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第17話 「異議あり!」

 キーンコーンカーンコーン。


 本日最後の終業ベルが鳴る。士道司はその音を校舎屋上の更に上、貯水タンクに寝そべりながら聞いていた。


「そろそろだな」


 数時間ぶりに瞳を開ける。司の藍色の瞳に、赤から青にグラデーションのかかった空が映り込む。その手には凛音からひったくった青いハンカチが握られていた。

 2時限後の休み時間に教室を出た司は、真っ直ぐここへ来て眠り続けていた。開放されている屋上でも、この場所まで来る生徒はまず居ない。選ばれしもののお気に入りのスポットだった。


 凛音には少し辛く当たり過ぎたか。イヤイヤ、これから起こることを考えればアレくらい突き放しても生ぬるいくらいだ。

 銀髪を振り乱し、甘い考えをすぐに払拭する。


 ハンカチをポケットにしまい、代わりに一通の手紙を取り出す。今朝登校した時に下駄箱に入っていたものだ。

 島の雑貨屋で手に入る、ありきたりなレターセット。ピンクの便箋で星やハートのマークで彩られており、ラメの入ったペンで書かれていた。


 だが、内容は可愛い外見とはかけ離れたショッキングなものだった。本土であれば、殺害予告として警察沙汰にもなりかねない。


「やれやれ」


 司はため息をつきながら、物騒な手紙をクシャクシャに丸める。肘を曲げて振りかぶると、屋上のフェンス越えを狙って放り投げた。

 結果は失敗。緑の金網に阻まれた紙くずは、風に吹かれてコンクリートを転がっていく。


 そのまま隅に追いやられるかと思いきや、色あせたスニーカーに阻まれて動きを止めた。

 屋上に来ていた人物は、丸められた手紙を広げて中身を確認する。間違いない、昨日自分が書いて、今朝一年生の下駄箱に入れておいたものだ。


「出てこい! 士道司ぁ!」


 西日の当たる屋上に、少女の叫びがこだまする。


「うるさい、聞こえてる」


 タンクの裏から司は顔だけ覗かせた。眼下には先ほど叫んだ人物とは別にもう1人、計2人の生徒が待ち伏せている。

 1人はピンク、もう1人は水色に髪を染めていた。どちらもボサボサで手入れがなってない、相当傷んでいる。


 司の顔を見上げて、ピンク髪が鼻を鳴らす。


「ハンッ! 選ばれしものは相変わらず高いトコが好きみたいだね」

「前置きは結構、要件を聞こう」


 タンクのある場所から2人の前に飛び降りる。


「ヨーケンって、手紙に書いたジャン」


 今度は水色の方が言葉を発する。感情的なピンクに比べると、こちらはやや冷めた印象だ。


「手紙は読んだ。カード目当ての決闘も理解している。ただ『ランコの仇』、これの意味が分からない」


 手紙には過激な脅し文句や指定された場所や時間が書かれていた。だがなぜか、手紙の中では司のことを『ランコの仇』と呼んでいる箇所があったのだ。


「トボけんじゃねぇ!」

「蘭子はアタシらのトモダチだよ。一昨日、アンタが殺した子の」


 司は小首を傾げる。だいたいランコなんて名前、司の知り合いに居なければ聞いたこともないからだ。

 しかし、目の前の2人の姿と一昨日というキーワードからすぐに1人の女子生徒に思い当たった。


「あーあー。そうかお前ら、ヤマンバの仲間だな。分かりやすく手紙に書いてくれれば良かったのに」


 2人を指差し、半笑いで応える。その様子に当人達は不機嫌に顔を歪めた。


「仕方ないジャン。手紙なんか書いたコト無いし。メールのがメチャハヤだけど、この島って電波無いし」


 ピンクも水色も同じような校則違反をしていた。タイを外して、スカートも折って短くしている。蘭子ほどではないにしろ、肌も焼いた小麦色で、メイクもそれなりに派手だった。


「それにしてはヤマンバ度が足りなくないか? 山籠りが足りないな」

「ウルセェ! 殺しておきながらよくもそんなコトを」


 司の軽口にピンクが吠える。


「ちょっと待て。私は殺してない」

「なんだなんだ。言い訳なんて見苦しいぞ」

「朝に交差点で蘭子と殺りあったコト、皆んな知ってるよ。噂の転校生もその場に居たって」


 転校生。その言葉出るや、司の眉がピクリと動く。


 こんな小さな島でのことだ。人の噂はすぐに広まるとはいえ、巧女のギャルの情報網は司の予想を超えて広がっていたようだ。しかし微妙に間違っている。


「異議あり! ヤマンバの死体があったのは校舎裏のはずだ、しかも見つかったのはお昼の休憩時間。

 私はその日の午前中は授業に()てた。よってアリバイがある」


 腕をピンと伸ばし、ズビシと人差し指を突きつける。


「なるほど。選ばれしものが犯人じゃないのか。なら蘭子は一体、誰が?」

「それはまだ分からない。捜査は振り出しに戻ったな」

「ッザケてんじゃねーぞコラァ!」


 ピンクが力任せに司の首を絞め上げる。


「落ち着いてアカネ。その娘は犯人じゃない、アタシたちは真犯人に踊らされてるのよ」

「オマエもノせられてるんじゃねーよ!」

「うぐぅ」


 ピンクが水色のお尻に蹴りを入れた。続いて、唾を吐き捨てるように司の手を離すと、おもむろにカードを取り出してみせた。


「コイツが蘭子をコケにしたのに変わりはないんだ。だったらアタシらのすることも変わんないよなぁ!」


 ケホケホ咳き込みながら、司も懐から金色の学生証を取り出す。


「まぁそうだな。初めからそのつもりで来たんだし」


 いつのまにか水色の方もカードを手にしている。ピンクの傍に立って司と対峙した。

 互いは臨戦態勢に入りカードを掲げる。


「【顕現(リアライズ)】!」

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