人ならぬモノ達
ハロウィンも近い秋を過ぎた頃。その日は一段と夕焼けが綺麗だった。
誰かの机の上に置かれていたのは、ハロウィン向けに作られたらしい絵本が数冊。一番上にあったのはジャック・オー・ランタンの描かれた可愛らしい絵本だ。不思議なことに、その表紙にあったはずのイラストが消えたり現れたりしていたという。
まるで、魔法みたいに。
「いやいや。それは怖すぎるって!??」
「え?面白くない?」
高校生ぐらいの子が二人で話ながら帰っていた。下校中に何気なくこんな噂話を友人にしたら、怖がられてしまったらしい。
「怖いよ!!!」
「そうかなあ?」
私は面白いと思ったんだけどなぁ。魔法とかファンタジーっぽいし。
「じゃあさ。この話ならどう?」
偶然見えた人の居ない店。パン屋に飾り付けられたオーナメントがゆらりと揺れる。ガラス戸に貼り付けられたハロウィン用の飾りも店内に置いてあった、かぼちゃの置物も踊る様に左右に揺れ動いた。
これは、ダンスのつもりだったのかな?
「ね?ダンスだったらちょっと楽しそうじゃない?」
「うーん。それでも少し怖いって」
「ええ〜?」
私と友人だと、やっぱりこういう会話になってしまう。
平日でハロウィンの時期だというのに人が少ない表通りを最寄り駅に着くまで私はバスの席から眺めていた。繁華街もあまり活気があるとは言えそうにないな、と自分の故郷を思いながら。
人気のない何処かの部屋。そこに縫い跡のある、何やら特徴的なぬいぐるみが棚にポツンと一つだけ置かれていた。
暗闇の中でぬいぐるみは不気味にウケケケと笑う。電池も使われていないのに笑っているのだ。あの笑い声はどうして動いているのだろうか、という疑問すらも抱かずにいる人間達へ向けてのものだったのかも知れない。
その姿は猫を模したもので目は蛍光色に近い明るい青いボタン。生地の色は紫とオレンジ。縫い跡は茶色の糸だった。
・・・もしや、ハロウィン仕様なのだろうか。
「ウケケ、ウケケケ」
ぬいぐるみは愉快そうに再び笑い続けた。
それから暫くして足音が聞こえて、ガチャリという音と共にドアが開いた。
「ただいまー。大人しくしてた?」
先程の人間がこのぬいぐるみの持ち主だったらしい。
「・・・・・。」
「よしよし」
何も知らずに笑ってぬいぐるみの頭を優しく撫でる。
もう、あの笑い声はしなかった。
もしかしたら。そのぬいぐるみは寂しがって、持ち主の気を引こうとしていたの知れません。
画面上の文字を睨みつけて何度も見直して。やがて悩みながらも、その作者はそんな一文で締めくくった。あの噂話もあのぬいぐるみも。実際するとしたら、きっと普通ではないのだろうから。
タイトルには『人ならぬモノ達の物語』とあった。
あとがきの最後はこうだった。
それでは、読者の皆様。
「Trick or treat!!」
良きハロウィンを、と。




