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裏銀河の冒険者  作者: 大星雲進次郎
宇宙船ハイペリオン号
22/28

02-001 星団開拓

 この回は「01-001 未来への跳躍」の続きになります。アカリ氏と愉快な知り合い達のお話は次回です。

 移民船団がアヴニール星団に到達したその日。

 船団の前に現れたのは、星団を構成する星々の推定平均質量のおよそ百倍、歪な形状の巨大星であった。

 恒星学者の見解によると、この星は周囲の兄弟星を次々に飲み込み成長したのだと考えられた。現在呑み込まれているのはおそらく最後の犠牲者であろう。今後数百年をかけて一つの星になるのだという。

 歪な星の表面の至る所で小さい爆発が起こっている。宇宙船のメインスクリーンに映し出されているその光景は、兄弟を呑み込まなければならなくなった心の痛みにも見えた。

 

 星団の目印となった謎の天体の正体は判明した。

 銀河系の反対側からでも目立つ正体不明の重力源。電波重力望遠鏡で観測すると、周囲とのコントラストが異常に際だつ。緩やかに解けていくはずの散開星団をつなぎ止める重力の異常点。

 この美しい星団アヴニールは、銀河系で確認されている3つの力ある文明種族にとって暮らしやすい星が非常に多かった。この3種族は自力での銀河系内恒星空間進出に成功した文明であり、太陽系を発祥とする文明、ケンタウリ星系を発祥とする文明、発祥地は不明の爬虫類型生命体の文明だ。

 地球ケンタウリ文明は発生の近さや進化の観点からほぼ同一と見なされていて、同盟が済んでいる。爬虫類型生命体の文明は非常に攻撃的で覇権的。ファーストコンタクトでのいさかい以来ほぼ戦争状態だ。地球ケンタウリ政府としては蜥蜴共にこの星団を渡すつもりはない。ただ、この星団への目印は目立ちすぎた。

 

 船団はひとまず比較的大きな惑星、おそらく第九番惑星の陰に基幹艦隊を停泊させた。残りの船団を数個に分け周囲20光年の範囲を詳細に調査させることとした。

「入植者の皆には申し訳ないが、一年は調査に充てなければならないだろうな」

 20年も我慢したのだ。星団に到着したのに自由に暮らすことができないのはストレスだろう。元々テラフォーミングなどで星に降り立てるのは到着後数年かかると事前に説明されていても、だ。


 そして作戦会議。

 移民船団には多くの権限が与えられていた。その中には自治政府をつくることも含まれており、地球ケンタウリ政府に危害を加えない限りはほとんど自由だった。

 何とかたどり着いたこの星団を、地球人類の第二の故郷にするため、安全に暮らせるようにしなければならなかった。

 長距離航行技術を持つ他星文明の星団侵入の目印にになりやすいと考えられるこの星を中心にして、強固な防衛戦を築かねばならない。偵察艦隊からの情報を元に、この星を中心に半径20光年程度の球面座標上で銀河赤道面に4方向、南北に2方向あわせて6つの星系に監視基地を置くことになった。

 銀河赤道面で、銀河中心に向く星系を1番目の星【プルミエル】と名付け、星団を統括することとした。中心の巨大星は7番目の星【セティエム】となった。その後、星団内の探索が行われ、星団到達から30年で13の星系に拠点がつくられたのだ。 

 【トレジエム】は【セティエム】から星団中心方向に50光年ほど離れたところにあるG型の星である。計画的入植が行われた星系としては13番目。最後の星系である。


 プルミエル入植からちょうど10年。船団長はそのまま星団統括府の初代大統領となった。

 最初の五年は当然ながら手探りの運営だ。なにしろ六つの星系をほぼ同時に開拓していくのだ、良い事も悪い事もそれはもう相当な数の事件があった。

 運が良かったのは、この星団までの旅の途中でほとんどトラブルがなかったため、物資が豊富に残っていたこと。それと長年信頼し合ったブリッジの上級士官達が各星系のリーダーとなってくれたこと。お陰で綱渡りよりも幾分ましな経営ができたのだった。

 そして次期大統領の立候補者もなく、推薦で勤めることになった二期目。この頃になると星団の経済も政治も安定してきて、やや余裕が出てくるようになった。理由として一番大きなものは、リライトシステムが地球からもたらされたことだろう。純粋エネルギーの扱いが平易になったことで、レプリケータや転換炉、超空間の利用が促進されて、結果お金の廻りが良くなってきたのだった。

 そしてかねてからの計画の続き、星団の防衛拠点の拡大が実施されることになった。

 そしてこれが星団大統領としての最後の仕事だ。開拓はこれからも続くがそれは公社の仕事になる。今後は政治家が星の経営を担っていかねばならない。後継者には対立していた若者を推薦した。彼とはお互いの考えがよく分かった上での対立だった。何が正しいか誰も分からない星団の開拓を議論するための衝突。彼は大統領の分身ともいえたのだ。

 

 つい先ほど残り8星系に向かう船団の出発式典が終わったところだ。十分な資源を持たせてやれなかったが、任務をやり遂げられることを信じるしかない。

「ようやく、肩の荷を降ろせるな」

「長い間ご苦労様でした」

「これからは、やっと「娘」とのんびり暮らせるよ。いや、長かった」

 地球を旅立ってから30年。緊張の糸が切れて体力が落ちたのだろう。彼はその一年後にこの世を去った。宇宙放射線病であった。

「娘」はその後、およそ50年にわたりプルミエルの重職に就き続けた。そしてある年の「父親」の命日に、電子の海に還っていった。


 そして入植から300年後。

 プルミエルは銀河系で最も栄えた星系となり、他の星々も特徴を押しだし繁栄している。

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