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12.タンデム

 私と透さんが、二人とも休みの時、透さんのバイクに

乗せてもらう事になった。バイクに乗るので、

上下ジーンズに、三つ編み、丸めがねという格好で、

透さんの家を訪ねた。

三つ編みは、バイクに乗っても、髪が乱れないため。

丸めがねは、ヘルメットをかぶった時、前髪が、

目に刺さらないための、伊達めがねだ。

インターホンを押すと、女の子が出てきた。

話に聞いていた、小学校1年生の凛ちゃんだ。

「こんにちは、野原まいです。お父さんは

 いらっしゃる?」

凛ちゃんは、ちょっと戸惑いながらも、

「パパ、お客さんだよ。」

と、透さんを呼んでくれた。

中に招かれた私は、凛ちゃんと年中さんの湊君、

透さんのご両親に、ご挨拶をした。

その時、凛ちゃんが、透さんに小さな声で、

「前の人が良かった。」

と言ったのが聞こえた。「前の人って何。

前の奥さんの事?でも、凛ちゃんが、

自分のお母さんの事を、前の人と言うはずがない。」

私の頭の中で、「前の人」という言葉が、

ぐるぐる回っていた。


 ご両親とのお話も程々に、

私と透さんは、バイクに乗った。

透さんが前に乗り、私も後ろにまたがった。

透さんの肩をつかんで、さあ出発という時、

「危ないから、しっかりつかんで。」

と、私の手は、肩から腰に誘導された。

私は、透さんの腰に手を回し、しっかりとつかんだ。

透さんの体と私の体が密着して、ドキドキしながらの

タンデムが始まった。

暑くも寒くもなく、とても気持ちの良い風を

感じながら、海沿いの道を走って行く。

1時間位走った所にある、ドライブインで休憩した。

自動販売機のコーヒーを買って、

海と島が見える、駐車場のベンチで飲んだ。


 でも私は、さっき凛ちゃんが言った事が、

気になっていた。

「凛ちゃんが言っていた、前の人って何?」

「実は、まいちゃんと付き合う前に、

 付き合っていた人がいたんだ。

 その人は、バス会社の事務の女の子で

 亜季ちゃんという子だった。

 彼女は、恋人としては良かったが、

 子ども達の母親に、なれる人ではなかったから、

 別れた。

 亜季ちゃんが、子ども達に会った時、

 ワンピースを着ていたから、

 今日の、まいちゃんの格好だけを見て、

 前の人が良かったと、言ったと思う。」

透さんの言葉に、嘘はないと感じた。

「いい家庭を作りたい。」という夢に向かって、

行動しているんだ。

「『3人まとめて面倒みるか。』と言ってくれた

 まいちゃんに、俺は救われたんだよ。」

前に、結婚していても、付き合っていた人がいても、

今は、私だけを見ててくれている、と確信した。

今度子ども達に会う時は、

もう少しお洒落をして行こう。

続きは、4月20日(月曜日)に投稿する予定です。

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