラップが仕掛けられている可能性も考えた。


 シャルルは慎重に封印シールをはがし、コンテナのふたを開けた。中にはホログラム投影装置と、

「通信機?」

『ああ、声の出所がモニターだったのをアカリが嫌がってな。顔の高さにはならないが、少しはマシだろう。あくまでもテンポラリだ』

 シャルルは菱形のバッヂ型にした通信機を投影装置の足下に置いた。

「じゃあ取りあえず起動するぞ。昨日の続きな」

 ケーブルを補助席の端子に差し込んだ。

 昨日アカリに丸投げしたままの二次元キャラクターの全身像が表示される。

「起動時は目を閉じているんだな。アカリも少し手を入れたのか?」

『元々準備されていた表情の差分と我々の感情コード、それと発音と口の形をアカリに言われてコピーが調整した』

「アカリも乗り気じゃないか。おーいコピーさんや、寝てるのかい」

『……おはようございます、シャルルさん。バックで計算中でしたけど、ちゃんと聞いていましたよ』

「あ、声」

『このアバターのデフォルトの声だな』

「何だよ、普通に可愛いじゃないか」

『え、可愛いですか……?』

 ホログラム少女が照れてモジモジしているように動く。平面だが。

「なるほどね、昨日よりはかなり良くなっているな」

 このままでも良さそうだし、これ以上も試したい。

「3Dのデータはどうなった?」

『あのデータがなかなかに大変でして』

 コピーが言うには。やはり医療用のスキャナで人体を走査したデータであった。表面の皮膚だけでなく骨格や内臓、筋肉まで詳細にスキャンされていた。製作作者は何をしようと考えていたのか、身体の各パーツは部品化されていた。投影装置での再生も想定していたらしく、関節を起点にした動きが可能なように各点がパラメーター化されていた。

『他にも、既存動作がプリセットで結構な数コマンド化されていますね。あとオマケとかサポートプログラムとか、何千ページもあるマニュアルとか……』

『狂気の塊なのだよ』

 確かに狂気だ。製作者はこのデータをどう使うつもりだったのか、データの本人は、ここまでされると解っていてデータを提供したのか。

「ホロデッキの再現映像でも、逢いたかったのかな」

 シャルルにはまだ理解できない領域の愛の形だ。

『必要なのは表面だけなんですけど、表示する点を間引く必要がありました。それは終わっていて、今はサンプルモーションを参考に、自由な動きが出来るように解析しています』

 そういうコピーは少し疲れているようにも見える。

「じゃあ早速……」

『いや、待ってくれ。昨日話したように改造を加えたい』

「っと。ああ、……光源と影の装置だったか」

 周囲の光個加減を検知し、影が出来る範囲の光量を減らすための計算装置。

 明らかに人工知能の暴走であるが、誰も異常には気づかない。

「どうすればいい?」

 

「これで、完成かな……」

 組み立ては難しくはなかったが細かい部品が多く、それなりに疲れた。

 元は立体のホログラムが出ればいいかくらいで考えていた。細かい部分は確かにAIにお任せと思っていたから、方針としてはなにも変わっていない。

 3つの球体で支えられた台座を床に置く。球体はそれぞれ独立して回転させることが出来、謎素材でほぼ無音で動き回ることが出来る。

 台座の上には八枚のレンズが円周上に均等に配置された光源の分析装置が乗る。これにはハイペリオン待望の補助解散ユニットを内蔵する。

 そして立体音響装置は分析装置のレンズの間にスピーカーが置かれた。

 最後にホログラム投影装置。

「繋いだよ。俺はちょっと休憩してくるから、調整でも何でもしておいてくれ」

 シャルルは想定外の心の疲れでよろけながら操縦室を出た。


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